【2026全日本EV-GP 第5戦】2日連続でテスラとヒョンデがデッドヒート/KIMI選手が年間王者にリーチ

電気自動車で競う「EV-GP」の第5戦が、前日の第4戦に続き千葉の袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催。2戦続けてKIMI選手(テスラ モデルS Plaid)と加藤正将選手(ヒョンデIONIQ 5 N)の熱闘が演じられました。袖ヶ浦ラウンド2日目のリポートです。

年間王者争いが大激戦になってきた

日本電気自動車レース協会(JEVRA)が主催するシリーズ戦・EV-GP(EVグランプリ)は今季全6戦で競われています。3年連続王者を狙うKIMI選手が開幕戦、第2戦と連勝して、今年も盤石と思われましたが、第3戦は不運のリタイア。

一方、加藤選手は王者不在の第3戦で勝ったあと、KIMI選手が復活した第4戦でも、テールトゥノーズのバトルの末、最終ラップで逆転勝利。チャンピオンシップ争いでもポイント差を詰めてきました。大接戦が演じられた翌日とあって、サーキットにはバトルの続きを期待するムードが漂っています。

2026年8月2日(日)に行われた第5戦「袖ケ浦60km」は、前日に続いて猛暑の中でのレースとなりました。EV-GPでは同じサーキットでのシーズン2戦目は、距離が伸ばされます。昨日は23周でしたが、今日は25周。ますますバッテリーマネジメントはシビアになります。

予選1位は1分12秒981の加藤選手でした。昨日の予選より約1秒タイムを縮めてポールポジションをゲット。「サスペンションのコイルを変えて剛性感が向上しました。かなり感触が良かった。決勝は距離も伸びるので昨日のペースだとゴールに届かないでしょう。マネジメントをしっかりやって勝ちたいですね」と加藤選手。

KIMI選手は1分13秒684で2位。昨日の予選では1分11秒台を出していたのですが、クリアラップが取れなかったのか、それともバッテリーの加熱を抑える作戦でしょうか。

予選3番手はテスラ モデル3 パフォーマンス(EV-2クラス)のモンドスミオ選手、4番手と5番手はIONIQ 5 Nの織戸茉彩選手と柴田知輝選手が入りました。昨日に引き続き「テスラvs.ヒョンデ」の上位争いです。

改造EVのレガシィが初参戦

今回、サーキットで最も注目を集めていたマシンが、初参戦の「武蔵精密D-REVレガシィ」です。武蔵精密工業(愛知県豊橋市)の社内部活動チームがスバルのレガシィツーリングワゴンをEVに改造しています。同チームは過去にもシビックのコンバートEVでEV-GPに参戦していました。クルマを作り直しての再挑戦です。

エンジンをモーターに積み替えて、60kWhのリチウムイオン電池と自社製のハイブリッドスーパーキャパシタ(蓄電装置)を積んでいます。モーター出力は240kW。パワートレインはEV-3クラスのテスラ モデル3 RWDなどに匹敵する強力な一台です。

チーム監督の加藤宣保さんに聞きました。

「以前、シビックのコンバートEVで参戦していましたが、容量もパワーも増やしています。四駆でやりたかったのでレガシィを選びました。来年度からフル参戦する予定で、今年の残り2戦で車を調整したいと思っています」

レガシィはEV-C(市販車改造)クラスへのエントリーですが、EV-P(プロトタイプ)クラスに、たった1台で挑戦を続けてきたフルカスタムのモデューロレーシングHonda eに好敵手登場と言えそうです。

そのHonda eの稲谷友恭選手は予選でコースアウトしてしまい、不本意なタイムで最後列からのスタートとなってしまいました。昨日のブレーキトラブルも完治したわけではなく、袖ヶ浦ラウンドはどうもついていないようです。

筆者もエコランでサーキット走行を体感

さて、今回はオールEV DAYと銘打って、市販車で1時間走って距離と電費を競う「エコラン」や専用カートによる「CQ EVミニカート·レース」が行われました。EV-GPの予選を終えたレース車両が決勝に備えて充電する時間を活用したイベントです。

筆者も寄本編集長とペアを組んで、ヒョンデKONAカジュアルでエコランに出場しました。総合5位に入った顛末は編集長の記事を読んでいただくとして、レースでサーキットを走った感想を。順位に加えて電費も成績を左右するエコランなので限界まで攻めたりはしないものの、かなりの速度域で走り続けます。筆者も16周ドライブしました。

EV-GP観戦は3シーズン目ですが、見るとやるとは大違い。最速ラインがわかりません。何周か走っているうちに、いい感じで曲がれても、次の周で再現できません。オーバースピードでタイヤがきゅるきゅる。

自分でも高速走行を試してみて初めて、EV-GP出場選手のすごさがわかりましたし、レースの奥深さも感じられました。みなさんも、機会があればぜひサーキットを走ってみてください。JEVRAは今後もエコランやスポーツ走行の機会を設けてくれるそうです。車の限界を知ることは、一般道での事故防止にもつながるはずです。

【関連記事】
初開催のEV「1時間エコラン」で電費1位/サーキットで電費を伸ばした走りの秘策とは?(2026年8月11日)

決勝はハイペースでの戦いに

そんなEVデーの締めくくりとして迎えた決勝レース。飛び出したのは予想通り、KIMI選手と加藤選手。ホールショットはインをとったKIMI選手が奪います。昨日の第4戦をビデオ再生するかのようなテールトゥノーズで始まったレースでしたが、加藤選手が仕掛けます。5周目にKIMI選手の前に出て、1分17~18秒台でラップを重ねていきます。60kmレースなのに昨日の55kmレースよりも速いペースです。

ラストで逆転した昨日とは一転して、レースの主導権を握りにきた加藤選手。これについていくKIMI選手。2台が他を引き離し、並びは違うものの再びタイマン勝負の様相となりました。両選手ともバッテリー性能をフルに使い切る腕の持ち主で、勝敗の行方は誰にもわかりません。

2台ともまったくペースを落とさずに周回を重ねます。ハイスピードのレースが最終盤まで続くなか、KIMI選手は冷静に状況を分析していました。

「早めに加藤選手が仕掛けてきて、競り合うとバッテリーがあやしくなるので、無理せずに合わせて走って、残り4、5周でアタックしようと決めました。あまり近づくと、余計に(アクセルを)踏むことになるので、少し離れてついていきました」(KIMI選手)

そのプラン通りに残り5周となった22周目、一気に仕掛けてトップを奪い取り、そのまま逃げ切りました。加藤選手も粘りましたが、もう一度抜き返すまではバッテリーを残せていなかったようで、最終周にはペースダウンして2位でゴール。

「昨日並みのペースで走らないと勝機はないと思っていたので、こういう(前に出る)展開になりました。バックマーカー(周回遅れの車)もスムーズにパスできたんですが、最後はバッテリーの熱が限界で、ちょっと抜くのは無理という状態でした」(加藤選手)

2日続けての最速対決は、ひとつずつ勝利を分け合う結果に。総合チャンピオン争いは1戦を残してKIMI選手が75P、加藤選手が61Pとなりました。KIMI選手は最終戦「筑波60kmレース」で5位以上に入れば3連覇達成です。一方の加藤選手もKIMI選手次第ではあるものの逆転優勝の可能性を残しています。

織戸茉彩選手が連続表彰台をGET

総合3位に入ったのは織戸茉彩選手。出場全戦での表彰台キープが続いています。今回は中盤以降、競り合う相手のいないレースになりましたが、1分18~19秒台でコンスタントに周回を重ねていました。レースごとに安定感が増している印象です。

その後方で4位争いを制したのは柴田知輝選手。前日の第4戦ではモンドスミオ選手(EV-2クラス)の後塵を拝しましたが、今回は中盤までモンド選手をピタリとマーク。17周目で抜くとそのままリードを広げて、あとはつけいる隙を与えませんでした。この結果、EV-1クラスが上位を独占しました。

終盤にかけて速さを増してきたIONIQ 5 N勢について、モンド選手はこう分析していました。

「昨日はレース終了時にSOC(充電率)が26%。それが今日は10%を切るぐらいまで使えたので、走りとしてはステップアップできていたんです。それでもIONIQ 5 Nにはついていけない。コーナリング速度はこっちが速いので、相対的にバッテリーを温存できているはずなんですけど、IONIQのほうが余力を残せる。今日みたいに気温の高い日はちょっと厳しいです」(モンド選手)

とはいえ、モンド選手は1戦を残してEV-2クラスの年間チャンピオンを確定させました。昨年はEV-3クラスを制して最終戦からクラスアップ。以来、すべてのレースで総合5位以内に入っています。次戦もまたモデル3のエキスパートが「テスラVSヒョンデ」の戦いを盛り上げてくれるでしょう。

最終戦は10月17日に筑波で開催!

Honda eとD-REVレガシィによるフルカスタムEVの争いは、参戦を重ねてきたHonda eが一日の長を見せました。最後列からスタートしたHonda eでしたが、EV-R(レンジエクステンダー)クラスのe-Power勢を次々にパスして順位を上げていき、総合6位でゴール。

一方、D-REVレガシィの方は序盤、1分27~28秒台で快調に周回していたものの、次第にペースダウンしてしまいました。

D-REVレガシィはハイブリッドスーパーキャパシタという蓄電装置を積んでいます。これがメーンバッテリー(リチウムイオン電池)の充放電をサポートすることで、温度上昇を抑えることができるそうです。それでもこの日は厳しかったようで、ドライバーの山下将史選手によると「レース終了前に、リチウムイオン電池の温度が限界を越えるのが確実だったので、ペースを落とさざるを得なかった」とのこと。

中盤にHonda eに逆転を許し、その差を縮めることができませんでした。それでも総合8位で完走。次戦以降もこの2台の対決は楽しみです。

今季最終戦となる「筑波60kmレース」は10月17日(土)に筑波サーキットで開催予定。チャンピオン争いの行方も気になりますし、今年続々と発売されている最新EVによる参戦にも期待しています。

詳細なリザルトなどは、日本電気自動車レース協会(JEVRA)の公式サイトに掲載されています。

取材・文/篠原知存

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昔バイクのレースはよく見に行っていましたが、EVのレースはバッテリーのことを考えながらの勝負になるのですね。その辺の車の情報が配信で画面内に表示されたら・なんとなく面白いのかな、と思ってみたりもします。