テスラジャパンが8月3日に発売した家庭用蓄電池「Powerwall 3(パワーウォール 3)」のメディア向けローンチイベントが、9月4日に開催されました。太陽光発電用のパワーコンディショナーを内蔵したハイブリッド型へと進化し、最高出力はパワーウォール2の5kWから9.69kWへとほぼ倍増。さらに日本向けの新たな認証を取得し、SII(環境共創イニシアチブ)への機器登録を完了したことで、国や自治体の補助金が使いやすくなりました。会場ではテスラが掲げる「ミッション」が強調されていたのが印象的でした。
機能が大きく進化して出力は9.69kWに向上
日本におけるパワーウォール事業のジェネラルマネージャーを務める鈴木氏は、冒頭のあいさつで「日本のために設計した製品の発表です」と力を込めました。パワーウォール3は蓄電容量が13.5kWh、定格出力は9.69kWです。市販の家庭用蓄電池としてはかなりの大容量・高出力で、多くの家庭で電化製品を同時に使いながらのバックアップが可能になったことを紹介しました。
続くエンジニアリング担当社のプレゼンテーションではパワーウォールの進化を紹介。2015年の初代モデルでは外部のインバーターやコントローラーを別途接続する複雑な構成でしたが、本国では2023年に発表されたパワーウォール3でついに完全垂直統合型となり、一つの箱で発電・変換・蓄電のすべてをこなす製品に仕上がったとのこと。太陽光用パワコンを内蔵したことでDC→AC変換効率は97.5%を実現し、施工の簡素化と美観の向上にもつながっています。また、耐浸水性能(下端から60cm)や動作温度-20~50℃への対応、10年保証など、耐候性まわりのスペックもしっかり底上げされています。
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プレゼンテーションで強調されたテスラの「ミッション」
会場でリフレインされていた映像や登壇者のプレゼンテーションでは、テスラが掲げる「ミッション」が繰り返し強調されていたのが印象的でした。
創業当初からのテスラが掲げていたのは「Accelerate the world’s transition to sustainable energy=持続可能な輸送手段へ世界の移行を加速する」というミッションでした。魅力的なEVを次々と発売し、グローバルにスーパーチャージャー網を築き上げることで、世界のEVシフトを牽引してきました。2015年にはミッションを「持続可能なエネルギーへ」と拡張し、テスラエナジーが誕生。太陽光パネルの「ソーラールーフ」(日本未導入)や家庭用蓄電池「パワーウォール」、系統用の「メガパック」などを展開してきたのは周知の通りです。
会場で流れていた映像では、これまでの成果を自信たっぷりに語るイーロン・マスク氏のスピーチが紹介され、その後テスラのミッションはロボティクスとAIを軸にした「To build a world of amazing abundance=超豊かな世界を創る」へと進化したことが語られました。世界で累計100万台を突破したパワーウォールの普及台数を、次は1000万台、その先へと伸ばしていく。パワーウォール3の日本投入はそのためのステップでもあります。
大容量蓄電池が「超豊かな生活」をもたらしてくれる
イベント会場にはカットモデルが展示されていました。パワーウォールの内部にはコンパクトにまとめられたバッテリーマネジメントシステム(BMS)が搭載されており、高度なアルゴリズムで異常が実際の問題になる前に検知・特定できるとのこと。バッテリーの使用状況や天候などをもとにセルを事前に温めておく「ヒートモード」も備えており、EVの急速充電前に行うプレコンディショニングと同じ発想の機能だそうです。コントローラー部分はホームエネルギーマネジメントシステム「テスラホーム」と、その中核を担うAI「オプティキャスター」が担当。気象予報や電気料金の変動、太陽光発電量の予測などを機械学習で分析し、各家庭にとって最も経済的で環境に優しい充放電を自動で実行してくれます。
フロントカバーのデザインにもこだわりが感じられ、「見た目は二の次ということはありません」という鈴木氏の説明には素直にうなずけました。
パワーウォール2は国際規格のIEC認証は取得していたものの、日本の補助金の要件であるJIS規格を別途取得していなかったためSII登録ができず、補助金の対象になっていませんでした。パワーウォール3では新たにJISを取得してSII登録を完了させたことで、国の補助金が使えるようになりました。
「超豊かな生活」を広げていくためには、太陽光発電の電気を効率的に活用できるパワーウォール3がより広く普及することが重要である……。イベントで改めてミッションが強調されたのは、テスラジャパンからのそんなメッセージであるようにも感じました。
国内メーカーはもっと大胆にテスラを参考にすればいいのに
一方で、プレゼンを聞きながら感じたのは、国内メーカーへのちょっとした苛立ちです。国産EVの車種は少しずつ増えていますし、国産の家庭用蓄電池も各社から発売されています。ただ、新型EVでさえ「エンジン車からでも違和感なく乗り換えられる」といった開発コンセプトが重視されがちで、蓄電池などのプロダクトデザインにもテスラほどのこだわりが感じられるものは正直なところ多くありません。何より、自動車や蓄電池の国内メーカーから、テスラの「超豊かな世界を創る」に匹敵するような、夢とパッションを感じるメッセージがなかなか聞こえてこないのが、残念でならないというのが率直な印象です。
たとえば太陽光パネルの分野では、神奈川県横須賀市のモノクロームというスタートアップが、テスラのソーラールーフさながらの屋根一体型太陽光パネル「Roof-1」や外壁一体型の「Wall-1」を展開しています。自宅の建て替え計画は今のところないので横目でチェックする程度ですが、個人的にはかなり注目しています。
一方で国内メーカーの新型EVに試乗すると、まだまだ「エンジン車の呪縛」から抜け出せていないと感じることが少なくありません。パワーウォール3はTesla Appでエネルギー状況をリアルタイムに確認・管理でき、しかも現在の状況や動作の理由までわかりやすく解説してくれる親切設計。対して国内メーカーの家庭用蓄電池のUIについては「今ひとつ使いにくい」という声を聞くことが多いのが現実です。なにもかも「テスラのように」とは言いませんが、テスラのプロダクトやサービスをベンチマークとして、しっかりそれを凌駕していくことが、日本の産業が次世代につながっていくためには絶対に必要なのではないかと感じたのでした。
家庭用蓄電池としてのパワーウォール3は、コストパフォーマンスも高く魅力的な選択肢です。発注する施工会社への確認は必要ですが、国や自治体の補助金も活用できるはず。自宅の新築や建て替え、改装を計画中の方は、ぜひ選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
取材・文/寄本好則





