テスラモデルSで長距離:東京-大阪 第5回 春(ライブブログ)

通算5回目となるモデルSでの東京-大阪往復。気温も上がり暖房が必要なくなった今、充電計画とライブブログをご紹介します。本日は2016年6月8日、移動日は9日です。TeslaLogというツールも使い、テレメトリーデータをご紹介します。

テスラモデルSで長距離:東京-大阪 第5回 春(ライブブログ)

目次

  1. 充電計画
  2. 往路:東京から大阪
  3. 復路:大阪から東京
  4. データ

充電計画

今回の計画です。
20160609_charge_plan今回は新東名の岡崎区間の開通(祝!)のおかげで、新設の岡崎SA下りを使ってみたいと思います。ここはJFE製の50kW急速充電器が2基設置されており、他の方とのバッティングのリスクも少ないはず。東京から285kmとちょっと離れていますので、途中トイレ休憩を清水PAで取ることにし、140kmずつ走行することにします。
今回は平均速度は前回と同様の90km/h、余裕はあまり飛ばさないようにして0%とします。つまり、モデルSが表示する標準値以下の電費で走行することを予定するわけです。慣れるまでは、夏でも10%くらい余裕は見たほうがよいでしょう。

今回利用する岡崎SA設置のJFE急速充電器は、ちょっと曲者です。普通50kWの充電器は電力会社から6,600Vの高圧で受電し、その電力(約55kW)をそのまま整流(交流から直流に変換)して車に充電するのですが、この機種は200Vの低圧受電が可能な機種。低圧受電の場合、電力会社からは49kWしか引き出すことができないため、整流時のロスを考えると50kW充電は不可能です。ではどうやって低圧受電で50kWを実現しているかというと、急速充電器内部に12kWhの蓄電池を持っており、蓄電池のサポートを受けることにより電力会社からは28kW、残りを電池から供給して、50kWを実現しているのです。
あれ?でもテスラモデルSを30分充電する場合、充電器内蔵蓄電池は50-28=22kWの出力をアシストする必要があります。30分=0.5時間ですから22×0.5=11kWhの電力量が必要ですね。そう、この蓄電池の容量は12kWhしかありませんから、モデルSを30分以上充電すると、30分を過ぎた時点で蓄電池が空になってしまい、入力電力の28kWまでパワーが下がってしまうのです。
そのため、今回は様子を見ながら、隣の充電器に途中で繋ぎ替えることにより、計45分間の充電を行いたいと思います。もし到着時点で空きが2台じゃなかったり、初回の充電中に他の車が来た場合は、30分で切り上げて湾岸長島か御在所でトイレ休憩15分を追加します。いかにテスラのスーパーチャージャーが優れているか、お分かりですね。。
※来年以降、60kWhバッテリーを搭載するリーフやモデル3は、同じ問題に直面します。物量の問題を技術で解決するのは本当に日本の悪いところ。物量が必要な部分にはちゃんと投入すべきだと思います。

往路:東京から大阪

Jpeg0545 残360kmで首都高速池尻入り口から出発。計画より30km多いので余裕?今日は雨なので空気の密度が高く、電費に影響しそうです。
Jpeg0706 3分遅れで休憩場所の清水PAに到着。電費は197Wh/kmと標準値の200をわずかに切りました。箱根を過ぎて雨が止んだので快適です!
JpegLONCAFEで休憩。
0734 残298kmで出発!Jpeg
Jpeg0852 残149kmで岡崎SAに到着!心配していたJFE RAPIDAS充電器はちゃんと50kW(125A)出力が出ています。
Jpeg充電風景。機械がデカいです。
Jpegちょっと朝食にはボリュームがありすぎる?
Jpeg0952 残320kmまで充電完了。出発します。
Jpegと思ったら、、白のテスラと並んでいました。
Jpeg1218 残106kmで現地到着!ここまで515.5kmを走行、消費電力96.6kWh(@30円/kWhで2898円相当)、電費は187Wh/kmと、予定通り標準値を5%以上下回って到着となりました。用事を済ませた後、大阪スーパーチャージャーに向かい、そこでもし夕食時間なら満充電、それ以外なら90%まで充電する予定です。ちなみに今回の行程をガソリン代に直すと、120円/lとして515.5/(2898/120)=21.6km/lとなります。
Point Blur_Jun092016_140821ではTeslaLogテレメトリーデータです。このデータは、モデルSが常時接続の3G回線を通じてテスラのデータセンターに送信しているものを、別のサービスでAPIを使ってダウンロードしてビジュアライズしているものです。まずは往路のサマリーデータ。停車するごとに区間を区切って、また充電をした場合は充電情報も記録されています。
Point Blur_Jun092016_140019次は速度と高度のグラフです。これは出発してから箱根を越え、新東名清水PAまでの区間のものですが、黄色の線で高度がグッと450mくらいまで上がってから下がっています。これが箱根越えです。速度はクルーズコントロールを入れてますのでほぼ定速です。自動運転欲しいなぁ。
Screenshot_2016-06-09-14-23-07最後に充電のストリーミングデータです。これは岡崎SA下りでの二回目の充電29分間のデータ(その前に15分間隣の充電器で充電)です。青が出力kW、赤がSOCすなわち電池の残量%となりますが、出力が最初45kWくらいから、充電が進むに従い電池の電圧が上がりますので少しずつ右肩上がりになり、残75%以降は逆に右肩下がりになっていますね。これはテーパーと呼ばれていて、50kW時SOCが75%-80%以上は、電池を保護するために充電電流を絞る必要があるからです。グラフの下には一分おきの電圧、標準値、SOCが表で出ています。

復路:大阪から東京

復路はまず大阪スーパーチャージャーに寄ります!そこでほぼバッテリーを満充電にしてから出発とします。
Screenshot_2016-06-09-18-42-351830 大阪スーパーチャージャー着。自分は3台目。なんと1Aには岡崎SAで会ったテスラ広報車と思われる車が!2Bには人が乗っていらっしゃり、「始められたばかりですか?」「いえ、もう少しです。」とのことなので、2Aに決定。2Aと2Bは150kWを共用しているので、終わりに近い人と一緒がよいのです。ここで残は82km。休憩します。376V 238Aでおおよそ89.5kW。喫茶店までちょっと歩くうちにあっという間に充電が進みます
Jpeg1929 残352kmに回復。出発します。
Jpeg2131 岡崎SA上りに到着。だいたい40%地点です。残は138km。電池のほうはまだまだ余裕ですが、少し休憩しつつ、軽く夕食とします。ここまでの走行距離は204.3km、平均電費は192Wh/kmでした。消費は順調です。
Jpeg名古屋コーチンの親子丼。
Screenshot_2016-06-09-22-13-47向かって左側で充電していましたが、右側でおかわりしようとするとどうも故障しているらしく、絶縁エラー。そのためおかわりは再度左側。ご覧のように本来は125Aのところ84Aと出力が落ちてしまってます。早々に切り上げます。
2224 残268kmでとうとう充電中断。JFEは使えない、ダメな充電器ですね。。テスラユーザーの方はJFEは避けたほうがよさそうです。出発します。
Jpeg0003 残79kmで駿河湾沼津SAに到着。あと一息です。ちょっとコーヒータイム。
1239 残186km。出発します。
Jpeg0224 自宅に到着!残34km、大阪からの走行距離533km、消費電力量102.2kWh、復路の電費は192Wh/kmでした。復路はスーパーチャージャーで満タンにして、あとはNCSのカードで充電料金を支払いました。このカードの代金は現時点ではテスラ持ちなのでタダなのですが、もし自分で払ったとすると、岡崎と駿河湾沼津の二回で充電代は合計1065円。例によって120円/lでガソリン代に換算すると、533/(1065/120)=リッター60km相当(笑)浜松にスーパーチャージャーができたら文字通り、高速代だけで大阪や京都まで、いや広島くらいまで行けてしまいますね。
Jpeg電池が少なくなると、保護のために黄色の出力制限バーが点線で表示されます。ではおやすみなさい。
Screenshot_2016-06-10-14-29-32復活。復路のTeslaLog見ていきましょう。まずは大阪スーパーチャージャーでの充電です。緑線が出力kW、黄線が電流Aで、最初数分でほぼフルパワーの115kW、300A強まで流れ、すぐそこからテーパーに入っています。スーパーチャージャーの場合は最大出力が出るのは本当に最初だけで、それ以降はどんどんゆっくりになっていきます。それでも50kWのチャデモ急速充電器よりはずっと速いのですが。
Screenshot_2016-06-10-14-32-31復路の地図表示です。地図下にあるスライダーを動かすと、地図上で自車位置と速度、SOC、高度、時刻、車の向きなどのデータが見られます。
Point Blur_Jun102016_143626最後に大阪→岡崎SA区間のTrip Statsを見てみます。往路で紹介したTrip Statsは箱根越え区間でしたが、往路と比べて同様に新名神高速道路の標高が390mくらいまでいっているほか、赤の速度グラフがギザギザで全然違うことに気づかれると思います。これは夜間は低速で走行するトラックの量が全車線で多く、一定速度で走行できていないことをあらわしています。これだけ速度変動があると化石燃料車では燃費が悪化してしまいますが、これでもトータル192Wh/kmなわけですから、いかに電気自動車の減速時エネルギー回収効率が高いか感じていただけると思います。

データ

充電計画のExcelデータはこちらからダウンロードできます。Excelでは、充電休憩の場所を変更したり、余裕を変更したり、平均速度を変更したりして、計画を立てることができます。
前回までのExcelとは少し異なる部分がありますので記載しておきます。まず、このバージョンから「kp」すなわちキロポスト数値は、実際の高速道路のkpを使用しています。大阪SC(スーパーチャージャー)は東名東京ICから484kmの距離にあるということです。また、出発地点で-6.4kmという数字が見えると思いますが、出発地から東名東京ICまでの距離をおおよそ6.4kmとおいて、それも距離の計算に入るようにしています。

さて総括です。今回の往復では暖房がまったく必要ない気温だったのが幸いして、総走行距離1048.5km、総消費電力198.8kWh、総電費190Wh/kmとなりました。これで、時速100km巡航で1000km前後の走行をしても、モデルS 85kWhの実航続距離は380km程度走行できることがお分かりいただけると思います。また時速100km巡航時の電費は190Wh/kmなので、電気代を30円/kWh、ガソリン代を120円/lとした場合、ガソリン車換算でリッター21km程度の燃費となりますね。なおモデルSの速度計はGPSで計測した速度とほとんど一致しています。

往路時刻運転時間充電時間標準値
km
走行距離
km
平均電費
Wh/km
東京出発5:45360
清水PA到着7:061:21205147.4197
清水PA出発7:340:28298
岡崎SA到着8:521:18149150187
岡崎SA出発9:521:00320
現地到着12:182:26106218.1181
合計時間5:051:28計6:33
合計走行距離515.5km
平均速度101.4km/h
(休憩除く)
78.7km/h
(休憩込み)
復路
大阪出発19:29352
岡崎SA到着21:312:02138204.3192
岡崎SA出発22:240:53268
駿河湾沼津SA到着0:031:3979180.3192
駿河湾沼津SA出発0:390:36186
足柄SA到着16:390:488186.1(不明)
足柄SA出発17:300:51216
東京到着2:241:4534148.4190
合計時間5:261:29計6:55
合計走行距離533km
平均速度98.1km/h
(休憩除く)
77.1km/h
(休憩込み)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. 兵庫県民のよこよこです。

    新東名・岡崎SAのJFE RAPIDAS充電器は書かれているように、蓄電池から22kWアシストがあるおかげで交流電力(電力会社からの電力)28kW以下で済むシステムです。

    JFEに問い合わせたところモデルSなどの大容量電池車両だと30分充電すると蓄電池が空っぽになり、蓄電池が空っぽになると満充電になるまでに20分程度掛かるそうです。
    蓄電池が満充電になる前にEVへの充電を始めると50kW出力にならないとのこと。
    事実EVOCカンファレンス2016往復でそれぞれ上下線で利用した時はどちらも105A止まりでした。

    今回の通算5回目となるモデルSでの東京-大阪往復では往復とも岡崎SAで充電され、どちらも約1時間利用されていますね。
    と言うことは岡崎SAでの充電は往復とも蓄電池に貯めた電力を2基とも全て食いつぶして立ち去った形です。

    ほぼ毎年EVOCカンファレンスで話題に上る充電マナーを考えると、いくら2基設置されていても蓄電池併用型充電設備でモデルSなど大容量電池搭載車でおかわりするのはマナー違反だと思います。
    もしおかわりしたいのならば蓄電池を併用していない交流電力(電力会社からの電力)だけの急速充電設備で充電し、少なくともおかわり状態の時は車内もしくはクルマのそばで待機して充電希望者(車)が現れた時はすぐに譲るのがマナーだと思います。

    特に現状モデルSユーザーのところにはChademo充電料金の請求は来ないですし、電気自動車のための急速充電器・充電スポット検索アプリを提供する側なんですから。

    1. よこよこ様、ご意見ありがとうございます!

      >2基設置されていても蓄電池併用型充電設備でモデルSなど大容量電池搭載車でおかわりするのはマナー違反

      一応、別の車が来ないかどうかは見ていますし、携帯電話番号も記載しています。
      ちなみにJFEが満充電にならなくても、例えば10分空けば、その時点では半分電気が蓄電池にたまります。そうなると6kWhあることになります。私の次の車の30分間のフル充電に提供できる電力量は28 / 2 + 6 = 20kWhとなりますし、しかも6kWhは先のほうに急いで放出されることになりますので、充電の後半では蓄電池にまた充電が行われることとなります。EVと同じ仕組みですので、私がケーブル外して、乗り込み、車を出して、次の方がすぐ駐車し、ケーブルをつないでカードを認証して充電が開始されるころには、ご迷惑になることはないと思っています。
      おそらくJFEさんも設計時に、電池が空にされた場合にどういう影響が次に出るかはあらかじめ緻密に計算されたうえで、蓄電池の容量や充放電のCを決められていると思います。

      最後に充電マナーについて私見を述べさせていただきます。
      充電マナーは私はできる限り守りたいと考えていますし、協力して守るべきと考えています。ただし、マナーがどうの、と言っている間は、電気自動車の普及は「ない」と思います。気にせず使えるような施設、インフラ、自動車がセットで存在して初めて、電気自動車の普及が促進されると信じています。そのためには、岡崎を始めとする複数台設置や大容量充電器の設置、大容量バッテリー搭載の電気自動車の低価格化、車種の増加が必要になるのだと思います。

  2. 充電計画のExcelシート、傑作ですね!
    とても参考になるし、実用的ですね。
    いつか日本全国を網羅できるといいですね。

    1. 西牧様、ありがとうございます!
      実際帰りは計画見ながら走っているわけじゃないんですが、行きは決まった時間(今回は12:30の約束)に到着する必要がありますので、念のためしっかりと計画を立てています。いつかは九州くらいまでタダで行ってみたいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

執筆した記事