中国で開催中の広州モーターショーで、レクサス(LEXUS)ブランドで初めての電気自動車(EV)市販モデルとなる『UX300e』が世界初公開されました。電池容量は54.3kWh。電池温度管理機能を備えるなど、完成度の高い電気自動車に仕上がっている印象です。
VWやテスラに比べて「そっと出してきた」印象も
2019年11月22日(金)~12月1日(日)の日程で、中国の広州市で開催されている広州モーターショーで、レクサス初の市販電気自動車となる『UX300e』が公開されました。2020年以降、中国や欧州などを皮切りに順次発売し、日本でも2021年前半には市販される予定とされています。今のところ、レクサスを含む「トヨタ」として日本での発売を明言した量産電気自動車はまだありません。つまり、トヨタが日本で初めて本格的に発売する量産電気自動車といえます。
みなさんは、目の前に世界地図を広げて「広州」の位置を即座に指さすことができるでしょうか? 私はできません(この記事のために調べたので今はできるけど)でした。広東省の省都で、中国国内では北京、上海に次ぐ三大都市のひとつに数えられているそうです。日本でいえば、東京、横浜に次ぐ大阪や名古屋のような位置付けの街ですね。
ここのところ、フォルクスワーゲンが宰相を招いてID.3の生産開始イベントを開催したり、テスラ『サイバートラック』の発表などド派手な電気自動車関連の話題が続いていただけに、レクサス&トヨタの電動化推進を象徴する記念碑的なモデルであるにも関わらず、中国第3の都市で開催されるモーターショーでお披露目というのが、「そっと静かに出してきた」とも感じます。
もちろん、派手なセレモニーなどはなくても日本国内のメディア向けリリースはしっかり情報発信されていて、「電動化ビジョン『Lexus Electrified』第1弾となるEVクロスオーバー」であることがアピールされています。
ちなみに『Lexus Electrified』というのは、先だって東京モーターショーで発表されたレクサスの電動化ビジョンのこと。ビジョンを象徴するコンセプトカーとして『LF-30 Electrified』が出展されていました。
はたして、どんな電気自動車なのか
まだ、実車に試乗などができるわけでないので、リリースなどの情報から「UX300eはどんなEVなのか」整理してみます。
まず、UXはすでにレクサスブランドにラインアップしているSUVモデルで、このUX300eはパワートレインをBEVに積み替えた、いわゆるコンバージョンモデルとなります。ID.3などのように、EV用に開発された専用プラットフォームではありません。とはいえ「GA-Cプラットフォームの高い基本性能をさらに磨き上げるべく、ブレースの追加やショックアブソーバーの減衰力最適化など、EV化による運動特性の変化に合わせ、細部に至るまでチューニングを施しました」ということなので、レクサスらしい高級感が、電動化によってさらに高まっているのであろう、と想像します。
バッテリー容量は冒頭に紹介した通り、54.3kWhで、航続距離は400km(NEDC)、EPA基準の実用的な距離としては250〜300km(推定値)程度かと思われます。普通充電は最大6.6kW、急速充電は最大50kW対応であることが諸元として公表されました。90kWや150kWといった高出力には対応していないようです。
各国での急速充電規格についてはリリースに情報がなかったので広報部に質問。日本と欧州(おそらくアメリカも)ではCHAdeMO規格、中国では中国国内の規格である「GB/T」(日本のCHAdeMOと共同で高出力規格を策定中)対応になるという回答をいただきました。
バッテリー温度管理機能も搭載
モーターのパワーは、最高出力が150kW(204ps)、最大トルクは300Nm(30.6Kgf・m)。ハイブリッドモデルのUX250hは、最高出力107kW(146ps)/6000rpm、最大トルクは188Nm(19.2Kgf・m)/4400rpmなので、最もパワフルな「UX」になるといえます。
価格は未公表ですが、UX250hが約433万円〜なので、500万円前後と考えるのが妥当でしょう。
最新のコネクティッド技術を採用して「専用アプリによるスマートフォンとの連携」が可能。予防安全パッケージ「Lexus Safety System +」を採用するなど、レクサスらしいクルマとしての「高性能」はしっかりと盛り込まれるのは間違いないでしょう。
EVsmartブログとして注目したいのは「低温/高温下でも正常に動作するようバッテリーに温度調整機能を備えるほか、過充電防止システムや、多重監視のセーフネットにより、高い信頼性を実現」しているところです。世界各国のメーカーからさまざまなEVが発売される中、市販EVの先駆けとなった日産リーフは、電池の温度管理システムをもたないことが、ともすれば充電や走行性能をも左右する「弱点」として浮かび上がりつつあります。
トヨタが得意なハイブリッド車ではBEVほど重要な技術でもないので、さすがのトヨタにも量産EV用バッテリー温度管理の豊富な知見やノウハウがあるわけではないでしょう。でも、量産電気自動車を市販するに当たり、揚げ足になりかねない弱点をしっかりと消してくるあたりには、トヨタならではの堅実な姿勢が垣間見える気がします。
モーターショー会場でも静かに展示されていたそうです
東京で雑務に埋もれながら「ああ。広州へ取材に行って、おいしい上海ガニでも(広州に安くて美味しい上海ガニの店があるのかどうかは知りません)食べたいなぁ」と思っていたら、Facebookの友達でもあるOZコーポレーションの古川さんが、広州モーターショー会場から投稿していました。
これ幸いと会場でのUX300e展示の写真をお願いし、「インパネ周りで気になるところ(電池温度表示とか)あったら教えてください」とお願いしたのですが、残念ながら一般公開日のUX300eは壇上で回っていて、室内や充電口など細かいところを見ることはできなかったそうです。
さらにブース内での配置もやや端っこで「レクサスの押しはやっぱりハイブリッド」という印象だったそうです。
OZの古川さんは私が中古リーフを購入した際に電池のSOCを調べる相談に伺った方。ヴィンテージカーのEVへのコンバートなどに仕事として取り組んでいて、YouTubeでバズったEVセドリックをコンバートした人でもあります。
広州からの古川さんの投稿では、小鹏(シャオパン)汽車という中国の新興EVメーカーのコンパクトSUVが主役になっています。電池量66.5kWh、航続距離520kmでオートパイロット装備、価格は250万円〜とのこと。
もちろん、ディテイルや品質の信頼感には大きな差があるのでしょうが、レクサスUX300eはこうしたライバルと中国市場という同じ土俵で戦わなくてはいけないんですね。
トヨタは今年4月に開催された上海モーターショーで、トヨタブランドとして中国初投入となるEVである『C-HR』と『IZOA』も発表しています。この2車種については日本発売は言及されていませんが、「中国で初披露したC-HR/IZOAのEV 2車種を皮切りに、2020年代前半には、グローバルで10車種以上のEVの展開を予定」していることを明言しています。
はたして、トヨタからどんなBEVが登場してくるのか。また、中国市場での新興メーカーとの勝負はどうなるか。今後に注目したいと思います。
(文/寄本 好則 写真協力/古川 治 OZ Corporation)









