電気自動車やPHEVは災害のとき発電できる?

結論:車種により、車の外に供給できる電力は異なります。ちょっとした照明や携帯の充電程度はどの車でもできますが、家一軒分の電力を賄うためには、V2H対応の車と専用の機器が必要です。

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災害時、電気が欲しい!

2016年4月14日午後9時26分ごろ、熊本県上益城郡益城町を震源地とするマグニチュード6.5、震度7の地震が発生しました。その後、NHKニュースなどでご覧になった方もいらっしゃると思いますが、三菱自動車のアウトランダーPHEVが、バッテリーに蓄えた電力で、停電中の益城町役場前を照らしている映像が放映されました。

普通のガソリン車ならバッテリーが上がってしまう?そうです。ガソリン車に搭載されている小型のバッテリーは容量が少なく、ヘッドライトや、シガーソケット(今はアクセサリーソケットという車も)から電気を取ると、すぐにバッテリーが上がってしまい、エンジンを始動できなくなってしまいます。エンジンかけっぱなしならOKですが、周囲に多くの人がいたり、深夜だと気が引けますよね。

電気自動車やプラグインハイブリッド車、すなわちPHEVは、非常に大型のバッテリーを走行用に搭載しています。バッテリーの容量の例を挙げてみますと、以下のようになります。ちなみに、1kWhというのは、1000Wの照明を1時間連続して点灯できる電力の量です。家庭で使われている電球はおおよそ40W-100Wくらい。1000Wというと工事現場で使われている照明のような、屋外でも使え周辺を明るく照らせるものになります。

車名バッテリー容量
テスラモデルS90kWh
リーフ30kWh
アウトランダーPHEV12kWh
プリウス1.3kWh

上の二車種は電気自動車で、アウトランダーはPHEV、そしてプリウスはハイブリッド車です。電気自動車、PHEV、ハイブリッド車の違いについてはこちらをご覧いただくとして、一般的には、搭載しているバッテリーの容量は電気自動車が一番多く、次にPHEV、そしてハイブリッド車となります。電気自動車はエンジンを搭載していませんから電気がたくさん要って当然ですね。

さて、不運にも災害に遭遇すると、ライフラインが絶たれてしまうことがあります。例えば熊本県の益城町のケースでは、14日午後10時の時点で停電1万6000戸、ガス供給停止3万8000戸、断水戸数は不明。夜が明けて翌日15日午前7時、停電1万4500戸、ガス供給停止4600戸、断水2万5000戸。そして15日午後10時、停電900戸、ガス供給停止478戸、断水8万5000戸16日午後8時にはおそらく余震の影響か、停電は8万3300戸まで増えてしまいました。17日午後には停電7万6000戸、ガス供給停止10万5000戸、断水27万5000戸。17日21時には停電3万8900戸、18日10時には停電3万4700戸と、減ってきました。

多くの災害では、電気は一番最初に復旧することが多いです。しかし最初の数日間、電気が来ないと、冷蔵庫の中のものはダメになってしまうし、夜は明かりがないし、電子レンジが使えないしで非常に困りますよね。

電気自動車やPHEV、さらにハイブリッド車でも、車から電気を取り出すことのできる車種はあります。この取り出し方には三通りあり、状況によって使い分ける必要があります。災害対策を考える場合にはしっかり理解しておいてください。

  • シガーライター(アクセサリーソケット)から電気を取る:シガーライターは100Vではなく、12Vなのでそのまま普通の家電はつなぐことができません。携帯電話を充電するケーブルなどは市販されていますが、照明器具などを利用するためには、インバーターという機器が必要です。これはカーショップなどで販売されていますので、気になる方は購入しておくと良いでしょう。ただ、インバーターは万能なわけではなく、接続できない機器がありますので、小型のものはこちら(照明とパソコン1台程度まで)大型のものはこちらを参考にするとよいでしょう。専門店に相談してください。
  • 車内の100Vコンセントから電気を取る:車によっては100Vのコンセントが車内にあり、利用できるようになっている場合があります。ハイブリッド車の場合はエンジンはかけてアイドリング状態にしておかないと作動させることができません。電気自動車やPHEVでは、エンジンをかけずに電気を取り出せます。多くの場合、1500Wまで使えますので、電気ポットや電子レンジ、ホットプレートなどまでOKになります。
  • V2H機器を用いて電気を取る:この機能がある場合、車が対応しており、チャデモ急速充電コネクタが装備されていて、さらにパワーコンディショナーという機器が必要です。詳しくは次のセクションで説明します。1500Wから6000Wまで対応し、6000Wのものは60A契約の一戸建ての家一軒に電力を供給でき、エアコンやテレビも含め普段通りの生活ができてしまいます。

1500Wでも災害時には心強いもの。基本的には、シガーライターから取るのはレジャー用、1500Wはアウトドアや非常時用、6000Wは防災住宅を作りたい方向けと言えます。

V2Hってなに?

V2Hとは、Vehicle to Homeの略で、通常は家庭の電源から電気自動車やPHEVを充電しているのに対し、必要な時には車側から家庭に電気を供給する仕組みのことを言います。これには、前述のように、V2H対応車両と、パワーコンディショナーが必要になります。以下にパワーコンディショナーをご紹介します。

機器名 出力 持ち運び可能かどうか 対応車種 価格
LEAF to 100V 1500Wまで 移動可能 日産リーフ 税抜298,000円
MiEV power BOX 1500Wまで 移動可能 三菱i-MiEV、MINICAB-MiEV 税抜142,667円
EVパワー・ステーション 6000Wまで 移動不可 V2H対応車両 税抜480,000円~780,000円
SMART V2H 6000Wまで 移動不可 V2H対応車両 税抜950,000円

おお、結構高いですね。そして、高い出力が取り出せる6000W=6kWタイプは自宅に設置するもので、車に積んで移動することはできません。ただこのタイプは容量が大きいので、家一軒の電力を賄うことができますし、電気自動車の充電機能もあります。1500Wタイプの上の二つは、日産リーフや三菱i-MiEVには1500Wコンセントが搭載されていないための追加オプションと考えてもよいでしょう。例えば三菱アウトランダーPHEVには1500Wコンセントがメーカーオプション70,000円で追加できますので、これらは必要ありません。

そもそもV2Hは災害対策「専用」の設備ではありません。

電力会社によっては昼間の電気代が高額になるようなプランを提供している場合があります。平日車を使わないなら、V2Hに接続しておき、昼間は電気自動車の電気で生活し、夜間の安い電力で電気自動車に安い電気を充電しておくことができます。また太陽光発電をしているなら、昼間は100%売電(電気を電力会社に売却)して、足りない電力は電気自動車から供給することも可能です。太陽光発電の電力量が十分に大きければ、電気代をかなり節約できます。

万が一の災害時には、電気自動車と組み合わせて、昼間太陽光で発電し、家庭で使うほかに電気自動車にも充電。夜間は電気自動車の電気を使うようにすれば、かなり長い期間停電に耐えることができます。参考までに、完全に電力会社からの独立をする(オフグリッドと呼ばれています)のは、現実的には難しいと言われています。天気の悪い日が続くことがあるからで、1週間以上晴れの日がない期間は、電気自動車の電気が空っぽになってしまいます。

結論として、V2Hとはどう活用すればよいのでしょうか?

まず1500Wコンセントが搭載されている車種、そしてリーフやi-MiEVのように簡易的なパワーコンディショナー(通常、このような単機能のものはインバーターと呼んでいます)で1500Wを得る場合は、あくまで緊急時の照明や携帯電話の充電、テレビ・ラジオ等用と考えるのがよいでしょう。もちろん平時はアウトドアで調理などにも使えますが、家庭では冷蔵庫・エアコン・電子レンジなど複数の機器が同時に作動しますので、それらを一つ一つ賄うことはギリギリできますが、全部に電力を供給するには力不足です。

本格的なV2Hシステムには、二つの目的があると言えるでしょう。一つは災害対策、もう一つは太陽光発電の効率化です。前者は、災害が起こることは稀ですので、万が一のための備えということになります。保険のようなものですね。そして後者は現時点では、金銭的にはそれほど大きくトクするものではありませんので(もちろんプラスにはなります)、ご自身でCO2の削減に協力したいなどの気持ちがある場合に導入するとよいのだと思います。

災害時などに外部電力供給が可能な車の一覧

最後に災害時などに外部に電力を供給できる車の一覧を作りました。購入時のご参考までになさってください。

メーカー車名車内100Vコンセントエンジン停止中電力供給可バッテリー容量ガソリンも含めた電力供給容量
トヨタアルファードハイブリッド1500W×
ヴェルファイアハイブリッド1500W×
エスティマハイブリッド1500W×
SAIハイブリッド1500W×
シエンタハイブリッド1500W×
ハリアーハイブリッド1500W×
プリウス1500W×
プリウスα1500W×
プリウスPHV1500W4.4kWh40kWh
MIRAI1500W/9kW※1×1.6kWh60kWh※3
レクサスCT1500W×
レクサスHS1500W×
レクサスNX1500W×
日産リーフ1500W※2/6kW※130kWh30kWh
e-NV2001500W/6kW※124kWh24kWh
三菱i-MiEV/MINICAB-MiEV1500W※2/6kW※116kWh16kWh
アウトランダーPHEV1500W/6kW※112kWh100kWh

※1 V2H機器との接続時

※2 外付けのオプションが必要

※3 水素

案外、トヨタのハイブリッド車の多くが1500Wコンセントに対応しているんですよね。ハイブリッドなのでエンジンはかけっぱなしにしないと電力の供給ができませんが、非常時はこれでも十分役に立つでしょう。(※2016/4/19追記:トヨタのハイブリッド車の1500Wコンセント搭載車では、バッテリーの充電レベルはタイミングによりまちまちとなり、エンジンをかけて利用するものとなるが、消費電力が小さければエンジンは自動停止し、必要に応じて再始動するとのことでした。また、エンジンをかけた状態で電力を使用する場合、災害時はもちろん別ですが、平常時はアイドリングストップ条例などにもお気をつけください。)

そして電気自動車はどうかというと、リーフやi-MiEVはバッテリーの容量までは電力を供給できるのですが、アウトランダーPHEVのようにガソリンエンジン・タンクを積んでいませんのでトータルの電力供給量としては、プラグインハイブリッド車のほうがより多くの電力量を供給できるといってよいようです。ただ災害時にはガソリンが手に入らないケースも多いようですから(今回も、ガソリンスタンドには100台以上の待ち行列ができたとお聞きしています)、電気自動車でも、バッテリーが少なくなったら電力の復旧している急速充電スポットに移動して、充電してくればまた電気が使えるようになりますし、どちらも災害には強い自動車ということが言えると思います。

そういえば海外の電気自動車やプラグインハイブリッドはリストにないですね?実は、テスラやBMW、メルセデスなど(EV/PHEV一覧はこちら)も車を販売していますが、これらのメーカーはV2Hはおろか、車内コンセントにも対応していません。例えば米国ではキャンプ場にはサイト(駐車スペースとテントは隣接していて、それを借りる形式となっています)にコンセントがあることが多いので、車から電力を取るというのはキャンピングカーにしか必要なかったりします。Lake TahoeにあるKOAを見ても、Full Hookupとなっており、これは一般的に電力(30Aとありますね)だけでなく、上水道、下水道、さらにはケーブルテレビや電話線が接続できるところもあります。また、米国では一戸建ての家族の実に18.3%もが発電機を所有しています。

ご参考:EVsmartアプリでは、日本充電サービス発表の、熊本県にて実際に震災後利用できた充電スポットのリストを地図に入力し、簡単に見られるようにしています。被災された方・支援される方で電気自動車・PHEVをご利用の方は、現在地ボタンを押してから、ご自身の近辺の充電器のアイコンをタップし、充電スポット名とスポットまでの距離が書かれているところを再度タップしていただけますと、右のスクリーンショットのように情報をご覧いただけます。日本充電サービスより、追加の情報があれば更新いたします。この情報は、震災後実際に充電が行われたスポットとなりますので、それ以外のスポットでも充電できる可能性はあります。道路が寸断されている箇所があるそうですので、お気をつけて。

ユーザーの方による「使えた報告」や、充電器写真などもぜひご活用いただけますと助かります。