スバルの電気自動車『ソルテラ』で厳寒地へ〜トヨタウォレットの普通充電が難関だった

長野県の女神湖で開催された氷上試乗会に参加がてら、モータージャーナリストの諸星陽一氏がスバルのEV『ソルテラ』を試乗。厳寒の季節&エリアでのEV体験はどうだったのか、思わぬ苦難が待ち構えていたレポートです。

表示される走行可能距離が信用できない

2023年1月下旬。長野県の女神湖で日産の氷上試乗会が開催された。筆者はオールシーズンタイヤを履いたクルマを所有しているので、自車でも移動が可能なのだが、それじゃあつまらないということで、スバルからソルテラ(バッテリー容量71.4kWh)のFFを借用。試乗を兼ねて移動手段とし、電費計測を行った。スバル・ソルテラはバッテリー残量のSOC(%)を表示する機能はなく、走行可能距離が表示されるだけ。

スタートはエビススバルビルの地下駐車場。ここでおそらくは満充電のクルマを借り出し、自宅駐車場にて一晩保管。翌日に女神湖を目指し出発した。走行モードはECO、エアコンはオフで、シートヒーターとステアリングヒーターは最強だ。

まずは中央高速の調布インターを目指す。中央高速は高井戸-八王子間が均一料金となっているが、下りは高井戸から乗ることができない。下りを始点である高井戸から使うためには、首都高の永福インターから使用する必要があり、永福-高井戸間の2.7kmを300円支払って使用しなければならない。じつに理不尽な状況である。それはさておき、エビススバルビルから調布インターまで実走行距離は30km、消費した走行可能距離は46km。この時点では、実走行に必要な残距離は約1.5倍という計算。つまり100km走りたければ、150km残っていないとダメということになる。

調布から中央高速に乗り、甲府昭和インターをインターを目指す。実走行距離は107km、消費走行可能距離は71km。本来、EVが苦手とする登り勾配の高速道路で、実走行より消費走行可能距離が短いのはどうも納得がいかない。それまでの走行状態よりも、いい状態となったから消費走行可能距離が短くなったのだろうが、これを信用するとなかなか辛い目に合う。

暖房は使わずに女神湖を目指す

高速道路ではACC&レーンキープを使って走った。スバル車ではあるが、アイサイトでのコントロールではない。とはいえ普通にACCとレーンキープを使いながら高速道路を走ることには何の違和感もない。試乗車はタイヤがスタッドレスタイヤ(ブリヂストン・ブリザックDM-V3)に変更されていたが、それが悪さをすることはなく、キッチリとレーンキープも行われた。

一般道での電費を計る(といってもバッテリー残量が%表示されないので参考値のみしか計れないが)ため、甲府昭和インターからは一般道で女神湖を目指す。途中、道の駅はくしゅう(白州)に急速充電器があるので「一息ついて充電もして」と思ったのだが、道の駅はくしゅうが定休日で急速充電器も使用不可。仕方ないのでその先の道の駅こぶちざわ(小淵沢)を目指す。国道20号線を小淵沢方面に走ると、右側には特異な断崖絶壁が続いている。この断崖絶壁は七里岩と言われるそうで、その名のとおり韮崎付近から小淵沢方面に7里(約28km)も続いているとのこと。

それにしても車外は氷点下である。シートヒーターとステアリングヒーターだけではかなり辛い。アンダーウエアはかなり暖かいものを着込んでいるのだが、つま先が冷たくて仕方ない。ヒーター(エアコン)を入れて走行可能距離が短くなるのは我慢ならないので、コンビニで足裏用の使い捨てカイロを購入した。

国道20号線からインター白州ラインという道に入り、道の駅こぶちざわを目指す。途中、橋を渡るところで右手に目をやると非常に特徴的な岩に目がいく。この地に移り住んだ先輩がSNSによくアップしている「マンモス岩」である。マンモス岩を横目にループ橋を使って一気に標高を上げ、道の駅こぶちざわを目指した。甲府昭和インターから道の駅小淵沢までの実走行距離は40kmだが、消費走行可能距離は5倍以上となる215km。ここまでくると走行可能距離表示をどう使えばいいのかわからない。

急速充電は止めてホテルで普通充電を選択

道の駅こぶちざわで急速充電は可能だが、さっさとホテルにチェックインして、お風呂にでも入ってのんびりしたい。ホテルに確認の電話を入れると設置の充電器は使われておらず、使用可能とのこと。走行可能距離は146km、移動距離は約50km。途中にも急速充電器があるので、万が一のときはそこに駆け込めばいいと判断。道の駅こぶちざわでは、移住した先輩の農園で栽培している菊芋を購入して移動した。

実はこの先輩、太陽光パネルでEVに充電したり、廃天ぷら油でエンジンを回していたりする、その世界ではなかなかの有名人。今度は時間を作って、ちゃんと取材(遊びか)に行きたいと思っている。

標高が上がるにつれて室内の気温も下がる。どうにもすきま風が入ってくるので、いろいろいじくってみると、エアコンが外気導入になっている。そりゃあ、寒いわけだ。そこで内気循環にして走っていると、今度はウインドウが曇り始めてしまう。曇りを除去するため、デフロスターを働かせると120kmだった走行可能距離が76kmに減少する。途中で急速充電して行くか? 寒いのを我慢して外気導入するか? 答えは後者だ。さっさと到着して風呂に入ればいい。グングン減る走行可能距離とにらめっこしながらホテルに到着。45kmを走行し終わったときの走行可能距離は22km、じつに124km分を消費したことになっていた。

雪道のドライブに関してはFFでも何の問題もなかった。気温が低く、路面が安定していたことも影響するだろうが、FFだからといって極端にウインター性能が落ちるわけではない。雪ではなくアイスバーン、それも気温が高く氷の上に水膜が発生するような状況でのスロープとなるとAWDの優位性が出るだろうが、とくに雪だからAWDが必須ではないと感じた。ただし、タイヤが減ってくればまた話は別だ。

EVはタイヤの滑りをエンジン車よりも緻密にコントロールできる。スバル車ならAWDに乗りたいという気持ちとなることも多いだろうが、スバルのタイヤ制御技術はFFでも十分に生かされている印象だ。FFであっても十分に安心してスノードライブを楽しめた。

ホテルの普通充電で大トラブル……

まあホテルに無事に到着したし、充電器のある駐車スペースは空いているし、安心して駐車スペースにソルテラを停めて、さて充電しようとすると、なにやら見たことがない表示。ホテルに確認すると「トヨタウォレット」なるアプリを使わないと充電ができないという。そうなんだ、ならばトヨタウォレットをインストールすればいいのね……、なのだが、この先が大変だった。トヨタウォレットをインストールし、立ち上げることは簡単だが、支払い設定をするのがとてつもない難関だったのだ。

トヨタウォレットの支払い方法はおサイフケータイ経由、もしくはトヨタ系のクレジットカードであるTS CUBICカード経由の2種類だ。私のスマホがおサイフケータイに対応していないこともあって、TS CUBICカードを申し込む以外に方法がなかった。TS CUBICカード自体はオンラインで申し込みができ、すぐに審査に受かった。しかし支払い設定をするのには、銀行のオンライン決済用の口座番号、オンライン決済用の暗証番号などが必要(銀行によって違う)。この時点で設定は諦めた。口座番号や暗証番号は持ち歩いていない。

結局、自力での充電はできない。そうこうしているうちに気温はドンドン低下し、クルマを動かしていないにもかかわらず、走行可能距離は9kmにまで低下。こうなるとほかの急速充電器がある場所まで移動するのもイチかバチかになってしまう。

ほかの急速充電器まで移動しても、満充電にできるわけではない。ということは、翌日は充電しながらの帰京となってしまう。私の予定は翌日の正午くらいには仕事を終えて、ソルテラに乗って帰京し、エビススバルビルにクルマを返却するというものだった。夕方までに帰京できないと、翌々日にクルマを返却することになり、スケジュールがガタガタに崩れてしまう。右往左往しているとき、試乗会のスタッフがアクティブになっているトヨタウォレットをインストールしていることが判明。頼らせていただくことになった。

一件落着と思いきや、トヨタウォレットで支払うには、通信を行いながら手続きを行う必要があるのだが、女神湖は通信状態が思わしくない。何度もエラーを繰り返し、やっとのことで充電開始となった。満充電までに必要と表示された時間は27時間30分。低温で充電の出力が落ちていたのかも知れない(ソルテラでは充電中の出力も表示できない)。すでにマイナス10℃を切っているのだから、それくらいは仕方ないだろう。とはいえ、充電開始となったのが17時16分である。15時30分にホテルに到着してから、実に1時間45分におよぶ格闘であった。

翌日、朝の6時55分に充電状況を見ると充電完了までは残り7時間となっている。とりあえず、ソケットは挿したままにして歩いて行ける湖上でのイベントに参加。11時21分に戻ると、充電完了までは1時間50分。インジケーターのバーもそこそこ上がっている(繰り返しになるが、残量のSOCはわからない)ので、これにて充電を終了し、帰京となった。帰京時の電費関係は表を参考にしてもらいたいが、真冬のEV移動ではさまざま困難が待ち受けていることが体感できた。今回、身を持って学んだ注意すべき点を列記しておきたい。

●エンジン車のような薄着では寒い。とくに足下の防寒が大切。

●急速充電器は施設が休日だと使えないことがある

●トヨタウォレットなどのスマホを使って充電するタイプのシステムは、前もってアプリをインストールし、支払い方法なども決め、アクティブにしておく必要がある

●トヨタウォレットなどのスマホを使って充電するタイプのシステムは、スマホの通信機能に依存するので、通信エリアが広く安定していることが大切。スマホの充電も怠らないように。

●安全策を取るなら、できるだけ多くの充電アプリをインストール、アクティブにしておくほうがいい。

●宿泊地に普通充電器があるからといって安心せず、ある程度充電された状態で投宿するのがいい。ゼロ%に近い状態での急速充電は入りがいいのだから、いったん急速充電をしてから普通充電で補うのも正解だと思う。

今回の走行&電費記録

日付ポイント道路タイプオドメーター(km)区間走行距離(km)減少走行可能距離(km)走行可能距離(km)
24日エビススバルビル一般道3819478
25日自宅38301116462
三鷹スバル38461628434
調布インター高速道路384932432
甲府昭和インター395610771361
道の駅小淵沢一般道399640215146
ホテルコロシアム(女神湖)普通充電前40414513412
26日ホテルコロシアム(女神湖)普通充電後4041451
諏訪南インター高速道路40743325426
八王子インター4210136181245
八王子インターを降りて洗車一般道421444241
富ヶ谷インター高速道路42513748193
エビススバルビル一般道425435188

今回、試乗してみてあらためて航続可能距離ではなく、バッテリー残量が何%残っているか(SOC)の把握が大切だということを痛感した。なにしろ、表示される航続距離を計算しているベースとなっている電費って、自分がこれから走行する条件とはまるで関係がない。ということは、かなりアテにならない。ベース燃費が一般道のものか? 高速道路のものか? も曖昧なのだ。やっぱり「あと何km」よりも「あと何%」のほうがずっとわかりやすい。

EV生活に不安感をもたらすのは、EVそのものでも、充電設備そのものでもなく、ソフトウエアなどが大きく関わることを感じたのが今回のテストドライブの総括だ。急速充電器は施設の休日などに関係なく24時間、365日使えるべきである。また、急速、普通に関係なく、充電器の課金システムはもっとシンプルで、だれもが容易に使えるべきだと感じたのだった。

取材・文/諸星 陽一