世界のEV事情レポート/ジャカルタ市内の公営バスなどで着実な電動化が進展中

仕事柄、世界各地のEV関連展示会を訪問する機会が多く、さまざまな都市のEV事情を見聞してきた。以前、インドネシアのジャカルタで開催された「Busworld Southeast Asia」をレポートしたが、今回は続編として、ジャカルタ市内のEV(電気自動車)事情について報告したい。とくに、現地で強い存在感を示していたBRTのEVバスを中心に紹介する。

ジャカルタ市内では「BRT」が合理的な公共交通機関

筆者にとってジャカルタ訪問は今回が初めてだった。空港から市内のホテルまでの移動にはタクシーを利用したが、まず驚かされたのが深刻な交通渋滞である。

空港鉄道を利用して市内へ移動する方法もあるが、結局、駅からホテルまではタクシー移動が必要になるため、今回は空港から直接タクシーで向かうことにした。ジャカルタの渋滞は以前から有名だが、実際に体験すると想像以上だった。通常であれば30分程度で到着しそうな距離にもかかわらず、空港からホテルまで1時間半以上を要したのである。

その移動中、頻繁に目にしたのがBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)である。一般車両が渋滞に巻き込まれている一方で、BRT専用レーンを走るバスはスムーズに走行していた。一部マナーの悪いドライバーはBRT専用レーンを走っていたが、それでも一般レーンに比べれば格段にスムーズだ。

ジャカルタのBRT路線は世界最長級とも言われており、一般道にコンクリートブロックなどを設置して専用レーン化した、比較的簡易な構造が特徴だ。大掛かりなインフラ整備を必要とせず、低コストで導入可能なBRTシステムと言えるだろう。

BRTへのEVバス導入が進んでいる

BRTレーンを走る車両のなかで目立っていたのが、「ELECTRIC BUS」と表示されたEVバスである。Busworld Southeast Asiaの会場で、現地のバスコーチビルダー関係者に話を聞いたところ、ジャカルタ市内の公共バスは「TransJakarta(トランスジャカルタ)」という、ジャカルタ州政府の公営企業が運営しており、保有台数は5,200台以上に達するという。

さらに驚いたのは、そのうち400台以上がすでにEVバスだという点である。

しかも、インドネシア政府は2030年までに、新規販売されるバスを100%電動化する方針を掲げているという。そのため、現地のコーチビルダー各社には、毎年100台単位でEVバスの発注が入っているとのことだった。現在は400台規模だとしても、数年後には大幅に増加している可能性が高い。

また、ジャカルタのBRTには日本とは異なる特徴がある。走行中のバスを見ると、乗降口がかなり高い位置に設置されているのである。最初は不思議に感じたが、実際に試乗して理由が分かった。BRTの停留所は単なるバス停ではなく、鉄道駅のような高床式プラットフォームになっており、バスの床面と同じ高さで乗降できる構造になっている。つまり、結果として段差なく乗車できるのである。

さらに、BRTのプラットフォームには改札口が設置されており、日本の鉄道のようなシステムになっていた。利用できるのは事前チャージ式のプリペイドカードのみで、現地では「e-Money」と呼ばれている。

もう一つ驚いたのが運賃の安さである。BRTの乗車料金は一律3,500インドネシアルピア、日本円で35円程度だった。

一方で、EVバスの価格は日本円換算で1台4,000万円前後とも聞いていたため、「この運賃で採算が取れるのだろうか」と率直に感じた。

BRTで運行されている車両は、12m級のEVバスと18m級のディーゼル連節バスが中心である。車体はインドネシアのコーチビルダーによるものだが、EVシャシーは中国メーカー製が多く、現地では、以下のようなメーカー名を多く見かけた。

●GOLDEN DRAGON
●HIGER
●SKYWELL

現時点では18m級のEV連節バスはまだ導入されていないようだが、今後は連節バスについてもEV化が進むとの話であった。

一般のEVも中国系ブランドが圧倒的な存在感

一方、市内を走る一般車両で目立っていたのが、ベトナムのEVメーカーであるVinFastの水色のEVタクシーだ。筆者は一昨年、ベトナム・ハノイを訪問した際にも同社のEVタクシーを多く見かけたが、ジャカルタでも同様のSUVタイプ車両が活躍していた。

また、タクシーというよりライドシェアに近い存在だが、Grab(東南アジアを中心に展開する配車サービス大手)のEVスクーターも数多く走っていた。

EVバスやEVスクーターは確実に増えている一方で、街中には依然として3輪車や古い車両も多く、地域によっては排気ガス臭さを感じる場所もある。それだけに、今後さらに電動化が進めば、都市環境改善への効果は大きいと感じた。

そして、ジャカルタ市内で見かけるEVは、圧倒的に中国系ブランドが多い。EVには、インドネシアのナンバープレートの下に青いラインが入っているのでわかりやすい。

市内で頻繁に見かけたEVは以下のような車種だった。

●BYD M6
●BYD Sealion 7
●Wuling Air EV
●Denza D9(BYD)
●Hyundai IONIQ 5
●Hyundai KONA

ご承知のように、Hyundaiは韓国、上の4つは全て中国系のブランドである。BYD をはじめとする中国系ブランドの圧倒的な存在感を広げているのが印象的だった。逆に日本メーカーのEVは少なく、トヨタ「bZ4X」を数台見かけた程度で、日産「LEAF」は1台だけ確認できた。

かつては90%以上を占めていたインドネシアにおける日本車のシェアは2025年には80%台前半まで低下している。さらにEVに注視すると日本車のプレゼンス低下が深刻であると言わざるを得ない。

ジャカルタ市内のEV充電インフラ

充電インフラについても急速に整備が進んでいる。Googleマップでジャカルタ市内を検索すると、かなり多くの充電スポットが表示される。市内だけの正確な設置数は確認できなかったが、インドネシア国営電力会社PLNによると、公共EV充電器(SPKLU)は2025年3月時点で約3,500~3,800基、2025年末には約4,655基まで増加したという。

実際、筆者もGoogleマップを頼りにショッピングモール内の充電設備を見に行った。設置されていたのは日本企業「Terra Charge」の充電器だった。出力などの詳細は確認できなかったが、2基設置されていた。調べたところ、Terra Chargeは2025年時点でインドネシア国内250か所以上、300基超の充電器を展開しているという。

充電規格については、Busworld Southeast Asiaの会場で充電器メーカーに確認したところ、主流はCCS2とのことだった。ただし、CHAdeMO規格の急速充電器も存在しているという。実際、日産LEAFも走っていたため、CHAdeMO対応車向けのインフラも一定程度整備されているようである。

ジャカルタは慢性的な渋滞を抱え、場所によっては排気ガス臭も強い。しかし、その一方で、EV化は着実に進みつつある。

インドネシア政府は2030年目標として「四輪車:200万台」、「二輪車:1,300万台」のEV普及を掲げている。また、2050年には国内で販売する新車の100%を電気自動車にする目標を明示している。

かなり野心的な目標ではあるが、少なくともバス分野については、現実に電動化が急速に進んでいた。今後、二輪車や一般乗用車についても、同様にEV化が加速していく可能性は高いと感じた。

取材・文/福田雅敏

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私も仕事の関係でインドネシアに行ったことがありますが、ジャカルタでヒョンデ IONIQ5をよく見かけました。高速道路上にも急速充電スポットがあるのを確認しました。電動化が進みつつありますね。