BMW i3 新型42kWhバッテリー搭載車のニュースをEVユーザー視点で深掘り

2019年2月6日、ビー・エム・ダブリュー株式会社(代表取締役社長: ペーター・クロンシュナーブル)は、従来モデルより約9kWh大容量の新型のバッテリーを搭載した電気自動車「BMW i3新型バッテリー(120Ah)」を、日本全国のBMW正規ディーラーで販売を開始すると発表しました。

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「i3」は、2014年4月のデビュー当時のモデルでは22kWh(60Ah)の電池を搭載。その後、2016年10月から33kWh(94Ah)に大容量化した電池を搭載していました。今回のBMWの発表では、日産リーフE+のように、従来のモデルに電池増量モデルが「追加」されるのではなく、新車販売モデルを完全に42kWh(120Ah)に入れ替えることになっています。

EVユーザーの目線でプレスリリースを確認しつつ、気になる点をピックアップ。BMWジャパンの広報部に質問してみました。

なぜ、電池容量の単位で「Ah」を強調するのか?

BMWは今までもそうだったのですが、電池容量の単位として、一般的な「kWh」ではなく、「Ah」を第一義的に用いています。カタログのスペック欄を確認するとシステム電圧は352.3V。つまり、120×352.3=42.276kWhで、総電力量「42.2kWh」と明記されているのですが、なぜ、120Ahを押し出すのか不思議です。一般家庭では電気料金などもkWh単位で買っているので、普通にkWh表記のほうがわかりやすいのですが……。どうして、Ahを強調しているのでしょうか?

「ドイツの本社が打ち出しているワールドワイドのコミュニケーションで、Ahを単位として使っているからというのが理由です。むしろ、ドイツなど欧州ではAhが一般的なのかと思っていました」

日頃から懇意にさせていただいている広報ご担当者に電話で話を聞いたので、ざっくばらんに回答していただきました。

チコちゃん風に結論づけると、「ドイツの本社がそうしてるから〜!」ということです。ちなみに、スマホなどで使うモバイルバッテリーでは、mAh表示がよく使われていますね。欧州(ドイツ)ではAh表記が一般的、かどうかは未確認ですが、たとえばVW「e-GOLF」では普通にkWhを使っているので特にドイツでAh表記が主流ということはなく、BMWがi3をデビューさせる時からAhを使っていたので、バージョンアップで電池容量の増加を示すにも、Ahを使った方がわかりやすい、という判断なのだろうと推察します。

むしろ、最近の欧米メーカーでは、各国基準の一充電航続距離を示しつつ、あまり電池容量そのものを強調しない傾向になりつつあるとも感じます。たしかに、これからEVが普及するほどに、ややこしい電力量の計算をしながら乗ろうと考えるユーザーは希少種になっていくはずですからね。

BEVとレンジエクステンダーで、電池での航続距離が違うのはなぜ?

最大航続距離として示されている「466km」は、9ℓのガソリンタンクを備えた647ccエンジンによる「レンジエクステンダー」搭載車の数値です。電池だけで走る(BEV)モデルの場合、カタログでは360km(WLTCモード)となっています。より実情に近いEPA基準では、約250km(153マイル)程度と予想されています。

と、最新のi3のカタログを確認すると、レンジエクステンダーの最大航続距離が466kmであることについて、「295km (EV走行換算距離) +19km/ ℓ(ハイブリッド燃料消費率/国土交通省審査値: WLTCモード) x9ℓ(タンク容塁)による試算」(参考値)となっています。つまり、「295+19×9=466km」ということですね。

EV走行換算距離(等価EVレンジ)というのは、ハイブリッド車が外部電力で充電した電力で走れる距離のこと。と、いうことは、BEVの航続距離を360kmと表記するのは、ユーザーとはしては「ダブルスタンダードじゃないの?」と感じてしまします。そのあたり、BMWジャパンではどのように考えているのでしょうか?

「EVはWLTCモード、ハイブリッドはEV走行換算距離(等価EVレンジ)での表記が定められているからです。つまり、WLTCではレンジエクステンダーの航続距離を表記する基準がなく、コンシューマーに他メーカーの車種と比較していただきやすくするためにも、国で定められた基準に従った表記となっています」

また、BEVとレンジエクステンダーの航続距離が違うことについては「エンジンを搭載している分だけ、車両重量が重くなっている(約120kgの差)ので、若干航続距離の差が出るのは確かです」とのことでした。

いずれにしても、WLTCモードの一充電航続距離が実走行の航続距離とかなり違ってしまうのはよく知られた事実です。エンジン車の燃費に比べ、電気自動車の航続距離は車種選びの基準としてより重要度が増しているのですから、アメリカのEPA基準のように、日本でもより実情に近い基準が採用されるといいのにな、と思います。

搭載電池の大きさ(容積)はそんなに変わっていない?

33kWhモデルと新型のボディサイズは同じです。車両重量が1300kgから1320kgに増えていますが、9kWhの電池増量で20kgということは、1kWh当たり約2kgしか重量は増えていません。今回のモデルチェンジで、電池の個数や大きさ(容積)にさほど変化はなく、電池セルそのものの性能向上で総電力量が増えたということなのでしょうか?

「ボディサイズに変更はありません。電池のエネルギー密度を高めたと聞いています」

セル数なども変わっていないので、シンプルに電池性能の向上による容量増加、ということらしいです。おそらく、今回のモデルチェンジで「NMC622」が採用されたのでしょうか。私はエンジニアではないですし、広報にも詳細な情報は届いていないようで詳しいことはわかりませんが、当初の22kWhから比べるとほぼ倍の容量をもつ電池を同じスペースに搭載できているということに、これからますますEVが進化していく可能性を感じます。

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出力やトルクは同じで、0-100km7.3秒は維持。改善点は?

また、20kgだけとはいえ車重が増えたものの、i3の特長でもある「0-100km7.3秒」は維持。リリースではとくに触れられていませんが、何か、動力性能向上に関するアップデートはあったのでしょうか?

「モーターなどを含めて、動力関連の変更はありません。重量増加は加速性能に影響しない範囲内だったということでしょう」

モーターなどには変更はないということです。もしかすると、モーターコントローラーのプログラムは改善されているかもしれませんが、詳しいことはわかりませんでした。たとえば、日産が初代リーフの市販車とまったく同じ電池やモーターを使って『リーフ NISMO RC』を製作していたように、プログラミングひとつで電池(やモーター)の性能が許す範囲の圧倒的なパフォーマンスを発揮できるのもEVの面白いところです。

チャデモの新基準、150kWでの急速充電は?

プレスリリースでは、「CHAdeMO(チャデモ)方式の急速充電に対応しており、約50分で80%まで充電可能」となっています。これは現状の最大出力50kWの急速充電器を想定した所要時間ですが、今、チャデモ協議会で策定が進んでいる150kWの高出力化には、まだ対応していないという理解でいいですか?

「未確認なので技術関連部署に確認してみますが、おそらく現状のチャデモ対応です」

さらに、質問電話を切って数時間後、「宿題をいただいておりました件、高出力には対応していないと確認できました」という連絡(メール)をいただきました。とはいえ、電池容量は約42kWhですから、最大出力50kWhの現状チャデモの急速充電で、実用的にまったく問題はないでしょう。

i3がコンパクトEVとして魅力をアップしたのは間違いない!

アウディ「e-tron」やジャガー「アイペイス」など、最近相次いで発表されているEVのニューモデルはおおむね90kWh以上のどでかい電池を搭載し、価格も1000万クラスの高級車です。この新型i3は、ベーシックな「ATELIER」で価格は543万円(消費税込)。33kWhモデルが538万円だったので、電池9kWh増量で5万円しか値上がりしていません。

車重も少し増えたとはいえ、日産リーフの40kWhモデルと比べて約200kg軽く、小気味いい加速感などは健在。普段使いで快適なコンパクトなBEVとして、さらに魅力を向上させたといえるでしょう。2021年には次なる「i4」がデビューするという噂もあり、プレスリリースでは「電気自動車の需要拡大により、BMW iの販売ネットワークを強化」すると強調されています。今後、さらなるBMWの本気に期待したいですね。

(寄本好則)

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