2019年5月9日、トヨタが『プリウスPHV』を一部改良して発売しました。改良点のポイントは「乗車定員が4人から5人になった」ことと、「V2Hに対応」したことです。発表から少し時間がかかってしまいましたが、いくつか広報部に質問して、改良のポイントをまとめてみました。
ユーザーの要望に応えて5人乗りに
普通の『プリウス』は定員5名ですが、2017年2月に発売された前モデルの後席中央にはセンターアームレストが配置されていて定員4名となっていました。あえて定員4名とした理由については、プラグインシステムを手がけた市川真士主幹が「EV性能を上げたいとなると、全体的なバランスを勘案して4人乗りになった。EV距離をとらなければ5人乗りでもいけるが、今回60km以上という数値目標が設定された段階で4人乗りでということになった」と、ウェブメディア『Response』のインタビューに答えています。
乗車定員を5名とした理由について、トヨタ自動車広報部に聞いてみました。
「プリウスのリーディングモデルとして、未来感やプレミアム感など後席のパーソナルスペースを重視し、PHVならではの価値を提供したいと考えて4人乗りとしたのですが、今回、お客様からの"5人乗り”が欲しいとの声に応えて変更いたしました」
お客様っていうやつは、ないものねだりが得意です。航続距離は長ければ長いほどいい、乗車定員は4人より5人がいい、ってことですね。これから、さまざまな車種が電動化していく中では、お客様の声を聞くだけでなく、お客様をリードしちゃうくらい魅力的な提案が大切になってくるのかも知れません。たとえば、航続距離は200kmだけど、200万円程度で買えるコンパクトなBEV、とか。
また、今回の改良によって、V2H(Vehicle to Home)機能がオプション設定されました。別売のV2H機器と接続することで、駆動用バッテリーの電気を家庭で使うことが可能です。また、戸建てなどで太陽光パネルを設置している場合、余剰電力を売電するのではなく駆動用バッテリーに蓄えることも可能です。FIT(固定価格買取制度)が終了するユーザーが出現する2019年問題が注目されている状況の中、プリウスPHVも「電気自動車のもうひとつの役割」を果たす機能を備えたことになります。
V2Hのイメージ
※トヨタ自動車ニュースリリースより
ちなみに、オプションでV2Hを選択すると「V2H機器を作動させるために車両側から電力を供給するようプログラムを変更するとともに、一部メーター表示などのハードも変更しています。DC急速充電(全車OPT)を取っていただければ、DC外部給電機能(V2H)もついています」(広報部)とのこと。急速充電機能にプラスしてオプション料金が必要になることはないようです。
今回のプリウスPHVの改良を受けて、デンソーからも太陽光発電も接続可能なV2H機器がリリースされています。
電気自動車は「電源にもなる」という点でもうひとつ。たとえば日産リーフにはAC100Vを取り出す機能は付いていませんが、プリウスPHVにはアクセサリーコンセント(AC100V1500W)がオプション設定(税込7万5600円)されていて、200Vの普通充電口に接続してAC100V1500Wが使える『ヴィークルパワーコネクター』が付属してきます。
前モデルのAプレミアムグレードには標準装備となっていましたが、今回の改良後は全車メーカーオプションとなったようです。ヴィークルパワーコネクターの評判を広報部に伺ったところ**「北海道の大規模停電の後、HV車(※編集部注/PHVを含む)ではAC1500Wが使用できることを訴求したところ、販売台数が増加したのですが、ヴィークルパワーコネクターについては、認知度はそれほど上がっていないようです」**とのこと。たしかに、車両にアクセサリーコンセントが付いていれば、わざわざ充電口から電気を取り出す必要はさほどないのかも知れません。
日産リーフユーザーからすれば、ちょっともったいない話です。日産も、リーフ用にこういうオプション機器を発売してくれないものか、と思います。
「LINEマイカーアカウント」っていうのも便利そう
正直に白状しておくと、私自身、プリウスPHVには日本EVクラブのスタッフとして白馬村で行った試乗会でちょこっと乗っただけ。あまり詳細な機能などを評価できるほどの体験はありません。
が、今回の改良を調べていて興味深かったのが「LINEマイカーアカウント」というサービスです。スマホアプリとしてたくさんの方が使っているであろう「LINE」に愛車を友達として追加。LINEで会話することで、ナビの目的地設定や、目的地までの所要時間を教えてくれたりする、というサービスです。
自動車へのAI導入やコネクテッドカーの技術が注目されて、ドライバーと会話するなんてことも進んでいますが、LINEでサクッとコミュニケーションできて、いろんな設定ができたり通知が来るのはとても便利、なのではないかと思います。この「LINEマイカーアカウント」は、昨年6月にクラウンやカローラスポーツからローンチしたサービスとのこと。今後、トヨタの他の車種や、他メーカーでも広がるのかな、と感じます。
「急速充電、ゆずれます」のタグが付属している?
ところで、前モデルのプリウスPHVで急速充電機能のオプションを選ぶと、こんな表記がされた札が付属していたそうです(私は実際に見たことがないのですが……)。
急速充電をお急ぎのEVユーザーの方へ
約20分で充電完了します。
充電ゆずれますので声をかけてください。
GWに東京〜兵庫を日産リーフで往復した際にも、高速道路の急速充電スポットでアウトランダーPHEVの後ろに付いての充電待ちが2回ありました。もちろん、空いていればPHEVもどんどん急速充電してEV普及を一緒に応援していきましょう! という気持ちなのですが、充電待ちをしていると、ちょっと複雑な気分になるのも事実です。
広報部に確認したところ、このタグは現行モデルでも「車両の出荷時に、充電コードとセットで入れてある」とのこと。電気自動車ユーザー同士の間では容量80%を超えたら譲り合いましょう的なマナーが広がっていますが、PHEVも一緒にそうしよう、という雰囲気にはなっていないようにも感じます。限られた急速充電スポットを、どのように使うのが正しいマナーであるとするのか、これから、さらにEV&PHEVの台数が増えていくなかで、コンセンサスが広がっていくといいですね。
最後に、2017年以降のプリウスとプリウスPHVの国内登録台数を広報部に伺いました。
| 2017年 | 2018年 | 2019年(〜4月) | |
|---|---|---|---|
| プリウス全体 | 160,900台 | 115,500台 | 47,200台 |
| うちプリウスPHV | 26,700台 | 12,400台 | 2,600台 |
2019年は4月までですが、単純に3倍すると約7800台。2018年の1万2400台からも大きく落ち込んでしますことになります。そんなこんなもあっての今回の一部改良ということなのでしょう。
個人的にはBEVが大好きですが「いきなり電気自動車に乗り換えるのは不安」という方には、PHEV(充電できるハイブリッド車)は、電気自動車の魅力を体感するためにも安心できる選択肢。まずは、ディーラーでの試乗から、一度試してみてはいかがでしょうか。
(寄本好則)





