5月27日から29日にかけて神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」を取材。EVや環境問題関連で気になった出展をレポートします。
いすゞのピックアップトラック「D-MAX EV」
最初にお伝えするのは、いすゞが展示した「D-MAX EV」です。「D-MAX」はいすゞがタイで製造し、世界各国に輸出(一部はOEM供給)しているピックアップトラックです。現行D-MAXは3代目ですが初代から一貫して、ディーゼルエンジン搭載モデルです。車名のDにはディーゼルの意味も含まれています。
そんなD-MAXにEV仕様である「D-MAX EV」が登場したのは2025年のこと。当初は欧州向けモデルだけでしたが、2026年にはタイ市場向けモデルも登場しました。
今回展示されたのは欧州向けモデルのため左ハンドル仕様。タイ仕様だと右ハンドルです。D-MAXにはさまざまな形状(キャブと荷台の組み合わせ)がありますが、D-MAX EVとしてラインナップされるのはクルーキャブ(ダブルキャブ)とエクステンドキャブ(2ドアながらシート後ろに若干の荷物の搭載などを想定したタイプ)の2車型です。
バッテリーは66.9kWhのリチウムイオンで床下に配置されます。フロントモーターは43kW/108Nm、リヤモーターは97kW/217Nmとリヤモーターがほぼ2倍の性能を持つスペック。システム出力としては140kW/325Nmです。
いすゞはまず2023年にエルフEVでEVトラックの世界に参入しています。エルフEVは日本はもちろん、グローバルに展開されている車種ですが、D-MAX EVは欧州とタイとその周辺国のアジア地区のみ。日本での販売は予定されていません。今回の展示もあくまでいすゞが行っている取り組みについて紹介するために行ったとのこと。日本ではピックアップトラック市場が大きくないので、それも仕方ないことなのでしょう。
軽トラ「スーパーキャリイ」はCO2回収を提案
次に紹介したいのはスズキが展示した軽トラックのスーパーキャリイです。このスーパーキャリイはICEモデルなのですが、CO2回収装置が取り付けられています。考え方としては単純で、排ガス中に含まれるCO2を回収してしまおうというものです。
このような取り組みはほかのメーカーも行っていますが、いかにもスズキらしいと感じたのが回収したCO2を農業に生かす考え方です。植物はCO2を吸って酸素を排出しますので、排ガス中のCO2を利用することで、効率的に農業を行えるというプランです。スズキはすでにインドでは牛の糞尿から出るメタンガスを利用した圧縮バイオメタンガスをクルマの燃料として使う事業に着手しています。
スーパーキャリイに搭載されたシステムはクルマから出るすべてのCO2を回収するのではなく、約半量を回収する方式。1日の走行距離が20kmだとして回収できるCO2は1kgになるといいます。吸着装置によって回収されたCO2をビニールハウスに供給することで効率よく作物を栽培していこうというもくろみです。半分しか回収しないのでは、CO2は劇的には減らないのでは? と考える向きもありますが、使用する燃料を植物由来のカーボンニュートラル燃料にすれば、カーボンニュートラルを超えてカーボンネガティブ(排出量よりも回収量が上回る状態)になるというわけです。
マイクログリッドにBEV商用軽バンを活用
ダイハツブースで目を引かれたのが、コンテナ型のマイクログリッドシステムです。太陽光発電や蓄電池、電力制御装置「SPH」、そしてダイハツが投入を予定しているBEV商用軽バンを組み合わせたシステムで、再生可能エネルギーを効率よく活用できるのが特徴です。
とくに興味深いのは、蓄電池とSPHを20フィートコンテナに収め、必要に応じて被災地やイベント会場などへ運搬できる点です。平常時は施設の電力ピークを抑えてCO2排出量削減に貢献し、停電時には避難所や公共施設へ継続して電力を供給できます。
また、BEV商用軽バンを「走る蓄電池」として活用する考え方もユニークです。車両に蓄えた電力を別の建物へ運んだり、複数の施設間で電力を融通したりすることを想定しています。クルマ単体の電動化だけでなく、エネルギーインフラの一部としてBEVを活用する提案と言えるでしょう。
ダイハツと前田建設は2025年12月から実証実験を開始していて、将来的には公共施設や工場、医療・介護施設などへの展開も視野に入れています。展示車両よりも目立つ存在ではありませんでしたが、BEVの新たな活用方法を示す展示として印象に残りました。
新電元の新しいV2X充放電器
新電元は新しいV2X充放電器を展示していました。V2X機器はさほど珍しくないと思う方もいるかもしれませんが、ちょっとお待ちください。新電元の新しいV2X充放電器は三相系統で利用でき、しかも連系が可能です。シンプルな家庭用のV2Hは単相200V出力に対応していればいいのですが、V2X(ビルなどを含めた高度な系統連携を意図)の場合は三相電源に対応していないと接続機器に制限が発生します。ここがV2Xの難しい部分とのこと。
新電元の新しいV2X充放電器は三相電源への対応に加えて複数台の並列接続が可能としているため、接続された電力供給車の出力を合わせて使うことで大きな電力が必要な機器が使用できるほか、EVに蓄えた電力を順番に使っていく輪番利用で停電することなく機器を使い続けることが可能となります。
もちろん家電機器やオフィス機器にも使用できますが、三相電源が必要な機械式駐車場やホール照明、厨房・給湯機器にも対応するので、商業施設や工場、倉庫などでの利用が可能な設計となっています。
新電元のブースには「見せない普通充電器」と銘打った普通充電器も展示されていました。従来の普通充電器は本体部分が充電器然としたデザインですが、この「見せない普通充電器」はスリムでスマートな印象。少し大きな8個口テーブルタップといった雰囲気です。出力は200V-30Aで6kW対応。さまざまなものに隠して設置することも可能となっています。
EV用のワイヤレス充電器
最後に紹介するのがSPCの後付けワイヤレス充電器。ワイヤレス充電に対応してないスマホに後付けワイヤレス充電器を取り付けるのと同じ要領で、クルマ側に受電装置を装着。専用の充電装置の上に乗せることで充電が開始されるとのこと。ラゲッジルームには通信装置、整流器とともにCHAdeMO規格の充電ポートが2口用意されます。
それぞれの充電ポートに差し替えることでワイヤレス充電とプラグイン充電を切り替えられるとのことですが、なんともアナログでスマート感のない方式です。ここがもう少し改善されればと思ったのですが、この差し替えは技術的な問題ではなく法規制の壁とのこと。現状の法規制上では、これ以上のことを求めると認可の取り直しなどが必要になってしまうとのことでした。価格は充電器受電機セットで1000万〜1500万円とかなり高めでした。
取材・文/諸星陽一











