米GMが電気自動車のシボレー ボルト(BOLT)を発表

2016年1月6日、CESで米ゼネラル・モーターズ(GM)はシボレーBOLT EVを正式に発表しました。記事の上部に今回の発表で判明した新情報を箇条書きでお伝えします。

米GMが電気自動車のシボレー ボルト(BOLT)を発表

2016/9/13追記:GMがBOLTのEPA航続距離は238マイルであることを発表しました。これは100km/hで走行して実際に380km走行できることを意味します。ではBOLTがもし日本で販売されたらどのくらいのカタログ航続距離となるのでしょうか。リーフ30kWhのEPA航続距離は171kmでJC08航続距離は280kmです。EPA/JC08がリーフと同じ比率になると仮定して外挿すると、380:x=171:280ですから、


BOLTのJC08予想航続距離:622km

もちろんテスラはこれを超えているわけですが、日本の自動車メーカーはJC08基準で500kmを目指していて大丈夫なのでしょうか。※追記ここまで
英語の公式ページはこちらです。

  • シボレーBOLTは2016年中には生産を開始し、2016年中に納車を開始する。
  • コンセプトカーの発表からスペックは大きく変わらず、航続距離はEPA 200マイル(320km)。これは日本のJC08では500kmくらいと想定。
  • 価格は補助金などを引く前で3万8千ドル(約456万円)で、補助金を引くと米国では3万ドル(約360万円)前後。ちなみに米国での平均新車価格は33,560ドル(約403万円)。
  • バッテリーの容量は発表なし。80%まで60分で充電できるとのこと。普通充電40Aの回路(=充電電流32A)@240Vで9時間で満充電。推測:70kWhくらい?少なくとも60kWhよりは多そう。仮に実効容量が90%として70×90%=63kWh。80%まで60分なら63×80%=50.4kWなので、急速充電はコンボの50kWを想定している可能性。
  • 0-60mph(時速約96kmくらいまでの加速)は7秒弱。
  • 5名乗車ハッチバック。テスラと同様スケートボード型シャーシを採用で1モーター前輪駆動。
  • タッチスクリーンは10.2インチ。スマホ用のワイヤレス充電と、OnStar 4G LTEによるWiFiホットスポット機能を備える。Android AutoとApple CarPlayに標準対応。ルームミラーはGentexなので、リアカメラとミラーを切り替え可能。
  • スマホとはBluetooth LEで通信。乗る前に、車の設定を自動的にカスタマイズ。おそらくカーシェアリング向けにも必要な機能。
  • BOLTはコンセプトカーから生産準備ができるまで、たった12か月しかかからなかった。
  • ディーラーモデル(販売店を通じて販売する方式。テスラは販売店を通さず、直営のショールームやネットで販売している)の優位性を確認、継承する。
  • カーシェアリングサービスのLyftに5億ドル(=600億円程度)を出資。将来的には自動運転車による自動タクシーサービスを目指す。車を所有せずに必要な時に短時間だけ借りるということ。

mm_gal_item_c2_1.img_resize.img_stage._0シボレーBOLTの写真はThe Vergeの記事が最も良く撮れていました。

いくつか米国の記事を読んでみて、非常に評価が高く、これは売れそうな印象を受けました。スケートボード型シャーシのEVなので車内は非常に広いはず。長距離EVの先陣をGMが切ったのは素晴らしいことだと思います。2016年3月にはテスラがモデル3を発表するはず。日本のメーカーにも期待したいと思います。
唯一、急速充電についてあまり強調していないのは、充電ネットワークについてまだ発表できる状態にないと判断できると思います。70kWhもバッテリーがあれば実は日本国内でも十分なのですが、BOLTで米国で言うロードトリップ、すなわち長距離(最低でも500km以上くらいからをロードトリップと言うと思います)をするようなところまでは想定していないのかも知れません。

GMのシボレーBOLTの発表に対し、テスラは以下の発言をしています。

Commitments from traditional car makers to build electric vehicles advance Tesla’s mission to accelerate the advent of sustainable transportation. We hope to see all those additional zero-emission vehicles on the road.
(GMのような)トラディショナルな自動車メーカーが電気自動車の生産を確約することは、持続可能な輸送手段を早く到来させるという、テスラの事業目的をさらに進めることになります。テスラはこのような、排気ガスを出さない自動車がもっと増え、街を走ることを願っています。

ここより下は、2015年1月22日に書いた記事です。バッテリー容量の予測は全く当たっていませんでしたね。。

米ゼネラル・モーターズ(GM)社はトヨタ、フォルクスワーゲンに続いて販売台数で世界第3位のメーカーですが、アメリカのデトロイトで開催中のNAIAS(北米国際自動車ショー2015)にて2015年1月12日、シボレーブランドで「BOLT」コンセプトカーを発表しました。アメリカ自動車産業の本拠地であるデトロイトは車作りの聖地ともいわれる地。そこのオートショーで、CEOのメアリー・バーラ氏が電気自動車を発表するというのは、非常に象徴的な出来事と言えると思います。コンセプトカーですから実際に生産されるかどうかは分かりませんが、この発表はゼネラル・モーターズの電気自動車に対するコミットメントを表していると考えても言い過ぎではないのではないでしょうか。

名前が紛らわしいので最初に説明しますと、シボレーブランドにはVOLT(日本語の発音はボルト、いやヴォルトか)というプラグインハイブリッド車(PHEV)があり、2010年末から販売が始まっています。今回のBOLT(ボルト)は純粋な電気自動車(BEV)でガソリンを一切使用しません。GMは同日VOLTの次期フルモデルチェンジを発表しています。BEVとPHEVの違いについてはこちら

GM BOLTコンセプト(リアビュー)BOLTのスペックはあまり明らかになっていませんが、航続距離が320km、価格は37,500ドル(約450万円、補助金を引く前)と発表されています。ウォールストリートジャーナルのBOLTに関する記事から確認すると、バッテリーはLGが提供し、チューリップで有名な米国ミシガン州ホランドの工場で生産するようです。同記事に、VOLT(PHEVのほう)用なら年間6万台分、BOLT用なら年間2万台分の生産能力があるとありますので、BOLTは現行VOLTのバッテリー容量17.1kWhの3倍を搭載、すなわち51.3kWh程度のバッテリーを搭載すると推測できます。すると設計電費は51,300[Wh] / 320[km] = 約160Wh/kmとなり、妥当と思われます。

注、米国における電気自動車の補助金は$7,500ですので、補助金を引くと3万ドルすなわち約360万円となります。さらに、厳密に言うと米国の補助金制度は日本の補助金とは異なり、その分の税金を納めていないと受けることができません。

GM BOLTコンセプト(充電口)BOLTの充電については、写真をご覧いただくと、これは米国や日本で標準のJ1772コネクタです。51kWhものバッテリーを普通充電のみで充電すると遠出してバッテリーを空にしてしまったときに大変ですから、この部分は量産される際にはJ1772に加えて急速充電コネクタも装備されると思われます。それが日本発世界標準のチャデモ規格になるか、それともGMもプッシュしているCCS規格になるか、注目ですね。
51kWhのバッテリーを空から80%まで30分で急速充電するには、82kW出力の急速充電器が必要です。現在、日本国内では20kW-50kWの急速充電器が設置されていますが、わずか2年後、少なくとも高速道路上には80-90kW級の急速充電器が必要になりそうです。これから急速充電器を設置される事業者の方は、少なくとも2年後を見据えて余裕のある設計をしておいていただけると良いかも知れません。

ゼネラル・モーターズ社のBEVへのコミットメントについては意見が分かれると思いますが、私はGMグローバルの製品の責任者EVPであるMark Reuss氏のインタビューでの発言が気になっています。

“If you are a slave to monthly sales, you will give up your long-term vision of what you think the future will be,” he said. “And we did that [with the EV1]. We had the first electric car. And we didn’t follow it up. Think of where we would be today if we hadn’t done that.

“And I remind people who weren’t in the company or are younger. I say, we are not going to make that mistake again.”

毎月の売り上げだけを追いかけていると、将来どうあるべきかの長期的ビジョンが見えなくなる。GMはEV1でその間違いを犯した。我々は一番最初の電気自動車を開発し、それを成長させなかった。もしEV1を継続的に開発していたら今GMはどうなっていただろう。その時代に会社にいなかった者や若手に告げたい。我々はあの間違いをもう犯さないと。

GM BOLTコンセプト(トップビュー)2017年はBEVにとって面白い年になりそうです。テスラは320km航続可能な「モデル3」を投入予定。日産も400km航続可能な「リーフ」を出すことを示唆しており、そこへ来て今回のゼネラル・モーターズのBOLT。BEVにコミットしているBMWも何らかの次世代BEVを出すことになるのかも知れません。

動画:2016シボレー VOLT/BOLT発表 (Green Car Report)

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					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

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