テスラ人気に見る日本のEV市場の将来をアメリカのメディアが解説

電気自動車シフトの遅れが指摘される日本でも、最近テスラの車を見かける機会が増えてきました。はたして、テスラが日本市場を変えていくのでしょうか。アメリカメディアの『CleanTechnica』に紹介された「外から見たニッポン」の解説記事を全文翻訳でお届けします。

元記事:Tesla’s Popularity In Japan & Its Future EV Marketby Carolyn Fortuna on『CleanTechnica

日本は世界のEVメーカーに追いつけるのでしょうか。ハイブリッドにフォーカスするという誤った初期判断を下したトヨタの牙城を、テスラは崩すのでしょうか。

日本でのEVシェアは自動車市場のたった1%で、2021年に日本に輸入されたEVは8,610台でした。そのうち5,200台以上が人気を牽引するテスラ車両で、2020年の1,900台から数字を大幅に伸ばしています。ここでのポイントは、米国の電気自動車メーカーが日本の若年層と富裕層の間で市場シェアを広げている点です。

日本では1人あたりの国民総所得が高く、メルセデス・ベンツなどのハイエンドな欧州車に対する熱狂的な人気もあるため、テスラを渇望する国内のアーリーアダプターの動きは注目に値するものです。Japan Timesによると、充電ステーション、EV専用駐車区画、適切な補助金が足りないなどの理由で、日本でのEVシフトは比較的遅れています。さらに車両価格もガソリン車より高くなりがちです。

日本でEVシフトが遅れた責任は自動車メーカーにある

日本が長い間水素燃料電池車と既存ハイブリッド車両に固執した結果、EVは未来の片鱗よりも曖昧なものになっているようです。

水素は特定の産業には不可欠なもので、有名なところでは(環境汚染をする)人口肥料の主原料であるアンモニア精製に使われます。このような用途に使われる水素は、一般的な化石燃料ではなく再生可能エネルギーから生産することもできます(グリーン水素)。しかし、交通用エネルギーとしては水素がバッテリーよりもかなり効率が悪いことがすでに判明しており(ある研究によるとウェル トゥ ホイールで22% vs 73%)、運搬にも巨大な新しいインフラを建てる必要があります。燃料電池車のアドバンテージは長い航続距離と充填時間の短さですが、バッテリーと充電技術の進歩で急速にまくられてきています。

さらに、約25年前に始まったトヨタ・プリウスなどのハイブリッドへの傾倒が究極の間違いで、EV生産においては世界から日本を遅らせることになりました。ロイターによると、トヨタは2030年までに8兆円を電動化に投資し、世界で350万台のBEVを販売する予定で、これは現時点でのトヨタの年間販売台数の3分の1に値します。

テスラが日本に来た2014年に、3つの大手自動車メーカーが牛耳る閉ざされた市場は電気自動車にほとんど興味を示しませんでした。その例外が日産です。

日産リーフは10年以上前に登場し、大衆にとっては革命的なEVで、2020年末までに50万台が売れました。しかし日本のスタンスはハイブリッド技術への大型投資をできるだけ長く続けるというものでした。リーフの元チーフデザイナーである井上真人氏は、この短期的なフォーカスにより、国の重要な産業が変革期を見逃すリスクに晒されたとニューヨークタイムズに話しました。「ディスラプションが起こる時には必ず恐怖もつきまといます」と、2014年に日産を退職した彼は言います。しかし準備ができていようがなかろうが、「電気自動車の大きな波が、実際に来ています」。

今年後半に出てくるトヨタ初のマス市場向け純電気自動車は、より大きなマーケットで確立されたEV需要に応えるため、日本国内の消費者には販売されません。日経アジアはトヨタが12月に概要を発表した新しい電気戦略から出てくる初のモデルであるbZ4Xが、最短で5月か6月からKintoサブスクリプションサービスを通じて消費者に提供されると報じています。

1月後半にサプライヤーに届いた計画によると、トヨタは4月に生産を開始し、2022会計年度中に世界で6万台弱の生産と、2021年に売れた1万4,000台を超えた目標を掲げています。2023年度には5万台を目指していますが、総生産量のうち日本市場に出されるのは10%以下で、そのほとんどが環境規制の強化された、電気自動車市場の競争が激化している北米、欧州に渡ります。

トヨタが発表した英国でのbZ4Xの価格は41,950ポンド(約657万円)~です。

テスラ人気の影響

昨年サプライチェーンの問題があったにも関わらず、テスラのデリバリー台数は世界で93万6,000台で、前年比87%増となりました。日本でテスラの認知度は急速に上がってきており、EV充電器にアクセス可能な都市部に住む消費者のステータスシンボルとなりました。1年前にモデル3の価格が24%下がった(※ロングレンジ)のも、日本市場にとっては魅力に映りました。

テスラの充電ステーションは都市部に集中しています。社は今年日本に充電器をいくつ作るのか明言していませんが、ウェブサイトでは充電ステーションのProject Deployment Managerを募集しています。

2010年、テスラは選ばれた顧客向けにジャパン・シグネチャーシリーズのロードスターを12台、カリフォルニアのポート・ワイニミから横浜に運びました。このデリバリーは次世代のEVセル開発を加速するためにテスラがパナソニックとパートナーシップを結ぶというニュースに合わせて行われました。当時イーロン・マスクは「最新のテクノロジーへの関心と評価、そしてハイレベルな車への情熱を持つ日本は自然とロードスター向けの市場となります。テスラのロードスターはパフォーマンス、デザイン、エンジニアリングにおいてまったく妥協のない車です」と話しています。

この頃日本政府は二酸化炭素排出量を2020年までに25%削減する目標を立てていました。日本にテスラを輸入する『ソフト』な障害が種々ある中、国内販売用の車両は1台1台すべて、日本の規制に見合っているか検査を受ける必要がありました。

時間を巻き戻して2022年、政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現し、2030年までに排出量を2013年レベルから半分にするとしています。ガソリン車は2030年半ばまでに禁止されます。補助金もこれまでの倍である最大80万円にして、EVをさらに手が届きやすいようにしました。

同時に、テスラは初のデリバリー用センターを2021年にオープンしました。HIS Markitは年末に日本で発売されると見られるモデルYを待つ潜在顧客がいるため、テスラのセールスが短期間止まるのではないかと予想しています。

しかしテスラへの熱狂は続くと見られます。ブランドの魅力はポップカルチャーアイコンからも発信されているのです。メジャーリーグの大谷翔平選手はテスラ愛を見せつけ、プロサーファーの進藤晃もテスラを運転する楽しさを話しています。

またポップグループPerfumeのミュージックビデオ内で前面に押し出されている事からも、テスラの人気は明らかです。

(翻訳・文/杉田 明子)