市販EVの実用的な電費(燃費)性能を確かめる「東名300km電費検証」シリーズ。第29回はスズキ『e VITARA』の結果をお伝えします。AWD(全輪駆動)で車重1890kgという不利を抱えながらも、ライバル勢に見劣りしない電費を記録。スズキらしい堅実なBEVづくりを感じました。
【インデックスページ】
計測方法や区間などについては、下記インデックスページ参照。
●電気自動車の実用燃費「東名300km電費検証」INDEXページ/検証のルールと結果一覧
100km/h巡航で約310kmの航続距離性能
e VITARAは総電力量49kWhのバッテリーでFWD(一充電走行距離433km)のXグレードと、61kWhのバッテリーでFWD(同520km)とAWD(同472km)があるZグレードの3タイプが用意されています。今回の検証にはZグレードのAWDで臨みました。
基本的なスペックを確認します。全長4275mm、全幅1800mm、全高1635mm、ホイールベース2700mm、車重1890kg、システム最高出力は135kW/184ps、トルクは307Nm、バッテリー61kWh、一充電走行距離472km(WLTP、EPA換算推計値は378km)、車両本体価格は492.8万円(税込)、国のCEV補助金は127万円(2026年7月現在)です。
今回の注目点は、スズキ初の量産BEVであり、同社の「BEV世界戦略車第一弾」に位置づけられるコンパクトSUVであるe VITARAがどんな電費を記録するか、実測値の充電性能の確認、ライバルの電費検証結果との比較でした。
e VITARAの一充電走行距離472kmを、バッテリー容量の61kWhで割った目標電費は7.74km/kWhになります。2026年3月某日、計測日の外気温は最高18℃、電費検証に臨んだ深夜は10~13℃でした。
各区間の計測結果は下記表の通り。目標電費を上回った区間を赤太字にしています。
【今回の計測結果】
目標電費を超えたのは、下り勾配で電費が伸びやすい往路のD区間、復路のBとC区間の3区間でした。往復では80km/hが6km/kWh台、100km/hが5km/kWh台、120km/hが4km/kWh台になりました。
各巡航速度の電費は下表の通りです。「航続距離」は実測電費にバッテリー容量をかけた数値。「一充電走行距離との比率」は、472kmの一充電走行距離(目標電費)に対しての達成率です。
| 各巡航速度の電費 km/kWh |
航続距離 km |
一充電走行距離との比率 | |
|---|---|---|---|
| 80km/h | 6.70 | 408.5 | 87% |
| 100km/h | 5.05 | 308.1 | 65% |
| 120km/h | 4.30 | 262.3 | 56% |
| 総合 | 5.18 | 315.8 | 67% |
(注)80km/hの電費は、80km/hの全走行距離(97.4km)をその区間に消費した電力の合計で割って算出、100km/hと120km/h、総合の電費も同じ方法で求めています。
総合電費の5.18km/kWhで計算すると、満充電からの実質的な航続距離は約316kmになります。100km/h巡航はそれよりも少し短い約308kmでした。そして80km/h巡航はカタログスペックの一充電走行距離を13%下回る約408kmになりました。
「東名300km電費検証」企画の独自の基準として、この表の100km/h巡航と総合の達成率が90%台だと優秀、100%を超えると相当優秀な実測電費性能であると判断できます。e VITARAはどちらも65~67%でしたので、もう一歩という結果でした。
巡航速度比較では、80km/hから100km/hに速度を上げると25%電費が悪化します、さらに120km/hにすると36%減になります。反対に120km/hから80km/hに下げると航続距離を約1.6倍(156%)に伸ばすことができる計算です。
| ベースの速度 | 比較する速度 | 比率 |
|---|---|---|
| 80km/h | 100km/h | 75% |
| 120km/h | 64% | |
| 100km/h | 80km/h | 133% |
| 120km/h | 85% | |
| 120km/h | 80km/h | 156% |
| 100km/h | 117% |
ボディサイズなどが近いライバル車種と比較
ここで、同じくらいのボディサイズ、一充電走行距離が400km~500km台、計測時の気温がほぼ一緒という条件で「ボルボ EX30 Ultra Single Motor Extended Range(以下、EX30)」、「ヒョンデ KONA Lounge Two-tone(以下、KONA)」、「BYD DOLPHIN Long Range(以下、ドルフィン)」の記録と比較してみます。なお、EX30は2024年4月、KONAは24年3月、ドルフィンは2024年1月の計測で、車両のスペックは当時のもの、車両本体価格とCEV補助金は2026年7月現在の金額です。
スペック比較
| e VITARA AWD | EX30 RWD | KONA FWD | DOLPHIN FWD | |
|---|---|---|---|---|
| 全長(mm) | 4275 | 4235 | 4355 | 4290 |
| 全幅(mm) | 1800 | 1835 | 1825 | 1770 |
| 全高(mm) | 1635 | 1550 | 1590 | 1550 |
| 車重(kg) | 1890 | 1790 | 1770 | 1660 |
| Cd値 | 不明 | 0.28 | 0.27 | 0.301 |
| システム出力(kW/ps) | 135/184 | 200/272 | 150/204 | 150/204 |
| システムトルク(Nm) | 307 | 343 | 255 | 310 |
| バッテリー容量(kWh) | 61 | 69 | 64.8 | 58.56 |
| 一充電走行距離(km) | 472 | 560 | 541 | 476 |
| 目標電費(km/kWh) | 7.74 | 8.12 | 8.35 | 8.13 |
| 車両本体価格(万円、税込) | 492.8 | 579 | 489.5 | 374 |
| CEV補助金 | 127 | 36 | 47 | 15 |
| 実質価格 | 365.8 | 543 | 442.5 | 359 |
各車の電費と航続距離に加えて、総合のみ一充電走行距離との比率を加えた表が下記です。
検証結果比較
| 車種 | e VITARA | EX30 | KONA | DOLPHIN | |
|---|---|---|---|---|---|
| 気温 | 10〜13℃ | 9〜13℃ | 7〜9℃ | 10〜13℃ | |
| 80km/h | 電費 | 6.70 | 6.86 | 6.55 | 6.83 |
| 航続距離 | 408.5 | 473.1 | 424.7 | 400.1 | |
| 100km/h | 電費 | 5.05 | 5.26 | 5.48 | 5.18 |
| 航続距離 | 308.1 | 363.1 | 355.0 | 303.3 | |
| 120km/h | 電費 | 4.30 | 4.64 | 4.59 | 4.63 |
| 航続距離 | 262.3 | 320.5 | 297.5 | 271.3 | |
| 総合 | 電費 | 5.18 | 5.45 | 5.43 | 5.41 |
| 航続距離 | 315.8 | 375.9 | 352.1 | 316.6 | |
| 一充電走行距離との比率 | 67% | 73% | 65% | 67% |
e VITARAのみがAWDで車重も100kg~230kgも重いため、100km/hと120km/hでは最も悪い数値になりましたが、その差はさほど大きいものではなく、むしろ車重によるビハインドを最小限に留めている印象です。
ライバルとして挙げた3車種の各電費数値は本当に僅差で、総合は5.4と小数点第一位まで一緒です。こうなるともちろんバッテリーが大きい分だけ航続距離は伸びますから、EX30→KONA→DOLPHINの順番になります。
車両本体価格は唯一300万円台のドルフィンが圧倒的に安いですが、CEV補助金を差し引いた実質価格では、そのドルフィンにあと6.8万円差に迫るe VITARAの優位性が光ります。
ACCとLKAは好印象、課題はステアリング保持判定
東名300km電費検証では、毎回同じ区間を3つの速度で定速巡航するため、巡航中は基本的にACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用します。さらに交通量の少ない深夜に走行することで、渋滞に遭遇する可能性を極力低下させ、ブレが出ないよう留意しています。
e VITARAのACCはステアリングホイール右スポークのスイッチで操作します。設定速度はキャンセルスイッチを上下に操作すると1km/hごとに、長押しすると5km/hごとに変わります。その右側のスイッチで先行車との車間距離設定を4段階で調整できます。左側のスイッチでACCをスタートできます。
ACCによる先行車への追従時の車速調節制御は上手く、停車時も滑らかに速度を落としつつ、最後にわずかな「かっくんブレーキ」で止まり、テスラのような完璧な0G停車まではもう一歩という感じでした。
LKA(レーンキープアシスト)は、車線維持能力が高く、この検証コース中で最もきついカーブである鮎沢PA手前の300Rも難なくクリアし、その後の左右連続カーブも車線を踏み外すことはありませんでした。
ただし、残念なのはドライバーがステアリングを握っているか否かの判定がトルクセンサーによるもので、ステアリングに手を添えているだけでは頻繁に「ハンドルを操作してください。まもなくLKAがシステムを停止します」の注意表示が出ることです。とくに直線が多い新東名では、東名よりも「操作」することが減るので、場合によっては約10秒ごとに注意される点にややストレスを感じました。
スピードメーター表示とGPSによる実速度の差はどの巡航速度でも4km/hでしたので、実速度を100km/hにする場合は、メーター速度を104km/hに合わせました。
速度差/騒音
| 80km/h 巡航 | 100km/h 巡航 | 120km/h 巡航 | |
|---|---|---|---|
| メーターの速度 km/h |
84 | 104 | 124 |
| ACC走行中の 室内の静粛性 dB |
61〜68 | 62〜67 新東名64 |
65〜67 |
巡航時の車内の騒音(スマホアプリで測定)は、表の通りで、最大騒音は荒れた路面のパターンノイズによるものという印象でした。通常は路面がきれいな新東名は東名よりも静かなことが多いですがe VITARAの場合は、120km/hでの風切り音が大きいためか、他の速度と変わらない結果になりました。
80km/hと100km/hでは風切り音よりも圧倒的にロードノイズが目立ちます(8:2という感じ)が、120km/hではその割合が5:5ほどに感じられました。
電費比較であげたライバル達と最大騒音を比較すると、80km/hと100km/hはライバルよりも1~4dB静か、120km/hはドルフィンのみが69dBで他の3車種は67dBでしたので、100km/hまではライバルよりも少し静粛性が高いという結果でした。
90kW器で67.23kWの最高出力を確認
e VITARAの充電能力は「90kW器で10%~65%が30分」が公式情報ですので、55%分を30分で充電できるということになります。今回実際に行った充電では30分で52%をチャージできましたので、ほぼ公称値通りの数値を残せました。
スズキはe VITARAの発売に合わせて「スズキ充電サービス」を開始しています。今回お借りした広報車にもこのサービス用の「スズキ充電カード」が付帯していました。同サービスはエコQ電に対応している充電器で充電が可能です。実際にe VITARAを買って自宅に充電器がない方の運用を仮体験するため、今回はこのカードで充電できる場所に限って充電を行ってみました。
事前にEV充電エネチェンジアプリで、高速道路のSAPA上でエコQ電対応充電器を検索してみると、首都高速の3箇所と阪神高速の1箇所のみであることを確認しましたので、いつも使用している駿河湾沼津SAの充電器は使用できません。
充電結果
※「外気温」は車内メーター表示の温度。
※「充電時最大出力」は、車両もしくは充電器で確認できた数値。
※「航続距離表示」は、エアコンオフ時に確認。
※「充電器表示充電電力量」は充電器に表示、もしくはアプリなどに通知された電力量。表示がない場合は不明としています。
東名300km電費検証で、一旦下道に降りる新静岡IC周辺で、深夜でも利用可能で最も出力の高い充電器を探してみると、約12km南下した「セブンイレブン静岡登呂SS店」の50kW器があり、一回目はこちらで行いました。
検証走行を東名川崎ICで無事に終わらせ、もっと高出力な充電をテストすべく向かったのは「メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology」の検証時にも利用した「メルセデスEQ青山」の100kW器です。ここには2台の充電器がありますが、当日は片方が使用不能な状態でした。空いていたもう1台で充電を開始して数分後、この充電器の出力が50kWであることに気づき、充電を切り上げて次の目的地を検索しました。
そして3箇所目は「ENEOS Dr.Driveセルフ八王子みなみ野店」です。ここの充電器は90kW器で、充電中はディスプレイにSOC、経過時間、電圧、電流、充電量、残り時間が表示されます。数値を観察した結果22分経過時の415Vと162A(67.23kW)が最も大きく、結果として30分で31.3kWhを充電しました。
3回目の充電後、SOCは52%増加し68%に、メーター表示の航続距離は189km分が増えて、248kmになりました。31.3kWhは総合電費の5.18km/kWhで計算すると約162km分になります。
タイヤ・ホイールは18インチ
e VITARAのタイヤサイズは前後ともに225/55R18 98Vで、メーカーはグッドイヤー、商品名はEfficientGrip 2 SUVです。このタイヤは、「SUV向けハイパフォーマンスコンフォートタイヤ」と謳われており、低燃費に加え低車外音も特徴とされているので、ライバルよりも優れた静粛性に貢献した可能性があります。
スズキの乗用軽EV登場も楽しみ
今回はスズキがグローバルで勝負するBEVの戦略車であるe VITARAで検証を行いました。気温条件などが同じライバル車種と比較して、AWDの不利があるにもかかわらず、引けを取らない電費を記録したことが印象に残りました。
今回のe VITARAでの急速充電は深夜から早朝、さらに出力にも条件をつけてエコQ電に対応する充電器を検索したため、右往左往する結果になりましたが、日中に出力にこだわらずに検索すると、以下のスクリーンショットのように多数の充電器を見つけることができます。スズキ充電サービスのウェブサイトによるとエコQ電対応の急速充電器は全国に約2600基あるそうです。
高速道路を使った遠出が多い場合は、SAPAの急速充電器を利用しやすいe-Mobility Power系のカードを用意しておくと安心です。これに対して、自宅から半径100km圏内の移動が中心で、自宅充電が可能なユーザーであれば、スズキ充電カードさえ必須ではありません。日々の充電を自宅でまかなえるため、ガソリンスタンドに立ち寄ることなく、ほぼ自宅充電だけで日常のカーライフを完結できるはずです。
日本では軽自動車のイメージが強いスズキは、日本経済新聞によると、2025年の世界新車販売で1位のトヨタ(1132万台)、9位のホンダ(352万台)に次ぐ、10位(329万台)に位置し、日産を抜いて日本メーカーの3番手です。この3社のグローバルでの販売割合の違いも興味深く、各地域にきれいに分散しているトヨタ、北米の割合が約45%と大きいホンダ、インドが約56%と圧倒的に大きいスズキという具合です。
e VITARAはそんなインドのグジャラート工場で生産され、日本、欧州、インドなど100カ国に展開されるグローバルモデルです。さらにスズキはインドでの工場の拡張や新工場建設を計画しています。
小・少・軽・短・美(小さく、少なく、軽く、短く、美しく)の理念のもと、軽自動車作りのノウハウを活かし、スズキがどんなクルマを未来に投入してくるかが楽しみです。
近い将来としては、「ジャパンモビリティショー2025」で発表されたコンセプトモデル「Vision e-Sky」を2026年度中に量産開始予定です。そして今夏にはBYDから「RACCO」のデビューも控えています、来年には新生「EMTA」ブランドからも軽EVが発売予定です。日産「サクラ」、ホンダ「N-ONE e:」と合わせて、乗用軽EVのラインナップがどんどん充実したものになっていきそうです。
主要スペック
| スズキ e VITARA Z (AWD) | |
|---|---|
| 車両型式 | ZAA-PB3AS |
| 全長(mm) | 4275 |
| 全幅(mm) | 1800 |
| 全高(mm) | 1635 |
| ホイールベース(mm) | 2700 |
| トレッド(前、mm) | 1540 |
| トレッド(後、mm) | 1545 |
| 最低地上高(mm) | 180 |
| 車両重量(kg) | 1890 |
| 前軸重(kg) | 1040 |
| 後軸重(kg) | 850 |
| 前後重量配分 | 55:45 |
| 乗車定員(人) | 5 |
| 最小回転半径(m) | 5.2 |
| プラットフォーム | HEARTECT-e |
| 交流電力消費率(WLTC、Wh/km) | 144 |
| 一充電走行距離(WLTC、km) | 472 |
| EPA換算推計値(km) | 378 |
| 電費(目標電費、km/kWh) | 7.74 |
| バッテリー総電力量(kWh) | 61 |
| バッテリー種類 | LFP |
| 急速充電性能(kW) | 67.23(実測値) |
| 急速充電時間 | 90kW器30分で10%から65% |
| 普通充電性能(kW) | 6 |
| 普通充電時間(時間) | 10.5 |
| V2X対応 | V2L、V2H |
| モーター数 | 2 |
| 駆動方式 | AWD |
| AWDシステム名 | オールグリップe (フルタイム4WD) |
| モーター型式、フロント | 1CG |
| モーター型式、リヤ | 2CG |
| モーター種類(前後) | 交流同期電動機 |
| フロントモーター出力(kW/ps) | 128/約174 |
| フロントモータートルク(Nm) | 193 |
| リヤモーター出力(kW/ps) | 48/約65 |
| リヤモータートルク(Nm) | 114 |
| システム最高出力(kW/ps) | 135/約184 |
| システム最大トルク(Nm) | 307 |
| フロントサスペンション | マクファーソンストラット式コイルスプリング |
| リアサスペンション | マルチリンク式コイルスプリング |
| ブレーキ(前後) | ベンチレーテッドディスク |
| タイヤサイズ(前後) | 225/55R18 98V |
| タイヤメーカー・銘柄 | グッドイヤーEfficientGrip 2 SUV |
| 荷室容量(L) | 238-306 |
| フランク(L) | なし |
| 0-100km/h加速(秒) | 7.4 |
| 暖房システム | ヒートポンプ&シートヒーター |
| 生産工場 | インド・グジャラート工場 |
| 車両本体価格 (万円、A) | 492.8 |
| CEV補助金 (万円、B) | 127 |
| 実質価格(万円、A - B) | 365.8 |
取材・文/烏山 大輔









