25万7千キロ走っても、テスラのバッテリー劣化は10%以下

オーナーにとっても購入を検討している人にとっても、電気自動車(EV)の走行用バッテリーの劣化は一大関心事です。最近の調査によると、テスラ・モデルSは25万7千キロメートル(16万マイル)走っても容量低下は10%以内であることがわかりました。

テスラに搭載されている電池セル。パナソニック製のパソコン用から発展したEV専用品。

EVに関して、「走行用バッテリーがどれくらい劣化(容量低下)するか(battery degradation)」は、「1回の充電でどれくらいの距離を走れるだろうか(range anxiety)」と並んでとても気になる点です。今回のデータは、2012年6月に販売が開始されたテスラ・モデルSを対象に、オランダとベルギーのテスラ・オーナーたちが世界の350台以上の同車を調べた結果得られたものです。

テスラ・モデルS以降、EVは各社から発売されています。こうしたなか、バッテリー自体とそのマネジメント技術(温度、充放電、セル間バランス調整のきめ細かな管理)はさらなる進化を遂げてきています。また、東芝SCiBのような「サイクル寿命」に強い電池も市場に現れているので、今後のEVではバッテリーが適正に管理されていれば、劣化の懸念はむしろ少なくなるのではないでしょうか。

Fred Lambert氏が編集長を務めるEV関連のニュースサイト “Electrek” では2016年11月1日にもこの話題を記事にしていますが、さらにデータが追加された調査結果が2018年4月14日の記事に発表されています。このデータ解析に関しては、オランダのアイントホーフェン工科大学のMaarten Steinbuch教授のサイトにも詳しく書かれています。

テスラのバッテリー容量と走行距離の関係を示すグラフ。オランダのアイントホーフェン工科大学のMaarten Steinbuch教授のブログから。それらによると、大半のテスラのバッテリーは新車から最初の8万キロ(5万マイル)でおよそ5%劣化しますが、その後さらに8万キロ(5万マイル)を走って16万キロ(10万マイル)に達する部分では、それ以前の部分のように5%も減るようなことはありません。データをプロットしたグラフがこのまま推移すると仮定すると、平均的なバッテリーの容量が90%に近づくのは、走行が30万キロ(18万6千マイル)を越えた後ということになります。

データの中には、他の多くが分布する位置から大きく離れた、いわゆる「外れ値(outlier)」が少しあります。理由として、「直流の急速充電(テスラ・スーパーチャージャーなど)を頻繁に使ってきたか」や、「日常の充電の頻度はどうだったか」といった調査が行われましたが、いずれも「有意差を示すような明確な影響(significant impact)」だとは言えませんでした。

こうしたことから、世界的に著名なバッテリー研究者であり、テスラとのバッテリーの共同研究ではリーダーを務める、カナダ・ダルハウジー大学のJeff Dahn教授は、テスラには日常的には70%程度までの充電を奨めています。こうすれば、劣化をなるべく防げる(寿命を最大限延ばせる)と言うことです。

そう言えば、テスラのモデルSとXの保証には「8年間または距離無制限の保証」はありますが、何キロ走って、または何年経ってどれくらいまでバッテリーが劣化し(何%まで容量が減っ)たら「バッテリーの無償交換の対象にします」といった具体的な記述はありません。販売から何年までに、たとえば納車時容量の80%を割り込んだら無償交換する、と言うような文言はありません。「テスラのバッテリーは他のリチウム電池と同様に、経年と使用によって次第に劣化するものであり … その寿命と容量を最大限に保つためには、オーナー用文書(ユーザーマニュアル)にある重要情報をよく読んでおいてください」と書かれているだけです。

生産ライン上のテスラ搭載電池セル。パナソニック製のパソコン用から発展したEV専用品。
生産ライン上のテスラ搭載電池セル。パナソニック製のパソコン用から発展したEV専用品。

これに対して、新しいモデル3では、「70%容量を維持する」新しい保証をテスラは表明しています。モデル3ではバッテリー・セルが新しいものに変わり、バッテリー・パックの構造も変わっているからでしょう。もっとも、今回のモデルSのデータを念頭に考えれば、モデル3でも70%までの劣化はほとんど心配する必要は無いでしょう。

当記事の執筆中に中国では、世界最大級の自動車展示会である「北京モーターショー」が開かれています。VWやBMW、日産などが中国の巨大市場向けに多くのEVを発表しています。中国向けの独自EVも目立ちます。こうしたなか、各社ともバッテリー自体のさらなる改良に力を入れていることが看て取れます。また、バッテリーの温度、充放電状態、セル間バランス調整を高度に管理する「バッテリー・マネジメント技術」も磨いてきているようです。初期の市販EVでは、この温度管理に苦労して、劣化を効果的に食い止められなかったのではと指摘されているものもあります。

これからのEVでは、バッテリー自体の進化とマネジメント技術革新が両輪となって、バッテリーの劣化はもはや大きな懸念ではなくなることでしょう。(文・箱守知己)

Electrek

画像は Tesla Europe の “Tesla 2170 cell production with Panasonic partnership – Gigafactory inside teaser” より引用しました。

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「25万7千キロ走っても、テスラのバッテリー劣化は10%以下」への8件のフィードバック

  1. いつも、示唆に富むレポート、参考になります。モデルS85、納車されて3年と6か月、普段の使い方は、ほぼ毎回満充電(その代り、満充電した時は、何日も放置しないで、すぐに消費する)、チャデモ8割、スーチャ2割の充電状況で、納車時508km、現在491kmです。デイリーユースの上限設定は、あまり気にしなくても良いのかな?と思っています。何かの参考になれば嬉しいです。

    1. テスラ愛様、実データでのコメントありがとうございます!
      劣化3.3%ですね。まだ車齢の浅い車が多いのは事実ですが、皆さん3%台に収まっている方が多いように思います。
      90/100kWhのバッテリーから、シリコンがアノードに配合されており、それによって僅かに劣化が多くなっているような印象があります。

  2. 私は2017年5月納車のModel X 90Dですが、1年で26千キロ走り、403kmが383km、約5%落ちました… というか、半年で5%落ちて、その後キープという感じです。
    元々借りている月極め駐車場に、ある日気付いたらスーパーチャージャーが設置されていて、それならテスラ乗ってみるか… というスーパーチャージャーありきのテスラライフなので、スーパーチャージャー率ほぼ100%が影響してるのでしょうか。
    どこまで減るのか、ちょっと興味深いので、このままスーパーチャージャーだけを使ってみようかと思います。。。笑

    1. マサケン様、データありがとうございます!こういうデータは貴重ですね。私もできる限り提供していきたいと思います。
      90Dや100Dに搭載されている新しい型のバッテリーは、最初にどうも早く落ちて、その後はキープするタイプのようです。私のX P100Dもすでに2.1%くらい劣化しています。まあ全然問題はないのですが。
      月極駐車場にスーパーチャージャー、、何と羨ましいのでしょうか。それこそ、旅行に行く日の朝、繋いでおけば、荷物を積み終わるころには満充電、という生活になりますね。

  3. EVはこれから主流になると思えるのはその性能が発揮出来てる間であり、全ライフサイクルの期間を含めて完全代替できるかは疑問です。テスラに関してはバッテリーの信頼性、日本におけるサービス体制がネックで長く乗り続けられないと思います。
    私のモデルSは頻繁に乗って充電もスーパーチャージャー、ウォールコネクター両方でこまめに行ってましたが、納車後9カ月目に駐車後4時間でバッテリーエラーの為不動となり、バッテリー全交換に4カ月かかりました。電欠ではありません。テスラの代車が手配出来たのは1カ月後で、それまではレンタカー(もちろんガソリン車) です。ちなみに代車のテスラも使用期間中に一度故障が発生しております。ガソリン車では考えられない信頼性の低さです。
    EVは現状ではガソリン車のインフラに支えられたキワモノに過ぎず、新車が突然不動になる信頼性の低さは環境の厳しい地域では死活問題ではないでしょうか。
    ヘルシンキ空港でモデルX展示を見ましたが、より暖かいはずの北海道でスーパーチャージャーネットワークが整備されないのは低温での信頼性に疑問があるのではと考えています。

    1. Bgr98様、電気自動車で動かなくなった経験をお持ちとのこと、それは大変だったと思います。バッテリーの信頼性について、確かにそういう個体があるという話は聞いたことがあります。サービス部門として、いつでも故障したら交換できるように、スペアのバッテリーを常時在庫することだってできるのだと思いますから、まだそこまで整備体制が完全ではないのだと考えました。工業製品ですから100%確実ということは絶対にありませんし、今まで私は個人的にもガソリン車でその場で動かなくなる故障は何度か経験しており、電気自動車だからそういう故障がある、というようには実感としては感じません。

      寒さについて、実はヘルシンキのあるフィンランドはそこまで寒くありません。実際にはカナダの一部地域のほうが圧倒的に気温が低いと思います。そういう国でもスーパーチャージャー網は運用されていますし、多くのテスラを含む電気自動車が走っています。
      http://ev-sales.blogspot.com/2018/10/canada-september-2018.html
      YTD(今年1-9月のトータル販売台数での比較)でトップ3はこうなっていますね。
      日産リーフ       4481台 13%
      三菱アウトランダーPHEV 4402台 13%
      テスラモデル3      4325台 13%
      9月単独での販売台数は、テスラモデル3が他の2車種の2倍以上の台数となっていますので、1-10月ではおそらくテスラモデル3が充電できる自動車の中ではトップになると推測されています。

  4. テスラは走行用バッテリーを補修部品として日本国内、あるいは中国を含めたアジア地域に在庫しておらず、入庫後に発注してカリフォルニアから船便で送るとの事で、不動になってから部品入庫待ちが長いのが問題です。中国にファクトリーが稼働すればそこにバッテリー在庫も保有するでしょうが。旧車や生産量の少ない希少な車なら仕方ないですが、現在生産中の量販モデル車両で製品の不具合による不動が走行可能になるまで4ヶ月待ちは内燃機関車ではあり得ないと思います。
    また、今回はバッテリーコントローラの不良によりバッテリーが破壊されたようで、基盤不良に対して高価な部品であるバッテリーを保護するフェイルセーフの設計が不十分と感じます。
    ちなみにオートパイロットはV2.5ですので、現行のハードウェアです。

    1. Bgr98様、
      >テスラは走行用バッテリーを補修部品として日本国内、あるいは中国を含めたアジア地域に在庫しておらず
      そのようですね。米国では在庫しているサービスセンターもあるようですから、おそらくもう少し生産が安定すれば在庫するようになるのではないでしょうか?

      >フェイルセーフの設計が不十分
      開発担当者ではないので断言はできませんが、ソフトウェアエンジニアリングの立場から言うと、基盤が故障するような状況下においては避けることは難しい事象かなと思います。

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