速報!ニコラ・モーターが純電気トラックをラインナップ

水素燃料(FCV)トラック会社のニコラ・モーターは、公式のTwitterを通じて「次に発売される『ニコラ・ツー』と『ニコラ・トレ』は来月の『ニコラ・ワールド2019』で水素燃料と純電気バッテリー(BEV)両方の形態で披露することになる」と発表しました。

速報!ニコラ・モーターが純電気トラックをラインナップ

元記事:Breaking! Nikola Motors Adds Battery Electric Vehicles To Its Line up by Kyle Field on CleanTechnica

FCVかBEVか?

今現在もそうですが、未来も(燃料電池車か電気自動車かという決着は)白黒はっきりした世界にはなり得ません。今日のテクノロジーを見ているように、たった今、この瞬間までに積み重なってきた条件を元にした未来予測を理由に、片方を選んでもう片方を切り捨てるのは簡単です。水素燃料電池車は現在のバッテリー電気自動車と競合関係になり切れていないことや、近い将来像が見えないことによって、よくいわれのない非難を受けています。

ニコラ・モーターは社の水素燃料電池、そしてこれからのバッテリー電気大型トラックの未来に関して大胆なビジョンを持っており、これらの(電動)トラックは、物流管理システムを主に支えているディーゼルトラックからの脱却の重要性に対する関心を高めるのに役立っています。

水素およびバッテリーの純電気トラック(と再生可能エネルギーから水素を生成する水素燃料ステーションネットワーク)という会社の大胆なビジョンは、エキサイティングで素晴らしいものです。そうは言いましたが、水素燃料電池vs純電気バッテリー車両の議論の詳細には過度に踏み込まないようにして、再生可能エネルギーで動く水素燃料電池トラックは、効率性の面では劣りますが、純電気トラックと同じ量のディーゼル排気を相殺する、という事を覚えておきましょう。私達は味方同士です。(…ふぅ)

水素燃料電池トラックと純電気トラックの展望

水素燃料電池トラックと共に、純電気トラックを市場に投入するとしたニコラ・モーターのニュースは素晴らしいものです。トラックを扱うビジネスにさらなる選択肢が追加されたという事です。 (同社の)広報によると、短距離用のサービスを見据えた新しい電気セミトレーラー・トラックは500kWh、750kWh、1MWhの3種類の形で市場に投入されます。

水素燃料電池車の主な利点は、同等の純電気車両と比べて5,000ポンド(2,270キロ)軽くなるという事です。ただし、これが満タン状態での話かは明確ではありません。さらに純電気車両が比較的長めの充電時間を必要とするのに対し、水素燃料電池車はほんの数分で燃料の注入が終わります。

このあたりの議論に関してはまだ流動的で、バッテリー充電器を製造している企業はすでに350キロワットの充電ステーションの設置をしようと話を進めています。一方で、水素の特性として圧縮された時に水素注入時にタンク内で加熱問題が起きることや、処理量が多くなるために出てくる、ノズルが凍ってしまう問題があり、しかもこれらの議論は自家用車の分野でしかされていないのです。

走行距離の議論にもっていくとさらに難しくなるのですが、ニコラ・モーターは自らの主張をサポートするために具体的な数字を出してきています。

1MWhのバッテリーを積んで最大走行距離400マイル(約644キロメートル)を走る純電気セミトレーラー・トラックは、80,000ポンド(約36,287キログラム)の積載量一杯に荷物を積んだ場合、1マイル(1.6キロメートル)毎に2.25kWhを消費します。ニコラ・モーターによりますと、バッテリーが90%までしか使えないことや天候の影響(気温が低いと電池の消費が激しくなる等)を考慮に入れると、走行距離は300マイル(約483キロメートル)になります。まったく隙の無いスペック表ではありませんが、ニコラがどのような純電気トラックを提供してくるのか、ある程度イメージできます。

ニコラ・モーターとCEOのトレバー・ミルトン氏はその後Twitter上で、純電気トラックの追加は水素燃料トラックのセールスには影響を与えないと明言しました。しかし、どのような展開が見られるか本当に理解するためにはさらなる詳細が必要です。この会社が高い供給量でキログラム当たりのコストが低い水素燃料ステーションネットワークを国中に供給できるのならば、長距離用の水素燃料トラックの普及も実現するでしょう。

ニコラ・モーターのビジョンは大胆なもので、3年以内に生産に入る予定の、寝室兼用運転台が付く水素―電気トラック、『ニコラ・ワン』のデュアル120kW電池セルは具体的な形が出来てきています。

『ニコラ・ツー』は車体のデザインが変わり、より安い値段のショートキャブになります。

『ニコラ・トレ』はEU基準に沿ってヨーロッパ市場向けにデザインされ、運転席をエンジン室の上に配置することによってセミトレーラーのフロント部分を平らにし、車両の貨物室以外の部分を圧縮したキャブ・オーバー型になっています。

ニコラ・モーター社の創始者でCEOのトレバー・ミルトンは11月に出したニコラ・トレ車両に関する声明の中で「このトラックは本当に素晴らしいもので、ヨーロッパで長く待ち望まれていたものです。レベル5の自動運転に必要な冗長性設計が加えられたブレーキ、ステアリング、800Vdcバッテリー、120kWhの水素燃料電池を携えた、ヨーロッパで初のゼロ・エミッション商業トラックになります。北米バージョンと同時期の、大体2022年から2023年の間に生産開始すると考えていてください。」と述べました。

水素ネットワークはすべてを支配する

(ロード・オブ・ザ・リングから「一つの指輪はすべてを支配する」のパロディ)

ニコラ・モーターの展望の屋台骨は、アメリカとカナダ全土に広がる、700バール(10,000psi)の貯蔵で運営される700以上の水素ステーションからなる水素燃料ネットワークのプランでした。このプランではステーションによって日に2,000から8,000キロの水素を製造できるネットワークを2028年までに完備する事になっています。

この会社はグローバルな強い展望を持っています。アメリカでの2つのコンフィギュレーションと並行して水素燃料ネットワーク事業に着手し、ヨーロッパでも2022年前後に操業開始したいとしています。ネットワークは操業開始から数年かけて構築され続け、ヨーロッパのほぼ全域を2030年までに網羅する予定です。

ニコラ・モーターは現在Nel(ノルウェー、オスロ)と共にアメリカの水素ステーション事業に取り組んでいます。Nelの本部がヨーロッパである事を考えると、この会社もヨーロッパの水素ステーションネットワーク構築の第一人者になると予想されます。計画が上手くいくかどうかは、時間が経つにつれ明らかになっていくでしょう。

(翻訳と文・杉田 明子)

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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