10月17日に最終戦が開催される「EV-GP」を連続レポート。第4戦では加藤正将選手(ヒョンデIONIQ 5 N)が第3戦に続いて連続V。絶対王者のKIMI選手(テスラ モデルS Plaid)とのポイント争いを接戦に持ち込みました。酷暑のレースとなった袖ヶ浦ラウンド初日をリポートします。
岡山国際サーキットの第3戦は大乱戦
EV-GP(EVグランプリ)は日本電気自動車レース協会(JEVRA)が主催するシリーズ戦です。6月20日に開催された第3戦「岡山55kmレース」が大乱戦となったので、まずはその振り返りから。
岡山まで取材には行けなかったのですが、JEVRAやレース参加者によると、雨中のレースとなったオープニングラップでいきなりアクシデントが起きました。第2コーナーに並んで飛び込んだポールポジションの小峰猛彦選手(IONIQ 5 N)と予選2番手のKIMI選手が激しく接触して走行不能に。レース中断を示す赤旗が振られました。
コース上に水が流れていて、2台がクラッシュしたそうです。周回数を減らして再開されたレースですが、コース状況は改善せず、今度はSAWA選手と望月裕司選手(ともにテスラ モデル3)が第1コーナーでクラッシュ。また赤旗が出てそのままレース終了となりました。
トラブルが続発したレースを制したのは加藤選手。開幕戦から抜群の速さを見せていましたが、3戦目にしてEV-GP初優勝を飾りました。2位にはモンドスミオ選手(テスラ モデル3 パフォーマンス)、3位に織戸茉彩選手(IONIQ 5 N)が入りました。
KIMI選手は2024年以来、全戦で1位か2位でゴールしていて、ポイントゼロのレースは初めて。岡山を終えた時点の総合ランキングはKIMI選手(40P)、モンド選手(37P)、織戸選手(27P)、加藤選手(26P)となっています。
猛暑の中での連戦がチャンピオン争いの天王山
さて、振り返りはここまで。シーズン後半戦の幕開けとなる袖ヶ浦フォレストレースウェイでの戦いは、異例の週末連戦スケジュール。8月1日(土)に第4戦「袖ヶ浦55km」、2日(日)に第5戦「袖ヶ浦60km」が開かれます。チャンピオン争いの行方を左右する、まさに天王山を迎えました。
第4戦が行われた土曜日は快晴で、朝から気温がぐんぐん上昇しました。予選時の気温は35℃、路面温度は50℃超え。タイヤに厳しいコンディションであることに加えて、EVはバッテリー温度が一定の値を超えるとパワーダウンを起こしてしまいます。
スプリントレースではあるものの、フルスロットルで走り切れないのがEV-GP。ドライバーは、耐久レースのような戦略を求められます。気温が高いと、その分だけバッテリーが早く限界温度に達するので、マネジメントは一層シビアに。観客としては、その駆け引きこそ見どころなのですが、ドライバーは頭を悩ませることになります。
予選トップのタイムをマークしたのはKIMI選手でした。岡山で壊れてしまったマシンを修理した後、全開走行させるのは予選が初めてだったそうですが、しっかりリカバリー。1分11秒964で、定位置となっているポールポジションを獲得しました。
「55kmのほうで勝っておきたいですね。この暑さで60kmだとマネジメントが難しいので」(KIMI選手)
予選2番手は1分13秒888の加藤選手。「KIMI選手は速いですが、チャンスがあればもちろん優勝を狙いますよ」とニッコリ。今回もテスラVSヒョンデの爆速対決は必至です。同じIONIQ 5 Nを駆る柴田知輝選手、織戸選手も好タイムをマークしました。
EV-1クラス(モーター出力400kW以上)が上位を占める中で、EV-2クラス(同250kW以上400kW未満)のモンド選手も、さすがの速さを見せました。パワーに勝るIONIQ 5 N勢に割って入り、3番手のタイムでセカンドローをゲット。テクニカルなショートサーキットを舞台に、コーナリングワークで勝負をかけます。
ラスト1周のファステストラップで大逆転
各車の充電を終えて迎えた午後の決勝レースは、1分17~18秒台でラップするKIMI選手と加藤選手が後続を引き離していく展開となりました。第2戦のもてぎでも見られたタイマンバトルが再び展開。KIMI選手にぴたりとつけてプレッシャーを与え続ける加藤選手ですが、KIMI選手はミスのない走りでトップを譲りません。
激しいテールトゥノーズの争いが中盤以降も続きましたが、順位は変わらず。このままKIMI選手が押さえ切ってポールトゥフィニッシュか……と思われたラスト1周にドラマが待っていました。ストレートで競りかけた加藤選手がKIMI選手をかわして第1コーナーに飛び込みます。そのままペースアップして、1分16秒431のレース中ベストタイムを最終周に叩き出し、トップでチェッカーを受けました。
酷暑のレースで、バッテリーを熱ダレさせないように走り切るマネジメント勝負は、底力を残していた加藤選手のドラマチックな逆転勝利でした。ただ、ゴールした加藤選手に聞くと「余裕はまったくなかった」そうです。
「アラート(警告)も点いていて、抜いた後すぐパワーダウンしました。でもKIMIさんも抜き返してくるほどのパワーは出せなかったようですね。レースを通じてお互いにミスはなかったので、バックマーカー(周回遅れ)をかわすタイミングなど、ちょっとしたアクセルワークの違いが出たと思います。ギリギリの勝負でした」
一方のKIMI選手は「(バッテリーの)熱もSOC(充電率)も限界。コントロールはしていたし、やれることはやったつもりでしたが、(余力は)残らなかったですね。まぁ、明日頑張ります」。
年間タイトル争いが激戦模様に
今季からEV-GPに参戦している加藤選手は、第1戦で終盤に失速、第2戦はマシントラブルでリタイアと結果を残せなかったのですが、一転して2連勝。タイトル争いはトップのKIMI選手Fが55ポイントに対して46ポイントと、9ポイント差まで肉薄してきました。
3位に入ったのは織戸選手。EVでのレースは今季が初めてですが、安定したスムーズな走りで、初参加の第2戦から表彰台を逃していません。「これまでは(レース展開などで)幸運な部分もありましたが、今回はしっかり力を出せたイメージがあります。加藤選手とのワンツーが目標なので、ぜひ達成したいです」(織戸選手)
4位に入ったのはモンド選手。序盤はIONIQ 5 N勢を上回るタイムで周回していましたが、バッテリーの熱上昇が激しく、ペースを下げざるを得なかったそうです。「できるだけコントロールしましたけど限界でしたね」。競っていた柴田知輝選手(5位)もパワーダウンしたそうで、ゴール後は柴田選手とお互いの状況について話していました。
「(アクセルを)我慢できませんでしたね。最後はパワーが全然出なくなってしまった」(柴田選手)
「効率よく走らせたつもりでしたけど、それでもダメでした。明日は距離も長くなるので、さらに厳しくなりそう」(モンド選手)
6位にはIONIQ 5 Nの冨田賢吾選手が入りました。上位をテスラとヒョンデが占める2強対決が続きますが、今季はヒョンデの存在感が増しています。
今回はEV-P(プロトタイプ)クラスで参戦を続けているモデューロレーシングHonda eが、想定外のトラブルに見舞われました。ホンダアクセスの社員有志がフルカスタムしたHonda eを走らせるプロジェクトは今年が3シーズン目。試行錯誤を重ねながらマシンの熟成を図ってきています。本戦は渋谷和則選手がドライバーだったのですが、予選前に制動灯の不具合で車が始動できない状態に陥ったそうです。
ブレーキペダルと制動灯を連動させる圧力スイッチが故障。なんとか点灯するように配線し直して、車検にギリギリ間に合ったそうです。「いきなりリタイアのピンチでしたが、勉強になりました。明日の60kmレースも見据えながら、しっかり完走できてよかったです」(渋谷選手)
市販EVで限界に挑んでいるだけに、バッテリー過熱だけでなく、想定外のトラブルにも見舞われます。ドライバーの腕だけでなく、メインテナンスなど総合的なチーム力も試されるのでした。
レースを終えたドライバーやスタッフはサーキット周辺などで宿泊、翌日の第5戦に備えました。体力的にもマシン的にもハードな「ダブルヘッダー」の後半については、別記事で。詳細なリザルトや日程は、日本電気自動車レース協会(JEVRA)の公式サイトに掲載されています。
取材・文/篠原知存






