車を選ぶときに気になる数値は燃費。ガソリン車では1リットルのガソリンで何キロ走行できるかで測りますが、電気自動車にガソリンは入りません。電気自動車には電費(でんぴ)がありますが、電気は見えないのでイメージしにくいですね。EVに乗ると気になる電費について解説します。
目次
電費って燃費とはどう違う?電費の単位は?
ガソリン車の燃費の単位はkm/l。電気自動車の電費の単位はkm/kWh(1kWhで走る距離)またはWh/km(1km走るために消費した電力)がよく使われます。実はガソリン車も、海外ではl/100kmすなわち、100km走行するのに必要なガソリンの量という燃費の単位があるのですが、日本ではkm/lに統一されています。km/kWhとWh/kmは簡単に電卓があれば計算できますのでご安心を。
km/kWh = 1000 ÷ Wh/km
逆も同じです。
さて電費の単位のkm/kWh。kmはキロメートルですから簡単ですよね。kWhは「キロワット時」または「キロワットアワー」と読みまして、1kWというパワーの電力を1時間連続して消費した場合の電力の量、すなわち電力量の単位となります。って言ってもピンときませんよね? カツ丼一杯は922kCal、1kWhは860.421kCalですから、カツ丼一杯がほぼ1.07kWhと言ったら分かりやすい? カツ丼一杯食べたらどこまで行けるか? みたいな感じですね。ああそうだ、家庭用の電子レンジでも強力なやつは1kWの出力があります。これを1時間つけっ放しにしたら大変なことになりますよね。まあそれくらいのエネルギーです。
国内で販売されている電気自動車の電費はおおよそ3km/kWhから7km/kWh程度まで。最も電費が良いのは2019年9月発売のテスラ モデル3 SR+。リンク先のページの一番下に「EPA電費」という項目があり、6.4km/kWhとなっています。
電費の基準、EPA電費とは
電気自動車ユーザーの方は「俺の電費はもっといいぞ!!」という方も多いに違いありません。その理由を知る前に、EPAって何なんでしょう?
EPAとは、アメリカ合衆国環境保護庁 – U.S. Environmental Protection Agencyの略であり、このEPAというお役所が基準として決めている電費計算方法がEPA電費です。同様な基準に、国際基準であるWLTC(WLTP)や日本独自の基準であるJC08があり、様々な違いがあります。そして当EVsmartサイトでは、すべて、このEPA電費を基準にサイトが作られ、記事が書かれています。記事をお読みになる際に、電費基準に惑わされる必要はありません。
ではなぜ国際標準でもない外国の基準である、EPA電費を使用する必要があるのでしょうか?
分かりやすく説明すると、EPA電費は我々一般の消費者が、実際に車を買って、実際に達成することができる電費に近いということが言えます。一般人で、WLTC電費より低い電費で走行できる、すなわち電気をより少ししか使わずにエコ運転できる人は限られ、一部の方はどうやってもWLTC電費を達成できません。すなわち、カタログに記載されているWLTC航続可能距離を満充電で走り切れないということになります。JC08は、電費テストドライバーでないと達成できないような仙人の値になっています。とはいえ少し前までは日本ではこれが法律で規定された基準でしたので、少し前までに発売された車両ではJC08基準で電費や航続距離が表示されていました。
JC08基準は誰も達成できないので問題外として、国際標準であるWLTCはどうなのでしょうか?
まずWLTCの基となるテスト方法、WLTPでは車両をパワーウェイトレシオによりClass 1,2,3に分割しています。そして日本で販売されている電気自動車やPHEVはClass 3に分類されます。クラスによりテスト方法が違うのですが(加速力が違うのですから当然ですね)、Class 3ではLow, Medium, High, Extra-Highの四段階の速度域に分けてテストを行い、電費や燃費を計測することになっています。
しかし!!ここでまた日本独自の基準が導入されているのです。このExtra-Highは最高130km/h程度までの速度を含むため、国ごとに採用するかどうか決めていい(!!)ことになっているのですが、なんと国土交通省はこれを採用しないことにしたのです。つまり、欧州車のWLTCと日本車のWLTCは単純に比較することはできません。高速度域、特に120km/h以上ではボディの空力特性が大きく燃費や電費に影響するため、日本のように背の高いクルマが多い国でExtra-Highを含めると極端に燃費・電費の数字が悪くなってしまうのです。そういうことが背景にあるのかもしれません。
これでWLTCは一筋縄ではいかないことがお分かりいただけたと思います。もう一つ、EPA電費を知るうえで大事なことがあります。
それは、EPA電費は充電器側から計測するということです。電気自動車では、100の電気を充電したとすると、イメージ的には(仮の数値です、様々な条件によって変化します)バッテリーに溜まる電気は90くらいに減ってしまいます。ガソリン車の場合、10リットルのガソリンは10リットルのままガソリンタンクに入りますが、電気自動車の場合は10%くらい充電時に損失があるのですね。急速充電の場合、これは急速充電器内で熱として放熱され、普通充電の場合は車載充電器内で熱が発生します。EPA基準では(実はここは国際的に統一されているのですが)クルマに入る直前のところでメーターを付け、実際にクルマに流れ込んだ充電電力量を持って電費を計算しています。なので、駆動用バッテリーから放電した電力量を基に表示している車載の電費計は、EPA電費より高い数値を示します。充電時のロスが含まれていないのですね。
これが「俺の電費はもっといいぞ!!」に対する答えなのです。
冬の電費
日本国内で購入可能な各電気自動車・PHEVのEPA電費を知るには、EVsmartの電気自動車・PHEVカタログが一番簡単ですが、この電費は当然エアコンOFF、ヒーターやワイパー等もOFFの状態で計測されたものです。車には様々な電装品があり、電費に影響を及ぼす電装品とそうでないものがあります。消費電力が大きく、かつ長時間に渡って使用するので電費への影響が大きい電装品には、エアコンと暖房があります。これ以外のワイパーやライト、カーオーディオやテレビ等は電気自動車のバッテリーのサイズに比べるととても消費電力が小さく、使用してもしなくても電費にはそれほど影響がありません。
日本の夏は、ほとんどの方がエアコン(冷房)を使うと思います。電気自動車のエアコンはガソリン車のエアコンとはちょっとだけ仕組みが異なります。エアコンはコンプレッサーという気体を圧縮する装置で、冷媒(れいばい)と呼ばれるモノを圧縮して気体から液体にし(ここで大量の熱が発生→この熱はファンで車外に捨てます)、この液体を車内に持ってきて、エバポレーターという装置の中で車内の熱い空気と熱交換させて一気に気化させ(ここで車内の空気は冷やされ同時に冷媒は気体に)、冷えた空気を車内にファンで送り込むという仕組み。
車内で冷えた熱は実は車内より暑い車外に捨てるという一見不思議な方法で、効率よく車内を冷やしています。エアコンの冷房時、使用したエネルギーに対する奪った熱の量の比率をCOPといい、車のエアコンでは3程度(モノによります)の性能を持っていることが多いです。つまり、3kWhの熱を除去するために必要な電力量はたった1kWhというわけです。
このコンプレッサーは、電気自動車ではバッテリーで駆動しており、ガソリン車ではエンジンで駆動していることが多いです。つまりエアコンを使っているとバッテリーが早く減るわけですが、実はそれほど大きな影響はなく、10%程度までです。エンジンが停止している間はエアコンが使えないのはこのためですが、逆に電気自動車ではバッテリーは常時使用可能なので、エアコンは車が停止中や人がいないときでも作動させることができます。
冬もエアコン? ただし、電気自動車の暖房は少し事情が違います。
電気自動車での暖房について説明しましょう。先ほどの冷房時のやり方を逆にして、エアコンを使って暖房すれば、、という考え方もあるのですが、実は一部の車種を除いてはあまり採用されていません。その主な理由は、先ほどのエアコンを暖房に使用した場合、効率が不足したり、氷点下などではそもそもCOPが1を切ってしまうことがあるからです。例えば夏、気温が35℃のときに25℃まで冷やせばそこそこ涼しいと思いますが、この時の温度変化は-10℃です。しかし気温が0℃のときに20℃まで温めると、温度変化は+20℃となり、COPを同じとしても冷房時の二倍の電力が必要になってしまいます。またエアコンは氷点下の気温には弱く、温度が下がれば下がるほどCOPが下がり、電気ストーブ以下の効率になってしまいます。
もう一つ面白いことをご紹介しましょう。氷点下の気温では当然車内は暖房ですが、もしそこで超急速充電をしたら、バッテリーはどうすべきでしょうか? はい、この場合はバッテリーは冷やさなければなりません。冷房と暖房が同時に必要となるのです。同様に、気温は低いが日本海側のように湿度が100%に近い状況では、車内を暖房し始めた瞬間から窓が曇って結露してしまいます。この時はデフロスターというものを使いますが、ガラスを必死に暖めてもなかなか曇りが取れてくれず、通常はエアコンを同時に使って除湿暖房というものを行います。乾いた暖かい空気を吹き付けて、ガラスの曇りを取るわけですね。このときエアコンは冷房、、いえそんなことしたら車内の人が凍え死んでしまいます。
これらのパターンをうまく解決するために、多くの電気自動車ではいまだにPTCヒーターという電気ストーブみたいな機構が暖房に使われています。氷点下の急速充電時は車内へのバルブを閉めてエアコンはフルパワーで冷房運転。除湿暖房時も同様に、適切にエアコンを冷房運転してその空気をPTCヒーターで再度暖めなおして(!!)窓ガラスの曇りを取るわけです。その代わり、電気自動車は電気ストーブと同様、走り出すと同時にすぐ温風が吹き出してきます。
さらに、バッテリーヒーターを搭載している車では、氷点下でも問題なく急速充電や走行ができる代わりに、バッテリーヒーター動作時はかなりの電力をこれにも食われます。
ガソリン車ではこのPTCヒーターの代わりに、実はエンジンの排熱が使えますので、基本的にエアコンは除湿暖房時にしか使われません。そのため、冬は夏より燃費が良くなります。逆に言えばエンジンは通常動作時、90%ものエネルギーを外に熱として捨てながら運転しているのです。また冬にヒーターを付けてもすぐに暖まらない理由は、エンジンが冷えているから。充分にアイドリングまたは走行をしてエンジンが無駄な熱を持つようになってはじめて、車内が暖房できるのです。
結果として、電気自動車やPHEVでは冬は相当な電費悪化があります。電気自動車で一番大型のテスラモデルS/Xでは、エアコン用のPTCヒーターが7kW、バッテリーヒーターが6kWにも及ぶとされていて、ピーク時の電力消費は13kWにも及びます。仮に40km/hでの走行時の「夏の」電費が5km/kWhであったとして(40km走るには8kWh必要)、冬は13kWの消費が15分間追加されると電費は3.56km/kWhに。約29%も悪化してしまいます。一般的に冬は20%-40%程度電費が悪化することを知っておくとよいでしょう。気温が低ければ低いほど、そして速度が遅ければ遅いほど、電費に対するマイナスの影響は大きいです。
それでも冬、暖房を切って我慢して運転する必要なんかありません! 普段は自宅充電で80%充電されている方が、「ちょっと足りなさそうだな」と思ったら、90%にすればいいのですし、普段20分急速充電するところを30分にすれば充分な程度です。
電費が良いクルマの条件、そして電費を良くする運転とは?
最後に、誰しも電費が良いクルマに憧れるものです。電気自動車の一つのウィークポイントである航続距離。電費が良いということは航続距離が長いということでもあるのですよね。例えばこの記事の最初のほうに出てきたテスラモデル3スタンダードレンジ・プラス (6.4km/kWh)はアイミーブX (5.36km/kWh)やリーフe+ X (5.36km/kWh)より19%高電費。このため実際に搭載しているバッテリー容量が55kWhのモデル3SR+のほうが、バッテリー容量62kWhのリーフe+ Xより航続距離が長いという逆転現象が起こっています。
電気自動車の電力は、自宅充電=普通充電の場合、充電器→車載充電器→バッテリーへ。そして走行時はバッテリー→インバーター→モーターと流れて車が走ります。また車が走る時にはタイヤが回転し、タイヤのゴムが路面と摩擦して前に進みますし、前に進めば空気の抵抗を受けます。この中で損失が一番大きいのは空気抵抗、その次がインバーター、モーターのような順になります。
まずは空気抵抗です。空気抵抗は非常にデリケートなもので、わずかな形状の変化で大きな効果があります。例えば電気自動車の多くは車体の底面を平らにしており、空気がスムースに流れるようにしています。これ以外にもフロントのグリルを無くす、ホイールを空力を重視したものを装備する、ドアハンドルを平らにする、そしてミラーを無くすなど、こうしたデザインの処理はすべて空力的には大きな改善効果があるとされています。
グリルについては、割と最近の電気自動車でも付けちゃってるケースがあります。デザイン上、無くすと難しいのかもしれませんね。ホイールはお聞きしたところ、なるべくお皿みたいな形のホイールが空力的にはいいそうです。でも穴を空けないと冷えないし、スポーク状にしないと見た目も今一つだし、これもなかなか難しいですね。モデル3では空力重視のホイールキャップを標準装備することで、この点をクリアしてきました。カッコ重視の方は外せばいいんですよね。ちょっとだけ電費が悪くなるけど。
ドアハンドルについては安全上の理由もあるのか、走行時平らになるようにしているのはテスラとジャガー i-Paceくらいでしょうか? テスラはモデルによって方式が異なり、モデルSはi-Paceと同様のリトラクタブルタイプ。電動で出たり引っ込んだりします。引っ込む力は電動ではなくバネを使うことにより、挟まれたときのケガを防いでいます。モデルXはただのスイッチ。押すと開いたり、閉じたりします。モデル3はS/Xの反省を生かしたのか、指で片方向を押し込むと反対側が「てこの原理」で飛び出し、それを残った指で掴んで開閉する新しいタイプのドアハンドル。非常時にもドアを掴みやすくするための工夫ですね。ミラーについては、ご存知の通り世界的にカメラとディスプレイになる方向で、法整備のほうも進んでいるようです。
空気抵抗で一番大きいものは、なんといってもボディ本体です。正面から見た投影面積と、全体の空気抵抗の度合いを示すCd値を掛け算したものが空気抵抗を示しますが、この抵抗の強さそのものが加速時には速度の三乗に比例します。「三乗」ですよ!! 表にまとめてみましょう。
| 速度の差 | 三乗(空気抵抗) | 二乗(電費への影響) | |
|---|---|---|---|
| 80km/h | 90km/h | 1.43倍 | 1.27倍 |
| 80km/h | 100km/h | 1.95倍 | 1.56倍 |
| 80km/h | 110km/h | 2.60倍 | 1.89倍 |
| 90km/h | 100km/h | 1.37倍 | 1.23倍 |
| 90km/h | 110km/h | 1.83倍 | 1.49倍 |
| 100km/h | 110km/h | 1.33倍 | 1.21倍 |
| 100km/h | 120km/h | 1.73倍 | 1.44倍 |
速度を10km/h上げる、または落とすだけでびっくりするくらい電費が変化することがお分かりいただけると思います。ちなみに、実際の空気抵抗の力は投影面積xCd値x(速度の三乗)に比例しますが、電費はそれだけ速く走行していますので、投影面積xCd値x(速度の二乗)に比例します。実際に気にするべきなのは右側の値ということに気を付けてください。
※(2020/3/12追記:TNO様コメントを受け、修正しました)
これが電気自動車の弱点か! と思った方。それが実は違うんです。ガソリン車でも空気抵抗は平等です。つまりスピードを出せば出すほど数十パーセント単位で燃費は悪化しますが、あまり気づかない方が多いですよね? ガソリン車は燃料計や燃費計がそれほど細かくなく、実際には悪化しても気づきにくいのです。またガソリン車の場合、高速道路ではオーバードライブなどの高いギア比が選択され、オートマチックトランスミッションがロックアップされたりなどして、ドライブトレイン全体の効率も良くなりますので、それによって打ち消されやすくなるのも事実だと思います。
インバーターにもいろいろあります。電気自動車の多くはシリコン(Si)を使ったIGBTというデバイスを使ってインバーターを構成しているのですが、テスラモデル3ではシリコンの代わりに最新材料のシリコンカーバイド(SiC)が使われており、今までのSiインバーターと比較して70-80%も損失を減らすことができています。これからは電気自動車のインバーターや車載充電器はSiCが主流になると思われます。
またモーターもIM(Induction Motor=誘導モーター), IPM(Interior Permanent Magnet=永久磁石モーター), そしてPMSRM(Permanent Magnet Switched Reluctance Motor=永久磁石スイッチトリラクタンスモーター)などの新しい技術が使われています。日産自動車や三菱自動車工業は以前より効率の良い永久磁石を用いたIPMモーターを使用してきました。
しかしIPMは大電力を与えると制御が難しく、大型の車両では採用が難しかったこと、そしてIPMは永久磁石に使われるレアアースのネオジムなどがほぼ必須であることから、テスラは効率を犠牲にしてIMモーターを初期のモデルSやモデルXで採用。しかしモデル3(と直近のマイナーチェンジ後のモデルS/X)では新しいPMSRMモーターを採用し、より小型の車両より高い電費を得ることに成功しています。
PMSRMも永久磁石を使用していますが、IPMとはアーキテクチャが異なり、効率が高いらしいです。また加速力を担保するため、モデル3ではこのPMSRMモーターをリアに配置し、フロントには従来のIMモーターを配置することにより、急加速時にはIMに大きくパワーを与え、通常の走行時はIMはほとんどオフにしてPMSRMだけで走行するなどの工夫もしています。IMはIPM/PMSRMなどと異なり、空転時に電力が不要なのも一つの特徴です。
電費が良いクルマ。もうお分かりですね。背を低く、平たく薄いクルマに。グリルレス、ドアハンドルレス、お皿のようなホイールまたはホイールキャップ。そしてSiCインバーターにSiC車載充電器とPM/PMSRMモーター搭載。これらがポイントになりそうです。
電費にいい運転のコツってあるの?
とはいえ背が低い平たい車にみんなが乗りたいわけじゃないですよね! じゃせめて、電費の良い運転とはどういう運転なのでしょうか。
実は、同じような平均速度で運転する場合、電気自動車はゆっくり加速しても急加速しても電費は大きく変わりません(加速時間が短くなるので)。そのため、キビキビと運転することによってのペナルティはあまりないのです。しかし大きいのは減速です。減速時、電気自動車では回生ブレーキというものが動作し、走行している車の運動エネルギーを発電機に与え、インバーターを通してバッテリーに充電して電力を戻します。しかしこの時に、半分くらいのエネルギーは損失として失われてしまいます。100のエネルギーで車を加速させ、その後すぐにすべてのエネルギーを回生ブレーキでバッテリーに戻しても、50しか戻ってこないというわけです。
つまりどういうことか? 電費を伸ばす究極の運転のためには回生はしないほうがいいのです! じゃブレーキで減速する? それはもっとダメです! ええ、じゃあどうやってスピードを落とせばいいの?
その答えは、「ゆっくり空気抵抗とタイヤの転がり抵抗だけで減速する」です。
ガソリン車でギアをニュートラルにしてアクセルもブレーキも踏まず走行したことのある方は多いと思います。この状態をコースティングと言いますが、このコースティングが一番電費に良いわけなんです。電気自動車の場合、コースティングがモードで用意されている車もありますが、例えばリーフのe-Pedalやテスラなどでは、コースティングを行う場合、エネルギーのメーターを見て、消費している電力がちょうどゼロを示すようにわずかにアクセルを踏んだ状態を維持すればOKです。アクセルを踏みすぎると電気がバッテリーからモーターに流れ、緩めすぎると速度が落ちて余ったエネルギーがバッテリーに戻っていきます。電力がゼロのポイントでは、車は空気抵抗とタイヤの転がり抵抗により、緩やかに減速していきます。下り坂では逆に加速してしまいますので注意が必要です。少し練習すれば簡単にこのコースティングができるようになります。
コースティングを効率よく、街中のドライビングに取り入れるのはあまり簡単ではありません。コースティングを長く行うには車間距離が必要となりますが、街中ではそこまで広い車間距離を取るのは他の車の迷惑になる可能性もあります。基本は、車間距離を他の方より広めにとり、さっさと流れの速度に合わせて加速し、その後は前走車の前やさらにその前、そして先々の信号などを見ながら、どのあたりで止まりそうかを思案しながらコースティング→アクセル軽く踏む→コースティング、を繰り返して停止ポイントに近づきます。前走車に追いつきそうになったらできる限りフットブレーキを使わず、回生ブレーキのみで減速して最後の電力を回収するわけです。案外回生したほうが電費がよい! と思っていらっしゃる方は、コースティングを意識してみると全然違う電費になることにお気づきになると思います。
(安川 洋)



