もっと電気自動車の充電スポットの数が増えないとだめ?

結論:一戸建てであれば、電気自動車やPHEVは自宅で充電できますので、普段外で充電する必要はありません。また遠出する際の急速充電器はどんな地方でも、ほぼ十分な数があると言えます。将来的には不安がないとは言えません。

ガソリン車はガソリンスタンドでガソリンを給油します。電気自動車やPHEV(プラグインハイブリッド車=充電できるハイブリッド車)は自宅の充電設備か、または外出先の充電スポットで充電します。もちろん、PHEVはガソリンや軽油などの燃料を電気以外に使うことができますので、文字通り給油することもできるので便利です。自宅の充電設備については、こちらの記事にまとめてあります。

目次

充電スポットの数

日本国内にガソリンスタンドは約3.4万か所あると言われていますが、電気自動車の充電スポット(充電ステーション)の数はいくつでしょうか?ざっくりした数字でお伝えすると、急速充電スポットがこの記事執筆現在で約4千5百か所、普通充電スポットが約7千8百か所、合計1万か所(両方設置は1か所に計算)あります。結構ありますよね?ちなみに、ガソリンスタンド数は1994年度の6万か所をピークに、現在はほぼ半減しています。

プラグインハイブリッド車(PHEV)でしたらガソリンでも走れますし、ガソリンスタンドがない地域というのはゼロですからほぼ問題ないのですが、電気自動車(BEVと呼びます、バッテリーだけで走行するという意味です)の場合は、家からバッテリー満充電でスタートしても、途中で充電が必要になる場合があります。また往路途中で充電した場合には、復路でも充電しなければならない場合が多いのですが、目的地に滞在・宿泊中に充電できるケースもあります。移動中における充電を経路充電、目的地における充電を目的地充電と呼び、経路充電はより短時間で充電できる急速充電器、目的地充電は時間がかかってもよいので普通充電器が用いられることが多いのです。

現時点ではまだまだ目的地充電は十分ではないのですが、ショッピングセンターや旅館・ホテル、スキー場などが普通充電器を設置するケースが増えてきていますので、買い物中や夜寝ている間に満タンにできる場所も増えてきています。

そんなこと言っても田舎に行くと充電スポットなんかないんでしょ?

そう思う方のために簡単に調査をしてみました。データは平成22年度国勢調査の人口と面積を使い、過疎法に定める616過疎地域市町村を人口密度の低い順にソートして、それぞれについて最寄りの急速充電器が何キロ離れているかを調べてみました。トップ10はそのまま出しましたが、北海道がどうしても多くなりますので、追加で5件のみ北海道以外も出してみました。この15市町村の平均人口密度は3.23人/km2、すなわち1キロ四方の面積に3人くらい住んでいるようなイメージです。1キロ四方の面積といってもイメージが付かない方に、日本全国の一戸建て住宅の平均土地面積(古ーい家も含みますよ!)が約280m2(84.7坪)で、1キロ四方にはこの家を3571軒!建てることができます。ご参考までに、東京都の奥多摩町の人口密度は約26.8人です。

データの見方ですが、順位は日本全国内での過疎市町村(人口密度ベース)、人口は2010年国勢調査現在で単位は人、面積の単位は1キロ四方あたり、人口密度は1平方キロあたりの人数、距離は最寄りの充電スポットまでの距離です。案外、1時間もドライブすれば充電スポットにたどり着くことができ、近隣で買い物して帰ってくるくらいはできますね!

順位 県名 市町村名 人口 面積 人口密度 距離 最寄りの充電スポット
1 福島県 檜枝岐村 636 390.5 1.63 77km 道の駅 湯西川道の駅 湯西川
2 北海道 幌加内町 1710 767.03 2.23 44km 旭川日産自動車 士別店
3 北海道 占冠村 1394 571.31 2.44 50km 旭川日産自動車 富良野店
4 奈良県 上北山村 683 274.05 2.49 61km 日産プリンス三重販売 尾鷲店
5 長野県 王滝村 965 310.86 3.1 20km 松本日産自動車 木曽店
6 北海道 中川町 1907 594.87 3.21 39km 幌延町役場
7 山梨県 早川町 1246 369.86 3.37 26km 道の駅 富士川
8 奈良県 野迫川村 524 155.03 3.38 13km 高野町役場
9 北海道 音威子府村 995 275.64 3.61 47km 旭川日産自動車 枝幸店
10 北海道 西興部村 1135 308.12 3.68 45km シティもんべつ店
14 高知県 大川村 411 95.28 4.31 50km ファミリーマート 高知インター店
18 宮崎県 西米良村 1241 271.56 4.57 47km ENEOS Misumi セルフ人吉インターSS
21 長野県 大鹿村 1160 248.35 4.67 0km 大鹿村役場
22 熊本県 五木村 1205 252.94 4.76 28km ENEOS Misumi セルフ人吉インターSS
24 岐阜県 白川村 1733 356.55 4.86 36km 道の駅 桜の郷荘川 ひだ荘川温泉「桜香の湯」

急速充電スポットの出力

急速充電スポットの数は十分あって、電気自動車を活用できない地域は非常に少ないということは分かりましたが、実はもう一つ、電気自動車にとって重要なポイントが「出力」です。出力はkW(キロワット)で表し、大きいほど、たくさんの量の電気を速くバッテリーに充電することができます。速く、というのは大事ですよね。日本国内における普通充電器の出力はおおよそ3kW、CHAdeMO規格の急速充電器は最大50kWで、急速充電器は普通充電器の16倍のパワーを持っていることが分かります。ちなみに日本で最もハイパワー・高出力の急速充電器は、テスラモーターズのスーパーチャージャー(本記事執筆時現在6か所のみ)で、120kWあります。

日本国内に普及している標準規格のCHAdeMO急速充電器は、コネクターこそ標準化されていますが、出力はまちまちで、6kW程度のものから50kWまでさまざまなタイプのものが設置されています。例えば日産リーフの場合、空のバッテリーを80%まで急速充電する場合、50kWの急速充電器なら30分ですが、20kWの急速充電器では1時間必要となります。三菱アウトランダーPHEVの場合は、50kWでも20kWでも30分です。テスラモデルS 85kWhモデルの場合、50kWでは約90分、20kWでは3時間45分!となります。出力と車のタイプ、バッテリーの残量によって、充電時間が変わるのです。一般的に、PHEVなどバッテリーの小さい車種は大出力を受け止めきれないため、ゆっくり充電する必要があります。上の例で、リーフはアウトランダーPHEVの倍くらいのパワーを受け止められるということになります。

バッテリーの大きな電気自動車(BEV)にとっては、出力は充電時間を倍くらい左右するので、重要な問題になると言えますね。経路充電は最低限の時間で済ませたいもの。急速充電スポットの出力は重要な情報というわけです。

電気自動車の経路充電の将来

BEVの経路充電、すなわち外出先での充電は、充電器出力に左右されると先ほど書きました。では2年後をちょっと想像してみましょう。日産はリーフのフルモデルチェンジで、バッテリー容量を増やすでしょう。バッテリー容量を増やすか、車を軽く、低くすると航続距離は伸びます。BEVではバッテリーが重いので、軽くするには鉄ではなくてアルミ(修理が高くなる)やカーボンファイバー(そもそも高価、破損時は交換が必要)など、なかなか難しい課題があります。車を低くするとシニアの方は困りますね。米GMのBOLTがおそらく生産され、バッテリーは約51kWhで320kmの航続距離を持つとされています。テスラもモデル3で320kmの航続距離を出すと発表しています。

現行リーフの航続距離はJC08基準(日本の標準です)で228kmですが、米国EPA基準では84マイルすなわち134kmとなります。仮にリーフのボディを大きく変えずにバッテリーだけを増やして(実際にはそんなことは不可能です)航続距離をEPA基準で300kmに伸ばすとすると、約53kWhと現在の倍以上の大きさのバッテリーが必要となります。

バッテリーの容量が倍 = 充電時間も倍の1時間

になるのです。2年後、現行のテスラモデルSに加え、50kWh越えのバッテリーを持つ長距離BEVが発売されると、現行の50kW急速充電器では1時間充電、20kW急速充電器では2時間30分かかり、50kW未満の急速充電器は2年後の新車BEVの経路充電用としては事実上使えない、ということが分かります。なかなか厳しい現実ですね。

急速充電器をこれから設置される、経路充電を想定される事業者の方は、なるべく余裕を持った設計を依頼するとよいでしょう。現実に、テスラは120kWで世界中に設置していますし、韓国の起亜自動車は欧州で100kW急速充電器の設置を始めました。今後経路充電用の急速充電器は、日本においても100kWオーバーの時代がやってくる可能性が高いと思います。逆に、100kWオーバーの急速充電器が普及しなければ、長距離BEVの普及はないとも言えるかも知れません。