電気自動車は加速が遅い?

結論:電気自動車は遅いという方と速いという方がいますが、特別に遅いわけでも速いわけでもなく、車種によります。またモーターはエンジンよりトルクが大きくなることが多いため、電気自動車/PHEVでは、信号待ちからのスタートや追い越し加速などはかなり速く感じます。(2015/12/14更新)

目次

出力とトルク、加速の関係

自動車の性能を表す指標には動力性能、安全性能を始めさまざまなものがありますが、こと加速に関して言うと、出力(最大出力)とトルク(最大トルク)があります。出力はkW(キロワット)や「馬力」であらわされ、トルクはNm(ニュートンメートル)やkgf·m(キログラムメートル)であらわされます。1馬力は0.7355kWであり、1kgf·mは9.80665Nmとなります。うーむ細かくなってきましたね。本記事では、国際標準であるSI単位系を尊重して、出力はkW、トルクはNmで表記していきたいと思います。馬力もkgf·mも計算で変換できますので、ここでは忘れてしまいましょう。

出力とトルクはどのように違うのでしょうか?すごく簡単に説明してしまいましょう。重いものを押して動かすところを想像してください。動かすのに必要な力がトルクで、力を加えて動かした距離が出力です。車は非常に重いので、動かすのにパワーが必要になりますが、出力が大きい=一定時間に速く移動できる、ということになります。しかし、出力の大きい車は信号待ちからのスタート(発進加速)が常に速いわけではありません。なぜなら、車のスペック・諸元においては、出力もトルクも最大値が記載されているからです。エンジンで動く車の場合、停止状態から発進する時点ではエンジンの回転する速度が遅く、出力もトルクも最大値よりは低くなるからです。単純には比較できないのです。

一般的な見方としては、最大トルクが大きい車は、発進するときの加速も大きくなる傾向にあると言えます。トルクは「力」なので、止まっているものをグッと動かして発進させる場合、力の強いほうが速く加速できるわけです。実は、電気自動車やPHEVの加速がよく感じられるのは、このトルクが低速でも大きいためですが、スペック表などからは確実に知ることはできません。

加速はどうやって計る?

通常車を運転していて、「この車速いなー」と感じるポイントは、発進加速と追い越し加速ではないでしょうか。このうち、発進加速については測定方法が比較的グローバルに決められており、単純に比較が可能です。発進加速は時速0km(停止)から時速100kmまでの加速にかかる時間であらわされ、短いほど加速のよい車ということになります。

この加速は0-100km/h(数字は異なりますが、米国では0-60mph)と呼ばれていますが、比較する際にはメーカー公称値を使います。というのは、加速はいろいろな方法で行うことができ、測定方法によって多少のばらつきが出るからです。詳しくは省略しますが、例えばブレーキを踏んだ状態でアクセルをいっぱいに踏み込み、エンジンの回転数を最大トルクを発揮できるポイントに保ってからブレーキを離して発進すると、車は傷んでしまいますが、最も速く加速できます。

0-100km/hは通常の車の場合10秒くらいかかることが多いので、真の意味での発進加速とはちょっと異なります。10秒間もアクセル踏みっぱなしにして100km/hまで加速したりはあまりしないですよね。実は、エンジンの車の場合、発進時には最大トルクの70%くらいしか発揮できないのに対し、モーター搭載車では最大トルクが発進時から発揮できます。

電気自動車/PHEVとガソリン車の加速・0-100km/h比較

実際にコンパクトカーからSUV(スポーツタイプのジープ形の車)、スポーツセダン(最低4名乗車でトランクがある)まで、電気自動車/PHEVから代表的車種を7車種、ハイブリッド/ガソリン車から代表的車種を7車種ピックアップして、データを並べてみました。中には公式データが存在しない場合もありますので、分かる範囲で調査したデータとなっています。間違いがありましたらお知らせいただけますと幸いです。

データの見方ですが、エンジンとモーターのパワーを同時に使える車(PHEVでもハイブリッドでもそういう機能を持っているものがあります)の場合、出力やトルクを単純に足し算して求めることはできません。走行状況に合わせて、エンジンとモーターは自動的に制御されますので、総合出力・総合トルクというものがあります。これは、実質出せる出力の最大値となります。総合トルクを開示していないメーカーの場合は、それぞれのトルクをa+bのように記載してあり、前の数字がエンジンの最大トルク、後ろの数字がモーターの最大トルクです。またフロントとリア両方にモーターを搭載している場合、トルクは合計で掲載していますが、このトルクを実際に発揮できるわけではなく、モーターの性能だけをあらわしています。実際の性能は、バッテリーとモーター、そしてバッテリーからモーターに電力を供給するインバーターの能力で性能が決まります。

1電気自動車/PHEV出力トルク0-100km/h
2日産リーフ80kW254Nm11.5秒
3トヨタプリウスPHV100kW(総合)141Nm+207Nm11.4秒
4三菱アウトランダーPHEV150kW(総合・推測)190Nm+332Nm11秒
5BMW i3125kW250Nm7.2秒
6テスラモデルS 70D245kW525Nm5.4秒
7ポルシェパナメーラS E-ハイブリッド306kW(総合)590Nm(総合)5.5秒
8テスラモデルS P85D376kW967Nm3.3秒
9
10ガソリン/ハイブリッド車出力トルク0-100km/h
11日産ノート(2WD)72kW142Nm11.8秒
12トヨタ86147kW205Nm7.6秒
13トヨタハリアーハイブリッド145kW(総合)206Nm+409Nm7.5秒
14スバルWRX STI227kW422Nm5.2秒
15BMW M3/M5317kW/412kW550Nm/680Nm4.3秒/4.3秒
16ポルシェ911 カレラ/ターボ272kW/397kW450Nm/660Nm4.2秒/3.0秒
17日産GT-R404kW632Nm2.7秒

一つだけ例を挙げてもう少し詳細に見てみましょう。トヨタのスポーツカー「TOYOTA 86 GT」は上の表によると0-100km/hは7.6秒とあります。ドイツの車関連サイトAutoBild.deは0-50km/hも計測しており、2.8秒とのこと。リーフは0-100が11.5秒で0-50は3.8秒、i3は0-100が7.2秒で0-50は3.0秒。もちろん最新スポーツカーの86のほうが速いのは当然ですが、電気自動車であるリーフやi3も結構いい線行っていますね。

さてどうでしょうか?実際にリーフやアウトランダーPHEVに試乗してみると、発進加速が良く感じます。その理由は、発進時からモーターのトルクの恩恵を受けられるからなのですね。しかし0-100のタイムはそれほどでもない、ということなのです。0-50のように、より短い時間で比較してみると、出足がクイックに感じるのを数字で確認することができます。またモデルS P85Dは0-100が3.3秒、0-50は1.3秒で、ポルシェ911のターボでなければ時速100kmまでは追いつくことができない(もちろんそのあとは911のほうが速いです!)という事実。これから高性能車メーカーは、スタート時の性能を稼ぐためにハイブリッド化・電動化を進めていくことになるでしょう。