2022年10月13日、三菱自動車工業が軽商用電気自動車の『ミニキャブ・ミーブ(MINICAB-MiEV)』の一般販売を11月24日(木)から再開することを発表しました。スペックや価格は以前と同じ。バッテリー容量16kWhで、4シーターと2シーターの2バリエーションが用意されます。
国内メーカー唯一の軽商用EVの地位を延命
『ミニキャブ・ミーブ』は三菱自動車工業株式会社(以下、三菱)が2011年12月に発売した軽商用電気自動車(EV)です。三菱では2009年に世界初の量産EVとして『i-MiEV(アイ・ミーブ)』を発売。電気自動車のパイオニアとして、車種ラインナップを拡げるものでした。
当初は、GSユアサ製のバッテリー16kWhを搭載するモデルと、東芝製SCiBというリチウムイオン電池10.5kWhを搭載する2グレードを展開。2013年には軽トラEVである『ミニキャブ・ミーブ・トラック』を発売し、さらにラインナップを充実させました。
今回、一般販売が再開されるのは、バッテリー容量16kWhの「CD」グレードで、荷室優先の2シーターと、後席にシンプルなベンチシートを備えた4シーターの2モデルのみ。EVファンの間で伝説的な耐久性に定評があるSCiBを採用した10.5kWhモデルや、中古車市場で引く手あまたと伝えられる軽トラモデルの復活は計画されていません。
ミニキャブ・ミーブは、10.5kWhモデルの終了などを経て、2020年9月には「車両接近通報OFFスイッチの廃止」などの一部改良を経て当初モデルが継続して販売されてきました。とはいえ、販売台数はさほど奮わず、2021年3月には生産終了が報じられ、一部法人への販売は続けられていたものの、一般ユーザーは購入できない状況となっていました。
ところが、日産と共同開発して今年6月に発売した軽電気自動車の『eKクロスEV』が、7月には累計受注台数が5400台を突破。月販目標の6倍を超える好調を記録しました。軽EVの好調によって日本国内でEVへの注目度が高まっています。事前に開催されたプレス向け発表会では「カーボンニュートラル社会の実現に向けて各方面で脱炭素化の取り組みが加速し、サステナブルな事業活動を展開する物流関係や自治体などで軽商用EVの需要が高まっている」ことを受けた販売再開の決定であることが説明されました。
世界初の量産EVであるアイ・ミーブ、SUVとして世界初のPHEVであるアウトランダーPHEVなどを発売し、電気自動車の先駆的メーカーとしてのポジションを構築してきた三菱として、「国内メーカー唯一の軽商用EV」であるミニキャブ・ミーブで、これからさらに高まるであろう商用EVニーズをカバーするための「延命策」であると評することができます。
スペックや価格は、そのままで販売を再開
今回の販売再開に当たり、一部以下のような変更が加えられます。
**①荷室ユーティリティ強化。
②ルームミラー/ドアミラー変更。
③オートライトコントロール追加。
④アクティブスタビリティコントロールを追加。
⑤メーター内インジケーター追加。
⑥電費モードをJC08からWLTCに変更。**
端的に言って、見た目や性能は「そのまんま」です。
電費の測定モードが旧来のJC08からWLTCに変更となることで、一充電航続距離は150km(JC08)から133km(WLTC)となります。いずれにしても、実用的な航続距離としては100〜110km程度と考えておくのがいいでしょう。
軽商用EVといえば、ホンダが2022年4月の「四輪電動ビジネスの取り組みについて」という会見で、三部敏宏社長が「2024年前半に商用の軽EVを100万円台で投入」することを発表しました。おそらくCEV補助金を勘案した金額だと思うので、実際の車両価格は200万円前後を想定していると思われます。
さらに、ベンチャーのHW ELECTROが軽商用EVの『ELEMO-K』を発売し、佐川急便への軽EV納入を発表したASFが2023年に『ASF2.0』を日本で発売することを示唆。今後、日本独特の軽商用EV市場が活気付いてきそうな気配です。すでにある「タマ」で需要に応えるという選択は賢明であると感じる一方で、10年以上前のモデルをほとんど「そのまんま」販売再開することについては、少し期待外れな印象もあります。
| 車名 | グレード | 電池容量 | 急速充電
AC100V出力 | 価格(税込) | CEV補助金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 三菱
ミニキャブ・ミーブ | CD
2シーター | 16kWh | ○
× | 2,431,000 円 | 45万円程度
(見込み) |
| CD
4シーター | 16kWh | ○
× | 2,453,000 円 | 45万円程度
(見込み) |
|
| HW ELECTRO
ELEMO | 200
フラットベッド | 25.92kWh | ×
○ | 3,234,000円 | 55万円 |
| 200
ピックアップ | 25.92kWh | ×
○ | 3,311,000円 | 55万円 | |
| 200
ボックス | 25.92kWh | ×
○ | 3,476,000円 | 55万円 | |
| HW ELECTRO
ELEMO-K | ピックアップ | 13kWh | ×
○ | 2,673,000円 | 44万3000円 |
| Box片面扉 | 13kWh | ×
○ | 3,146,000円 | 41万円 | |
| ※CEV補助金の金額は令和4年度の設定金額です。
※ミニキャブミーブの補助金額は正式に決定した金額ではありません。 ※営業ナンバー車には経産省のCEV補助金は使えません。国交省の補助金が用意されています。 |
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ホンダやASFの車種はまだ未知数なので、現在、日本で購入可能な商用EVであるHW ELECTROの各車種と比較表を作成してみました。ELEMO 200 は軽自動車ではなく小型車登録となります。大きな違いは、ミニキャブ・ミーブが急速充電(チャデモ規格)に対応しているのに対してELEMOは普通充電のみ。一方、ELEMOは軽トラタイプで多彩な荷室バリエーションが選べて、イベントや災害時に便利なAC100Vのコンセントを装備(Kではオプション設定)しているのに対して、ミニキャブ・ミーブの給電機能はチャデモ充電口からなので、別売の「MiEVパワーボックス」などの外部機器が必要です。
発表会では、2011年以来のミニキャブ・ミーブ販売台数の推移も紹介されました。販売再開後の月間販売台数目標を質問すると「月間400台程度」との回答だったので、年間では5000台弱になります。発売初期の2011年、2012年が約2000台。フルモデルチェンジすることなく販売台数倍増の目標を達成できれば、三菱にとって「ミニキャブ・ミーブを開発して良かった」ということになっていくのでしょう。はたして、どんな反響があるのか楽しみです。
現行車ユーザーは4WDモデルの新登場に期待
実は、私がしばしば宿泊する長野県白馬村の「あぜくら山荘」という宿が、16kWhのミニキャブ・ミーブを使っています。2013年3月に購入し、もうすぐ10年10万kmに到達しますが走りは健在。テクトムのデジタル電費計で計測している平均電費は8〜9km/kWh程度。実際に満充電でメーターに表示される航続距離は夏場で100〜120km程度、冬は90〜100km程度で、実際の使用感覚とも一致しているそうです。
エンバーゴ(情報解禁)の制限があったので販売再開は伝えていませんが、10年10万kmでそろそろ買い替え検討中では? ということで、次期ミニキャブ・ミーブが出るとしたらどんな改良に期待するのか、宿の二代目である渡辺俊介さんに尋ねたところ。白馬という土地柄もあって「4WDモデルが出て欲しい。でも現行モデルの車体だとフロントモーターを配置するのが難しいらしいんですよねぇ」という点と、「メーター回りとか、時代に合わせて改良して欲しい」とのこと。
さらに、雪国のEVはタイヤハウスに着いた雪が凍結してしまうケースに要注意なのですが、とくに「ミニキャブ・ミーブはタイヤハウスの中にあるブレーキのセンサーがむき出しになっているようで、ここに雪が固着すると頻繁にエラーが出てしまうから、改良されるとうれしいな」ということでした。ちなみに、約10年10万kmを経た今でも、日常的に普通充電中心で運用(急速充電は月に1〜2回10分ほど行うかどうか)していることもあり、「駆動用バッテリーの劣化は感じていない」そうです。
ちょっとマニアックな話になってしまいますが紹介しておくと。三菱ではバッテリー容量の健全度を示すSOHを測定してくれます(日産は測定してくれません)が、整備パッケージのプランによっては無料で測定してくれるのが車検時のみで、それ以外の計測は有料になるとのこと。渡辺さんは「8年目の車検で測ってもらうのを忘れてて、正確なSOHがわからないんですよねぇ」と悔やんでました。購入される方はご留意ください。
まずはミニキャブ・ミーブの販売再開を祝福しつつ。三菱に限らず各社から、ユーザーにとってより魅力的な軽&小型商用EVが登場することに期待しています。
(取材・文/寄本 好則)





