2023年1月6日、テスラジャパンが「モデル3」と「モデルY」の価格改定を発表しました。最大82万4000円の大幅な値下げです。独自急速充電インフラであるスーパーチャージャー網の着実な拡充とともに、電気自動車としてのコストパフォーマンスと魅力でますます独走態勢が強まるのでしょうか。
日産リーフは最大約103万円も値上げしたのに……
正月早々、またもテスラから衝撃的なニュースが飛び込んできました。ミドルサイズセダンの「モデル3」とSUVの「モデルY」の価格を改定、日本でもいろいろ値上げが気になるご時世にも関わらず、大幅な値下げを断行したのです。
年末の12月22日には、日産がリーフとサクラの受注再開とともに、「世界的な原材料費や物流費などの高騰」を理由として大幅な値上げを発表したばかりです。各車の値下げと値上げを一覧表にしてみました。
テスラと日産の値下げと値上げ一覧
| 車種 | グレード | 旧価格(税込) | 新価格(税込) | 価格差 |
|---|---|---|---|---|
| テスラ モデル3 | RWD | 5,964,000 円 | 5,369,000 円 | -595,000円 |
| ロングレンジAWD | 7,091,000 円 | 6,389,000 円 | -702,000円 | |
| パフォーマンス | 7,939,000 円 | 7,149,000 円 | -790,000円 | |
| テスラ モデルY | RWD | 6,438,000 円 | 5,799,000 円 | -639,000円 |
| パフォーマンス | 8,333,000 円 | 7,509,000 円 | -824,000円 | |
| 日産 リーフ | X(40kWh) | 3,709,200円 | 4,081,000円 | +371,800円 |
| e+ G | 4,805,900円 | 5,834,400円 | +1,028,500円 | |
| 日産サクラ | G | 2,940,300円 | 3,040,400円 | +100,100円 |
モデル3 RWDは約60万円の値下げですが、数少ない日本メーカーの競合モデルと呼ぶべき、リーフ e+ Gは、逆に100万円以上の値上げで、モデル3よりも50万円ほども高価なEVになってしまいました。充電性能、テスラのオートパイロットと日産のプロパイロット、電動シートや装備のいろいろ、独自スーパーチャージャー網の利便など、EVとしての魅力や性能を考えると、「なにがなんでも日産が好き」という方以外に、モデル3ではなくリーフを選ぶ理由は見当たらなくなってしまいました。
リーフ e+ Gの新価格が改定前のモデル3 RWDよりも「ちょっと安い」のは、もしかすると日産がモデル3の価格を意識したのかも知れません。とすると、テスラの返し技が見事に一本決まった印象です。
今回のテスラの値下げは中国市場での販売停滞が一因といった報道もありますが、大幅な値下げを敢行できるのは生産システムの合理化やバッテリー生産、調達などで余力があるからこそのことでしょう。
コストパフォーマンスでテスラと戦えるのは?
もっとも、EVの車両価格の値上げ傾向は日産に限ったことではありません。昨年末に日本デビューしたフォルクスワーゲン ID.4 も、今年第2四半期以降に発売する標準モデルの価格は、特別装備を奢ったローンチエディションよりも少し高くなることが、日産の値上げと同じ12月22日に発表されたところでした。
モデル3、モデルYと、競合モデルと考えられるEV車種の価格について、経産省のCEV補助金を引いた実質価格、カタログ値(WLTCモード)の一充電航続距離と、航続距離1km当たりの単価を比較する表にしてみました。
| 価格(税込) | CEV補助金 | 実質価格 | 航続距離
(WLTC) | 価格/km | |
|---|---|---|---|---|---|
| TESLA MODEL3
RWD | 5,369,000 円 | 650,000円 | 4,719,000円 | 565km | 約8,352円 |
| TESLA MODEL3
ロングレンジAWD | 6,389,000 円 | 650,000円 | 5,739,000円 | 689km | 約8,329円 |
| TESLA MODEL3
パフォーマンス | 7,149,000 円 | 650,000円 | 6,499,000円 | 605km | 約10,742円 |
| TESLA MODELY
RWD | 5,799,000 円 | 650,000円 | 5,149,000円 | 507km | 約10,156円 |
| TESLA MODELY
パフォーマンス | 7,509,000 円 | 650,000円 | 6,859,000円 | 595km | 約11,528円 |
| 日産アリア
B6 | 5,390,000円
受注停止中 | 850,000円
(PP2.0非装着車) | 4,540,000円 | 470km | 約9,660円 |
| 日産リーフ
G(40kWh) | 4,448,400円 | 850,000円 | 3,598,400円 | 322km | 約11,175円 |
| 日産リーフ
e+ G | 5,834,400円 | 850,000円 | 4,984,400円 | 450km | 約11,076円 |
| ヒョンデ
IONIQ 5 | 4,790,000円 | 850,000円 | 3,940,000円 | 498km | 約7,912円 |
| ヒョンデ
IONIQ 5 Lounge | 5,490,000円 | 850,000円 | 4,640,000円 | 618km | 約7,508円 |
| ヒョンデ
IONIQ 5 Lounge AWD | 5,890,000円 | 850,000円 | 5,040,000円 | 577km | 約8,735円 |
| BYD
ATTO 3 | 4,400,000円 | 850,000円
※未確定 | 3,550,000円 | 485km | 約7,320円 |
| フォルクスワーゲン
ID.4 Lite | 5,142,000円
2023年Q2以降発売 | 650,000円 | 4,492,000円 | 435km | 約10,326円 |
| フォルクスワーゲン
ID.4 Pro | 6,488,000円
2023年Q2以降発売 | 650,000円 | 5,838,000円 | 618km | 約9,447円 |
| Audi
Q4 40 e-tron | 6,200,000円 | 650,000円 | 5,550,000円 | 594km | 約9,343円 |
| Audi
Q4 40 e-tron advanced | 6,830,000円 | 650,000円 | 6,180,000円 | 594km | 約10,404円 |
| ボルボ
C40 Recharge Plus | 6,590,000円 | 650,000円 | 5,940,000円 | 502km | 約11,833円 |
| ボルボ
C40 Recharge Ultimate | 7,590,000円 | 650,000円 | 6,940,000円 | 484km | 約14,339円 |
| メルセデス・ベンツ
EQA 250 | 7,820,000円
(MP202301) | 650,000円 | 7,170,000円 | 555km | 約12,919円 |
| メルセデス・ベンツ
EQB 250 | 8,220,000円
(MP202301) | 650,000円 | 7,570,000円 | 520km | 約14,558円 |
CEV補助金は今年度(令和4年度)の金額です。基本は最大65万円で、給電機能付きのEVには20万円の加算で最大85万円となります。テスラ車をはじめ、輸入車の多くは給電機能を備えていないのでおおむね「65万円」となります。
コストパフォーマンスの指標とした「価格/km」をみると、モデル3 RWDは改定前の価格では「約10,556円」だったのが「約8,352円」へと向上。モデルY パフォーマンスも「約14,005円」が「約11,528円」になるなど、今回の値下げでいかにテスラの2車種が競争力を高めたか実感できます。
こうして一覧で並べてみると、コストパフォーマンスでテスラ車に対抗できるのはヒョンデのIONIQ 5と、BYDの ATTO 3くらいです。ATTO 3へのCEV補助金額はまだ正式に発表されていませんが、V2HやV2Lに対応するはず。IONIQ 5とともに最大85万円の補助金を活用できるのもアドバンテージになっています。
ベンツやアウディ、ボルボなどのプレミアムブランドは、コストパフォーマンスだけで語れないので、ご参考までに、という感じです。
いずれにしても、競合車種として挙げられる日本メーカーの車種は日産アリアとリーフのみ(いくつかの車種はテスラ車の競合にならないと判断しました)。しかも、アリアがまだ受注停止中で、再開時にはリーフ同様に値上げされる可能性が高い現状です。EV開発競争で日本がどんどん遅れている(しかも日産が孤軍奮闘という)現実を改めて確認できるようで、なんとも切ない一覧ではあります。
さらに注目すべき「アップデート」の報告も
テスラからの発表では、2車種の値下げとともに「2022年、Tesla オーナー、サポーター&従業員、関係各社の皆様のご協力により、「持続可能なエネルギーへの移行を加速させる」Tesla のミッションを前進させることができました」として、いくつかの注目すべきアップデートについて言及されていたので、ピックアップして紹介しておきます。
●スーパーチャージャーネットワークを米国全50州に拡大全世界では合計4万基を超えるスーパーチャージャーの設置を完了しました。日本においては現在、全国57箇所260基以上が稼働し、年末年始も大きなトラブルもなく運用しています。
●欧州15カ国において、Tesla 以外の電気自動車にもスーパーチャージャーネットワークを開放。Tesla アプリを介した充電に対応。
●Fremont と Nevada のギガファクトリーで累計200万台目の車両生産を記録。
●Tesla Semi(産業用トレーラーヘッド)をついに納車。
●Solar panels & Solar Roof の設置台数が50 万台超。
●過去最高の4680セルバッテリーの生産量を達成。1週間の総生産量は1,000台以上に相当。
欧州でのスーパーチャージャーネットワーク開放については、日本のチャデモと採用している急速充電規格が異なるので「早く日本でも!」とはなりません。詳しくは『テスラが自社充電コネクター規格を公開し「北米標準」目指す。日本はどうするべきか?』(2022年12月2日)という記事をご参照ください。
また、Solar Roof などはまだ日本には導入されていません。テスラのアップデートは「持続可能なエネルギーへの移行を加速させる」という明確なビジョンに向けて着実に前進していることを示す出来事であり、太平洋の隅っこにある日本の思惑なんて関係なく進んでいるのです。
ともあれ、大幅値下げでテスラ車のお買い得感が急上昇しました。テスラは2021年2月にもモデル3を最大約156万円大幅値下げしましたが、その後、あっけらかんと値上げを繰り返してきた実績(?)もあります。「モデルYが欲しいけど高くなっちゃったなぁ」と思い悩んでいた方にとっては、テスラオーナーになるチャンス到来ですね。
文/寄本 好則
