BYDが電気バス『K8』を日本発売〜ラインナップが増えて日本市場シェア拡大へ

大型電気バスを世界に販売している比亜迪(BYD)の日本法人、BYDジャパンは2020年12月16日、量産型大型EV(電気自動車)バス『K8』を日本で販売することを発表しました。納車は2021年1月からの予定で、日本でのEV市場拡大を目指します。

BYDジャパンの電気バスのラインナップが4モデルに

EVsmartブログではこれまで、いろいろな所でEV(電気自動車)のバスが導入されていることを紹介してきましたが、来月から新しい仲間が加わります。BYDジャパンが12月に販売する大型電気バスの『K8』(ケーエイト)です。

BYDジャパンでは、K8を1月に納入開始する予定です。価格は税抜きで3850万円。2025年までの5年間で2000台の販売を目指します。

今回のK8導入によって、BYDジャパンが日本で取り扱うバスは、従来から販売している小型の『J6』、大型の『K7』『K9』に『K8』が加わり、4モデルのラインアップが揃うことになりました。

K8は、日本国内の路線バスで多く採用されている、全長10.5mのサイズに合うように開発されています。富士急行バスなどで採用されているK9が観光バスに適用される大型車規格の全長12mなのに対して、10.5mは路線バス等の最大サイズです。

BYDのリリースによれば、K8は車両部品のモジュール化やバッテリーモジュールの配置を見直すなどしたことで、乗車定員を大幅に増やせたほか、メンテナンスが効率的にできるようになったそうです。

なるほど、路線バスに使うのであればなおさら、日々のメンテナンスの手間を省くのは重要な要素になりそうです。実際にどのくらい作業に影響するのか、K8を導入したバスの運行会社に聞いてみたいところです。

K8の充電は、CHAdeMO(チャデモ)規格に対応しています。K9やK7は専用充電器だったので、急速充電器の選択肢は広がりそうです。対応する充電器の出力は未公表ですが、K9やK7が出力50kWに対応していることを考えると、K8も50kWくらいの受け入れ能力ではないかと考えられます。ちなみに小型バスのJ6は40kWです。

バッテリー容量は、K9とK7の間の287kWhです。航続距離は220kmですが、路線バスの場合は運行距離が決まっているので、実用上は、あまり距離は関係がないかもしれません。もっとも急速充電の出力が小さくて充電時間が長くなってしまう場合は、少しでも走行距離が長い方がいいですね。

現状で確認できる4モデルのスペックなどを整理してみました。

BYDの電気バス 4モデルの仕様比較

K8J6K7K9
車長×車幅×車高(mm)10500×2500×33606990×2080×3060確認中12000×2500×3400
乗車定員75人〜81人25人〜31人確認中56人
車両重量確認中6220〜6300kg確認中確認中
最高速度確認中70km/h確認中確認中
一充電航続距離220km最長150km180km250km以上
最大出力確認中161kW確認中確認中
バッテリー容量287kWh105.6kWh217kWh324kWh
対応充電出力確認中40kW約50kW約50kW
充電器種類CHAdeMOCHAdeMO専用専用
希望小売価格3850万円(税抜き)確認中5000万円確認中

BYDジャパンの公式サイトでも不明な点が多く、広報ご担当部署が年末のご多忙中で、年明けに改めて確認することになったので「確認中」がいっぱいですが……。(確認でき次第追記します)

K8以外の3モデルについては、EVsmartブログで取材した記事がありますので、写真とともにご紹介しておきます。

【K7】

尾瀬に行って電気自動車のシャトルバス(BYD製)に乗ってみた(2019年8月5日)

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【K9】

富士急バスが導入したBYDの大型電気バス『K9』に緊急試乗(2020年3月31日)

富士急バスが導入したBYDの大型電気バス『K9』に緊急試乗

【J6】

上野動物園にBYDの電気自動車小型バス『J6』が国内初導入~突撃試乗レポート(2020年10月20日)

上野動物園にBYDの電気自動車小型バス『J6』が国内初導入〜突撃試乗レポート

次世代交通インフラの機能も搭載

BYDジャパンはK8について、走行状態を遠隔管理できるテレマティクス・システムを実装したり、運転支援システムを装備、さらに充電器を介して多様な用途に使えうための放電ができるV2X対応にするなど、従来の路線バスの代替以上のメニューを用意しています。

リリースに、「EV、蓄電池を中心としたBYDジャパンの一連の新エネルギー事業と、それに関わる企業や団体とのアライアンスにより、環境意識が向上し新エネルギーが活用される社会を目指します」と記載していることからも、K8を単なる路線バスの代わりにするのではなく、次世代の脱炭素社会の交通インフラのモデルとして提案しているように見えます。

ただ、テレマティクス・システムとはどんなものなのか、普及型運転支援システムでどんなことができるのかなど、詳細は未発表。これについても、今後、状況がわかれば紹介したいと思います。

残念ながらEV後進国になりつつある日本では電気バスはまだまだ珍しい乗り物ですが、それでもBYDジャパンの電気バスは少しずつ数が増えていて、2020年12月7日には、ハウステンボスにK9とJ6を合わせて10台の電気バスを納入したことが発表されました。

世界では電気バスがどんどん増える

一方、BYDは世界で販売台数を伸ばしています。2020年12月18日には470台の電気バスをコロンビアの首都、ボゴタのバス会社に販売しました。すでに120台を納入し、12月26日から運行を始めるそうです。

ボゴタでは全部で483台の電気バスを運行する計画です。考えてみると、高地で空気の薄いボゴタでディーゼルエンジンのバスを走らせるのはけっこう酷なことなので、電気の方が相性がいいかもしれません。しかもCO2削減になるし、ボゴタのような盆地ではとくに深刻な大気汚染の防止にもなります。ちなみにボゴタのバスは150kWの急速充電に対応しているそうです。

このほか、2020年12月15日には、バスや鉄道を運行するオランダの公共交通会社『Keolis Nederland』に259台の電気バスを販売し、そのうち246台が12月13日から運行し始めていることを公表しました。

Keolis Nederlandは、ヨーロッパのほか、インドや中国、カナダ、アメリカ、オーストラリア、カタールなど16カ国で鉄道、地下鉄、バス、トラムなどを運行している『Keolis』の完全子会社です。Keolisも、2020年12月1日に、ノルウェーで運行する100台以上の電気バスを、100%再生可能エネルギーに切り替えたことを発表するなど、CO2削減に前向きな会社です。

こうしたグループで電気バスの導入が進むのは、電気バスメーカーには強い追い風になりそうです。

さて、では日本はどうかというと、なかなか楽観的な見通しはしにくいですが、政府もようやく重い腰を上げてCO2削減やカーボンフリーの目標を出すようになってきたので、これからに期待したいところです。

まあ、個人的には20年くらい前から、路線バスや空港などで使う特殊車両は、全部EV(電気自動車)にしてもいいと思っているのですが。走行距離は決まっているし、充電インフラも特定の場所に作れば済みます。

そんなことを考えているので、自動車開発の関係者と、急速充電の受け入れ能力が高い東芝のSCiBをバスに使えればいいのにねえ、などという話をしたこともありました。バスなら重量はそれほど関係ないし耐久性があればコスパも上がるのでは、と。合理性は高いと思ってるのですが、どうでしょうか。

地方自治体の中には電気バスの支援策を実施しているところもありますが、ごく少数です。東京都は多い方ですが、それでも17区3市です。次が神奈川県で、9市2町1村。他の道府県では1~3自治体がほとんどで、自治体の支援策がひとつもない県もあります。

【関連リンク】

全国の地方自治体の補助制度・融資制度・税制特例措置(次世代自動車センター)

バス会社は、とくに地方では経営が厳しくなっているので、支援が手薄となると急速な普及は望み薄にも思えてしまいます。電気バスを新規に路線バスなどに使う際の国交省の認可にも時間がかかるようで、今はまだ道に踏み出したところという状況でしょうか。

千里の道も一歩から、などということを、冬の寒空を見上げながら思い浮かべたりしている今日このごろです。

(文/木野 龍逸)