昨年、アメリカのテキサス州やロサンゼルスでFSD13とFSD14を使って長距離を運転し、今年に入って韓国、日本(テスト走行)、そしてヨーロッパのオランダでFSD走行を重ねてきた。今回はサンフランシスコで、最新のFSD14.3に乗る機会を得たので、進化の実感についてレポートしたい。
確実な進化を続けるFSD
昨年テキサスで乗ったFSD13や、FSD14の初期バージョンでも、市街地から高速道路まで運転をFSDに任せて大抵の場面で問題を感じることはなかった。行き先のレストランなどを設定してFSD起動ボタンをタップすれば、あとはテスラが目的地まで連れて行ってくれる。
当時、私が介入する必要があったのは目的地に到着して駐車するときで、一旦停車してから自動駐車を選ぶか、自分でハンドルを握って駐車するかのどちらかだった。この点はFSD14.1で目的地の駐車オプションを選べるようになり改善されている。
もう一つ気になっていたのが、夕日が強く差し込むような高速道路や一般道で、システムが運転を引き継ぐよう警告を出し、自動走行を解除してしまう場面だ。ロサンゼルスからラスベガスへ向かう際の夕日や、ロサンゼルスの早朝などで何度か経験した。また、ハンドルを握っていなくても前方をしっかり見ていないとすぐに警告が入るのは、正直なところ面倒に感じる部分もあった。
XなどのSNSでバージョンを重ねるごとにシステムが進化している様子は追っていたが、実際にどれほど進化しているのかを自分の手で確かめられたのが今回の収穫だ。今回乗ったテスラはモデル3 パフォーマンスで、FSDは14.3.7が搭載されていた。実際に運転した4日間(基本的に朝9時から夜9時まで、市内のさまざまな場所を移動)のうち、システムから警告を受けたのは一度だけ。自動運転中に後部座席のカバンから財布を取ろうと振り向いたときだけだった。
何度か夕日に向かって走る場面もあり、サンバイザーを下げても前方が見えにくいようなシーンもあったが、そうした状況でも一度もFSDが運転をやめることはなかった。これは明らかな進化と言える。充電をする必要がある際は、目的地にスーパーチャージャーステーションをセットすると、ビルの駐車場まで自ら入って行き、空きスペースを見つけ自動駐車する。
アイズオフの検知についても、普通にスマートフォンを見るくらいでは警告が出てこなくなっており、SNSやゲーム、食事をしながら運転するユーザーがいるのも理解できる(もちろん現在のバージョンは監督する必要があるので、運転中は注意を払わなければならない)。一方、前回のオランダ編の記事で紹介した通り、欧州では当局の規制が厳しく、少しでも目を逸らすとすぐに警告が入り、前方を見直さなければならない。同じFSDでも、地域によってアイズオフの許容度がここまで異なるのは興味深い。
AIチャットボット「Grok」との統合
もう一つ優れていたのが、Grokとの連携だ。昨年11月の時点でGrokはすでに車両に実装されていたが、FSDとの連携はまだ実現していなかった。今回は目的地設定をすべて「Hey Grok」で呼び出したGrokに任せた。「ハンバーガーが食べたい」「ゴールデンゲートブリッジが見える公園を教えて」といった曖昧な依頼にも、いくつか候補を提案してくれる。そこで「ナビして」と伝えれば、そのまま目的地に設定してくれる仕組みだ。
途中でコーヒーが飲みたくなれば「ルート沿いで有名なコーヒーショップを探して」と頼めばGoogleやYelpのレビューを教えてくれるし、充電したいときは「250kWで充電できる場所に行って」と依頼するだけでいい。これらはすべて日本語で会話できる。さらに、ゴールデンゲートブリッジの歴史をGrokに尋ねたり、人気のレストランへ向かう際にその周辺エリアの治安を確認したりと、旅先でのさまざまな疑問をその場で解消できるのは本当に便利で、観光にもぴったりの機能だと感じた。
駐車オプションと速度プロファイルの進化
目的地での駐車オプションも更新されており、「パーキング」か「プルオーバー」を選択できるようになっていた。パーキングを選べば近くの駐車場に目的地を自動で設定してくれるし、プルオーバーを選べばその場でそのまま停車する。実際の使い勝手に合わせた便利なアップデートだ。スーパーチャージャーでの充電を選択した場合は、到着後にシステムが自動で空いている充電スペースを探し、バックで駐車まで済ませてくれる。すべてが自動で完結する。
このほか、速度プロファイルの設定もあり、「スロース(ナマケモノのアイコン)」「コンフォート」「標準」「急ぎ」「マッドマックス」の5段階から選べる。スロースが最も遅く、マッドマックスが最も速い。普段は「標準」か「急ぎ」で運転していたが、「マッドマックス」にすると、すぐに追い越し車線に移り前の車を追い抜いていき、その名の通りかなりのスピードを出す(速度超過する)。逆に「スロース」は遅すぎるということはなく、確実な運転を心がけるモードなので、日本人にとってはこのくらいがちょうど良い運転感覚かもしれない。「標準」にしておけば速度超過はしないので、違反を気にする必要もない。
一般公開となったサイバーキャブも目撃
テスラは9月4日、テキサス州オースティンでイベントを開催し、ロボタクシー専用車「サイバーキャブ」を一般公開した。無人ロボタクシーの分野では、アルファベット傘下のウェイモが市場をリードしているが、テスラが独自の製造方式「アンボックスド·プロセス」を武器にどこまでスケールし追いつけるのか、注目が集まっている。
シリコンバレー(サンノゼ)のテスラ旗艦店、サンタナロウ店は今年7月に、自動運転をテーマにしたギャラリーへとショールームが改装された。中央にはサイバーキャブが展示され、周囲の壁にはFSDの歴史やサイバーキャブのハードウェア、FSDの仕組みについての解説が並ぶ。実際にダウンタウンの街中を走行したり充電したりするサイバーキャブの姿も目撃できた。
アメリカの街中を実際に走る様子を見ると、そのコンパクトさがよくわかる。途中、ウェイモのジャガーI-PACEと並走している場面にも遭遇したが、それと比べてもかなりコンパクトだ。この大きさであれば、ヨーロッパや日本の細い道でも十分に走行できるだろう。
今後のFSDのマイルストーンは、バージョン15への進化と、監視なしFSDの実現だ。現在は市販車と同じモデルYがロボタクシーとして運行しており、こうした実績を各地域で積み重ねながら安全性が統計的に証明されていけば、HW4以降の市販車にも監視なしFSDの道筋が見えてくるのではないだろうか。
文/前田謙一郎(x.com)



