結局電気自動車にすると自宅の電気代が上がるからガソリン代より割高じゃない?

【2020/7/6更新】結論:ガソリンがレギュラー100円でも、電気自動車の自宅充電にかかる電気代は、同クラスのハイブリッド車・軽自動車と比較して安いです。テスラモデル3 SR+で実燃費22.4km/l相当。700馬力のテスラモデルS パフォーマンスでも16.7km/l相当です。

電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)は自宅または職場などの常置場所で充電するのが一般的です。自宅充電設備を持たずに、公共の充電スタンドだけでBEV/PHEVを所有することを私はお勧めしませんが、技術的には可能です。本記事ではこれらの二つのパターンを分析し、燃料費という観点で電気自動車とガソリン車の比較をしてみたいと思います。

なお、電気自動車を維持するには電気代以外にもコストがかかりますが、一般的にそれらはガソリン車より低いと考えられています。例えば、電気自動車にはエンジンオイルがありませんのでオイル交換は必要ありませんし、AT(オートマ)がありませんのでATFも交換不要です。電気自動車にもラジエーターはありますが、ガソリンを燃やしているわけではありませんので、ずっと小型で、ラジエーター液も基本的には交換不要です。ブレーキも電気自動車ではほとんどの場合、回生ブレーキというブレーキパッドを使わない減速方法が取られるので、ブレーキパッドやブレーキディスクの減りも非常に少なく、廃車まで交換は不要です。

目次

電気自動車とガソリン車の燃費比較: 前提条件

このような比較をする場合、いくつか前提条件がありますので、共通の前提条件を定めておきましょう。前提条件が何らかの理由で崩れることがあっても、計算しなおすことは可能ですので、慌てる必要はありません。輸入車などではハイオクガソリン仕様の車も多いと思いますが、今回、ガソリンはレギュラーのみで計算します。すべてのコストは税込です。

項目 前提値
レギュラーガソリン1リットル 100円
昼間の電気代 30円/kWh
夜間の電気代(東京電力 夜トク12) 23円/kWh
日産リーフ電費 5.36km/kWh
日産リーフZESPプレミアム20 4500円/月
テスラ スーパーチャージャー料金 40円/分 61kW以上 20円/分 60kW以下
テスラモデル3 SR+電費 6.70km/kWh
テスラモデルS Performance電費 5.02km/kWh
燃費データ 2020年式プリウス、テスラモデル3 SR+/モデルS Performance、リーフ40kWh EPA Fuel Economy
年間走行距離 10000km

自宅充電の場合

電気自動車を自宅車庫か職場車庫かで充電する場合、電力会社や時間帯によって料金体系は異なるかも知れませんが、まずは電気料金が高い昼間に充電する前提で計算してみましょう。電気自動車の最新モデル、テスラモデル3 スタンダードレンジプラスの場合、1kWh(読み方:一キロワット時)という量の電力量を使って、6.7km走行することができます。この数字は米国環境保護庁(EPA)が規定した基準で計測したもので、世界中にある様々な燃費基準のうち、最もシビアな基準となります。ガソリン車にも同じ方法で計測されており、一つの基準で電気自動車とガソリン車を比較することができます。詳しくは燃費・電費に関するこちらの記事をご覧ください。

1kWhがどのくらいか分からない?そうですね、女性のドライヤーが1500W(WhでもkWhでもありません、Wというのは瞬間の電気の力なのです)くらいですので、1kWhはドライヤーを40分連続で使ったときの電力量に相当します。結構多いですよね。リビングにある60Wの照明器具1個なら16時間つけっぱなしです。電気代は、この1kWhという単位を元に計算されています。

前提条件から昼間の電気代は1kWhあたり30円となります。つまり、6.7/30=0.223(km/円)で、1円払うと0.223kmすなわち223m走行できます。レギュラーガソリン1リットルを買うため100円払うと、100×0.223=22.3(km/100円)、すなわち22.3km走行でき、ガソリン車に換算すると22.3km/lとなります。

ここで前提条件の「燃費データ」を見てください。米国のサイトなので単位は全て米国の単位になっていて、我々が使っている単位とは異なるので分かりにくいですね。例えば国内で軽自動車などより燃費がよい2020年式のプリウスは、1.9gal/100miと表示されています。galはガロンでガソリンの量の単位、miはマイルで距離の単位です。1.9gal/100mi=おおよそ22.3km/lとなります。

あれ!たまたま全く同じ数字になりましたね!つまりどういうことかというと

2020年式同士の比較で、昼間自宅充電している電気自動車テスラモデル3 SR+とプリウスは、ガソリン価格がリッター100円になるまで、電気自動車のほうが燃料費が安い

なのです。

夜間の電気代でも計算してみましょう。夜間は1kWhあたり23円ですから、6.7/23=0.291(km/円)、0.291*100=29.1km/l相当となります。東京電力には残念ながら電気自動車用に使える深夜電力のプランは存在しないので、夜間の電気代を安くするには昼間を少し高くするしかありません。夜間の安い電気料金が使えるかどうかは地域によって異なりますが、深夜電力が使える地域、または東京電力などでも昼間自宅にいない世帯などでは、電気のプランを切り替えることによって維持費をぐっと下げることができます。

今度は大型の電気自動車であるテスラモデルS パフォーマンスで計算してみましょう。

同様に昼間の電気代では5.02/30100=16.7km/l、夜間の電気代では、5.02/23100=21.8km/lとなります。普段車に乗られる方なら、16.7km/lでも十分凄いということがお分かりいただけると思いますが、テスラモデルS パフォーマンスは700馬力を超える車。ガソリン車で比較するなら軽は不公平ですから、エグゼクティブクラスの大型セダンで最も燃費の良いレクサス LS 500h AWDと比較してみましょう。この車両は3.8gal/100mi=11.1km/lですから、約50%、燃料費が安いということが分かります。

結論としては、電気自動車は自宅充電・職場充電である限り、ガソリン車より燃費が良いということが分かりますね。

公共の充電スタンドのみを使った場合

自宅がマンションなどで自宅充電ができない場合、公共の充電スタンドを日常的に利用している方もいらっしゃいます。公共の充電スタンドには無料のところも有料のところもあり、有料のところにも料金が高いところと安いところがあります。無料の充電スタンドはどんどん増えているとはいいがたい状況ですので、この記事では有料充電スタンドで一般的な充電スタンドである、日産ディーラーと、日本充電サービス様の管理するNCS充電スタンドを例に挙げて計算します。

日産リーフの場合、「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム(ZESP)」に加入することができます。このプログラムにはプレミアム20という月4500円のプランがあり、公共の充電スタンド(日産ディーラー+NCS充電スタンド)は月200分まで月額料金に含まれ、以後は10分ごとに300円となります。

ここからちょっとややこしくなります。

実は日産ディーラーにある充電器は44kWとありますが、実際に充電するときの充電器出力は状態の良い時で40kW程度。10000kmを5.36km/kWhで割ると月間必要電力量は155kWh。これを40kWで充電すると3.88時間。ZESP3の料金体系は10分刻みなので24回分の充電が必要。プレミアム20は20回分しか含まれていませんから、4回超過=300×4=1200円追加でかかります。

結果、年間のコストは12x(4500+1200)=68400円、それで1万km走れるわけですから、

リーフを公共の充電スタンドでだけ充電すると、14.6km/l相当※ただしガソリン1l=100円のとき。125円の場合は18.2km/l

ということになります。

先ほどの自宅充電の例はモデル3で計算しましたので、リーフでも自宅充電のコストを計算しておきましょう。昼間充電は5.36/30×100=17.8km/h、夜間は5.36/23×100=23.3km/l。

リーフでZESP3のプレミアム20を契約し、公共の充電スタンドだけで充電して年1万キロ走ると、昼間自宅充電よりもちょっと高い。

のです。自宅での充電は家に帰ったらプラグを5秒で挿すだけ。朝、出発するときにはプラグを5秒で抜くだけ。毎日充電しても一日10秒、一か月5分間しかかかりません。自宅充電が難しい環境の方は確かに不便ではありますが、公共の充電器でだけ充電しても、コスト的にそこまで不利なものでもないのですね。

大型の車両の例として、テスラモデルSでも計算してみましょう。パターンは二つあります。

  • テスラの専用充電施設、スーパーチャージャーのみを使う場合。スーパーチャージャーは本日時点で全国に25か所あり、料金は二段階に分かれています。ここでは便宜上、70kWで充電を行う場合を考えてみます。実際にはものすごく複雑なのですが、、
  • リーフと同様、ZESP3 プレミアム20プランを使う場合。新しいZESP3は、どこのメーカーの電気自動車でも使えます。

まずスーパーチャージャーですが、10000[km]/5.02[km/kWh]/70[kW]x60x40[円/分]=年間68298円。これで1万km走るので10000/68298×100=14.6km/l。おっと、リーフのZESP3と全く同じですね。

次にリーフと同様、ZESP3のプレミアム20を使って計算してみましょう。テスラでは44kWの日産の充電器を使うのではなく、高速道路などに設置されている50kWの急速充電器を使うことにします。10000kmを5.02km/kWhで割ると月間必要電力量は166kWh。これを45kWで充電すると3.68時間。ZESP3の料金体系は10分刻みなので23回分の充電が必要。プレミアム20は20回分しか含まれていませんから、3回超過=300×3=900円追加でかかります。

結果、年間のコストは12x(4500+900)=64800円、それで1万km走れるわけですから、10000/64800×100=15.4km/l相当ということになります。ZESP3 プレミアム20はテスラスーパーチャージャーよりオトク!ということになりますね。

さて、いかがでしょうか。電気自動車の電気代は、

  • 自宅充電なら、現存するほとんどのガソリン車・ハイブリッド車より安い
  • 公共の充電スタンドを使うと、日産リーフでもテスラモデル3/モデルSでも、ガソリン代がリッター100円の場合で15km/l前後。現実的にリッター125円なら18km/l前後で、ほぼ軽自動車並み。

ということが分かります。電気自動車のメリットはたくさんありますが、燃料費(電気代)が安く上がることも魅力の一つです。