日産の新型電気自動車「リーフB7」を使用して、0泊2日の超弾丸紀伊半島1200km遠征を行いました。はたして、ファーストカーとして満足できる性能なのか? 3代目となった最新型リーフのEV性能と実用性についてレポートします。
実用性を確かめるため超弾丸で紀伊半島へ!
まず私自身、現在も二代目リーフ(ZE1)を所有する日産リーフオーナーです。また初代リーフを使用して長距離を何度も走行した経験もあります。さらにマイカーであるリーフを使用して北海道遠征も過去に行ったことがありますが、やはりどうしてもファーストカーとしてはEV性能が足りなかったというのがオーナーの率直な感想です。はたして3代目へと進化したリーフが、ファーストカーとして満足できるEV性能を実現しているのか。ガソリン車でも大変であろう、0泊2日の超弾丸で1000km以上の走行を行って実証することにしました。
また、紀伊半島を目的地に選んだ理由ですが、2年前にBYDシールでも弾丸遠征を行っていたため、充電インフラ過疎地域である紀伊半島で、この2年間でどれほど充電インフラが拡充しているのかを調査したかったからです。
【車両情報】
●日産リーフB7 G
●車両価格:599.94万円(CEV補助金額:129万円 ※2026年6月現在)
●バッテリー容量:78kWh
●日本WLTC航続距離:685km
●EVネイティブ航続距離測定結果(100km/h巡航):455km(外気温平均4℃)
●装着タイヤサイズ:235/45R19
●装着タイヤ銘柄:ダンロップ e. SPORT MAXX
●タイヤ空気圧(bar):2.6/2.6(実測値/推奨値)
【走行条件】
●追い越しを含めて制限速度の10%程度を許容。
●暖房は23℃オートに設定。
海老名から松阪市街まで実質無充電で走破
一回目の充電スポットは松阪市内に設置されているFLASHです。充電残量8%で到着していますが、FLASHで充電テストを行いたかったので、途中の安濃SAにて充電残量調整のため9%分充電。よって合計でSOC92%分消費(91−8+9=92%)して松阪市内にたどり着いたことになります。まず、海老名を出発して無充電で松阪市内まで走破できているという点だけで、旧型リーフから大幅な進化を遂げていることが実感できました。
【走行結果①】海老名SA→松阪市内FLASH(240kW級急速充電器)
●走行距離:385.1km
●消費電力量:91%→8%
●平均電費:185Wh/km(5.4km/kWh)
●外気温(海老名→松阪):19℃→13℃
航続距離の長さを褒めると、それはシンプルに電池容量が多いからと指摘されるかもしれませんが、この区間は新東名高速道路の120km/h制限区間を全て走行するという、EVの電費にとっては過酷なルートと言えます。それを車速上限いっぱい出しても走破できたということは、高速走行時における効率性が大幅にアップしたと言えるのです。Cd値0.26まで徹底的に空力性能を作り込んだと宣伝するだけのことはあると感じます。
今回のB7グレードでは最大400Aの充電電流値を許容することが可能であり、日本国内で唯一CHAdeMO規格において400Aを流せるのはFLASHだけです(まもなくe-Mobility Powerが設置する次世代超急速充電器は2ストール合計で400Aを流せますが、FLASHのように単一ケーブルでは最大350Aに制限されますのでリーフB7で150kWは発揮できません)。つまりリーフB7で150kWを発揮できるのはFLASHだけということになります。実際にSOC30%の段階で期待通りの150kWを発揮することができています。
ただし詳細は割愛しますが、新型リーフは15分間で充電できる電力量を最大化するというコンセプトの元に充電カーブを最適化しており、とくにSOC50%以降は思ったよりも早く充電出力が低下していきます。たとえばトヨタ新型bZ4Xと比較すると充電カーブの「粘り」が弱く感じますし、SOC80%までの充電時間ではbZ4Xが28分である一方、リーフは33-34分かかってしまいます。今後は15分間の充電量の最適化とともに、SOC50%以降などの「後半の粘り」にも期待したいところです。
そもそも充電する必要がない
【走行結果②】松阪市街→道の駅くしもと橋杭岩
●走行距離:144.3km
●消費電力量:87%→62%
●平均電費:141Wh/km(7.1km/kWh)
●外気温(松阪→串本):13℃→15℃
本州最南端の潮岬に程近い橋杭岩に到着しました。この区間で最も驚くべきは電費でしょう。確かに2月とは思えない高温ではあったものの、かなり流れのいい自動車専用道路が長く続いたことから、6km/kWh後半くらいに留まると推測していたのですが、その予測を上回る効率性を達成したのです。
実際に紀伊半島最南端まで走ったはずにも関わらず、充電残量も62%で到着。元々紀伊半島の充電インフラの脆弱さを懸念視していたもの、リーフB7の大容量バッテリーと電費性能を組み合わせれば、そもそも急速充電する必要すらないわけです。50〜60km程度走行したら充電のことを気にしていた初代リーフとは隔世の感を覚えます。
残量や到着時間予測の正確さを実感
【走行結果③】紀ノ川SA(150kW充電器)→土山SA(90kW充電器)
●走行距離:155.6km
●消費電力量: 45%→13%
●平均電費:169Wh/km(5.9km/kWh)
●外気温(紀ノ川→土山):8℃→8℃
編集部注※道の駅くしもと橋杭岩→白浜→紀ノ川SA(約170km)間については、途中、温泉入浴や駐車したままの休憩などを挟んだこともあり、電費データなどは割愛しています。
途中の和歌山県内の紀ノ川SAにて10分程度の150kW充電を行って仮眠を取った後、紀伊半島をぐるっと周遊する形で土山SAに向かいました。外気温が一桁にまで低下し、土山SAまでは標高が上がるものの、電費はまずまずという感触で悪くない印象です。
ここで注目したいのがナビゲーションシステムにおける予測の正確性です。実は紀ノ川SA出発時にリーフが計算した土山SA到着時の充電残量予測が12%だったのですが、結局13%で到着しておりほぼ完璧です。
この区間は法定速度から追い越しの際だけ+10%程度の速度を許容するだけで、基本的には法定速度を遵守することで、リーフの予測値との乖離を検証したわけですが、まさにドンピシャの正確性には驚きました。ちなみに所要時間についても予測値より2分早く到着しただけであり、やはりGoogleベースのナビゲーションシステムが極めて優れた予測を実現しています。
長距離ドライブでもファーストカーとしての利便を実現
【走行結果④】土山SA→海老名SA(ゴール)
●走行距離:349.8km
●消費電力量:90%→11%
●平均電費:175Wh/km(5.7km/kWh)
●外気温(土山→海老名):7℃→16℃
ゴール地点である海老名SAに戻ってきました。この区間についてはGPS速度を遵守して速度制限の上限を出し切るというシチュエーションでの電費を計測しました。結果は5.7km/kWhとまずまずの電費でした。とはいえ重要なことは、SOC80%分で土山から海老名間を走破できてしまう点でしょう。
下り線の場合、土山SAの150kW急速充電器で15分も充電すれば大阪まで余裕を持って走破できてしまう計算です。上り線の場合も、海老名SAには2026年末ごろまでに400kW級超急速充電器が設置されますので、同じように15分充電すれば東京を超えて、栃木・群馬・茨城など北関東まで走破することができるでしょう。EVがファーストカーとしても実用的に長距離を走破できる様子を容易にイメージできるはずです。
【走行結果総括】海老名SA下り→紀伊半島周遊→海老名SA上り
●走行距離:1206km
●充電回数:4回(その内2回は約10分間のみで切り上げ)
ちょうど24時間前に海老名を出発してから紀伊半島を周遊し、海老名に舞い戻る弾丸遠征の総走行距離は1200kmを超えました。途中で食事や入浴、仮眠などを挟みながらも、24時間で1200kmを余裕を持って走破できるわけであり、リーフB7の長距離走破性能の高さを実感できました。
ユーザーインターフェースの進化も実感
そして、旧型と比較した3代目の最大の改善ポイントは、液冷式の電池温度管理システムとナビリンクバッテリープレコンディショニングシステム、そしてEVシステムとナビゲーションシステムの連携です。
旧型では高速走行後に急速充電を行うと熱ダレが発生し、充電の入りが悪くなってしまいました。今回の検証であれば紀ノ川SAでは熱ダレに遭遇したのではないかと思われますが、3代目リーフにはアクティブな温調システムが実装されており、熱ダレの心配は皆無でした。
さらにナビリンクプレコンディショニングシステムは、作動準備状態もユーザーにリアルタイムで知らせてくれます。というのも、実際の使用シチュエーションにおいては、充電器に近づいてから走行途中にプレコンディショニング機能が作動しますが、それまで本当に車両側がナビリンクプレコンディショニングを実行することを覚えているのかが分からず、ユーザーとしては一抹の不安を覚えるはずです。実際にトヨタbZ4Xの場合は、そのナビリンクプレコンディショニングが作動準備状態なのかが知らされないため、ここはリーフの方がよりEVユーザーに寄り添ったUIだと感じました。
そして最後に、EV性能とナビゲーションシステムの連携について、たとえば競合関係にあるトヨタbZ4Xには目的地到着時点における充電残量の予測システムがないため、ユーザーがこれまでの経験を元に自分で充電残量を推測しなければなりません。
対するリーフではシステムが目的地到着時点における充電残量予測をかなり正確に行ってくれるだけでなく、途中で充電が必要だと判断した場合、自動的に経路上の最適な充電器を案内。特に充電器の選び方も、高性能な充電器を優先して選択しつつ、充電に必要な時間も自動で算出されます。もちろん自動的にナビリンクプレコンディショニング機能が起動するため、常に最速の充電時間で充電を行うことも可能です。
このように、まさに今回の三代目リーフはファーストカーとして、EV初心者でも長距離を気兼ねなく走れるような、様々な機能が実装されているのです。航続距離や電費、充電性能単体では競合と比較して大きな優位性があるとは言えませんが、スペックにはあらわれづらい「EVの実用性を高める機能」が作り込まれているという点こそ、いち早く初代リーフとしてEVを世に送り出した日産の一日の長を感じるポイントです。
いずれにしても、初代が発売されてから16年近くが経過し、ついに3代目が登場したわけですが、EV性能はまさに同じ車名の乗り物とは思えない別次元の完成度を実現しています。初代発売当初から一貫して根強く言われ続けていた、「EVはファーストカーにはスペック不足」という言説を正面突破できるEV性能を網羅して、二代目リーフオーナーの乗り換え需要だけでなく、さらに多くのガソリン車オーナーが新型リーフを通じてEVに乗り換えるきっかけになることを、ひとりのリーフオーナーとして心から期待していきたいと思います。やっちゃえ日産!
取材・文/高橋優(EVネイティブ※YouTubeチャンネル)












