カリフォルニア州の充電器設置プランが公開

フォルクスワーゲングループアメリカが主導で作成していたカリフォルニア州向け電気自動車用充電器の設置プランが3/24に公開されました。公式資料はCARB(カリフォルニア州大気資源局)のサイトからダウンロードできます。当ブログでは充電器関連のところだけ抜粋して資料を日本語訳してみました。

カリフォルニア州の充電器設置プランが公開

日本語の資料(翻訳の責任は私にあります)はこちら。資料でZEVという言葉が出てきますが、これはZero Emission Vehiclesの略で、電気自動車および水素燃料電池自動車を一般的には指していますが、この文書はフォルクスワーゲン社が作成していますので、完全に電気自動車のみにフォーカスして書かれています。

この計画はElectrify Americaと名付けられ、フォルクスワーゲングループと米国EPA(環境保護庁)・CARBの合意に基づいて、例のディーゼル問題に関連して実施されるもので、総額は$2B(約2000億円、以下資料内でも大まかに1USD=100JPYで表記します)に及ぶ投資になります。第一フェーズは全体の4分の1である500億円、そのうち200億円がカリフォルニアに投資され、CARBがこの予算の承認を行う立場となっています。

詳しくは日本語化した資料のほうを見ていただくとして、いくつか主要なポイントを挙げておきます。

  • インフラに60%、教育と体験に10%を投資。CARBは電気自動車の普及のために教育・体験が必要であることを認識しているようです。
  • 充電時間で充電器の出力を規定しています。中くらいの滞在時間のところは50kW。短時間の滞在時間のところは150kWおよび320kW。50kW未満の急速充電器は計画されていません。普通充電器の出力も日本(3kW)の二倍以上の7.2kWを想定。
  • 米国ではリサイクルするものはリサイクルセンターなどの収集場所に自ら持ち込むのが一般的なのですが、このような大電力を必要とする施設では、滞在時間はそこまで長くないにも関わらず、150kWを想定しています。
  • 高速道路以外のスポットは計350か所以上。集合住宅や従業員用駐車場なども設置の対象になっています。
  • インフラ投資のうち運用整備費用を除くと、高速道路への投資は62%の40億円で、50か所以上への設置を計画。1か所に5基の150kW-320kW急速充電器を設置する予定です。
  • インフラ投資のうち運用整備費用に15億円を割り当て。これは非常に大きなポイントで、日本の補助金制度とは大きく異なります。

いかがでしょうか。総額としては200億円は日本が使った1000億円の5分の1の金額に過ぎませんが、カリフォルニア州の面積と日本の国土面積が大まかに同じくらいであることを想定すると、ずいぶんと実用的で、transformationalであるということが言えます。transformationalは翻訳版の資料では「大きな変化を起こす」と訳しましたが、それによって長距離走行可能な電気自動車が実用ベースに入るための投資であるとCARBは位置づけているのです。

この記事のコメント(新着順)5件

  1. EV(電気自動車)の 普及に対しては
    効率的な投資だと思います。
    問題点としては 電気の発電をどうするかですね。
    現在の日本の様な 火力発電(化石燃料)
    破棄物の処理方法が確立して居ない
    原子力発電
    温暖化やエネルギー対策としては
    地熱発電 波力発電など 常時発電出来る
    発電所の拡大と 太陽光発電や風力発電等
    環境破壊しづらい 発電所の拡充が必要だと思いますし そこに先に投資では無いでしょうか?

    1. スージーパパ様、いつもお読みいただきありがとうございます。米国の事情についてはあまり詳しくありませんが、ルーフトップソーラーがかなりの勢いで売れていますし、Net Meteringといって発電した分を買電した分から全額引き算するというサービスも一般的になりつつあります。もちろん日本では差額を付けて買い取るFITがありますが、ユーザーの意識の差がそこにあります。米国ではお得だからソーラーつけてるわけじゃないんだと思います(実際全然得じゃないから)。また発電電力の不均衡をバランスするための大規模バッテリーによる蓄電設備も今年に入ってかなり増設されています。日本の電力事情は安定しているだけで、かなり遅れていると言わざるを得ないかも知れません。

    2. いつも興味深い記事をありがとうございます。
      ・カリフォルニア州は現在既に、電力の27%が再生可能エネルギー(風力、太陽光、地熱、バイオマス等)で供給されています。今後さらに増やす計画で、2030年に33%、2050年に50%の目標が設定されています。
      http://www.energy.ca.gov/renewables/tracking_progress/documents/renewable.pdf
      ・下記記事によれば、カリフォルニアで家庭の屋根に太陽光発電設備を載せると、一般的には金銭的にも元が取れることが期待できるようです。(環境意識だけでは、なかなか普及しませんよ。)
      https://cleantechnica.com/2016/03/31/rooftop-solar-cost-california/
      ご参考まで。

    3. Sakurai様、情報ありがとうございます!カリフォルニアでは電気料金が日本とほぼ同じかより高いため、8年で元が取れるのでしょうか?それはなかなか魅力的ですね。まあ日本より天気もいいしな。。そういえば、カリフォルニア州では今月、とうとう瞬間の電力供給でソーラーが全体の50%を超えた、と報道されていましたね。

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この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

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