BYDの乗用車EV『ATTO3』価格発表〜400万円で400kmの衝撃的コストパフォーマンス

今年7月に日本導入を発表していたBYDの電気自動車『ATTO 3』について、BYD Auto Japan は2023年1月31日の発売と発表しました。ほぼフル装備でバッテリー容量58.56kWhの1グレード、価格は440万円(税込)です。発表会の注目ポイントを速報します。

ついに年明け1月末に日本でも発売

BYD(比亜迪汽車)の日本法人子会社「BYD Auto Japan」(以下BYDオートジャパン)は2022年12月5日に東京都内で行ったメディア向け発表会で、BYDが世界戦略車に位置付けているSUVタイプのEV『ATTO 3』(アットスリー)を、2023年1月31日に日本で発売することを発表しました。

最大の注目点と言える『ATTO 3』の価格は、税込みで「440万円」です。発売するのは1グレードで、外部給電器(普通充電口からのV2Lアダプター)がオプションになっていることを除けば、運転支援システムやドラレコ、パノラマルーフや電動パワーシートなどが標準でフル装備。カラーバリエーションは5色(グレイ以外は税込6.6万円の有料塗装色)です。

デリバリー開始は2023年3月頃になる予定です。そのため、2023年2月17日が締め切りになっている今年度のCEV補助金は間に合いませんが、来年度も同じ補助額になるのであれば、外部給電機能が付いているので上限の85万円になると予想されます。

これに自治体の補助金が加われば、実質350万円以下で購入できる可能性があります。競合しそうなのは日産『リーフe+』の、もっとも装備が少ない「X」グレード(約423万円)でしょうか。と思ったのですが、リーフe+は2022年9月22日から受注を停止(原材料費や物流費の高騰による価格改定の準備のため)していて、500万円以上になることを予想する報道も出ています。

つまり、現状で『ATTO 3』に対抗できる日本のEV車種は存在していません。

なおバッテリー保証は8年/15万kmで、SOH(State of Health/初期の満充電容量を100%とした時の劣化後の満充電容量)の基準は70%です。きちんと資料でSOHを公表している企業姿勢は誠実だと感じます。

そういえばEVsmartブログの寄本編集長は日本導入が発表された時に、日本では400万円台前半くらいではないかと予想していました。ほぼ当たっていたという感じです。何も景品は出ませんが。

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中国「BYD」から日本に電撃! EV 3車種の日本発売決定を発表~期待の価格を予想してみた(2022年7月21日)

この記事の予想価格が的中するとしたら、2023年中頃の発売が予定されている『DOLPHIN』はバッテリー容量44.9kWhの「スタンダード」は300万円を切ってくるかもしれません。ますます、ニッポンやばし、です。

サブスクは驚きの月額4万400円

販売にあたっては、従来型のオートリースや残価設定ローンのほか、サブスク形式など、多彩なファイナンスプランが用意されます。

「BYD e フラット」という名称のサブスク型リースは、CEV補助金が今年度と同額であれば、頭金なしで月額4万400円ポッキリになるとのこと。もちろん自賠責保険や自動車税、登録諸費用、リサイクル関連費用など必要な経費は含んでいます。

この月額で例えば5年乗ったとすると、総額242万4000円です。諸費用を考えると、お得感はマシマシです。なかなかの破格値に感じるのです。

このほか、保険期間中に1回、タイヤやガラスなどのどれかひとつを無償修理できるオリジナル補償が付いたBYDのEV専用自動車保険が用意されていたり、認定中古車制度や24時間対応のロードアシストがあったり、緊急通報対応のコールセンターを設置したりと、けっこう至れり尽くせりのサービスも揃えるそうです。

ではもう少し詳しく販売戦略などを見ていきましょう。

信頼性の獲得に注力

BYDオートジャパンは日本市場の参入にあたり、第一歩として信頼性の獲得と、BYDの車を「知ってもらうこと」を重視している印象を受けました。

12月5日の発表会で、BYDオートジャパンの東福寺厚樹代表取締役社長は、プレゼンテーション資料の「品質管理」の項目を示しながら「車には製造品質、物流品質、販売品質があると考えている」とし、「製造品質はメーカー側の責任だが、物流品質については、ラインオフしてからいかに短く効率よく、鮮度を保ったまま、お客様の元にお届けできるかということで、一貫物流体制を作った」と述べました。

具体的には、中国の工場(常州・長沙)から上海を経由して、大黒埠頭に完成車のPDIセンターとスペアパーツのデポを集約。加えて、今は来年の販売に向けて日本のメンバーが中国の生産工場を訪問中で、「日本向けの車として適切な品質が保たれているのか、作り込みができているかを現地で確認している」(東福寺社長)そうです。

販売品質については、ディーラー網を構築するだけでなく、販売店スタッフに対するトレーニングを「BYDアカデミー」という施設で実施中です。EVを購入する際、BYDブランドの知識や基本的な車両情報をはじめ、充電器の設置、点検整備、トラブル対応などで適切なアドバイスができるようなスタッフ教育を進めているそうです。

EVの基礎情報に関しては、国産車、輸入車の別なく一部の販売店でトンチンカンな対応があったりや、補助金の知識不足を感じることが、まれにあります。こうした対応は、BYDに限らず新たなEVユーザーに不信感を植え付けることになります。新参者のBYDだからこそ、まずは入口部分で信頼の獲得を目指していると言えます。

各販売店に50kWの急速充電器を設置

スタッフ教育とともにBYDが手がけているのが、販売店網の拡充です。すでにお伝えていますが、BYDは日本市場参入にあたって、2025年末までに全国で100店の販売店を設置する計画を進めています。

現在までに北海道、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、千葉県、群馬県、山梨県、愛知県、岐阜県、三重県、石川県、富山県、大阪府、沖縄県に22店舗の設置が決まっていて、2023年の開業を目指しています。現時点で東京都の店舗はまだ決定していないようですが、早々の設置に向けて交渉中ということでした。

販売店の名前は、例えば北海道札幌市の店舗の場合は「BYD Auto 札幌」のように、地名を後ろに付けるそうです。店舗の外観も統一し、BYD販売店のネットワークをアピールします。

また各店舗には、最大出力50kWの急速充電器を設置します。設置にあたっては、すでに市場参入している充電インフラ会社の利用も検討しながら進めるそうです。そのため、設置費用をどのような形で負担するかは明確ではありませんが、基本的には販売店側で設置することになっているそうです。

ところで、今から50kW器を設置することについて質問すると、東福寺社長は、「90kWと言いたいところはある」ものの、50kW以上になると大幅な設置費用の増加になってしまうため、当面は「付けやすく、スタートしやすいものにした」ということでした。

加えて、BYDのEVのバッテリー容量はあまり大きくないこともあり、メーカーでは、バッテリーの寿命を伸ばすために急速充電は40kW以下を推奨しているという回答もありました。

ちょっと弱気にも感じますが、そんなメーカー推奨もあって、販売店への設置は50kWの充電器が「今の環境下では最適と考えている」(東福寺社長)そうです。

販売店をユーザーとの接点と考えると、BYDの場合は確かに50kWでもいいのかもしれません。これからの経路充電は90kW以上の高出力な充電器が増えていくはずですが、販売店の急速充電器は必ずしも経路充電に該当しない特殊なインフラでもあります。すべての販売店が都市間の幹線道路にあるわけではありません。

他方、自宅に充電器を付けるのが難しい人にとって販売店は基礎充電の役割を担うことも考えられます。だとすると、BYDユーザーにとっては負荷軽減のためにも50kWでいいという考え方はできそうです。

とはいえ、一度設置したらおいそれと交換できるものではないので、10年後を見たときにどうなのかという懸念は残ります。でもEVの多様化が進めばバッテリ容量のバラエティーも増えるはずなので、50kWの需要がなくなることはないようにも思うのです。個人の見解ですけども。

ちなみに、『ATTO3』はチャデモ規格で最大85kWの急速充電に対応しています。

各地でイベントを計画

信頼性獲得のためのネットワーク整備を進める一方で、日本での車の知名度を高める活動にも熱心です。

今年7月に、『ATTO 3』、『SEAL』(2023年末)、『DOLPHIN』(2023年半ば)の日本導入を発表した後、BYDは横浜、神戸、千葉で展示や試乗ができるイベントを実施。山梨県の「ふもとっぱら」キャンプ場では、V2Lのデモンストレーションも行っています。

今後は、12月1日から2023年1月31日にかけて、新宿マルイで『MINT×BYD』として展示と試乗会を実施するほか、東京オートサロンへの出展なども計画しています。

さらに、『ATTO 3』を無償で貸し出す代わりにSNSでEV体験を発信してもらう『eモビリティパートナープログラム』も実施中です。実際の貸し出しは2023年2月スタートで、10か月にわたって毎月10人を対象にEVを体験してもらうプログラムです。

募集期間は2022年9月30日から2023年9月29日の1年間ですが、東福寺社長によれば、すでに5000人(!)近い人たちが申込みをしているそうです。どうやらBYDへの注目度は、筆者が思っているよりもずっとずっと高そうです。

こうしてみると、BYDへの関心や知名度が徐々に高まっているのは間違いないようです。実際に車の信頼性、耐久性をリアルワールドで確認できるのはまだ先のことですが、『eモビリティパートナープログラム』の参加者からどんな情報が出てくるのか楽しみです。

『ATTO 3』は、これまで中国国内での販売を中心にしていたBYDが世界戦略車として販売拡大を狙う、先兵になるモデルです。すでにオーストラリア、ニュージーランドで販売しているほか、今年のパリモーターショーに初出展し、欧州9カ国でEVを販売することを発表。EV先進国のノルウェーでは年内に予定していた1500台が売り切れたそうです。

衝突安全性を気にするヨーロッパでは、『ATTO 3』などがユーロNCAPで5つ星を獲得したことがニュースになっていました。そんなこんなで、日本だけでなく、世界から注目されるEVになっていると言えます。

日本市場でどんな評価になるのか、注目しないわけにはいきません。年明けには詳細な試乗レポートができる可能性があるので、「もういくつ寝ると~♫」なんて数えながら刮目して待ちたいと思うのです。

BYD ATTO3 主要諸元

全長×全幅×全高4455×1875×1615mm
ホイールベース2720mm
車両重量1750kg
タイヤサイズ235/50 R18
乗車定員5人
最小回転半径5.35m
**動力関係**
モーター交流同期電動機
定格出力65kW
最高出力(ネット)150kW/5000-8000rpm
最大トルク310Nm/ 0-4620rpm
**駆動電気系**
バッテリー種類LFPリチウムイオン電池
総電圧390.4V
バッテリー容量58.56kWh
充電可能出力85kW/CHAdeMO
6kW/タイプ1 AC
**走行関係データ**
一充電航続距離(WLTC/BYD調べ)485km
電力消費量(BYD調べ)144Wh/km(6.9km/kWh
一充電航続距離

(EPA換算推計値)

約388km

(取材・文/木野 龍逸)