電気自動車のバッテリーを取り外し式にしたらいいんじゃない?

あちこちで最近よく見かけるのですが、電気自動車の走行可能距離を伸ばすために、バッテリーを交換式(取り外し式)にしたらいいのではないか?というお話。これは結論から言うと、おそらくあり得ないと思います。以下解説♪

この方法はバッテリー交換式と呼ばれ、実際に製品化しようとして試した会社が現在までに二社あります。一つはベタープレイス社で、ルノー日産グループとも戦略的提携をして、実際に一車種、対応車両を販売し、世界中でテストを行いました。日本でも2010年に虎の門で実験を行っていたのです。当時はバッテリーが小さく航続距離が短かったため、ちょっと走ってすぐ交換しなければならず、さらにある理由によって全く競合が出てこなかったため、ベタープレイスは倒産してしまいました。この事実は自動車会社のエグゼクティブなら誰でも知っているくらい、重要な失敗と言われています。(画像引用元記事

もう一社はテスラです。米国の電気自動車専門メーカーで2016年度の販売台数は8万台弱。日本にも1000台以上入ってきています。このモデルSとモデルXという車両はバッテリー交換式に対応していますが、現在はロサンゼルス郊外の一か所にしかバッテリー交換場所が設置されていませんし、その一か所も昨年末に閉鎖されました。テスラも、この方法は失敗だったと考えているようです。ただしテスラの車両は普通に充電式で利用できるので、バッテリー交換に依存するわけではなく、自宅で充電できるほか、普通にサンフランシスコからロサンゼルスまでの600kmを電気自動車で移動できるための、超急速充電設備スーパーチャージャーも完備しています。日本にもスーパーチャージャーのステーションは14か所(盛岡、仙台、長野、高崎、東京三か所、横浜、浜松、岐阜、大阪、神戸、倉敷、福岡)あります。

さて、ではなぜバッテリー交換式は失敗したのでしょうか。(画像引用元記事

一つは当時、バッテリーの密度が低かったという点があります。例えばテスラモデルSの場合、バッテリー重量は500kgを超えます。50kgではありません。50kgだったらガソリンと同じくらいのエネルギー密度があることになってしまいます。簡単に言うと、ガソリンの10分の1しか密度がないのです。日産リーフ30kWhモデルのバッテリーは315kgとされています。

もう一点は、電気自動車においては、ガソリン車での心臓部であるエンジンに当たる部品は、モーターではなくバッテリーだということです。バッテリーがエンジンなのです。モーターはコストが安く効率も高く、現時点でほぼ最高の性能のものが得られ、改良の余地がほとんどありません。入れた電気を余すことなく走行する力に変えることができるということですね。逆にバッテリーは、ガソリンタンクのように改良の余地がない(タンクを改良しても車は速くなりませんよね?)ものではなく、改良することにより航続距離を伸ばしたり、加速性能を向上させたりできるのです。世界中の自動車メーカーはエンジンを自社で作ることによって(もちろんOEMもたくさんありますが)、車の差別化をしているのです。電気自動車メーカーは、優れたバッテリーを搭載することで、車の差別化をしなければなりません。例えば、バッテリーの容量を二倍にすると、車の性能も二倍近くになります。

バッテリー交換式になるということは、すべての車が同じ性能になるということです。それを、どの企業も望まなかったということなのです。

おまけ① 家に帰って充電するときは、電気自動車からバッテリーを外して家に持って帰って充電できるようにすればいいのでは?

面白い考えではあるのですが、電動アシスト自転車のバッテリーを取り外されたことはありますか?結構重たいですよね?先ほどお伝えしたように、現行のほとんどの電気自動車のバッテリーは300kg以上。取り外すにはフォークリフトが必要です。

おまけ② じゃ、バッテリーを小さくして、その代わりこまめに急速に充電できるようにしてはどう?

これも良いアイディアのように思えます。しかし!こまめに「急速に」充電するということはできないのです。電気自動車のバッテリーの充電速度は、ざっくりいうと容量に比例し、温度に大きく影響を受けます。例えばバッテリー容量を半分にすると、充電速度も半分になってしまいます。温度は低くても高くても充電速度は著しく遅くなります。