YouTubeのEVsmartチャンネルで電気自動車のBYD『DOLPHIN(ドルフィン)』の2モデルで愛知県常滑市から神奈川県横浜市まで約344kmを無充電で走行したレポート動画が公開されています。EVのバッテリーサイズはどのくらいあれば十分なのか。考えるべきポイントを挙げてみたいと思います。
バッテリーが小さいベースモデルも見事に完走
テスカスさんの冷静なレポートがわかりやすいYouTubeのEVsmartチャンネルで『BYD ドルフィン 無充電で愛知→神奈川は走行出来る!? ベースグレードとロングレンジ同時走行で確かめてきた』という動画が公開されています。BYD『ドルフィン』は、日本導入第二弾の電気自動車として2023年9月に発売。バッテリー容量44.9kWhのベースグレードと、58.56kWhの「ロングレンジ」がラインナップされています。
改めて、スペックなどを整理しておきましょう。
| BYD DOLPHIN | BYD DOLPHIN Long Range | |
|---|---|---|
| 全⾧/全幅/全高/ホイールベース (mm) | 4,290×1,770×1,550×2,700 | ← |
| ⾞両重量(kg) | 1,520 | 1,680 |
| 一充電走行距離(km) | 400 | 476 |
| 電費(WLTCモード Wh/km) | 129 | 138 |
| 最⾼出⼒(ネット値) kW(Ps) / rpm | 70(95) / 3,714 - 14,000 | 150(204) / 5,000 - 9,000 |
| 最⼤トルク(ネット値) N・m(kgm) / rpm | 180(18.4) / 0 - 3,714 | 310(31.6) / 0 - 4,433 |
| 総電圧(V) | 332.8 | 390.4 |
| 総電⼒量(kWh) | 44.9 | 58.56 |
| フロントサスペンション | マクファーソンストラット | ← |
| リアサスペンション | トーションビーム | マルチリンク |
| 使用タイヤサイズ | 205 / 55 R16 91V | ← |
| 価格(税込) | ¥3,630,000 | ¥4,070,000 |
| CEV補助金 | ¥650,000 | ← |
| 補助金適用後価格 | ¥2,980,000 | ¥3,420,000 |
大きく異なるのは、バッテリー容量。ロングレンジはベースグレードの約1.3倍のバッテリーを搭載しています。それに伴い、車両重量が160kg重くなり、電費は約9.3%悪くなっていますが、航続距離は400kmから476kmと約1.2倍になっています。
あと、モーターの最高出力や最大トルクが異なり、当然ながら価格も約1.2倍です。
さて、今回記事の「教材」としたい動画がこちらです。スペック比較をある程度頭に入れた上で視聴いただくと、テスカスさんの解説がより理解しやすくなるはずです。
BYD ドルフィン 無充電で愛知→神奈川は走行出来る!? ベースグレードとロングレンジ同時走行で確かめてきた(YouTube)
ネタバレ的に端的な結果を紹介しちゃいます。
愛知県常滑市内のホテルルートイン常滑駅前をスタートして、ゴールは神奈川県横浜市の首都高大黒PAまで、約344kmの無充電走行へのチャレンジ。出発時の航続可能距離表示などは……
**●ベースグレード=99%/399km
●ロングレンジ=100%/476km**
となっていました。宿泊したホテルに設置されていた2基の普通充電器で、ドルフィンは2台とも満充電からのスタートです。ベースグレードが99%になっているのは、早めにスタンバイして暖房入れてた、みたいなちょっとした都合だと思います。まあ、検証に大きな影響はありません。そんなことより、ほとんどの市販EV車種でカタログスペック通りの航続距離を達成するのが難しい(表示はおおむね1〜2割程度は少なくなる)のに比べ、両グレードともにカタログスペック通りの航続可能距離表示になっているのが優秀です。
そして、大黒PA到着時のバッテリー残量などは……
**●ベースグレード=12%/46km
●ロングレンジ=16%/75km**
ロングレンジはSOCこそ20%を切ったものの、まだ75kmの航続可能距離を残して余裕の完走でした。ベースグレードもSOC12%、航続可能距離46kmを残して完走を果たしました。350km程度のロングドライブを無充電で完走できるのであれば、多くの方にとって「実用の範囲」に収まるのではないでしょうか。
ただし、新東名の120km/h制限区間を「120km/hで走るとヤバイかも」と経験から察したテスカス&石井さんの検証チームの判断で、ベースグレードをドライブする石井さんは120km/h区間もACCの設定速度を90km/hにキープ。電費優先の走りをした結果であることは理解しておく必要があります。もし、120km/h走行していたら、少し届かず海老名で充電、もしくはSOC表示が消えてドキドキの到着になっていたことでしょう。
また、EVsmartブログでは未検証ですが、ドルフィンはSOCが10%を切ると早めに出力制限が発動するといった噂もあるので、電費優先ドライブは大正解だったということですね。
走行距離に航続可能距離を足すと……
**●ベースグレード=344km+46km=390km
●ロングレンジ=344km+75km=419km**
外気温が22〜24度程度の好条件だったとはいえ、とても優秀な結果です。
500kmも走れないとダメ、ですか?
多くの方に、この動画から「感じて欲しい」と思うポイントが2つあります。まずひとつ目の重要なポイントが、「電気自動車の航続距離はこれくらいでいいんじゃないの?」ということです。
「電気自動車は航続距離が短い」とよく言われます。「500kmは走れないと使い物にならない」といった意見を聞いたり見たりすることも多いです。たしかに、毎月のように東京=大阪を往復するといった長距離トラックドライバーのようなカーライフを送っている方にとっては、500km以上の航続距離が必須かも知れません。でも、大多数の方のカーライフであれば、名古屋(愛知県)→横浜を無充電で走行できる性能があれば十分、「これでいいじゃん」と感じるのではないでしょうか。少なくとも、私は何も問題ありません。
電気自動車だって、バッテリーをたくさん積めば長い距離を走れます。でも、バッテリーをたくさん積むと車両価格が高くなります。だから、欧州メーカーの市販EVは高級車が主流です。とはいえ、高級車を新車で買える人は多くないので、日本ではEV普及がなかなか先に進みません。
今回動画の検証結果が示しているのは、BYDドルフィンが「300万円で300km」の性能を余裕をもって達成してくれているということだと思います。補助金使って300万円を切るベースグレードであれば、ご自身のマイカー候補として検討できるユーザー層はグッと拡大するはずです。
2つ目のポイントは「中国がぁ!」といった先入観に対する疑問です。動画の中でテスカスさんも言及していましたが、すでに私たちの生活には Made in China がいっぱいです。自動車は日本が最高! と信じている方は、ぜひ一度ドルフィンやATTO3に試乗してみてください。耐久性能などはまだ未知数とはいえ、多くの方が「これでいいじゃん!」と感じるのではないかと思います。
おまけに、ドルフィンはベースグレードであってもACCなどの先進運転支援機能やBYD E-CALL(事故自動緊急通報装置)、幼児置き去り検知システムなどは標準装備。安全&快適なカーライフを満喫するためのコストパフォーマンスは抜群です。
テスラは大容量バッテリーとスーパーチャージャー網で、エンジン車に負けないユーザビリティを実現しました。欧州メーカーは高級EVでテスラを追随しています。でも、エンジン車であってもベンツやポルシェを新車で買えるユーザーばかりではありませんでした。BYDがドルフィンで具現化してくれた「これでいいじゃん!」こそが、日本で、そして世界のEV普及を進めるための大きなポイントになるに違いないと感じています。
YouTubeのEVsmartチャンネルでは、今回の旅に往路で、急速充電性能を検証する動画もアップされています。
BYDドルフィン 2グレード同時に神奈川→愛知をロングドライブしてみた(YouTube)
ドルフィンにバーチャル試乗する感覚で、ぜひお楽しみください。
なんとなれば、中国のbZ3みたいに、BYDが作ったドルフィンをトヨタがモディファイしてトヨタブランドで日本発売(同程度の価格で)してくれたら、きっと大ヒットするんだろうなぁと妄想しつつ……。
文/寄本 好則

