自動車4社が e-Mobility Power へ出資のニュースに、改めて「期待」を整理してみる

e-Mobility Power が総額150億円の資金調達を行い、国内自動車メーカー4社が出資するというニュースが発信されました。はたして何が起ころうとしているのか。そして、充電インフラの整備拡充に向けて、何を期待するべきなのか整理してみました。

出資者の構成はNCSと同じだけど

2021年4月5日、株式会社e-Mobility Power(イーモビリティパワー ※以下、eMP)が『第三者割当増資の実施について』というプレスリリースを発信しました。第三者割当増資により総額150億円の資金調達を実施して、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業の国内国内自動車メーカー4社がeMPに出資するという内容です。

これに先駆けて、4月1日からは今まで日本国内の電気自動車用充電インフラの運営を手がけてきた合同会社日本充電サービス(NCS)から継承した事業がスタート。3月29日には充電の認証課金サービスを行うネットワークベンダー最大手であるジャパンチャージネットワーク株式会社(JCN)を買収することが発表されて、このEVsmartブログでも報じてきたところ(それぞれ記事にテキストリンクを貼りました)です。

なんというか、eMPを中心にして日本の充電インフラ整備拡充がいよいよ動き始めた! という気配はひしひしと感じるのですが、自動車4社と、東京電力、中部電力、日本政策投資銀行という出資者の顔ぶれはNCSと変わっていません。いったい、NCSと比べて、何がどのように変わろうとしているのでしょうか。

事業の規模がそもそも大きくなる?

まず、eMPへの出資者は以下の7社です。

**●東京電力ホールディングス株式会社

●中部電力株式会社

●トヨタ自動車株式会社

●日産自動車株式会社

●本田技研工業株式会社

●三菱自動車工業株式会社

●株式会社日本政策投資銀行**

東京電力としてNCSに出資していたのは「東京電力エナジーパートナー株式会社」ですが、そこはざっくり東京電力ということで。

NCSとeMPを比べて、まず大きく異なるのは資本金の額。NCSは1億円だったのに対して、eMPは設立時が50億円、今回の増資によって200億円となりました。具体的な施策の詳細はまだよくわかりませんが、NCSがやってきたことよりも数段大規模な事業を手がけようとしている、と考えていいでしょう。

ちなみに、マツダやスバルなどの自動車メーカーがまだ出資しない理由は、わかりません。マツダは市販EVをローンチしたことだし、電動化への意欲を示すいい機会だと思うのですが、あくまでも充電インフラ整備は他社にお任せ、ということなのでしょうか。

電力会社が充電インフラ増強を担う覚悟の証

次に、NCSへの東京電力と中部電力の出資比率はそれぞれ0.5%とされていました。eMPでは増資後の出資比率が東京電力ホールディングスが54.7%、中部電力が36.4%、トヨタと日産、ホンダ、三菱自がそれぞれ1.9%、日本政策投資銀行が1.3%となります。

実は、今回の増資と自動車4社の出資によって何が起こるのか今ひとつ釈然としなかったので、eMPの関係者に電話で確認もしてみました。さすがに具体的な施策までは伺うことはできなかったものの「電力会社が中心となって充電インフラの増強を担う覚悟を決めた」と考えてよいという回答を聞くことができました。

従来のNCSは、NCS設立以前から先行して乱立したネットワークベンダーがユーザーから集める利用料金を、充電器を設置する事業者に分配するための集金&支払い機関のような役割にとどまっていた、とも言えます。それを、eMPでは「より主体的に充電インフラネットワーク構築を進めていく」という意図もあるようです。

今まで、日本の充電インフラは誰かが主体的に「こうあるべき」というビジョンを描いて整備されたというよりは、政府などからの補助金で負担を軽減しつつ、全国各地の設置事業者ありきでバラバラに設置されてきた印象があります。今後、eMPが「主体的」に設置を行っていくことで、日本の充電インフラが抱えてしまった課題も解決へ進んでいってくれるのではないかと期待します。

eMPに解決を期待する課題とは?

では、日本の充電インフラが抱える課題とは何でしょう。実は、先日の記事『イーモビリティパワーがJCNを買収へ〜EV急速充電サービスの進化が加速する?』でも同様に課題を提示しました。今回、増資のニュースを伝える記事のうち『MONOist』で齊藤由希さんという筆者がeMPへの取材で挙げられた「課題」を紹介していたので、それを参考にして加えつつ、再度端的にまとめておきます。

①高速道路SAPAへの急速充電器複数台設置

今後、電気自動車の普及台数が増えていくことが見込まれる中、充電渋滞の発生を防ぐためにも火急の課題となっています。

②急速充電インフラの高出力化

大容量電池を搭載したEVにとっては、50kWでも力不足。90〜150kWクラスの高出力器が増え、車両側が対応することが大切になってきています。

③急速充電器空白地帯の解消

北海道や東北などを中心に「10km四方に急速充電器が0基」という空白地帯が残っていて、eMPはその解消を目指すとのこと。10km四方というマス目を埋めていくのはあまり合理的ではないと感じるところもありますが、たとえば地方自治体ごと(できれば大合併前基準で)に必ず1カ所はあるといった状況になることは必要でしょう。

④高速道路や幹線道路の急速充電器空白区間解消

『MONOist』の記事によると、高速道路で70km以上にわたってSA/PAに充電器が設置されていない区間が全国に18カ所あるそうです。また、国道や県道などの幹線道路で急速充電器の空白区間が40km以上あるケースが全国で60カ所、70km以上が44カ所、100km以上の空白区間が11カ所あるとのこと。たしかに、一般道でも40〜50kmに必ず1カ所はあると安心感が高まります。

⑤認証&課金サービスの複雑さ

そもそも、充電インフラを利用するために、なぜ専用の充電認証カードが必要なのか、ユーザーの立場から考えるとよくわかりません。充電ケーブルを接続するだけで認証課金が行われたり、クレジットカードや交通系ICカードなどで支払いを済ませることができるような、シンプルでリーズナブルな仕組みが導入されると便利です。

⑥集合住宅や宿泊施設などへの普通充電設備拡充

急速充電器ばかりが注目されがちですが、集合住宅や月極駐車場などの基礎充電、また宿泊施設や商業施設などの目的地充電のための普通充電設備の拡充が大切です。eMPには普通充電設備を拡充するための電力供給や電気料金についての規定の改善(への働きかけ)などを期待したいところです。

⑦従量課金の実現

現在の国内の仕組みでは、充電した電力量ではなく時間によって利用料金が掛かる時間課金になっていることが、高出力器が増えない理由のひとつになっています。電力会社主体の取組が進むことで、合理的な従量課金が実現するといいですね。

⑧既存施設の更新

今、日本国内の充電インフラは、2013年に経産省が行った『次世代自動車充電インフラ整備』の補助金を活用して設置されたところが多く、これから数年間は既存充電設備の更新が大切な課題となります。更新と合わせて、必要に応じた複数台設置や高出力化も望まれます。

『MONOist』の記事では「公共充電サービスが事業として自立し、持続的な状態に達するには、国内で100〜150万台規模のEVの普及が必要」というeMPの見方が紹介されていました。「そりゃそうだよな」って話だし、だからこそ国内の自動車メーカーには庶民にも手頃で魅力的なEVをバシバシ繰り出して欲しいと願います。

それにしても、今まで何度となく充電インフラの現状を取材しつつ、かなり絞り込んだつもりなのですが、やっぱり解決すべき課題は山積してますね。

こうした課題を解決するために、はたして、eMPはどんなビジョンを描き、どのように手がけようとしているのか。いよいよ、きちんと取材をオファーしようと思います。そういえば、去年グッドデザイン賞を受賞した新型QCはいつどこに設置されるのかも聞いてみなきゃ、だし。読者のみなさんからも「これを聞いてくれ!」という質問などありましたら、コメントでお知らせください。そうか、みなさんにヒアリングするオンラインミーティングとか、一度やってみるのもいいですね。考えてみます!

(文/寄本 好則)