アメリカの『Electrek』というメディアが「トヨタは電気自動車シフトの速度を落とすという妄想的な取り組みを米国政府に働きかけている」として「遅刻したからといってみんなのパーティを台無しにしないで」と報じました。電動化を応援する日本人として、ちょっと切ないニュースです。
電気自動車は大きな課題を克服する必要がある
2021年3月17日、『Electrek』というアメリカ発のメディアが「トヨタは電気自動車シフトの速度を落とすという妄想的な取り組みを米国政府に働きかけている」という記事を公開しました。
【参照記事】
●Toyota lobbies US government in its increasingly delusional effort to slow down electric vehicles on『Electrek』
記事によると、アメリカ議会上院エネルギー天然資源委員会の公聴会で、北米トヨタのエネルギーおよび環境研究のディレクターである Robert Wimmer 氏が、バイデン政権になったことによるアメリカ政府の急速な電動化推進に警告を与える主旨の発言をしたとのこと。
「電動化を劇的に進歩させるには、充電インフラ、バッテリー性能、消費者の理解、手頃な価格など、途方もない課題を克服する必要があります」
記事ではこうした「警告」が、昨年末の豊田章男社長の発言と同様の「反EVトーク」であると解説。
GMやボルボなど、いくつもの自動車メーカーが電動化加速の計画を発表する中で、トヨタは代わりに水素燃料電池車とハイブリッド車に投資してきた。Wimmer 氏が警告する「途方もない挑戦」は、「水素を作るために何年も何十億ドルも無駄にしなければ、トヨタもその(途方もない挑戦の)先頭に立っていただろう」と指摘した上で、「(トヨタが)遅刻したからといって、みんなのパーティを台無しにしないでください」と結んでいます。
この記事は公聴会での北米トヨタ幹部の発言を受けてのもので、実際にトヨタがアメリカ政府に対してどの程度、どのような働きかけを行っているかは定かではありません。とはいえ、ドイツのフォルクスワーゲンが『Power Day』で電動化への具体的で意欲的なロードマップを示した日と前後して、トヨタ幹部が議会でこのような発言をしていたのは、ちょっと切ないニュースであると感じます。
【公聴会の記録】※PDF
●“Driving Innovation in the Transportation Sector Forward” Tuesday, March 16, 2021
欧州で発表された『X Prologue』の動力は、謎のまま
この記事が報じられた3月17日は、奇しくも欧州でトヨタ『X Prologue』(プレゼンテーションでは「クロスプロローグ」と紹介されていました)のオンラインワールドプレミアが開催されました。事前の情報では、いよいよトヨタが欧州市場にAセグメントのEVを投入するとの憶測もあり、私も期待してチェックはしたのですが……。
発表されたのは、欧州で人気のコンパクトカーである『アイゴ』新型モデルの、デザインコンセプトモデルでした。
前後のフェンダーが強調されたアクティブなエクステリアデザインの、コンパクトクロスオーバー。欧州モデルといわず、ぜひ日本でも発売してほしい、発売されたらきっと売れるだろうな、というデザインです。シンボルカラーは唐辛子をモチーフとしたスパークリングチリレッド。「スパイシーさを表現するために、塗料にはブルーメタリックを混ぜることで、まばゆい輝きを放つ赤を表現」しているそうです。
ところが、気になるパワートレインに関しては、まったくノーコメントでした。コンセプトモデルのお尻にマフラーは見当たらなかったので「もしかすると」という期待を捨て切れてはいませんが、もしBEVが設定されるのであれば、きっと「トヨタだってEVくらい作れるよ」「しかもコンパクトカーでお手頃だぜ」的にアピールされるでしょうから、ないんだろうなぁ、と予測してはいます。
正直、発表前には「いよいよトヨタが本気で来るか!」とときめいていたので、肩すかしを食ったような残念な気持ちでいるところです。
そういえば、世界各国で電池工場への1000億円超級の投資が相次ぐ中、2月中旬には、トヨタがウェストバージニア工場に2億ドル余りを投資して『RAV4』向け4気筒エンジンの生産能力を引き上げるというニュースが報じられていました。
おそらく、アイゴの新型モデル『X』はハイブリッドなのでしょう。トヨタとしては、VWをはじめとするライバルメーカーが電気自動車に入れ込んでいる間隙を突いて、向こう5年から10年間、ハイブリッド車を売りまくってやる! という計画なのかも知れません。
こうなったら、得意のハイブリッド車が神通力をなくする前に、がちがちに特許で固めてライバル他社の追随を許さない、圧倒的に高性能で安価な、できればリチウムもコバルトも使わない(他国に抑えられて調達が難しくなるだろうから)、驚愕の全固体電池の発明にトヨタが成功してくれることを祈るほかないですね。
がんばれトヨタ、負けるなニッポン、です。
(文/寄本 好則)


