キュートな電気自動車『Honda e』わずか3年半で生産終了〜突然の悲報にオーナーたちは

ホンダが『Honda e』の生産を2024年1月で終了すると発表しました。私自身、2021年4月からマイカーにしていて、今年やっとオーナー仲間とクラブを発足させた矢先の悲報。Honda eオーナーのみなさんはどう受け止めたのでしょうか。

日本での販売台数は3年4カ月で約1800台

Honda eはホンダ初の市販EVとしてグローバル市場で2020年8月から発売。日本市場でも同年10月から販売していました。しかし「2024年1月をもって生産終了いたします。生産分が売り切れ次第、Honda eは販売終了となります」と発表されました。理由について公式コメントはありませんでしたが、販売低迷ということなのでしょう。だってホンダ広報によると、日本国内での販売台数は以下のとおり。

**2020年(8-12月)450台

2021年(1-12月)721台

2022年(1-12月)371台

2023年(1-11月)261台**

発売から3年4カ月で、1803台。そんなに少なかったんですね。ちなみに日本を含むグローバルでの総販売台数は、2020年が4,558台、21年4,171台、22年2,498台、2023年838台という状況だったそうです。発売当時、海外で年間1万台、国内で年間1千台という販売目標が発表されて「低すぎるのでは」と言われましたが、それさえも達成ならず。悲しい限りです。

以下、オーナーとしての個人的感想ですけれど、いいクルマなんですよ。私はコンセプトカーのようなデザインが気に入って購入しましたが、見た目だけじゃない。「街なかベスト」というコンセプトで、航続距離は追わず、バッテリー容量を35.5kWhにして重量増を抑えています。

それでも車重は約1.5トンありますが、V6・3リッターエンジン並みというトルク(315Nm)のおかげで車速の伸びは抜群。床面バッテリーによる低重心はEV共通の利点ですし、丁寧な作りで前後重量配分50:50を達成して、しかもハンドリングが楽しい後輪駆動。最小回転半径4.3mと小回りが効くこともあって、シティーコミューターとしてはこれぞ「ベスト」。交差点を曲がるだけでも操る楽しさをビシバシ感じられるクルマです。なのに……ああ。理解して(お金を出して)くれる人は、少なかったのでした。

オーナー仲間の声を聞いてみました

オーナーのみなさんは、生産終了のニュースをどう受け止めたのでしょうか。Honda eオーナーズクラブの仲間に聞いてみました。まずは、代表を引き受けてくださったモータージャーナリストの片岡英明さんです。片岡さんは発売と同時にイエローのHonda eをオーダーして、マイカーとしての魅力などをいろいろなメディアで発信(購入時の寄稿記事)してきました。

「かわいいし個性的で面白い、これからのクルマなので、もう少しがんばってほしかったですね。アップデートもしないで終わらせてしまうのは、あきらめが早すぎます」

早すぎる生産終了の要因について、片岡さんは「ユーザーにクルマの特徴を伝えて理解してもらう努力が足りなかったのではないか」と指摘します。

「たとえば雪道での走行会で後輪駆動の楽しさを伝えるとか、ジムカーナで軽快なハンドリングを知ってもらうとか、魅力をもっと訴求できたはず。このクルマの良さを知っている人が日本に2000人もいないというのは悲しいですね」

生産終了を伝えるニュースの中で、航続距離の短さ(WLTCモードで259km)を理由に挙げている報道もありましたが、私自身は欠点と感じたことはありませんし、片岡さんも「バッテリーをたくさん積むのはオモリを増やすようなもので、運動性能と引き換えになってしまう。距離は走れなくても、日産サクラが受け入れられたように、これがいいと感じる人は少なくないはず」と話します。

スマホジャーナリストの石川温さん(購入時の寄稿記事)は、こんなエピソードを教えてくれました。

「今から3年前、ワクワクしながらホンダのディーラーへHonda eを試乗しに行ったところ、営業担当者から『いやー、Honda eは売っても赤字にしかならないんですよねぇ。同じ金額を売り上げるなら、フィットを3台売りたいです』と言われちゃいました」

これ、私も担当者から似たことを言われました。「売っても赤字」が事実なのかトークネタなのかはわかりませんが、かなり原価率の高いクルマだったのは間違いないでしょう。ディーラーの利幅が少なかったのかもしれません。

石川さんは「Honda eは発売時からホンダにとってお荷物なんだと思いながらも、個人としては日々、気に入って乗ってました」ともコメントしてくれました。これも同感です。よくこんな楽しいクルマを市販してくれたよね、と思ったりします。

赤字黒字の前に、そもそも価格が高過ぎた、という指摘もありました。国のCEV補助金と東京都のZEV補助金を使っても約390万円。たしかにコンパクトカーとしてはお高めですね。でもじつはカーリースの「Honda ON」に「Honda e 特別プラン」というのがラインアップされていて、ボーナス払いなしのサブスクリプション(定額制)は月額6万370円~。5年後に返却するまでの支払い総額は286万9200円(東京都の場合)とアナウンスされています。このサブスクが発売当初から設定されていて、広く周知されていればなぁ……と思ってしまいます。駆け込みでオーナーになろうと思われている方は検討してみてください。

オーナーズクラブの他のメンバーからもコメントをいただきました。

以前の記事を読んでオーナーズクラブに参加してくれた千葉県のIさんは「もともとホンダは欧州で存在感が薄かったので、むしろ一定数は売れたんだなという印象です」と評価。マイカーについては「静かさや加速というEVならではの利点以外にも楽しさを感じられる最高の車です。問題は、ホンダが育てる姿勢も、次に生かす姿勢も見せてくれないこと。オーナーとしては一切アップデートされなかったことが腹立たしいですね」。

ちょっと説明しておきます。Honda eの特徴になっているワイドビジョンインストルメントパネルには、好きなアプリがダウンロードできるという触れ込みだったのに、2023年3月末でアプリもアプリセンターも突然サービス終了。さらには充電カードの「Honda Charging Service」も25年3月末でサービスを終了する予定です。アップデートどころか、実質的にはユーザビリティがダウングレードされています。

ジャパンEVラリー白馬で知り合った神奈川県のAさんは「デザインが気に入って、インテリアにも未来感があって、一目惚れして購入しました」と振り返ります。販売終了にはなりますが「出来るだけ長く乗りたいです。情報共有はしていきたいですね」とコメントをくださいました。

電費王として「EV放浪記2.0」にも登場してもらった(関連記事)愛知県のばにらさんの感想は「今後のEV生産に生かして欲しい。値段と航続距離以外は良い車だと思いますけど、所有しないと良さがわからないですからね……」。今後については、出回っている車両台数が少ないので、故障や事故の時の修理が気になるそうです。私もそうですが、なんとばにらさんは「部品取りのために1台中古を買おうかと、本気で悩み中です」とのこと。

BMW i3や三菱i-MiEVなど、これまでにも生産終了になったEVは少なくありません。オーナーのみなさんの寂しさと不安がいやおうなく実感できました。とくにHonda eはあまりにも台数が少ないので、メインテナンスに対応してもらえるかどうかも気になります。旧車にも詳しい片岡さんによると「絶版車はみんなそうですが、部品交換にしても不具合にしてもメーカーが頼りにならなくなるので、乗り続けるなら情報を共有して助け合いをしていくことが必要です」とのこと。

Honda eオーナーのみなさん、これからもぜひみんなで協力していきましょう。オーナーズクラブへの参加(希望者はコメント欄でお知らせください)も引き続きお待ちしています。

取材・文/篠原 知存