東名高速道路 海老名サービスエリア(上り)のEV用急速充電スポットがリニューアルされました。今回の目玉は、東光高岳とeMPが共同開発した次世代超急速充電器「SERA-400」の国内初設置です。1口最大350kWの超急速充電が可能です。
日本初の最大350kW器がいよいよ運用開始
株式会社e-Mobility Power(eMP)は2026年9月14日(月)午前10時、リニューアル工事を完了した海老名SA(上り)急速充電ステーションの運用を開始しました。国内初設置となる次世代超急速充電器「SERA-400」は充電器メーカーの東光高岳とeMPが共同開発。CHAdeMO規格として世界で初めて、最大電圧1,000V、1口最大出力350kWを実現したモデルで、高速道路の充電ステーションに導入されるのはもちろん初めてのことです。
リニューアルの内容を表にしておきます。
| 項目 | リニューアル前 | リニューアル後 |
|---|---|---|
| 急速充電器数 | 3基(3口) | 3基(8口) |
| ステーション総出力 | 190kW | 920kW |
| 各充電器の総出力 | 50kW・50kW・90kW | 120kW・400kW・400kW |
| 各充電器の一口最大出力※ | 50kW・50kW・90kW | 90kW・150kW・350kW |
※総出力90kW以上の充電器における一口最大出力は、充電開始後最大15分間の「ブーストモード」時の値。実際の出力は車両の性能や外気温、同時充電の状況などによって変わります。350kWの一口最大出力も、1,000Vの高電圧充電に対応した車両1台で充電する場合の値です。
設置基数は3基のままですが、ディスペンサー(充電口)を複数備えた機種を設置することで、同時に充電できるEVの台数は3台から8台に増えました。充電器3基のうち2基(4口)が東光高岳製で、そのうちの1基が総出力400kW、一口最大350kWの「SERA-400」。もう1基は総出力120kWの「SERA-120」です。複数口化と大幅な出力アップによって、混雑緩和と充電時間の短縮を同時に実現することを目指します。
なお、海老名SA下り線の充電ステーションは現在も上り線同様のアップデートを予定したリニューアル工事の真っ最中。運用開始は今年冬頃とのことなので、上り線に続く高出力化を楽しみに待ちたいところです。
すべてのEVが350kWで急速充電できるわけじゃない
「350kW」という数字だけを見ると、「今乗っているEVもすごい速さで充電できるはず」と期待してしまう方がいるかもしれませんが、実はそう単純ではありません。
まず知っておきたいのが、350kWという最大出力はあくまで「充電器側のスペック上限」だという点です。実際にどれだけの出力で充電できるかは、車両側の受け入れ性能によって決まります。
現在、日本国内で市販されているEVの多くは、いわゆる「400Vアーキテクチャー」と呼ばれるシステムを採用しています。この場合、電圧が400V級に制限されるため理論上の最大出力はおおむね150kW程度が上限になります。SERA-400が持つ「1,000Vまで対応できる」というポテンシャルを引き出すには、車両側も800V級、あるいはそれ以上の高電圧システムを搭載している必要があるということです。
さらに、800Vアーキテクチャーを採用している車両であっても、実際の急速充電性能は車種ごとに異なります。バッテリーの構成やBMS(バッテリー管理システム)の制御などによって、カタログ上の「対応可能な最大出力」と、実際に充電中に発揮される出力は変わってきます。つまり、「350kW器につないだから350kWで充電できる」わけではなく、あくまで「その車両が備えた急速充電性能」が上限になる、と理解しておきましょう。
ビジター利用の場合は充電器の最大出力で料金が変わる
海老名SA(上り)のように直営の急速充電スポットをビジター(非会員)として利用する場合、eMPは2026年4月1日から新しい料金体系を導入しています。特例計量器を搭載したスポットでは「kWh課金」、それ以外のスポットでは「充電器の立地·最大出力に応じた時間課金」が適用される仕組みです。
ビジター利用料金(税込)を整理すると、以下のようになります。
| 課金方式 | 一口最大出力 | 高速道路 | 一般道路 |
|---|---|---|---|
| kWh課金 | - | 143円/kWh | 110円/kWh |
| 出力別時間課金 | 50kW以下 | 77円/分 | 55円/分 |
| 出力別時間課金 | 50kW超~100kW以下 | 99円/分 | 77円/分 |
| 出力別時間課金 | 100kW超 | 121円/分 | 99円/分 |
「SERA-400」をはじめとする海老名SA上り線の急速充電器は従量課金に対応しているので、ビジターの充電料金は「143円/kWh」になります。
EVユーザーとして理解しておくべきポイントは、従量課金器が未導入で時間課金が適用されるスポットでは「充電器の最大出力」によって単価そのものが変わる点です。同じ充電スポットでも、50kW器を使うか、90kW器を使うか、150kW器や350kW器を使うかで、1分あたりの料金が異なります。もちろん車両の充電性能によっては高出力器の方が短時間で多くの電力量を受け取れるので単純に損得を語ることはできませんが、「高出力=単価が高い」という仕組みはぜひ覚えておきましょう。
一方、eMP会員(急速·普通併用プラン)であれば、月額基本料金(4,180円)を払う代わりに、急速充電は27.5円/分の均一料金で利用できます。出力帯によって単価が変わらないため、350kWのような超高出力器を積極的に使いこなせるユーザーほど、会員登録のメリットが大きくなります。
eMPの会員になっておくほうがロングドライブが圧倒的に楽になるのは間違いありません。とはいえ、月額料金が約4,000円とお高めなのがEVユーザーとしての悩みどころ。私のかねてからのお願いである「月額料金を1/4の1000円にして会員数が4倍になるほうがみんな幸せじゃないですか?」説を繰り返しておきたいと思います。
ヒョンデ「IONIQ 5 N」で最大265kWで充電
さて、「SERA-400」の実力はどんなものなのでしょうか。知人であり、EV-GPに参戦しているヒョンデ「IONIQ 5 N」オーナーの冨田さんが、運用開始直後の海老名SA(上り)で充電してきたということで、写真を提供いただきました。
IONIQ 5 Nは800Vアーキテクチャーを採用し、高電圧急速充電に対応する現状では数少ない市販EVの一台です。結果、SERA-400にケーブルをつないだ冨田さんの車両は、最大265kW超という出力を記録したとのこと。
ただし、当然ながらこの265kWがずっと維持されるわけではありません。バッテリー残量(SOC)が上がるにつれて出力は徐々に低下していくのが急速充電の一般的な特性で、IONIQ 5 Nも例外ではありません。それでも冨田さんの場合、30分間の充電で71.8kWhもの電力量を受け取ることができています。単純計算で平均出力は140kW以上ということになり、90kW器や150kW器では到達し得ない充電スピードを体感できたようです。
高電圧&超高出力急速充電は拡がっていく?
海老名SAの350kW器は象徴的な存在ですが、超高出力の急速充電インフラ拡充は他の事業者にも広がりつつあります。たとえばフラッシュ(FLASH)は最大240kW(1,000V対応)の設置拡充を進めています。パワーエックス(PowerX)も、蓄電池併設型の「Hypercharger」による1口最大出力240kW&高電圧対応の超急速充電サービスを一部スポットで提供し始めています(ニュースリリース)。
一方、350kWや800V超高電圧充電の恩恵を実際に受けられる市販EVは、まだ限られているのが実情です。現時点で800Vアーキテクチャーを採用し、高電圧の超急速充電に対応しているのは以下の車種くらいだと思います。
●ヒョンデ IONIQ 5
●ヒョンデ IONIQ 5 N
●ボルボ EX90
●ボルボ ES90
●BMW iX3
このほか、アウディ「e-tron GT」やポルシェ「カイエン」も800Vアーキテクチャーは採用しているものの、ソフトウェア側がCHAdeMO規格での高電圧急速充電にまだ対応していません。ちなみにBMW iX3は、350kW級の急速充電器を使えばわずか15分の充電で約420km走行相当の電力量を得られるとしています。
※あと、ロータス「エメヤ」も高電圧のCHAdeMO急速充電に対応しているとのこと。
eMPが350kW器の設置に踏み出したことで、今後は自動車メーカー各社も日本市場向けに高電圧対応車種を投入しやすくなるはずです。実際、IONIQ 5シリーズはすでに1,000V級急速充電器を使うことで10%から80%までの充電を約20分で完了できるとアナウンスしており、こうした流れが他メーカーにも波及していくことを期待したいところです。
一点、実は9月15日にボルボ「ES90」で350kW器を試したところ、期待したような出力を得られない事象を体験しました。原因などの詳細は現在確認中です。いろいろな車種に乗っている方で、海老名SAで350kW器を試した結果などあれば、ぜひコメント欄で共有いただけるとありがたいです。
個人的には、大容量バッテリーや高出力急速充電ばかりがEVの進むべき道だとは思っていません。とはいえ、200kWを超える超急速充電の便利さを知ってしまうと、それが大きな魅力に感じられることも否めません。
多様で魅力的なEV車種が増えていくこと。そして、合理的で便利な充電サービスがこれからも広がっていってくれることを願っています。
取材·文/寄本好則






