『Honda e』を大黒PAの新型急速充電器で「やっと充電できた」レポート

大黒パーキングエリアに開設された最大90kW出力の6口チャデモ急速充電器。オープン日の取材で『Honda e』では充電できないことが判明しましたが、ホンダで対策プログラムへの書き換え対応が始まりました。Honda eオーナーのフリーライター、篠原さんのリベンジレポートをお届けします。

固唾を呑んで充電スタートを待ちわびて……

車と通信中です。そのままお待ちください……。充電器にチャージングカードをタッチすると、パネルの表示が変わった。通電チェックの儀式は、いつもなら退屈する時間だけど、今日はドキドキのサスペンス。大丈夫か『Honda e』。時間が長く感じられる。固唾を飲んで見守っていた表示が「充電中」になった瞬間、思わず嫁さんと2人で「おおっ」「やったー」。

おかしな夫婦というわけじゃない。1ヶ月も待たされた充電開始だったので、つい。首都高速道路の大黒パーキングエリア(PA)で、2021年12月16日から運用が始まった6連充電器。同時に6台もチャージできるなら、充電渋滞もすっきり解決。最大90kWという高出力もうれしいし、なによりデザインがいい感じ。期待に胸をときめかせて開業日に一番乗りしたというのに、なんと、『Honda e』は充電できなかったのだ。

EVsmartブログの寄本好則編集長に誘っていただいて、EVsmartエバンジェリストの石井光春さんと一緒に当日のプレス発表にお邪魔した。一般供用が始まると同時に、寄本さんがメルセデス・ベンツから借りた『EQA』、石井さんの愛車テスラ『モデル3』、そして私の『Honda e』を並べて接続。同時充電を試してみようと思ったのだが……、不具合発生。テスラも出力が上がらなかった。詳しくは編集長のリポートをどうぞ。

その様子を見守っていてくれたe-Mobility Powerの担当者さんに聞くと、新型充電器は「CHAdeMO(チャデモ)2.0」という規格を使っていて、『Honda e』は「CHAdeMO 1.2」という規格までしか対応していない、という説明だった。いやいや、VHSとベータじゃないんだから、下位互換でお願いします。アプリだってなんだってそうですよね。いろいろ聞いてみたものの、どうやら車体の側で対応しないといけないらしい。

ほかにも充電できない車があるっていうことですか? とも質問したが「おそらくHonde eだけです」。うーん、たしかに年間販売数が1千台という車なので、影響は少ないのかもしれない。EV黎明期ゆえのトラブル。寄本編集長によると、過去にも輸入車で急速充電ができないという例があったそうだ。

翌17日、e-Mobility Powerから「お詫び」が発表された。新型充電器で充電できなかったり、充電時の出力が低い事象が起きていて(って、まさに私たちのこと)、自動車メーカーや充電器メーカーと連携して対応するので「今しばらくお待ちください」という内容だった。充電不能の車種は『Honda e』と三菱『i-MiEV』。その後、ポルシェ『Taycan』、アウディー『e-tron GT』も加わった(『i-MiEV』は12月27日に解消報告)。

だけど『Honda e』は「急速充電の国際標準規格CHAdeMOに対応しています」としっかり謳っているわけだし、とりあえず購入した販売店にトラブルを報告。ユーザーとしては「なんとかしてよ~」というのが正直な気持ちだが、簡単には無理だろうな、とも思いつつ。予想通り、店で対応できるようなものではなく、担当者のKさんからは「メーカーに問い合わせますので、お待ちください」という言葉。

ホンダディーラーの担当者からメールで朗報

その後、点検で販売店を訪ねたりもしたが、とくに経過報告もないまま。年が明けても「しばらくお待ちください」状態は解消せず。その間大黒PAを通りかかることもなく、なんとなく忘れかけていたが、1月28日になって、担当Kさんから「ご不便をお掛けしておりました充電の改善が発表されました」とメールが来た。

書かれていたリンクをクリックするとホンダHPの「サービスキャンペーン」の案内が。「制御プログラムが不適切なため、一部の急速充電器で充電できません」と記され、最寄りの販売店に行けば「充電制御コントロールユニットのプログラムを対策プログラムに書き換える」という。対象は2020年7月27日~21年11月4日に製作された車両。つまり、いま街を走っているHonda eはほぼ全てが対象になる。気になったのがその台数。1171台って、まだそんなに少ないんだねぇ。

「本日でもアップデートできますよ」とKさんが言ってくれたので、早速お店を訪ねてプログラムを書き換えてもらうことにした。スキャンツール(診断機)をつなぎ、パソコンを接続。作業手順書に従って、パソコンを操作する。「書き換えが完了しました」という表示が出たら、更新されたプログラムのIDを確認して作業終了。いろいろ質問したり洗車してもらったり、のんびり過ごさせてもらったが、アプデ作業自体は30分もかかっていなかっただろう。

Honda eは急速充電控えめ体質?

「充電もしますよ」と言ってくれたのを、あえて断って大黒PAへ直行する。高出力を試すなら、おなかは空かせていったほうがいい。首都高速で湾岸線へ。電気はいい感じに減っていく。到着時にSOCは32%。6連充電器の駐車スペースは空っぽだった。複数の車両で振り分けるという説明だったが、一台で使えば90kWという高出力をフルに利用できる、はず。ただ、懸念もあった。私のHonda eは、どうやら「急速充電しにくい体質」だということが最近わかったからだ。

福島日帰り旅などの記事を読んでいただいた方から、充電量が少なすぎる、というご指摘があった。もっと充電できるでしょ?、と。編集部の方々も50kW器なら「30分で20kWhは入る」という。そうだったの? 私の『Honda e』は半年以上乗っているが、20kWhを超えたという記憶はない。調べてみたら、昨年10月に東名の浜松SAで18.2kWh(30分)というのが最高だった。状況によって違うものの、高出力器でも30分なら15kWhが期待値だ。

しかし、待ってましたのアップデートである。晴れてのCHAdeMO 2.0対応である。もしかしたら、体質だって改善しているかもしれない。と思ったわけである。90kW器で充電するのも初めてだし、冒頭のドキドキはそれも含めてのことだった。

無事に充電はスタートして、30分しっかり充電はできた。SOCは32%から71%までアップ。ただ、充電量は13.0kWh。もう少し充電量を減らしてから行けば結果は違ったかもしれないが、今回は、90kWすげえ!という驚きはなかった。ただ、新型6連充電器の高出力は、1台あたりの充電量を上げることが目的ではなく、多くのEVが同時に充電できる技術として実用化されたのは明らか。充電渋滞を考えずに立ち寄れる場所ができたことを、まずは歓迎したい。1ヶ月で不具合をなんとかしてくれたホンダの技術陣にも感謝。

それにしても、ガソリンスタンドで「この車は給油できません」なんて事態は、まずないはず。次々に想定外の事態が起きて、関係者がなんとかそれを乗り越えようとする。試行錯誤が自分の周りで繰り広げられるというのは、本当に得難い体験だ。EVはトラブルも含めて面白い。

(取材・文/篠原 知存)