新電元のご担当者から「150kW出力の急速充電器を試してみませんか」とお声がけいただき検証してきました。持ち込んだ電気自動車は日産『ARIYA』、BMW『iX3』、メルセデスベンツ『EQC』の3車種です。カタログの急速充電性能は「あくまでも目安」であることを知る結果となりました。
新電元『SDQC2F150』シリーズで検証取材
検証取材を行ったのは2022年4月18日の月曜日、場所は埼玉県朝霞市にある新電元工業株式会社の朝霞事業所でした。使用した急速充電器は最大出力150kWの『SDQC2F150』という機種です。CHAdeMO「Ver.1.2」規格に準拠しており、出力電圧が最大450V、出力電流が最大350Aで、最大150kWという高出力での急速充電が可能です。
CHAdeMO規格の150kW出力器については、他社でも充電器そのものは発売され始めているものの、水冷システムが必要とされる150kW出力用のケーブルがまだ供給されていない(すでに完成はしているけどまだ高くて使えないという説もあります)事情から、ポルシェが全国に展開するターボチャージャーのように、90kW用ケーブルを使って最大90kW出力で運用されているのが現状です。
でも、今回検証した新電元の150kW器は、90kW用のケーブルを使用しつつ、150kWの最大出力は15分に制限し、その後も段階的に出力を調整するブーストモード(パワーブースト機構)を採用。一般的なCHAdeMO急速充電スポットの使用時間である30分間で、効率良く多くの電力を充電できる製品となっています。
ただし、現在のところ日本国内でこの機種が設置されているのは、長野BMW本社ショールームの1台のみ(EVsmart調べ)。興味はあるけど「なかなか試しに行けないな」と思っているところに、新電元ご担当者からお誘いをいただき駆けつけた、という次第です。
高出力な急速充電をもつ3車種で実験
おりしも、前週の4月13日には、EVsmart(アユダンテ)社有車となる日産アリアが納車されたばかり。アリアを試すだけではもったいない、ということで、最大100kW超えの高出力急速充電性能がカタログスペックとして紹介されている、3車種を持ち込むことにしました。充電性能順に並べておきます。
BMW iX3/最大150kW
日産 ARIYA(アリア)/最大130kW
メルセデス・ベンツ EQC/最大110kW
BMWは、取材用広報車をお借りした iX3 をはじめ、iX、i4など新しく続々と日本に導入されている新型EVが揃って最大150kW対応となっています。普通、広報車は満充電状態で貸してくださるのですが、電池が減った状態で貸して欲しいとお願いし、70%程度で借用。検証前日に三浦半島までドライブしたけど思ったほど電池が減らず、検証当日、少し早く出発して首都高環状線を5周くらいしてから朝霞に到着。残量SOC約26%からの充電となりました。
メルセデス・ベンツ EQCは、日本導入当初は最大50kW対応でしたが、後からデビューしたEQAが100kWに対応。EQCも2022年2月の価格改定と併せて、最大110kW対応へのアップデートが行われたところです。こちらは、検証当日、電池残量30%程度で借用。約15%からの充電でした。
社有車の日産アリアは取材開始時間ギリギリまでテスカスさんが電池を使い、残量約5%で充電を開始しました。
30分で最も多く充電できたのはEQCという結果
はたして、ブーストモード付きの最大150kW器、30分間でどのくらい充電できたのか。まず、充電電力量のグラフがこちらです。
1位/EQC
2位/iX3
3位/アリア
なんと、最も多く充電できたのは、最大出力性能が最も小さいはずのEQCで、48kWhという結果でした。次に iX3が42kWh、アリアは41kWhという結果になりました。
充電出力の推移もグラフで確認しておきましょう。
EQC
iX3
アリア
EQCとアリアが時間経過とともになだらかに出力が下がっていくのに比べ、iX3は階段状に受入出力が変化していることがよくわかります。
とはいえ、SOCの推移を確認すると、3車種とも30分間ほぼなだらかに、70%台まで回復しています。充電電力量として数kWhの差は出ましたが、SOCやバッテリー温度を厳密に揃えたわけでもなく、実用的には「似たような急速充電性能だった」と評することができます。
最後に、3車種のSOC推移と、検証結果を並べた表を紹介しておきます。
SOC推移グラフ
充電検証結果表
30分で40kWh超えれば十分でしょ?
結果について、細かくごちゃごちゃ言っても空しいので、端的な感想を2点挙げておきましょう。
まず、今回の検証ではっきりしたのは、カタログスペックが最大150kWだから30分で75kW、最大130kWなら65kWとかのレベルで充電できるわけではないことです。また、最新車種の高級EVは「30分で40kWh超えれば十分でしょ?」というくらいの急速充電性能を与えられていると理解しておくべきということが確認できました。
高速道路を制限速度で走行して、電費が6km/kWhとすると、40kWhで走れる距離は240km。それぞれのバッテリー容量はアリアが66kWh、iX3とEQCが80kWhなので、自宅を満充電で出発すれば400kmくらいは走れます。その後、30分の休憩がてらに急速充電で200km以上の距離を繋いでいけるのであれば、本州縦断レベルのロングドライブでも十分でしょ? と各メーカー、輸入車インポーターから提示されていると考えるべきなのでしょう。
実用的に大きな問題はないと思います。ただし「十分でしょ?」とするためには、日本国内の高速道路網にはまだまだ高出力の急速充電器が少ないので、最低でも90kWを超える出力の急速充電網が整うことが必要です。30分制限の是非や従量課金の必要性は、ここでは論じません。
最大150kWのブーストモードならほとんど不便は感じない
もうひとつが、ブーストモードへの感想です。首都高大黒PAに設置された最大90kWのブーストモードを、今回検証したような高性能EVで体感すると、15分経過後に最大50kWに制限されてしまうことがもどかしく感じます。正直言って「余計な機能」という感想でした。でも、今回の検証結果を確認すると、新電元150kW器で設定されているブーストモードはついに一度も作動することなく、車両側の充電制御のままに30分間充電することができました。しかも、この機種のブーストモードであれば、制限がかかっても200A(90kW)出力で充電可能です。
そもそも、100〜130kWを超えるような高出力の急速充電が継続できるのは、バッテリーセルの間に網目のように温度管理用のクーラントを流すパイプを張り巡らせたテスラ車くらい(現在の日本の市販EVでは)。システム電圧が高いポルシェタイカン、アウディe-tronGTとか、ヒョンデIONIQ 5あたりも、もしかするとテスラ車並みの高出力急速充電性能をもっているのではないかと思いますが、その他の、既存メーカーのEVのほとんどは、そんなに無理はしていない、と理解しておくのがいいようです。
ともあれ、日本の高速道路網にブーストモード付きの急速充電器が増えていくのなら、せめて、最大150kWのブーストモードになればいいのにな、と感じたのでした。
アリアの急速充電性能について、日産に質問してみました
今回の検証結果は、テスカスさんがYouTubeのEVsmartチャンネルに動画レポートを紹介していく予定になっていて、すでにアリアの動画がアップされています。
日産アリアB6リミテッドを150kWの急速充電器で充電してみた!(YouTube)
また、この記事の下書きを終えて今日公開しようと思っていたら、昨夜、残り2台の充電結果と、新電元ご担当者へのインタビューを交えた興味深い動画が公開されました。
150kW急速充電器でBMW iX3とメルセデスEQCを充電!(YouTube)
インタビューには私も同席しました。ダイナミックコントロールや急速充電器の効率についてなど、突っ込んでわかりやすくご説明いただけたと感じています。ありがとうございました。& テスカスさん、グッジョブです。
アリアはSOC10%付近で130kW?
最後に、納車されたばかりのアリアの実験結果について、事実上日本国内には最大90kWの急速充電器しか設置されていない(予定も含め)ことだし「90kWを超えないように設定されているのかな?」と気になったので、日産自動車にメールで質問、回答をいただいたので紹介しておきます。
●急速充電最大出力が130kWというのは、どのような条件で達成できるのでしょう?
130kW対応の充電器に接続された状態で、バッテリーSOCが10%付近かつバッテリー温度が適度に高い条件の時に130kWの電力が出力されます。
●日本仕様は90kW程度の受け入れに最適化されている、といった事実はありますか?
充電器の容量で特に最適化をしてはいません。
●リーフで悩ましい真夏の熱制御問題。温度管理システムを搭載したアリアではどの程度改善されているのでしょうか?
リーフでは外気温が極端に高くBattery温度も高温になっているときや、高速走行と急速充電を繰り返し実施し電池温度が高いときに充電電力が制限されることがありました(条件により異なりますが3割~4割程度の影響がでる場合があります)。アリアでは電池温度に応じて温度管理を行うことで、夏場の充電や高速走行と急速充電を繰り返し行った場合でも、充電電力量の変化を抑えています。
●バッテリー急冷機能の、効果的な、正しい使用法をご教示ください。
バッテリーの温度調整はバッテリー内の温度を監視して自動で実施しますので、お客様が操作をする必要はありません。
車両設定画面内に「急速充電冷却補助ボタン」がありますが、こちらは真夏の暑い日に充電する際にONいただけるとバッテリー冷却性能を高め、充電の速度を通常気温のときと同等に維持することができます。この場合は冷却システムの作動音が少し大きくなりますので、通常気温の時はOFFでご使用いただければと思います。
(Q&A ここまで)
これから、夏が近づいてきます。ユーザーが操作する必要はないという「急速充電冷却補助ボタン」ですが、どんな作動音がしてどんな効果があるのか興味しんしん。EVsmart号のアリアで試してみたいと思います。
(取材・文/寄本 好則)
















