テスラが2026年Q2の決算を発表した。総売上高は282億3600万ドルと前年同期比26%増。四半期として過去最高となる48万126台を納車したものの、AIやロボタクシーへの先行投資が大きく、収益は悪化する結果となった。
増収と収益悪化が同時進行する「ねじれ決算」
2026年7月22日(現地時間)、テスラが2026年第2四半期(4月〜6月)の決算を発表した。総売上高は282億3600万ドルと前年同期比26%増、トレーリング12カ月ベースでは初めて1000億ドルの大台を突破。また、四半期として過去最高となる48万126台を納車したほか、エネルギー事業も第2四半期として過去最高の展開量を記録するなど、事業規模の拡大は鮮明だった。
一方で調整後EPSは0.33ドルと市場予想(0.53ドル前後)を大きく下回り、営業利益は前年同期比57%減の3億9800万ドル、フリーキャッシュフローは11億ドル近いマイナスに転落。増収と収益悪化が同時進行する「ねじれ決算」となり、発表後のアフターマーケットでは株が売られた。
総売上高は282億3600万ドルで前年同期比26%増、自動車部門の売上は205億1600万ドル(前年同期比23%増)、エネルギー部門は31億3900万ドル(前年同期比13%増)、FSDを含むサービスやその他事業の売上は45億8100万ドルとなった(前年同期比50%増)。
納車台数は48万126台(前年同期比25%増)と四半期として過去最高を更新し、生産台数(45万1758台)を上回ったことで在庫水準も圧縮された。エネルギー貯蔵の展開量は13.5GWh(前年同期比41%増)と、第2四半期として過去最高を記録した。
2026年第2四半期の業績
総売上高:282億3600万ドル(前年同期:約225億ドル/26%増)
営業利益:3億9800万ドル(前年同期:約9億2300万ドル/57%減)
純利益(調整後):11億5300万ドル(前年同期:約13億9300万ドル/17%減)
調整後EPS:0.33ドル(前年同期:0.40ドル/18%減)
研究開発費が7億8200万ドルに増加
営業利益の悪化を要因分解すると、売上総利益は納車増などで前年同期比8億7300万ドル増加した一方、研究開発費が7億8200万ドル、販管費が6億1600万ドルそれぞれ膨らみ、これを相殺した。研究開発費の増加額だけで営業利益の減少幅(5億2500万ドル)を上回っており、今回の利益率悪化はAIや運転自動化領域への先行投資が要因と言える。
投資の中身をIR資料から拾うと、AIトレーニング用コンピュート「コルテックス」はテキサスでの搭載容量が2026年上半期だけで倍増し、コルテックス1(90MW超)、コルテックス2(115MW超)がともに稼働中。オースティンでは自社半導体工場の建設・設備調達も進捗した。
バッテリー分野では、ネバダのLFPセル、テキサスのカソード材料・リチウム精錬、ベルリンの4680セルパック生産能力の拡張が並行して進み、4680セルの増産はサイバーキャブとセマイ(Semi)トラックの生産、モデルYの増産を支える狙いだという。
フリーモント工場ではモデルS/Xの生産ラインを解体し、オプティマス専用ラインの設置を進めているほか、ギガ・テキサスでも建設が本格化している。サイバーキャブはギガ・テキサスで量産を開始し、エネルギー貯蔵向けのメガファクトリー・テキサスも完成間近だ。設備投資は前年同期比142%増の57億8900万ドルに達した。
なお、販管費の増加分には、イーロン・マスクCEOの株式報酬プランに伴う会計上の費用計上も含まれるが、これは実際に支払われたものではなく、権利確定の確度が高まったと判断された分を非現金で計上している。加えて、アメリカの連邦税額控除終了に伴い規制クレジット収入が前年同期の4億3900万ドルから1億4600万ドルへと67%減少したことも、投資とは別の構造要因として営業利益を押し下げた。
結果、フリーキャッシュフローは10億9200万ドルのマイナス(前年同期は1億4600万ドルのプラス)に転落。ただし、営業キャッシュフロー自体は前年同期比85%増の46億9700万ドルと、本業が生み出す現金はむしろ増えている。それを上回るペースで設備投資が142%増えたことがFCFマイナス転落の直接の原因であり、稼ぐ力が落ちたというより「使うペースが稼ぐペースを上回った」構図と言える。
決算後のアフターマーケットでは、株価は取引終値374.01ドルから一時4%超下落し、357ドル台まで売られる場面があった。テスラ株は決算発表時点で年初来約17%安、直近1カ月でも約11%安と軟調が続いており、AI・自動化への最大の投資を掲げるテスラを投資家がどこまで信じるか、という雰囲気がQ&Aでも強く感じられた。
第2四半期決算に対するテスラの公式総括
テスラの決算資料サマリーでは次のポイントが述べられており、AIハードウェア企業としての投資が進んでいることがわかる。
車両・エネルギー・サービスの各事業はいずれも堅調に推移し、サイバーキャブがギガ・テキサスで量産を開始したほか、セマイ・トラックも今年中のネバダ新工場での生産開始に向けて計画通り進捗。車両生産の当面のボトルネックであるバッテリーパック生産能力の拡大も引き続き進み、メガファクトリー・テキサスは完成間近で今年中の稼働開始を見込む。太陽光・半導体製造についても、用地選定・建設・設備調達が進んだ。
FSDの浸透は今期も拡大し、北米では新車納車の55%超がFSDサブスクリプション付きとなり過去最高の装着率を記録した。ロボタクシーは拡大を続け、現在7つの主要都市でサービスを提供している。フリーモント工場ではモデルS/Xの生産ラインを解体し、オプティマス向けの建設が始まった。
テスラは「最大かつ最もエキサイティングな投資期」にあるとし、スケーリングと長期的な価値創造に引き続き注力する方針を強調している。
ガイダンスとQ&Aの概要
ここからは決算説明会でのガイダンスとQ&Aで語られた主なポイントを紹介したい。
イーロン・マスクCEO
●オプティマスの生産は、ロボットを構成する部品のほぼ全てが新規開発でありサプライチェーンも存在しないことから、テスラがこれまで手掛けた中で最も難易度の高い量産化プロジェクトだ。フリーモント工場ではモデルS/Xのラインを解体し、オプティマス専用の第一世代生産ラインの設置を進めている。
●ロボタクシーの拡大ペースについては、事故やけがを一切起こさないよう慎重に進めている。一人でも負傷者が出れば世界的なニュースとなり、規制当局から即座に活動を制限されかねない。
●今年の設備投資について、非常に大きな支出となる年ではあるものの、投資対象はいずれ大きなリターンを生む。
●スペースXとの資本統合の可能性について。テラファブ(大規模半導体・電池製造拠点)を軸に両社の重なりは増えているが、決算説明会の場で企業統合について踏み込んだ議論はできない。テラファブ拠点の立地については近く発表する。
ヴァイブハブ・タネジャCFO
●2026年通期の設備投資はあらためて250億ドル超になる、6つの新工場、AIインフラ、テラファブへの投資を継続する。
●第2四半期末時点の受注残高は2023年以来最大の水準に達した。当面の課題は需要ではなく、各工場の増産による供給対応にある。
●FSDなど自動運転関連サブスクリプションの年間経常収益が7億9100万ドルに達した。
●規制クレジット収入は前年同期の4億3900万ドルから1億4600万ドルへ67%減少。米国の連邦EV税額控除終了と燃費規制の罰則撤廃が要因であり、今後この収入源の回復は見込めない。
文/前田謙一郎(x.com/Kenmaeda77)
※記事中画像はテスラIR資料より引用。





