朗報か? トヨタがアメリカで電気自動車2車種とPHEV1車種を2021年中に導入すると発表

2021年2月10日(現地時間)、トヨタモーターノースアメリカが米国市場に電気自動車2車種とPHEV1車種を今年中に導入する計画を発表しました。具体的な車種名や販売計画台数などの詳細はまだ明らかになっていません。

※冒頭画像はニュースリリースより引用。

ついにトヨタが本格的な電動化をスタートか?

GMやフォードといったアメリカ大手自動車メーカーが相次いで2兆円を超える電気自動車への投資を発表する中、現地時間の2月10日、トヨタモーターノースアメリカ(TMNA)が今年中に電動車3車種を導入するというニュースリリースを発信しました。

【ニュースリリース】(英語)

Toyota to Debut Three New Electrified Vehicles for U.S. Market

【関連記事】

フォードが電気自動車への投資を2025年までの5年間で2兆円以上へ増額を発表(2021年2月8日)

GMが2035年までにすべての乗用車モデルを電気自動車にすると発表(2021年2月2日)

導入されるのは、2車種のバッテリー式電気自動車(BEV)と、1車種のプラグインハイブリッド車(PHEV)であるとしていますが、具体的な車種名や価格などのスペック、年間の販売計画台数といった詳細は発表されていません。

とはいえ、発表の中では開発中の電気自動車用プラットフォームである『e-TNGA』への言及もありました。トヨタではスバルと共同開発するe-TNGAを使ったSUVを近日中に欧州などで発表する計画であることがすでに報道されており、アメリカで導入されるのもまずはRAV4のようなミッドサイズSUVになるのではないかという予測が報じられています。

トヨタでは、かねてからガソリンのみをエネルギー源とする「ハイブリッド車(HEV)」も「電動車」であるという見方を強調してきました。今回の発表は、BEVとPHEVという外部からの充電ができる「プラグイン車」を拡充し、本来の意味での「電動化」を大きく前進させるものであり、電気自動車普及の観点から歓迎すべきニュースです。

BEVシフト本格化への警戒感も

ただし、ニュースリリースの全文を読むと「ついにトヨタが電気自動車に本腰を入れるのか!」とばかりは思えない点が散見できます。

リリースはまず、営業担当副社長であるBob Carter氏の「私たちはおよそ25年前に先駆者としてプリウスを導入して以来、電動化のリーダーであり続ける。トヨタの新しい電動車は、顧客のニーズに最適なパワートレインの選択肢を提供するものだ」という言葉から始まります。

あくまでもハイブリッド車が電動車の先駆けである(つまり電動車である)という見方を示すとともに、電動車は顧客の選択肢のひとつに過ぎない点を強調したのでしょう。

続いて強調されているのが、「BEVとPHEVの温室効果ガス(GHG)排出量は、アメリカの発電によって排出される汚染物質を考慮するとほぼ同等」であり、「ドライバーのニーズに合った低炭素の選択肢を提供することが運輸部門でGHGを削減する最速の方法」であり、「あらゆる価格帯で、複数のパワートレインを使用することで、北米全体でより多くの人々がよりクリーンな自動車を利用することができ、短期的には総炭素排出量に最大の影響をもたらす」という点です。

さらに、5年間の総所有コストを比較すると、大容量バッテリーを搭載するBEVはPHEVよりも「はるかに高価」になることが示されています。

あらゆる価格帯で、複数のパワートレインを提供するのがモビリティを低炭素化するための近道であるという指摘は正しいでしょう。短期間で内燃機関を捨て去るのは社会へのインパクトが大き過ぎます。世界が「脱炭素」を実現するにはBEVへのシフトが重要ではありますが、発電の脱炭素化など、BEVシフトによって生じる課題を解決しながら、着実に進んでいくための時間や段階が必要だからです。

その上で、詳細な試算は示されていないので推測ですが、「BEVはPHEVよりもはるかに高価」としているのは、BEVの販売価格が高価になる最大の要因である大容量バッテリーのコストダウンが進まず、初期コスト=車両価格が高価であるのが理由でしょう。

でも、EVsmartブログでは繰り返しお伝えしているように、テスラはバッテリーのコストダウンや総合的なパフォーマンス向上に大きな投資と進化を続けているし、中国や欧州では低価格の電気自動車がいくつも登場し、電気自動車の大衆化が始まろうとしています。

日本人ユーザーとしてトヨタに期待したいのは、電気自動車の心臓部ともいえるバッテリー開発や製造における前向きなニュースであり、安価で魅力的な電気自動車を提供してくれること。その意味では「BEVってそんなにいいものじゃないよ」という示唆が繰り返された今回の発表は、やや期待外れではありました。

リリースの中では、今回のアメリカ市場への電気自動車導入は、2015年に発表された『トヨタ環境チャレンジ2050』を達成するためのステップであることにも言及しています。

グローバル企業として、トヨタが持続可能な社会実現に向けた目標を早くから定め、着実に前進しているのは間違いありません。とはいえ、今回のニュースの舞台であるアメリカでは新しく政権を握ったバイデン大統領が、約65万台の公用車をメイドインUSAの電気自動車に置き換えることを発表するなど、BEVを中心にした電動化が2015年には想像できなかったほど急速に進みつつあるのが現実です。

折しも日本市場では、Honda e、レクサスUX300e、マツダMX-30 EVなど、極端に販売計画台数が少なくメーカーとして普及させようという意欲が乏しく感じる「売らない」電気自動車のデビューが相次いでいます。アメリカでデビューする電気自動車が、テスラ モデルYやフォード マスタング マッハE、GMのシボレー ボルトEVなどと正面切って闘える、魅力的なモデルであることを期待しています。

(文/寄本 好則)