太陽光とEV&蓄電池を活用して電力自給の住宅街〜さいたま市で『エネプラザ』運用開始【追記版】

さいたま市が推進するスマートホーム・コミュニティ第3期の住宅街で、太陽光発電と大型蓄電池、電気自動車のカーシェアを組み合わせて再生可能エネルギーによる電力の自給自足を目指すシステムである『エネプラザ』の運用が始まりました。51戸の住宅はすでに完売という人気です。

【追記しました!(2021年12月29日)】

記事初出時、売電できない理由などについて質問したところ、Looopの荒井綾希子さんより回答をいただきました。一部記事中に補足を加えるとともに、質問と回答の内容を追記しました。

51戸の住宅街の電力を太陽光発電中心に自給自足

再生可能エネルギーの普及拡大を進めるために、地域ごとの「エネルギー地産地消」は大切なポイントです。その理想を具現化した先進的な住宅街が、埼玉県さいたま市に誕生しました。

2021年12月17日、埼玉スタジアムがある浦和美園駅にほど近い住宅街で、エネルギーマネジメントシステム『エネプラザ』の説明会が開催されたので参加してきました。エネプラザは、再生可能エネルギー電力の普及拡大と「エネルギーフリー社会の実現」を目指す『Looop』が構築したシステムで、住宅街丸ごとという規模で実際に導入&運用開始されるのは初めてのケースです。

街区全体で51戸の住宅の屋根にはそれぞれ出力約4.5kWの太陽光発電パネルを設置。発電した電力は、Looopが買い上げた一区画に設けられた「チャージエリア」に集約されます。チャージエリアには125kWhの大容量蓄電池と、日産リーフ(40kWh)2台が配置されていて、屋根で発電された電気はチャージエリアの大容量バッテリーに蓄電し、街区全体の電力自給自足を進める仕組みになっています。

エネプラザのイメージ

エネプラザのプロジェクトリーダーであるLooopのエネマネ企画課長、荒井綾希子さんの説明によると、太陽光発電の電力を自家消費する場合の一般的な自給率は30%程度、蓄電池を導入しても50%程度ですが、エネプラザでは大容量蓄電池の効果などによって年間を通じておよそ60%程度。また、春や秋など太陽光発電の効率がいい季節には、ほぼ100%の電力を自給自足できるということです。

【追記】自給率の向上について

「大容量蓄電池の効果というより、51軒で再エネを融通していること及び需要側で再エネを使うような仕組みを導入していることで、自給率を向上させています。1軒毎に個別で蓄電池を設置した場合に比べ、大型1台に集約したことで、むしろ合計の容量は小さくできているが、自給率は上げられている認識です」とのこと。電池が大きければいいということではない、ですね。

住宅街の電力は、系統電力から受電する場合でもLooopでんきが再エネ100%電力を提供するので、この街区の住宅はすべて再エネ100%電力を達成することになります。

51戸の住宅街の電力を太陽光発電中心に自給自足

今回、エネプラザが導入された住宅街は、さいたま市が官民連携のプロジェクトとして進めている「スマートホーム・コミュニティ」の第3期区画です。約320haにおよぶ大規模な都市開発計画の中核として構想されたプロジェクトで、エネルギーセキュリティや住宅の高気密高断熱化の徹底などのレジリエンス性向上。各戸が共有する土地を提供して街路やコミュティスペースを設け、電線地中化を低コストで実現するなど、次世代の住みやすさを具現した住宅街を目指して開発されてきました。

第1期(33戸)は2017年に完成。2019年に完成した第2期の街区(45戸)では、周辺のショッピングセンターなどと「デジタルグリッドプラットフォーム」を通じて再エネ電力を融通する仕組みを備えた住宅街として完売しています。そして、今回の第3期では、高度なエネルギー自給自足を目指したエネプラザによって、災害時など系統電力がストップしても、停電しない住宅街にグレードアップして完成したということです。

『浦和美園 E-フォレスト』と名付けられた住宅街は大好評。第3期の住宅は「6000万円程度」と、周辺の相場からすると安くはない(と思う)価格だったものの大人気で、すでに完売しています。

2台のリーフは週末のシェアカーとして活用も

チャージエリアに停まっている2台の日産リーフ。ウィークデイはGS YUASAのV2X機器を通じて蓄電用バッテリーとなります。太陽光による電力自給を目指す時、大容量バッテリーがあれば自給率は高まりますが、電池が高くてコストが合わない。今回のエネプラザ街区には125kWhの大容量バッテリーを導入していますが、さらに2台のリーフによって80kWhを蓄電することが可能になって、コストを抑えつつ街区の電力自給率を高めている、ということです。

2台の新車リーフをただの電池として購入するのはコストダウンと言いがたいところですが、このリーフは週末は街区の住民を中心にカーシェア車両として利用できるようになっています。電気自動車を活用した電力マネージメントと、モビティティの新たなスタイルを一石二鳥で実現しちゃう試み、ということですね。

カーシェアについては、日産が提供している『eシェアモビ』のシステムを利用します。ただし、運用開始は2月頃を予定しているということで公式サイトにまだステーションとして表示はされません。取材時、きちんと詳細を確認できなかったのですが、平日は蓄電池として利用するために、エネプラザのプロジェクトが「月額でシェアカーを借り上げる」というお話しだったので、もしかすると街区の住民のみなさんは週末、無料でこのリーフを使える、のかも知れません。(のちほど、改めて確認しておきますね)

【追記】カーシェアの料金について

「平日は蓄電池として利用し、週末のみシェアカーとして貸し出しますが、時間貸しで有料になります」

また、蓄電池として使う際に制限なく満充電にしていると電池に良くないのでは? と訪ねてみると、「平日はおおむね10〜90%の範囲内で蓄電利用。週末に向けて満充電近くになるよう運用していく」計画とのこと。加えて、定置型の大容量蓄電池は街の非常用電源としての牙城でもあるのでできるだけ蓄電量を温存し、平日の電力の出し入れはリーフの電池から活用していく仕組みになっているそうです。とすると、定置型蓄電池の劣化が……、なんてことも気になったのですが、プロのみなさんが知恵を絞ったシステムなので、きっと上手く考えられているんだと思います。

【追記】定置型蓄電池の劣化について

「定置型の大容量蓄電池も平日・休日共に充放電させております。(非常時に備え、ある程度の蓄電量は担保していますが、充放電はさせています)」

各住宅にEVがあればV2X利用も可能

説明会の翌日には最初の入居者が引っ越してくるということでしたが、本格的な入居開始は年明けから春にかけてになるとのこと。住宅の多くはまだ外構工事を行っている最中でした。でも建物はすでに完成していて、車庫スペースに面して、電気自動車用の200Vコンセントが全戸に設置されていました。

Looopによると、入居者のマイカーが外部給電可能なEVであれば、充放電器(V2X機器)を通じてコミュニティの蓄電能力を高めることも可能ということで、チャージアエリアに設置されているのと同じGS YUASA機器のサブスクプランの紹介なども行っている(詳細な価格設定などは未確認)そうですが、個人宅で導入を決めた方はまだいないそうです。まあ、考えてみればコミュニティの蓄電能力向上に貢献しても各家庭への経済的メリットはありません。「電力自給自足のVPPコミュニティを目指す!」という理想だけで、個人宅のガレージに大きな機器を設置するのはハードルが高そうです。

ハードルが高いといえば……。チャージエリアに設置されていたV2X機器は前述のようにGS YUASAの『VOXSTAR』という機種ですが、取材時、私はこの充放電器が市販モデルであることを知らず「この街(あるいはエネプラザ)のための特注品なんだろう」と思い込んでいました。後で調べてGS YUASAの公式サイトにも製品が紹介されていることを確認しましたが、定価がいくらなのかはわかりません。

まあ、ユーザーが自分で手軽に設置するようなものではないし、まだまだニーズは少ないでしょうからしょうがないとは思うのですが、V2HやV2Gを実現するための仕組みや機器がわかりづらくて、設置しても経済的効果は見込めないくらい高価であることは、これから、この街のような理念が広がっていくための大きなハードルになる気がします。

蓄電すると売電できない? のも課題か

もうひとつ気になったことがあります。この住宅街51戸の屋根には各4.5kW程度の出力の太陽光発電パネルが設置されています。この電力はLooopがまとめてチャージエリアに集めて住宅街全体の電力需要に対応するという仕組みなのですが。

4.5kW×51戸=229.5kW ですから、条件のいいピーク時には200kW以上の発電能力があります。チャージエリアの蓄電池は定置型が125kWh、リーフ2台で80kWh、合計で205kWhしかありませんから、充電速度の設定によってはあっという間に満充電になってしまうでしょうし、電気が余る時間帯が多くなってしまうはず。

「余った電力の売電収益は住民に還元される?」と質問してみたのですが、なんと、大容量蓄電池などを備えたエネプラザのシステムでは、電力会社への逆送電=売電はできないので、発電の出力を調整して対応するとのことでした。

なんだか、もったいない話だと思います。系統電力の仕組みや売電などに詳しくないので、読者の方でご存じの方がいればご意見いただきたいところですけど、日本として再エネやV2G、VPPなどの普及を目指すのであれば、こうした制度もどんどんアップデートして欲しいと感じます。

補助金頼みから脱却しつつ広がれるか

今回のエネプラザが導入されたスマートホームコミュニティ(第3期)は、さいたま市が中核となって民間企業などと連携、多様な補助金などを活用して、エネプラザや電線地中化などを実現した住宅街です。実際、エネプラザだけを考えても、今回は「補助金があったから実現可能だった」とのこと。

さいたま市が進めてきたスマートホームコミュニティのプロジェクトはこの第3期でまずは完成します。でも、さいたま市のご担当者によると、さらに他の地域でも同様にサステナブルなまちづくりへの試みは広げていきたいとのこと。エネプラザを構築したLooopでも、地域の条件に合わせながら全国各地に多様な「エネプラザ」プロジェクトを生み出す意欲を示していました。

蓄電池やV2Xシステム価格の低廉化、コミュニティへのEV普及、再エネ活用の仕組みの進展など、国などの補助金頼みではなくとも、こうした理念をもったまちづくりがビジネスモデルとして成立するようになることが、これからの大きな課題だと感じます。

【追記】Q&A

●PVの電力を売電できないのはどうしてですか?

「本プロジェクトは環境省の補助金を活用しておりますが、補助金の条件が売電できない条件だったからです」

●eシェアモビの2台のリーフは、第3期街区住民以外のeシェアモビ会員も利用可能?

「E-Forest(1期-3期)にお住まいの住民様は利用可能となっています」

●街区住民には利用料割引などの特典はありますか?

「特にありません」

●V2X機器のサブスクプラン。価格設定などは?

「サブスクプランについては、構想はありましたが、契約者がいなかったので、提供いたしません。 価格は月額3,600円での提供として、対象街区の住民にはアナウンスしておりました」

●GS YUASA の機器を選んだ理由は何ですか?

「この度、ダイヘン社様のシナジーリンクという自律分散協調制御技術を実装しておりますが、シナジーリンクが対応しているのがGS YUASA製だったからです」

●機器1台の定価はいくらでしょう?

「個々の定価については非開示とさせていただきます」

(取材・文/寄本 好則)