NEXCO西日本が管轄のサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)4カ所に4基の電気自動車用急速充電器を増設、2019年12月27日からサービスを開始しました。充電渋滞の緩和を目的としており、電気自動車ユーザーにとっては歓迎すべきニュースではあります。でも、ユーザーとしては「SAPAの充電器はまだまだ足りない」のが実感ではないでしょうか。
※冒頭写真は2019年5月新名神高速道路土山SA上り線での充電待ちの様子
既設のSAPA上下線に1基ずつ増設
正月を挟んでしまって恐縮ですが、昨年末、2019年の12月27日、NEXCO西日本が4カ所のSAPAに急速充電器を増設、サービスを開始しました。設置されたのは、以下のSAPAです。
名神高速道路
草津PA上り線(滋賀県)/1基増設(※)合計2基
草津PA下り線(滋賀県)/1基増設(※)合計2基
九州自動車道
古賀SA上り線(福岡県)/1基増設 合計2基
古賀SA下り線(福岡県)/1基増設 合計2基
このうち、(※)で示した草津PAに増設された急速充電器は、どうやら新電元の90kW出力器で、2台同時の接続が可能となっています。事実上、2基分の増設と考えてもいいでしょう。
今後、全国のNEXCO各社には、新しく登場するはずのCHAdeMO新規格の150kW出力器を含めて、効率的な急速充電設備増設を期待したいところです。
【NEXCO西日本ニュースリリース】
いったい、どのくらい充電渋滞が発生しているのか?
首都圏でみると、東名高速道路の海老名SA、足柄SA、中央自動車道の談合坂SAなどにも、2基目が増設されました。とはいえ、週末の朝や午後などに立ち寄ると充電待ちに遭遇する確率は高く、「高速道路SAPAの急速充電器がまったく足りなくなってきている」というのは、私自身ニッポンの電気自動車ユーザーとしての正直な感想です。
ちなみに、充電器増設を伝えるNEXCO西日本のニュースリリースに、2016年からのNEXCO西日本管内急速充電器利用回数年次推移のグラフが紹介されていました。
毎年、10〜20%ずつ、着実に増えていることが示されています。
一方で、経産省の統計によると、2017年度の新車販売に占める電気自動車のシェアはまだわずか0.55%、プラグインハイブリッド車もたった0.78%で、合計しても1%ちょっとという程度です。
実際にSAPAに立ち寄った時の印象としても「1%程度、なるほどね」という感じではありますが、急速充電スペースには先客がいるケースが激増しているのも「実感」ではあるのです。
はたして、どのくらい充電待ちが発生しているのか。いろいろ検索してみると、2019年12月1日に日本充電サービス(NCS)が、『高速道路設置の急速充電器の渋滞状況(2019/8/10~2019/8/18実績)とIC周辺設置の急速充電器 リスト』というPDFを発表していました。
黄色は「充電待ちが発生した」、赤色は「充電待ちが多く発生した」を示しています。想像以上に「真っ赤」だったので、東名や新東名のページを画像に書き出してご紹介しておきます。個人的には、まったく白(充電渋滞は少ないはず)になっている2基設置の足柄SA下り線でも充電器が満員で充電を諦めたことがあるので、あくまでも目安でしょうし、週末など通行台数が増える日の都市近郊は、これ以上に混雑すると考えておくのがいいでしょう。
ちなみに、どのような状況を充電待ち、充電渋滞と定義しているのか、この資料には明記されていませんが、JCNなど関係機関の資料などと照合して推察すると、充電器の利用記録をもとにして「前車の充電終了後、5分以内に次の車が充電を始めた場合」を「充電渋滞」としていると思われます。
また、一番右の欄には「ICから概ね1.5km以内にある24時間利用可能な急速充電器設置場所」が示されています。これはなかなか親切ですね。私も、クラウドにこのPDFを保存しておこうと思います。充電スポット検索アプリ『EVsmart』と併用すれば安心感が高まります。さらに、一度高速道路を下りて乗り直しても、ETC2.0とか難しいことを言わずに通行料金が変わらないようにしてくれるとありがたいところではありますが。
10年後、SAPAには何基くらいの急速充電器が必要なのか?
それにしても、電気自動車なんてまだ珍しい現在ですらこの状況です。経産省では「次世代自動車戦略2010」の政府目標として、2030年にはEVとPHEVのシェアを20〜30%にする目標を掲げています。ちょっと古い目標なのでアップデートされているかとも思ったのですが、2019年4月に発表された「未来投資戦略2018」にもこの数値目標が引用されているので、日本政府の目標としては、まあそんなものなのでしょう。
その後の欧米や中国の動き、日本国内でも発売される電気自動車の車種増加などを勘案すると、もっと前倒しされてよさそうな気もしますが。
ともあれ、10年後に30%という数値をもとに、高速道路SAPAには何基くらいの急速充電器が必要になるか考察してみましょう。
東名高速道路の足柄SA上り線。駐車場の収容台数は大型が165台、小型が431台(大型との兼用を含む)です。現在の急速充電器は2基。EV&PHEVの割合が1%とすると、満車になるほどの混雑時には、全体で4台強の充電可能な車が存在していることになります。
このうち、50%のEV&PHEVが充電すると仮定すれば、2基の充電器が頻繁に埋まるのも納得です。
もし、EVの比率が30%になったとしたら
では10年後、もしSAPAを利用する車のなかで、EVの比率が30%になったとしたらどうなるでしょうか。駐車場の小型台数をざっくり400台としても、120台のEVが同時に足柄SAに存在することになります。
やや楽観的に推測して、10年後には一充電航続距離が長いEVも増えているでしょうから、急速充電を行うEVの割合が30%として36台。つまり、36台分の急速充電設備が必要です。大規模施設などのインフラはピーク時を基準に設計すべきというセオリーも聞いたことがあります。そう考えると、政府が掲げる目標を達成し、社会インフラとしてその必要に応えるために、足柄SAの規模であれば最低でも40基程度の急速充電器を設置するべきであろう、という推論が成り立ちます。
まだEVユーザーの割合が増えない中で、拙速に整備を進める必要はないと思います。SAPAの限られたスペースの中で、電気自動車専用の充電場所ばかりを広げるのが難しいことも、なんとなく理解できます。
でも、電気自動車が普及するために、高速道路SAPAには「10年後、駐車場収容台数の10分の1程度」に相当する急速充電器が必要になる可能性が高い、ということを、高速道路設備の関係者に知っておいていただきたい、ですね。
利用マナーなどの確立も大事
今回、SAPA充電設備の利用実態などについていろいろ調べていると、関係機関の資料などには充電渋滞以外にもさまざまな「課題」があふれていました。なかでも目に付いたのが、充電終了後の放置車両やケーブルの後始末など、利用者のマナーについての課題です。
充電渋滞時においては「予定している次区間の走行に十分な電力を蓄えられたら次の車に充電器を譲る」といった、ベテランEVユーザーにとっては当然のマナーも、広く周知徹底していくことが大切だと感じました。
『イーモビリティパワー』への取材記事でもご紹介したように、ここ数年のうちに、補助金が設定した期限を迎え、設備が更新される充電スポットも増えるでしょう。NCSからイーモビリティパワーへの事業継承も進められています。
いわば、電気自動車の充電環境構築はまだ過渡期。ことに、高速道路網の充電インフラは「経路充電」の要であり、最重要課題といえるでしょう。
よりよい電気自動車ライフを謳歌できる日本になるよう、これからもさまざまな情報を発信していきたいと思います。
(文/寄本 好則)



