電気(EV)バスは騒音や振動が少なく、快適な乗り心地です。日本ではなかなか普及が進みませんが、世界の現状はどうなのでしょう。アメリカのメディア「CleanTechnica」のレポートを全文翻訳でお届けします。
【元記事】Over 9,900 Electric Buses Operating In Latin America Now By Jake Richardson
乗用車よりも重要な「商用車の電動化」
交通機関の電動化に関するニュースの多くは、電動自転車、二輪車、乗用車、SUV、ピックアップトラックなどの、個人向けの移動手段を扱っています。多くの読者がこのような車両に関心を持ち、それらを扱う記事はクリックされ、読まれ、SNSで反応を集めやすいため、これは自然なことです。一般的に、商用車への関心ははるかに低いのかもしれません。
一方で商用車は1日の稼働時間が長く、大量の汚染物質を出す天然ガス車やディーゼル車をEVに置き換えることで、多くのメリットをもたらします。
ディーゼルバスは多くの人々を運びますが、同時に人の健康を害し、早期死亡の一因となり、気候変動にもつながる有害な大気汚染物質を大量に排出します。化石燃料は気候変動の主な要因であり、さらに意図せず水域や陸地で流出することも多く、野生生物に害を与え、生息地を汚染します。化石燃料はまた、地政学的な不安定さや腐敗した政治、そして財政面、環境面、人命の面で甚大な損失をもたらす愚かな戦争にも結びついています。
米国では自家用車が主流である一方、他の国々では公共交通がより頻繁に利用されています。
ラテンアメリカで電気バスが急増
電気バスを追跡するウェブサイト「E-Bus Radar」によると、現在カリブ海地域を含むラテンアメリカでは、9,900台を超える電気バスが運行されています。このバスのカテゴリーには、バッテリー式バスとトロリーバスが含まれます。主要なバスメーカーは、予想どおり中国勢です。BYD、Foton、Yutong Bus、Zhongtong Busが上位を占めています。
電気バスは、太陽光、風力、水力、地熱といったクリーンな再生可能電力で走らせることができます。一方でディーゼルバスや天然ガスのバスは、有害な化学物質を含む汚れた化石燃料でしか走らせることができません。
クリーンな再生可能電力は国内で発電できます。これに対し、現在あまりにも多くの国が、海外から輸入する化石燃料に数十億ドル、あるいはそれをはるかに上回る金額を費やしています。
また、電力は一般的に、ガスやディーゼルよりもコストが低くなります。
電気バスは大容量のバッテリーパックを搭載しています。そのため再エネなどで発電した電力を蓄えて、仮想発電所を構築し、バックアップ電源として活用できます。また、電気バスはバスの運転手や乗客を、人の健康に害を及ぼすディーゼルの排ガスや煙にさらすこともありません。
持続可能性を高め、公衆衛生を改善するうえで目指すべき方向は、自家用車と商用車の両方を電動化し、それをクリーンな再エネや蓄電と組み合わせることです。
電気バスに関するニュースの多くは、都市や町が一度に10~200台の電気バスを導入するという内容です。しかし、より長い期間で見ると、電気バスの総数ははるかに大きな規模で増え続けています。
たとえば、チリのサンティアゴでは、すでに4,000台を超える電気バスが運行されている可能性があります。デンマークのコペンハーゲンでは、バスのほぼ100%が電動化されています。将来的には、すべての天然ガスバスとディーゼルバスが、よりクリーンな電気バスに置き換えられるでしょう。
訳者あとがき/新興国でも普及が進む電気バス
4月29日に公開した以下の記事では、2025年に欧州の路線バス市場においてバッテリー式(BEV)の電気バスが新車の56%、水素燃料電池(FCV)を含めたゼロ・エミッション車全体では60%に達したことを紹介しました。
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普及の壁を突破【欧州】路線バス市場の主役はEVを中心としたZEVに(2026年4月29日)
そして今回の記事は中国や欧州、一部の先進国だけでなく、新興国においても電気バスの普及が進んでいることを示しています。前述の通りラテンアメリカ全体で9,900台、チリでは4,000台を超えた可能性があるほか、5月にはラテンアメリカを含む複数の国と地域で電気バスの大量導入が報じられました。以下に、CleanTechnicaからいくつか関連記事を紹介します。
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Brazil’s Public Transit Skews To Electric/ブラジルの公共交通機関が電気に移行
1つ目は今回の記事でも取り上げたラテンアメリカ市場から、ブラジルの約30の自治体において、合計約1,500台の電気バスが導入されたという報告です。ブラジルでは電力全体の約9割を再エネで賄っていて、このクリーン電力を活用し、2035年までに全体の35%にあたる3万8000台を電気バスに移行する目標が設定されています。短期的には8都市において今後1年で600台を導入する計画があり、今後も継続的に増え続けるでしょう。
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735 Electric Buses Coming To Dubai Soon/ドバイに間もなく735台の電気バスが登場
2つ目は中東の産油国でもあるUAEから、ドバイで2026年に735台の電気バスを導入する計画です。ドバイ道路交通局(RTA)ではすでに40台の電気バスを運用中で、都市部の移動においては明らかにディーゼル車よりも有利と結論づけています。全て納入されれば合計775台まで増える計算で、太陽光を中心に拡大する再エネとともに、2050年までにゼロ・エミッションの達成を目指すとしています。
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240 New Electric Buses Coming To German City/ドイツの都市で新たに240台の電気バスが導入予定
3つ目は電気バスが主力になりつつある欧州から、ドイツのハンブルク市で2031年までに240台の電気バスが新たに導入予定という報道です。同市ではすでに市営バスのうち39%にあたる432台の電気バスを運用中で、このほか2030年までに350台の電気バスを導入することも発表されています。今回の発表と合わせて、2031年までに累計1,022台まで増える計算になります。当初の予定からは遅れながらも、同国で過半数に達した再エネ比率とともに、2030年代前半のゼロ・エミッション達成を目指すとしています。
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Electric Bus Depots Used To Support UK National Grid/電気バスの車庫で英国の電力網を支える
最後の記事は、英国においてFirst Bus社の電気バスが電力網を支えているという報道です。同社は全体のおよそ1/4にあたる1,400台以上を電気バスに移行済みで、これは英国として最大の規模と評価しています。電力網の需給バランスに応じてリアルタイムで充電を制御することで、余った再エネを有効活用しつつ、電力網の安定化につなげるとしています。特に英国では洋上風力などの増加により2026年Q1に再エネ比率が53.1%に達していて、卸売価格がマイナスになる時間帯に合わせて充電することで、燃料代(走行コスト)の削減にもつながるでしょう。
このように世界で電動化が進む背景に、イラン情勢による化石燃料の高騰が影響していることは、言うまでもありません。化石燃料に依存することは、もはやリスクなのです。
そしてこの話は、日本にとっても決して他人事ではありません。足元では7月後半に円相場が一時1ドル=164円台に迫り、1986年以来、約40年ぶりの円安水準となりました。円安にはさまざまな要因がありますが、その一因として、日本が今なお石油、LNG、石炭などの化石燃料を輸入に頼り、毎年数十兆円規模の外貨を海外へ流出させている構造があります。
円安によって最も苦しむのは、エネルギーや食料などの物価上昇を受け止める、私たちのような一般の生活者です。だからこそ日本でも、再エネと蓄電池、そしてEVの普及によってエネルギー自給率を高めると同時に、世界情勢や為替変動に振り回されにくいエネルギー安全保障を確立することが重要です。
翻訳・文/八重さくら
