じつはPHEVの世界的ベンチマーク 完熟フェイズの三菱アウトランダーPHEVに試乗

外出先で急速充電が可能で、おもに駆動力をモーターに拠る分、PHEVは内燃機関との協調が前提であるハイブリッドの延長というより、むしろ限りなくBEVに近い存在といえる。モデルサイクルとして後期フェイズに差しかかった三菱アウトランダーPHEVは、前期フェイズにはなかった、成熟したパフォーマンスとアウトプットを明らかに発揮し始めている。今や世界的にPHEVのベンチマークとなった、その完成度の高さを今一度、試乗を通じて検証してみる。

欧州メーカーが「Electrification)(電化)」という時、それはしばしばベルト駆動のアイドリングストップからハイブリッド(HV)、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)そして純粋なバッテリー電気自動車(BEV)まで、動力源を内燃機関100%から徐々に電気の割合を増やしていくことを意味している。急速充電インフラが早々に普及した日本よりそもそもの国土が広く、クルマの乗られ方・用いられ方として都市間移動がかなりの割合を占める欧州では、とくに大型サルーンやSUVではPHEVが現実な選択肢になりつつある。

初の市販PHEVというタイトルこそ先代ZZW30型のプリウスPHEVに奪われたものの、2012年に登場し2013年より全世界で販売された三菱アウトランダーPHEVが、今年1月に欧州市場で累計販売台数10万台を突破したという。発売当初こそバッテリー問題でリコールの憂き目を見たものの、2015年から2017年まで欧州市場におけるPHEVというカテゴリーで、アウトランダーPHEVは3年連続のベストセラーとなった。これは欧州で三菱のディーラー網がプレゼンスとして決して強くないことを鑑みれば、偉業といっていい実績だ。

2015年のマイナーチェンジ以降も大幅な改良が加えられ、現行モデルは昨年の年次改良にちなんで「17スペック」と呼ばれている。それを継ぐ「19スペック」の登場が夏以降に予告されている。が、いずれトランスミッションのないユニークな動力伝達構造をもち、モーター出力のみで100km/hまで走るEVモード、シリーズ式、パラレル式いずれのハイブリッド方式でも走れ、外出先で急速充電も可能という点に、アウトランダーPHEVの完成度の高さがある。今回試乗のために借り出したのは、ビルシュタイン製ダンパーとスポーティかつラグジュアリ―な内装トリムを奢られた「Sエディション」だ。

4695mmという全長は、サイズ感としてはBMW X3など欧州Dセグメント相当だが、1800mmという車幅はきわめてスリム。2670mmというホイールベースも、ドイツ車の同格のSUVなら軒並み2800mmオーバーであることを思えば短めで、見た目ではあまりそう感じさせないが、オーバーハングの長いプロポーションではある。

マイナーチェンジ以降に採用された、フロントのコンビネーションランプからバンパーとスポイラーにまで至るクロームパーツが、初期のマスクに比べアクセントとして強烈であることは確かだが、PHEVという既存カテゴリーとは異なる存在である以上、こうしたパンチの効いたディティールは当初から採り入れるべきだったかもしれない。

運転席に腰を落ち着けてみると、中央だけがマルチインフォメーションディスプレイとして液晶化された2連のアナログ式インストルメンタルパネル、そして相当数のボタンスイッチ類が目に飛び込んで来る。

可能な限り大型液晶タッチスクリーンの中に入れ込んで、ボタン類を減らすことが一種のトレンドだった昨今、煩雑に映る向きもあるだろう。しかしひとつの機能に指一本で必ずアクセスできる利点はある。慣れるまで少し時間はかかるし、エルゴノミーやロジックをもっと統一して分かりやすく配置して欲しいところではある。とはいえ17スペック以降に、「EVプライオリティモード」やブレーキのオートホールド機能、車線逸脱警報システムやカメラ&レーザーによる歩行者検知機能、バック時の車両検知警報システムなどなど、最新のADAS(自動運転補助システム)を追加したがゆえ、ボタン類を後付けしたという事情もあるだろう。

だがアウトランダーPHEVは何より、センターコンソール背面とトランクルーム右側に100V AC電源を2口(合計1500W)を備えている。アウトドアでの電源確保はもちろん、エンジン発電と駆動用バッテリーによって家庭に電気を供給するV2H(ヴィークル・トゥ・ホーム)にも対応できる。

2Lの4気筒エンジンを搭載するとはいえ、あくまでもEV的な機能やバッテリーによる駆動にこだわり重視する、そこにアウトランダーPHEVの真骨頂がある。このクルマでは、内燃機関とバッテリー&モーターの比率はイーブンどころか、後者の方が優勢とすら思わせるのだ。

発進して早々に、駐車場のスロープを登る程度でも電気モーターによる強大なトルクは感じられる。路上に出てからの加速でも、漕ぎ出しの軽さというか、スムーズさと力強さが強烈で、1.9tのボディを静かに、じつに軽快に押し出す。普通にDレンジを選んで発進すれば制御ロジックはパラレル走行モードだが、いわゆるプリウスに代表される通常のハイブリッドより、電気によってモーターで走ろうとする傾向が強い。これは高速道路の合流などでも同じくで、加速の途中でエンジン駆動が介入することを望まないユーザーが多かったため、年次改良の際にバッテリー優先のロジックを強めたのだとか。結果的に、この制御ロジックゆえに静粛性は高まり、エンジンや動力源の切り換えによる振動は少なくなり、走り味に高級感が増したといえる。

急加速すればさすがにエンジンが駆動に介入してくるが、その切り換えはきわめて滑らかだ。トルコンやCVTといった既存のトランスミッションを備えず、エンジンとジェネレーターが直結され、エンジン側の駆動力はクラッチを介して通常の4速か5速程度の減速比で、フロントのデフに伝えられれる。だがそれは急加速時やバッテリーが少ない時の手段で、デフには電気モーターも直結されており、可能な限り電気モーターが駆動力を担うことは構造的にもうかがえる。このクラッチの制御によって、動力源の切り換わり時の振動や衝撃を抑えているのだ。

とはいえ制御ロジックの変更を、ドライバーの判断に合わせてボタンひとつでできるのが、アウトランダーPHEVの「らしさ」でもある。シフトレバーの手前左右には、エンジンを発電だけに振り分けるバッテリーチャージモードスイッチ、あるいは駆動力によるバッテリー消費をなるべく抑えるバッテリーセーブスイッチが配されている。シフトのセレクタレバーをBに入れれば、ステアリング裏のパドルかフロアシフト操作で、回生レベルをB0からB5まで、6段階で調整できる。B5でストップ&ゴーを繰り返せば当然、バッテリーの減りは遅くなる。逆に、コースティング重視で回生ブレーキゼロのB0を高速道路の巡行時などには選べる。かくしてドライバーの裁量に任せられる部分が大きいというか、走行モードを小刻みに変えられる点も強みではある。

ボタンひとつであらゆる機能が呼び出せる点は、4WD機能についても同じく。今回は試す機会はなかったが、悪路や氷雪路などにおける走破性重視モードで前後左右4輪の駆動力を固めるロックするにも、センターコンソール上のボタンひと押しで済む。通常走行時はS-AWCという、前後左右のブレーキをつまむ方式ながら、旋回に入る際のヨー発生を助けるヴェクタリング機能が働いている。加えて低重心設計のおかげか、ある程度タイトなコーナーでもステアリング操作に対して回頭性が鈍くなることはなかった。

確かにビルシュタインのダンパーは低速域でややゴツゴツすることがあるが、一定以上の速度にのせてしまえば頼もしい感触。ダンパーの減衰力は十分なので、むしろ速度が上がるにつれギャップや段差を越える度、サスペンション全体の剛性感が高ければ、もっと快適だろう。

もうひとつアウトランダーPHEVの数少ない欠点だと思わせるのは、インテリアの質だ。

ドアパネルをはじめハードプラスチックの面積が多い。4WDはタフさだけがウリという時代でもないので、せめて身体の触れる部分だけでも柔らかい素材で覆って欲しいところではある。いわばPHEVとしてパワートレインの完成度は申し分ないが、500万円近いクルマとしては静的質感やヴィークル・ダイナミクスに洗練されるべきところがある。

EPA基準での燃費は1ガロンあたり74マイル、これはリッター当たりに換算すれば31.4km/ℓだが、約300㎞を走って最後に10ℓ強を給油した感覚にほぼ合致する。

ちなみに今回は急速充電についても試したが、街の充電ステーションで60Aで充電ができることが見てとれた。約30%のバッテリー残量から30分の急速充電で89%まで回復したので、約25分で80%というカタログ数値通りといえるだろう。

もっとも実燃費が悪化する走り方は、12kWh容量のリチウムイオンバッテリーが空の状態でシリーズ走行モードで走ることだ。だが現実には、回生ブレーキや急速充電ステーションの助けを借りれば、バッテリーを残量ゼロにすることはむしろ難しい。

やはり災害時のライフラインとして、二次電池であるだけでなく化石燃料からも電気を供給できるという、「2系統を持っている」事実は、パリ・ダカールをはじめ過酷な環境で存在感を示してきたミツビシの4WDの伝統に、じつはいちばん忠実な性能かもしれない。

この記事を読まれた方はこちらの記事も読まれています


「じつはPHEVの世界的ベンチマーク 完熟フェイズの三菱アウトランダーPHEVに試乗」への1件のフィードバック

  1. 2015年7月登録の後期型を6万㎞乗りました。
    当時選択肢として1.ベンツC220Dワゴン 2.アテンザADWディーセルワゴン 3レボーグでした。ベンツは世間体からボツ。アテンザ決定寸前に浮気。
    重視したのはADAS機能。当時停止まで完全自動ブレーキは数少なく、レーダークルコンの性能。全天候性。高速道路での長距離クルージング性。プラス燃費。既にリーフを所有しており、EV性能は魅力的でした。
    ご指摘の通りの内容ですが、走行安定性は素晴らしいと思います。アンダーがでにくい。少し燃費は悪くなりますが、ICまでの一般道はEV、高速道路ではチャージモードで80%くらいまで充電後セーブモード。ICを降りて目的地までEVと言う使い方をします。急速充電はしたことが無い。日産充電会員はお得です。リーフは30分で100㎞は走行できるが、三菱は従量制で30分掛けても40㎞くらいではバカバカしい。
    ガソリン価格が150円くらいならチャージモードがお値打ち。
    自宅充電しかしません。夜間料金は12円/㎾hですし。
    次期フルモデル情報をお願いしたい。噂では、100㎞以上のEV性能らしい。これに日産のプロパイロット3相当のADASが装備されることを期待します。
    充電会員の日産に統一してくれないかなあと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です