2019年5月21日、東京都内で開催された国際会議で、東京都の小池百合子知事が「2050年までに都内のCO2排出量を実質ゼロにする」目標を明言。新聞などで大きく取り上げられています。はたして「CO2排出量を実質ゼロ」とはどういうことか。そして、これから何を変えていくのか。もしくは、都知事の先走り発言なのか。東京都庁に電話して聞いてみました。
「CO2排出量実質ゼロ」の意味とは?
小池都知事が「2050年までに都内のCO2排出量を実質ゼロにする」という目標を表明したのは、世界主要都市のトップが共通課題を議論する『U20メイヤーズ・サミット』(東京都新宿区内で開催)でのことです。
その発言の様子を、ANNニュースチャンネルがYouTubeにアップしてくれているので、リンクを貼っておきます。どのくらいの期間アーカイブされるのかわからないので、見られなくなったらごめんなさい。
注目の発言は、冒頭10秒くらい。英語で起こしておきましょう。
Tokyo declares that by 2050, become zero emission Tokyo that contributes to the world net zero carbon emissions.
ざっくり訳すと「東京は2050年に向けて『ゼロエミッション東京』を宣言し、世界のCO2排出量実質ゼロに貢献します」という感じです。
ネット上では「二酸化炭素排出ゼロって、息するなっていうことか!」的な妄言も飛び交っていますが、当然、そんな意味ではありません。
「CO2排出量実質ゼロ」というのは、人為的に排出されるCO2の量と、植林などの緑化促進や、バイオマス発電を行った際に出るCO2を集めて地中などに封じ込めるCCS(Carbon dioxide Capture Storage)技術など、人為的な吸収量をバランスさせることを意味しています。
もちろん、化石燃料によるCO2排出などは徹底的に削減しつつ、ゼロエミッションに向けたさまざまな取組を行っていく、ということになるでしょう。
新聞報道などでは、日本政府が「2050年までに国内で80%削減」とする目標を掲げていることと比較して、国全体に先んじて! と評しています。でも、「CO2実質ゼロ」という目標はことさら目新しいことでなく、トヨタをはじめ、リコー、富士通、パナソニックなど、多くの企業がすでに宣言しています。
今後、世界中でさらに厳格な環境規制が広がっていくであろうことを考えると、カーボンフリー=CO2実質ゼロを実現するための具体的な取組を始めておくことは、企業、そして地域や国が生き残っていくためにも不可欠なことでもあるのです。
具体的に、何をやるのか?
国際会議席上での発言だったことから、もしかすると小池知事の独走発言? かとも勘ぐったのですが、東京都庁に電話して聞いてみると、そうではないようです。突然の電話だったにも関わらず、地球環境エネルギー部計画課の阿部課長が対応してくださいました。
阿部氏によると『ゼロエミッション東京』を実現するという目標は、すでに東京都の方針として具体案の策定を始めているプロジェクトであるとのこと。2018年10月に報道発表された『環境先進都市・東京に向けて CREATING A SUSTAINABLE CITY』(PDFファイル)でも、「東京都はCO2を排出しない持続可能な都市を目指す」ことが明言されています。
具体的に何をするのかについて、阿部氏が挙げてくれたポイントは以下の3つです。
①気候変動に対する「緩和策」と「適応策」
再生可能エネルギー活用や緑化の促進などによる気候変動緩和策の推進(CO2排出削減)。また、建築物の断熱性能向上やクールスポットの創出など気候変動への適応策を推進していくということです。
②プラスチックごみの削減
具体的には、2030年までに焼却される廃プラスチックを4割削減することを目標とするそうです。
③ZEVの普及
ZEV(ゼロエミッションビークル)、つまり電気自動車やPHEV、FCVなど、走行時にCO2を排出しない、もしくは排出が少ないモビリティ普及を後押し。具体的には、EV・PHEVの充電インフラを促進し、2025年には普通充電器を今の2倍の約5000基に、2030年には急速充電器を現状の300基から1000基に増やすことを目標として掲げています。
もちろん、本当に2050年に「実質ゼロ」を目指すのであれば、これだけではなくさらに幅広い、多くの取組を実現していくことが必要になるでしょう。さらに具体的な方法や目標については、今年12月に発表する予定の『ゼロエミッション東京戦略』に向けて、これからさらに調査や議論、検討を重ねていくことになるそうです。
東京都に急速充電器1000基、はいかがなものか……
CO2排出量全体の約2割を占めると言われる「運輸部門」、つまり自動車の脱炭素化は最重要課題のひとつ。EVsmartブログとしても、今後、どのようなZEV普及推進策が実施されるのか気になるところです。
ちなみに、東京都の「電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車等導入補助金」は、今まで中小企業(法人)だけが対象でしたが、今年度(平成31年度)からすべての個人と法人に対象が拡大、助成金額も増えました。電気自動車の購入補助金がある都道府県はそんなに多くありません。また、自動車税や自動車取得税が全額免除になるといった、東京都独自の優遇措置にも積極的に取り組んできています。電気自動車普及を応援したい立場の私としては「さすが東京!」って感じです。
『クールネット東京』電気自動車等の普及促進事業(EV・PHV車両)ウェブページ
とはいえ、2050年に向けた『ゼロエミッション東京』の具体策で、ひとつ、少し気になる点があります。
充電インフラ、「普通充電器が5000基」はまだまだ少なくないか? と感じます。さらに「急速充電器を1000基!」というのはいかがなものか。
私自身、電気自動車(日産リーフ30kWh)で都内を移動している時に、急速充電器を使うことはほとんど、というか、まったくといっていいほどありません。都内を一日移動するくらいの距離であれば、自宅で充電した電気で十分だからです。急速充電はなまじ30分程度で完了するので、充電しながら打ち合わせや買い物へ、というわけにもいきません。出先に普通充電器かコンセントがあれば、むしろそのほうがありがたい。
東京都の市区町村数は62。1000基ということは、ひとつの市区町村に約16基。と考えると、今後EVやPHEVの車種が増え、車両の数が増えていくことを考えると「まあ、そのくらいはあっていいのかな」と思う一方で、「都内にそんなに増設するなら、談合坂や海老名、足柄、蓮田や三芳といった東京近郊の高速道路SAPAにどーんと急速充電器(しかも高出力モデル)を増設してくれないものか」と思います。
また、普通充電器が5000基ということは、一市区町村あたり80基程度。「公共の駐車場、もしくはコインパーキングなどには必ず普通充電設備が相当数備わっている」という状況になるためには、こんな数では到底足りないと感じます。
話がかなり迷走してきました。ともあれ、東京都が『ゼロエミッション東京』実現を目指すのは素晴らしいこと。具体的な策、ことにZEV普及策については、リアルな電気自動車ユーザーの声が反映されるといいですね。
(寄本好則)

