EV充電サービス「テラチャージ」を展開するテラモーターズが、全国各地の「自治体への普通充電器100基導入」を続々と発表しています。充電インフラ拡大はEVユーザーとして大歓迎ですが、少し気になる点もあります。計画を進める自治体ご担当者と、テラチャージをはじめとする充電サービス事業者への「お願い」を整理してみます。
※冒頭写真は室戸市で設置場所候補になっている「むろと廃校水族館」。
柳井市に次いで交野市と室戸市でも100基導入
3月13日、EVベンチャーのTerra Motors(テラモーターズ)が東京都内で記者発表を開催して、山口県柳井市と「持続可能な地域づくりに向けた包括連携協定」を締結、柳井市内の公共施設駐車場に、今後2年間ほどの期間で同社が展開するEV充電サービス「Terra Charge(テラチャージ)」によるEV用普通充電器100基を設置していく計画を発表したのはまだ記憶に新しいところです。
【関連記事】
テラモーターズが柳井市にEV用普通充電器100基設置/自治体アクションのトリガーに!(2023年3月14日)
記者発表でテラモーターズの徳重徹会長は「柳井市と連携した大規模な充電器設置の事例が、全国の自治体を動かすトリガーになれば」と語っていました。まさに、トリガーが引かれたということでしょう。テラモーターズからは、3月28日に大阪府交野市と、3月29日には高知県室戸市との間で、柳井市と同様に市内の公共施設へのEV用普通充電器100基導入を決定したというニュースリリースが発表されました。
柳井市の井原市長は「柳井市でもゼロカーボンシティ宣言を行い、具体的に何をやるべきか模索していたところ、テラモーターズの徳重会長からEV充電器設置の提案をいただき連携協定締結へ繋がった」と説明していました。環境省が推進するゼロカーボンシティ宣言は、2020年以降、宣言する自治体数が急増し、2023年1月には830を超える自治体が宣言を行っています。交野市は2022年3月に宣言、室戸市は2023年2月28日に宣言を行ったばかりで「公用車へのEV導入」といったEVに関わる施策を目標に掲げています。まとまった数のEV用普通充電器設置は自治体が取り組む具体的なアクションとして「山が動き始めた」印象です。
EVユーザーとして気になる点も……
基本的に、EV用充電インフラが拡充する取り組みですから、EVユーザーの視点から出来事を是々非々でお伝えするポリシーのEVsmartブログとしても歓迎すべきニュースではあります。とはいえ、いくつか気になるポイントがあります。
どんな施設に何基設置するかのプランが大事
記者発表での説明などを踏まえると、今回、各地で設置されるのは基本的に出力3kWのEV充電用コンセントになるでしょう。公共施設の駐車場に「充電コンセントがある」のは良いことですが、たとえば病院やスポーツ・文化施設といったおもに地元住民が利用する施設に多くのコンセントが設置されたとしても、頻繁に利用されるものにはならないでしょう。
地方の自治体では、戸建て住宅にお住まいの方が多いはず。戸建て住まいでたとえば日産サクラを購入したら、自宅ガレージに200Vコンセントを設置するケースがほとんどでしょうし、その方が便利にEVを活用できます。そして、自宅で充電できる住民が、市内の公共施設に出かけた際にわざわざ自宅の電気代よりも高い料金を払って充電するかと考えれば、使われない充電設備になる可能性が高いことが想像できます。
【対策プラン】通勤車や公用車が充電できるようにする
では、どうするのがいいか、個人的に妄想してみました。まず、市役所など多くの職員が通勤する施設であれば、通勤車が充電設備を利用できるようにして、職員のEVシフトを推奨するのはアリだと思います。通勤車の燃料代などを支給しているのであれば、自宅充電電気代と充電器利用料金の差額を自治体が埋め合わせるような仕組みにすれば、利用率も上がるでしょう。
もちろん、公用車にもEVを増やし、設置する充電設備を利用します。今回のテラチャージのプランでは、国の充電インフラ補助金を活用し、自治体の負担は0円(場所を提供)で充電設備を設置するということなので、設置に掛かる初期コストを抑えるメリットがあります。
【対策プラン】観光などのEVシェアサービスと組み合わせる
たとえば、室戸市には室戸岬という観光名所があり、リリースで発表された設置予定場所にも、「室戸世界ジオパークセンター」や「むろと廃校水族館」といった観光スポットが挙げられています。たとえば、首都圏などから室戸岬へ出かける際に利用する人が多いであろう高知龍馬空港に、気軽に利用できるEVシェアやレンタカーを用意して、室戸岬や市内の観光を楽しめるようにするのはどうでしょう。
高知空港から室戸岬までは約70km。日産サクラなど軽EVで無充電往復するには心許ない距離なので、数時間ずつ程度滞在する観光スポットで充電できれば、利用者は安心してEVドライブを楽しめます。
【対策プラン】グリーンスローモビリティ的な地域公共交通網の拠点に活用
地域の事情次第ではありますが、今、全国各地で取り組みが広がっている「グリーンスローモビリティ」のような地域公共交通網を、充電設備を設置する公共施設を拠点にして展開するのも面白いのではないかと思います。
HW ELECTRO の ELEMO-L (定員を増やす改造と登録が必要ですが)のようなEVを活用した乗り合いタクシー的なサービスもいいし、高齢者が利用しやすい最高速度を抑えた文字通りのグリーンスローモビリティの住民向けEVシェアサービスを展開するのも素敵です。もし実現したら、ぜひ取材に行きたいくらいです。
【対策プラン】EVで来訪する観光客にインセンティブを用意する
普通充電器の大規模導入は、それぞれの自治体がゼロカーボンに積極的で、EVフレンドリーな町であることをアピールする狙いもあることでしょう。市内の施設に3kW普通充電器があっても市民には利用されない、のであれば、市外からEV利用の観光客を増やすチャレンジをしてみるのはどうでしょう。
EVでその町を訪れて、施設の充電設備を利用すると! 的なインセンティブ(特典)を用意してくれると、EVユーザーとしてはうれしいです。
補助金で「使われない充電器」が増えるのは避けてほしい
今回、柳井市、交野市、室戸市それぞれのご担当部署に電話して話を聞いてみましたが、各自治体ともに「どこに何基設置するか」といった詳細は検討や調査を始めた段階で、まだ決定していないということでした。
ただ、調査や検討のなかに「各施設の電気容量など」が含まれていたのは気になります。前述のように、地元市民が訪れる施設に10基とかまとまった数のコンセントを設置しても、EVユーザーのニーズはありません。もしもに備えて1〜2基あれば十分でしょう。市営住宅の駐車場全区画に! であれば素敵だと思います。数ありきで検討を進めるのではなく、ぜひ、どこに何基あるべきかを考えていただきたいと思います。
公共施設への設置ということもあり、事業者は入札で決めなくていいの? という点も少し気になりましたが、今のところ各自治体ともテラモーターズとの随意契約の方向で「検討を進めている」段階のようです。
あと、先月の記者発表時に「0円設置で、自治体への還元はない」という説明だったので、充電設備が利用された際の電気代は自治体の負担になるのでは? と思いましたが、ある自治体ご担当者から「電気代分の費用は後で支払われる」と聞き、テラモーターズに確認したところ、電気代は利用者が決済した利用料金の中から設置者(自治体)に還元される仕組みになるようです。
今年度、国の充電インフラ補助金は昨年度の65億円から175億円へと大幅に増額されました。EV充電インフラへの補助金といえば、2013年ごろ、平成24年度補正予算で1005億円の補助金が用意されたころのことが思い出されます。現在の日本国内の急速充電器をはじめとするEV充電インフラは、この補助金によって一気に広がりました。
一方で、国の補助金と当時の日本充電サービス(NCS)が用意したサポートによって、設置者はコスト負担なく急速充電器を設置できて、急速充電器の利用料金からの還元は最大出力に関係ない(出力が大きいほど設置者の電気代などの負担が大きくなる)といった仕組みもあって、出力20〜30kW程度のいわゆる「中速充電器」が大量に、しかもあまり利用されない場所にも多く設置されてしまったということがありました。
EV普及を見据えたビジョンやプランなく、だた数だけを増やすのは、貴重な補助金で「使われない充電設備」を増やすことに繋がりかねません。
基礎充電、目的地充電、経路充電という用途を踏まえた充電インフラのあるべき姿、を語り始めると長くなるので割愛しますが、テラチャージはもとより、EVsmartブログの運営会社であるENECHANGEの「EV充電エネチェンジ」とか、先日急速充電器への展開も発表したユビ電の「WeCharge」とか。充電サービスを展開する事業者は、ぜひ「EV充電インフラのあるべき姿」という大きなビジョンを示した上で、充電設備の設置拡大に取り組んでいただきたいと思います。
また、自治体のみなさまへ。EV用普通充電設備の拡充は大切なことですが、充電器を増やすだけではゼロカーボンへの道は進めません。ぜひ、前述のようなEVの活用を促進する、各地の特色を活かしたアクションを併せて実施していただけると素敵だと思います。「EVについてもっと話してくれ!」といったご用命があれば、EVsmartブログ著者陣の精鋭とともに協力しますので連絡ください。
EVにして良かった、EVだからカーライフが楽しい、と多くのEVユーザーが納得できる日本になっていくことを願っています。
文/寄本 好則


