ポールスターが自社製電気自動車のLCAを公表~ユーザーの信頼獲得へ業界を牽引

EVメーカーとしてスウェーデンに誕生した『ポールスター』が、自社製電気自動車のカーボンフットプリント(LCA)を発表しました。再エネ電力で走行すればCO2排出はエンジン車の半分以下。発表の目的は自動車業界に対する消費者の信頼を高めるためとしています。

日本への導入はまったく発表されていませんが

『Polestar(ポールスター)』は、スウェーデンの『ボルボ』と中国の『吉利グループ(Geely Holding)』が合弁で設立した、プレミアムEVブランド(ベンチャー)です。2019年にはプラグインハイブリッド車(PHEV)の『ポールスター1』を限定1500台で発売。さらに量産BEVである『ポールスター2』を欧州や北米、中国市場などで販売中。さらに、電気自動車SUCの『ポールスター3』を開発中であることが伝えられています。

日本ではボルボ・カー・ジャパンが『Polestar Engineered』と銘打ったPHEVのスペシャルモデルを展開していますが、『Polestar』と『VOLVO』は別会社。ポールスター2などの日本導入については、まだまったく発表などはありません。

クルマの電動化はゲームのゴールではなく、スタート

そのポールスターが、グローバルのニュースサイトで、2021年9月2日、『Polestar leads car industry towards greater consumer transparency with new report(ポールスターが消費者に高い透明性を提供できるよう業界を牽引)』と題したプレスリリースを発表しました。

発表には、ポールスター2のモデルごとに、ボルボ『XC40』のガソリンエンジン車と比較したカーボンフットプリントがわかりやすいグラフで添えられています。

念のために解説しておくと、LCA(Life Cycle Assessment)とは、製品やサービスの原料調達、生産、流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクルにおける環境負荷を評価する手法のこと。「カーボンフットプリント」とは、製品やサービスの原料調達、生産、流通、使用、廃棄に至るまでライフサイクル全体の「温室効果ガス排出量をCO2に換算して明示する考え方で、排出重量に「CO2e(equivalent=相当)」を付け、「kg CO2e」「tonnes CO2e」のように表記します。

まずは、ポールスターが公表したカーボンフットプリントのグラフをご紹介しておきます。

ポールスター2 スタンダードレンジ シングルモーター

ポールスター2 ロングレンジ シングルモーター

ポールスター2 ロングレンジ デュアルモーター

「Life Cycle」の走行距離を20万kmに設定し、モデルバリエーションごとに、発電方法(地域)別のわかりやすいグラフにまとめられています。

グラフの左端はボルボXC40のガソリンエンジン車。右側の3つが、左から「グローバルの電力の場合」「ヨーロッパの電力の場合」と「風力発電のみの場合」を示しています。

棒グラフ縦軸の色分けは、下から、濃いグレーが「原材料調達」「リチウムイオンバッテリーモジュール」「製造過程」「使用フェーズ(つまりは走行のためのエネルギー)」「廃棄」における排出量です。

使用時のCO2排出は?

3モデルの結果を一覧に並べ、縦軸を「製造や廃棄」と「使用フェーズ」だけとしてシンプルに紹介するグラフもありました。

一目瞭然。「Wind power」で走った場合、ガソリンエンジン車が「58 tonnes CO2e」であるのに比べ、ポールスター2は「25~27 tonnes CO2e」と、LCAでは半分以下のCO2排出量であることがわかります。ただし、グローバルの再エネ電力普及の状況で計算すると「45~50 tonnes CO2e」となることも示されています。

プレスリリースのサマリーにはポールスターのCEOであるトーマス・インゲンラス氏の「車の電動化がゲーム終了ではありません。そこが始まりです」という言葉がピックアップされていました。個人が使う製品としては大きく重く、走行にもエネルギーを使う自動車のメーカーには、脱炭素社会実現に向けて大きな責任があるといえるでしょう。ただし、自動車の脱炭素化は、自動車メーカーだけで解決できる問題ではなく、発電方法の脱炭素化、すなわち風力発電をはじめとした再生可能エネルギーへのシフトが肝要であることを、わかりやすく理解できるグラフだと思います。

また、リリースでは「自動車業界への消費者の信頼は低く、環境への影響に関してより高い透明性が求められている」と指摘されているのが印象的でした。

EVメーカーであるポールスターにとっては、EVのカーボンフットプリントがICEに比べて有利であるのは、自社製品の優位性を示すことになるので、穿った見方をすれば「セールストーク」と考えることもできます。でも、2050年のゼロ・カーボン社会実現に向け、あらゆる企業が本気で脱炭素に取り組むべきというのは世界全体の要求であり流れです。「業界を牽引」するというポールスターの意思と決意に共感し、応援したいと思います。って、まあ、当面の日本では買えないクルマなのですが……。

このグラフが示すカーボンフットプリントの概要については、グローバルのニュースサイトにPDFが公開されていました。細かく検証はしていませんが、フェアな姿勢だと思います。

願わくば、世界中の自動車メーカーが、ポールスターと同様に自動車のカーボンフットプリントを明示してくれるようになるといいですね。ただし、燃費や電費のように曖昧な目安にしかできないような数値では心許ないので、全世界共通の信頼できる算出方法や基準が示されるのが理想的です。

プレスリリース全文を日本語訳

最後に、いつも海外メディア記事の日本語訳をしてくれている杉田明子さんにお願いして、ポールスターのプレスリリース全文を日本語訳してもらったので、紹介しておきます。

(文/寄本 好則)

【プレスリリース】

Polestar leads car industry towards greater consumer transparency with new report

ポールスターが消費者に高い透明性を提供できるよう業界を牽引

**●ポールスターは最新のポールスター2が気候に与える影響を公表:自動車業界における透明性を確保する動きをリード。

●ポールスターCEO「車の電動化がゲーム終了ではありません。そこが始まりです」。

●自動車業界への消費者の信頼は低く、環境への影響に関してより高い透明性が求められていることが最新の研究で明らかに。**

ポールスターは自社最新モデルのカーボンフットプリントの詳細を公表します。私達スウェーデンのEVメーカーは、自動車業界がサステナブル・モビリティへのシフトを牽引すべきだと確信し、透明性はその鍵となります。ライフサイクルアセスメント(LCA)はサプライ、製造、リサイクルまで車両の一生のうち様々な要素を考慮に入れ、環境に与える影響を容易に理解できる1つの数値にまとめたものです。これにより消費者は、購入の際に知識に基づいて素早く車両の選択をできるようになります。

すでにポールスターは、初代ポールスター2のCO2フットプリントと希少原料の出処を『商品の持続可能性通知』で明確に表示しています。この通知は新しい単一モーター仕様のポールスター2を含むものにアップデートされ、価格や航続距離と併せて環境への影響の違いを消費者が簡単に、直観的に比べられるようになります。

ポールスターCEOのトーマス・インゲンラス氏は「自動車メーカーはすべての責任を取らなければなりません。メーカーが電動化シフトの新しいニュースを発表するのを、私達は毎週目にします。しかし電動化だけでは十分ではありません。車を電気にするのがゲーム終了ではなく、そこが始まりなのです。私達は正直で透明化される必要があります」と話しました。

ポールスターはここからさらに前へ進み、業界が透明性を広げて消費者の信頼を回復するよう促していきます。最近の研究によると、自動車メーカーに透明性があり、社会が受ける恩恵を最優先にして操業していると信じる消費者は4人に1人しかいません。そして消費者の半分以上が今より高い透明性と、車種ごとのCO2フットプリントを比較できることを求めています。業界全体での推進が鍵となるでしょう。

新しいポールスター2車種(ロングレンジ・シングルモーターと、スタンダードレンジ・シングルモーター)は24~25トンのCO2eで工場から出荷され、車がグリーンエネルギーでのみ充電されればその数値は上がらないと、新しいLCAで分かっています。既存のロングレンジ・デュアルモーターのフットプリントCO2eは26.2トンだと2020年に発表されました。

サステナビリティ部長であるフレデリカ・クラーレン氏は「私達は生産のゼロ排出に向かって動いていますが、ポールスター2がすでに環境への解決策だとLCAが示しています。グリーンエネルギーで充電されれば、EVテクノロジーは同格のガソリン車に比べ炭素の影響を半分以下にします」と言います。

(翻訳/杉田 明子)