昨年フォルクスワーゲンは大々的に『ID.3』を発表、CEOの Herbert Diess氏もたびたび電動化シフトへの重要性を語り、VWグループは電気自動車生産へ加速していくのかと思われました。しかし今回、VWグループ傘下のアウディCEOが方向性の違う発言をし、さらに親会社の中でも雲行きが怪しくなっている様子が見えてきました。『CleanTechnica』から全文翻訳でお届けします。
元記事:Audi Snubs EVs, Says Will Continue To “Massively” Invest In Combustion Engines by Johnna Crider on 『CleanTechnica』
アウディは内燃機関が長い間生き続けると信じる
アウディの新しいCEOである Markus Duesmann氏が、社は内燃機関に大きく投資を続けると発言したことから、アウディで電気自動車が冷遇されることは明らかなようです。フォルクスワーゲングループ傘下のアウディは、内燃機関開発に投資し続ける計画です。Duesmann氏は、「内燃機関が長い間生き続けると信じています」と話しました。
氏は2020年代半ばに電気自動車のシェアは飛躍的に向上するが、それでも内燃機関モデルが市場の60~70%を占めるだろう、と続けました。「内燃機関は絶対にトップです。当然私達は内燃機関に関して全力で走りますよ」と、Focus.de.のインタビューに答えました。
BMWとメルセデス・ベンツも内燃機関がこの先何年も現役に留まると発表しています。この理由として、テクノロジーがかなり進化し、ICEエンジンの効率性が今までになく良くなっているというのが挙げられています。そして自動車メーカーがパワーと効率性を向上し続けられるならば、内燃機関に投資し続けるのは非常に重要である、というわけです。
VWグループの内紛
親会社であるVWグループにも触れておくと、電気自動車販売に関して内部チームがいかに分裂しているかが見えます。アウディの件と同じように、新しいVWブランドチーフのRalf Brandstätter氏も、VWは内燃機関モデルを“長い間”作り続けると話し、EVへの転換という考えは却下したようです。
Focus.de.の記事から読み取れる内容とVWのEVに関する様々な計画やプレスリリースと比べると、社の内部紛争が明らかに見えます。この紛争の一部は旧モデル販売 vs EVモデル販売周辺で起こっています。VW役員はEV革命を押し進めていますが、ディーラー側はEV販売の成功見通しに関して違った見方をしているようです。
Auto Motor & Sport は「何よりもまず電気自動車への注力と、要の内燃機関モデルの削除にセールス部門が裏側で抵抗したのが確実です」と報じています。VWのCEOであるHerbert Diess氏は『Up』を『e-Up』に完全移行させたかったようですが、ディーラーはUpがその低価格で顧客をショールームに惹きつけるために重要であると抗議したのです。結果として、Upは今もエンジン付きで選ぶことができます。
一連の紛争には、『パサート』の終焉計画も入っています。グループ内で計画がうまくいかなかったのは明らかです。 Auto Motor & Sport は「Diess氏は遅くとも2023年までにパサートをID.Vizzionと似たMEBプラットフォーム由来のものに代えたがっていましたが、ディーラーはここでも大騒ぎをしました。電気自動車は、特にフリートを買う(※まとめ買いをする)顧客には高すぎるだろう、という言い分です。よって既存のパサートも残ることになりました」と報じています。
これらを踏まえると、アウディが子供だったなら両親が口論をしている間安全な場所に隠れてしまうのも納得ができます。アウディにとって、その安全な場所とは内燃機関なのでしょう。しかし現実の世界では、後退するのは会社の将来にとって良い考えではありません。今現在安全に見えても、さらなるリスクを生み出すのです。
長い道のりを経てきたバッテリー技術は、自動車とエネルギー両方の業界で広がりを見せ、革命を起こし続けていくでしょう。それに背を向けるのは、車の充電に疲れたからとEVを見捨て、ハイブリッドやガソリン車を買うくらい無意味なことです。
正直なところ、とりわけ欧州の既存自動車メーカーは変化することに対して意固地になっているように見え、自社製品の完全電動化に抵抗しているようです。温室効果ガスを出さない車両を作るということに関して、テスラが感じているような緊急性を彼らは感じていないのです。EVへの需要がそこにはあるのに、それが見えていないか感じられないようなのです。
残念なことに、長年にわたり主な自動車会社のCEO達から出てきたテスラに関する多くの間違った情報の1つが、EVへの需要はない、というものでした。実際には、需要がなければテスラはアメリカで最も売れたラグジュアリー車(モデル3)を持ち得なかったでしょうし、この車は全車種の中で2019年にアメリカで7番目に売れた車にもなっているのです。
電気自動車を作るための情熱は、テスラだけが本気で持っているようです。熱いEV市場を持つノルウェーで最も売れている『e-トロン』を持っていても、またVWグループがテスラやルノーと欧州プラグインセールスで張り合っていても、アウディにいる人の多くがEVを諦め、内燃機関に投資をして、これまでと同じものを売りたがっているようです。
(翻訳・文/杉田 明子)




