タジマの新型EV一気乗り【02】激坂も快走できる性能の原付ミニカー『T-mini』への期待感

モンスター・タジマこと田嶋伸博氏が率いるタジマコーポレーションは7月に行った新型電気自動車(EV)の発表試乗会で、電動ミニカーの「T-mini」を発表しました。日常の手軽な足になるのかどうか。一気乗り試乗会の様子と合わせてお伝えします。

圧巻のタジマコーポレーション博物館

さて、まずは改めて、7月に行われたタジマコーポレーションのEV一気乗り試乗会の全体像を紹介したいと思います。

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試乗会の会場は、静岡県掛川市にあるタジマコーポレーションの研究開発施設、「タジマ静岡掛川次世代モビリティR&Dセンター」でした。ここは車の研究開発施設であるだけでなく、自動車に関わる学生向けの研修所も兼ねているそうです。

その一環でもありますが、メインの建物は、創業者で社長兼最高経営責任者(CEO)の田嶋伸博氏がこれまで携わってきた、数多くのモンスターマシンを展示した博物館にもなっています。

1995年のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムで優勝したツインエンジンのスズキ・エクシードのほか、EVのプロトタイプカー、インホイールモーターを使ったEVの草分け的存在と言えるSIMドライブの車などがズラッと並ぶ様はちょっと壮観です。

これらの車は全て、動態保存です。日本のプライベートチームの歴史の一端を感じながら研修ができるのは、学生さんたちにとっても楽しい経験になりそうです。

ファブレスメーカーとしてのタジマ

そんな車たちの横で、CEOの田嶋さんは試乗会の趣旨について、「これまで生産してきた車をお披露目することと、今後の展開について紹介すること」だと説明しました。

また、田嶋さんは、これからEVを普及しようという国の目標にも沿ってやっていくという大枠はありつつ、「我々の会社はずっと人とモノの移動についてやってきて、できるだけ速く走りたいということで車を作ったりしてきたが、(移動ということに関しては)ミニカーを普及させたいと考えている」と、今後の活動方針のひとつを披露。続けてこう話しました。

「なぜミニカーかというと、自転車の3人乗りでお母さんが大変な思いをしているのを見ると、やっぱりミニカーで安全、安心に送迎ができたり、お買い物ができたりした方がいいなと思って、今回は『T-mini』を用意しました。大手自動車メーカーさんだと少しやりにくいところを、世のため人のためにやっていければと考えています」

ということで、今回の一気乗り第2弾は、タジマコーポレーションが試乗会と同時に発表、発売した原付ミニカー(第一種原動機付自転車)の「T-mini」を紹介したいと思います。

競争相手が増えるミニカー規格EV

まずは気になる価格から。タジマのT-miniは税込みで108万9000円になります。納車は9月に始まる予定で、試乗車はまだ細部が最終形になっていないとのことでした。

T-miniは、企画はタジマコーポレーション、設計と生産は海外への委託です。委託先は非公表です。おそらく中国の自動車OEMのどこかだとは思いますが、あくまで推測です。

販売目標は、年間600台を目指しています。

同じカテゴリーの先行モデルでは、トヨタの「コムス(P・COM)」があります。こちらはビジネス用の「B・COM」が79万9700円から、パーソナルユースの「P・COM」が96万300円からです。

大きな違いは、コムスが鉛バッテリーなのに対して、T-miniはリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載していることです。

今後の競争相手になりそうなのは、広島県広島市に本拠を置くKGモーターズ(以下、KG)の「mibot」の、税込み価格100万円です。こちらもバッテリーはリチウムイオン。現在はモニターとしての予約をしていますが、8月1日には正式に先行予約が始まります。

なおKGのミニカーはずっと「ミニマムモビリティ」と呼ばれていましたが、5月21日に正式にモデル名が「mibot」に決定したと発表がありました。ミニマムなモビリティロボットという意味だそうです。なんだか楽しそうです。

このほか日本には、40年にわたってガソリン車のミニカーを生産、販売してきた老舗のタケオカ自動車工芸(富山市)が「Lala」というミニカー規格のEVを手掛けています。こうした息の長い生産者も、競合モデルが出てくることで市場が活性化すれば注目度が増すかもしれません。

激坂も行けそうな登坂能力

T-miniの仕様をざっと見ていきます。バッテリーは前述のとおり、LFPのリチウムイオンバッテリーで、容量は5.8kWh。充電は100Vの普通充電のみで、満充電まで約5時間です。5.8kWhなら急速充電は不要ですね。

なお試乗車の充電用コネクターは、YEEDAというメーカーのY-30という汎用品が使われていました。ゴルフカートなどに多いコネクターのようですが、最終調整で変更があるかもしれません。

バッテリーの定格電圧は60Vで、最高出力は公表していません。定格出力は、ミニカー規格の最高0.6kWにおさまる、0.59kWです。

登坂能力はけっこうなもので、通常モードでは14%、短時間だけ使用可能な登坂モードだとカタログ上は25%までいけるようです。25%は、立っていると体が傾きそうな激坂です。

モーターは、永久磁石を使わないACモーターを採用しています。出力が制限されているミニカー規格なら、一般的にコストの安いACモーターで十分と思います。

バッテリーメーカーは非公表です。タジマは以前、2人乗りの「ジャイアン」という小型モビリティーを販売していましたが、生産委託先が同じかどうかも非公表でした。

1回の充電での航続可能距離は、30km/h定地走行で約80kmです。バッテリー容量を考えると、さすがに100kmは難しそうですが、そもそも短距離移動が目的なので必要十分といったところでしょうか。

パワステ、パワーウインドウに驚く

ということで、タジマコーポレーションの敷地内をちょっとだけですが、自分でハンドルを握って試乗することができました。まあ、1人乗りなので自分で運転するしかないのですが。

スタート方法は一般的なEVと同じで、ブレーキを踏んでスイッチをオンします。ドライブ、バック、ニュートラルはセンターコンソールの回転式スイッチで選択します。

走り出す前に、エアコンを全開にしました。このミニカー、エアコン付きなのです。日なたで40度近いと思われる気温の中での効きはすごくいいというわけではありませんが、だいぶラクです。

Dレンジにしてアクセルを踏むと、パワーがあるわけではないので、走り出しはゆっくりです。それでも短い直線では30km/hくらいまではきちんと加速します。

ちょっとびっくりしたのは、パワステとパワーウインドーが備わっていることでした。車重は350kgしかないのでパワステがいるようには思えないのですが、お年寄りや女性には扱いやすいということかもしれません。

回生ブレーキは、ほとんど効いていない印象です。タジマの担当者によれば、回生ブレーキを積極的に効かせると機械式ブレーキと協調させるのが難しくなるので、あまり使っていないそうです。

回生ブレーキと機械式ブレーキの協調は大手自動車メーカーでも苦心する部分です。中途半端に回生を効かせることで制動時の挙動に悪影響が出るより、思い切って使わないという選択肢は、ありかもです。それに、もともと走行距離の短いミニカーでは回生ブレーキを使わなくても大きな影響はないかもしれません。

気になったのはサイドブレーキの取り付け位置でした。シート下の床面に近いところにレバーがあるのですが、体を思い切りかがめないと手が届かない感じでした。もう少し取り付け位置が高くなることを期待したいところです。

タジマ T-mini スペック
全長×全幅×全高2405×1100×1590mm
ホイールベース1617mm
最低地上高150mm
最小回転半径4.0m
乗車定員1人
車両重量350kg
駆動方式RWD
モーター種類ACモーター
定格出力0.59kW
最高速度45km/h
登坂能力(走行時/短時間)14%/25%
バッテリー種類リン酸鉄リチウムイオンバッテリー
バッテリー容量5.8kWh
定格電圧60V
急速充電
普通充電100V
一充電走行可能距離(30km/h定地走行)80km
価格(税込)108万9000円

超小型モビリティーへの期待

ところで、メインスイッチを入れてシステムを立ち上げると、メーターパネルに「AA 爱玛」という表示が出てきました。1999年設立で、主に電動バイクを生産している中国のアイマテック(愛瑪科技集団)のロゴマークです。T-miniの設計・生産会社は非公表ですが、制御システムはアイマテックが手掛けていると考えられます。

でもアイマテックは車は作ってないよなあ、などということが気になって調べていると、アイマテックと、ボルボやZEEKRを傘下に持つ中国の自動車大手、吉利汽車(Geely)が、いちど倒産した中国のEVスタートアップ、知豆電動汽車(Zhidou)を再建し、2人乗りの超小型EVを販売しているというWIREDの記事が目にとまりました。

なるほど、そうするとT-miniも、システムはアイマテックで、車体は別のメーカーが手掛けているのかなと、想像がふくらみます。

都市交通のCO2削減、環境改善を考えれば、大きなSUVは論外だし、そうした車がEVになる道筋とは別に、より小さな車があれば最終目標により早く、より効率良く向かうことができるのではないでしょうか。

タジマコーポレーションによれば、T-miniは「現在は市場調査的な意味合いが強い」としつつ、「雨がしのげることや暑さ、寒さに影響されないというバイクには無い利便性と、ランニングコストも含めたコストメリットを強みとし、ガソリンスタンドの減少でEVの利便性が高まっている地域で、バイクと高額になった軽自動車との間を埋める存在」になることを期待しているそうです。

購買層は、「安価で便利な移動の足を欲している主婦層やシニア層」をターゲットにしています。

日本では、地方でガソリンスタンドが減っているという話が出ると補助金で生きながらえさせる話につながりそうですが、同時に交通環境を変えていく必要があると思えます。

そうした背景を考えると、車の大きさも使い方も変える必要があるのは明らかです。使い方が変われば、動力源も変わります。草刈り機だって電動が多くなっている時代です。はやり言葉ですが、多様性ですね。

Windows一本やりで大規模なシステム障害が発生したことを思うと、技術はいろいろあったほうが安心感、安全性が高まるはずです。それに多様性は、種が生き残るための自然な流れでもあると思われます。

あとは、ミニカー規格の車は1人乗りしかできないので、ここは今の社会状況に応じる形で、せめて2人乗りができるよう規制が変わるといいのですが。

そんなことも含めて考えてみると、超小型モビリティーという選択肢はこれからより重要性を増しそうだし、そういう期待をしたいと思うのです。

取材・文/木野 龍逸