電気自動車で急速充電器を上手に利用するコツは? 知っておきたいルールとマナー

電気自動車用の急速充電器を上手に利用するためのルールやマナー、ご存じですか? 日本でも市販EVの車種が増え、新たなEVオーナーさんが急増中なので、改めてポイントを整理してみます。みんなで上手に気持ちよく、急速充電スタンドを活用しましょう!

できれば全てのEVオーナーが知っておくべき充電のコツ

先日、千葉県へゴルフに行った帰り道、うみほたるで急速充電しようと思ったら、メルセデス・ベンツEQEが充電中でした。充電器の表示を確認すると、充電の残り時間は7分ほどで、電池残量(SOC=State Of Charge=充電率を示す指標)は90%程度でした。ほどなくドライバーさんが戻ってきたので「もう充電終了するのかな」と思ったら、そのまま車内で5分ほど待機。規定の30分間、きっちり充電して行きました。

いや、1回30分というルールなので、自動で止まるまで充電するのはいいんですけど、一般的にSOCが80%を超えると急速充電の「充電量/時間」の効率は悪くなります。また、バッテリーの健康のためにもあまり良くはありません。

EQEのバッテリーは90kWhの大容量。ナンバーの地名は東京都内だったので、うみほたるから自宅(拠点ガレージ)まで30kmとして、90%のSOCで少なくとも7〜8往復はできるはず。「90%超えての急速充電は電池に良くないですよ」と声を掛けたいところでしたが、大きなお世話なのでグッと我慢しました。

せっかく大容量の高級EVに乗っていながら、急速充電で無駄な5分間を費やしてしまう(何か特別な事情があったのかも知れませんが)のは、おそらくこのオーナーさんにとってEQEが初めてのBEV(バッテリーEV)で「急速充電の上手な活用法をご存じないんだろうなぁ」と推察しました。

考えてみれば、軽EVの登場や新たな車種が増えたことで、初めてのEVオーナーさんが急増中のはず。ついついマニアックな情報発信に偏りがちなEVsmartブログですが、このあたりで改めて「電気自動車で急速充電を上手に利用するコツ」と、ルールやマナーについてまとめておこうと思い立った次第です。

EVならではのエネルギー補給のポイントがある

EV用の急速充電器を上手に活用するには、電気自動車と急速充電について理解しておくことが大切です。言い換えると、「エンジン車の給油とは違う」ことを理解しておくのがポイントです。この記事では、実際に規定されているルールや広く知られているマナーのほか、長年EVに関わってきた私個人の見解も交えつつ、EVならではのエネルギー補給のポイントや、急速充電器の上手な活用法について整理してみます。

先日、マイカーのセグ欠け30kWhリーフで東京から青森県の大間まで往復する無茶目な実走取材をしてきた(後日、詳細レポート予定です)ので、記事中ではその時の写真も交えてご紹介します。

【TIPS】事前に充電計画を立てておくのがベター

まず最初のポイントは、ロングドライブに出かける際は事前にルート上の急速充電器がある場所を確認し、途中での充電が必要かどうか。必要であればどこで、どのくらい充電するかという「充電計画」を立てておくのがベターということです。

仮に航続距離が500kmの大容量EVだとしても、片道200km以上のドライブであれば復路の後半ではSOCが10%以下に減って、ちょっと不安なドライブになってしまう可能性があります。急速充電ができる場所、もしくは目的地で充電できるかどうかを確認しておくのが安心です。

ドライブの途中で充電する場合、エンジン車の給油ではいつも「満タン」にしている方が多いと思いますが、EVの急速充電の場合、おおむねSOCが80%を超えると充電速度が落ちて効率が悪くなるので、満タンにするのはむしろ無駄。充電できる次のスポットに向けて、ある程度余裕をもって到達できる電力(エネルギー)を補給すればOKと考えておくのがオススメです。

ちなみに、充電スポット検索アプリ『EVsmart』には、自車のバッテリー容量などを設定して適切な充電計画を示してくれる「経路検索V2」という機能があります。

【TIPS】急速充電器の出力について理解しておく

ひとくちに急速充電器といっても出力は20〜150kW程度までさまざまです。また1回30分として、出力20kWであれば10kWh、150kWであれば75kWhを充電できる単純計算になりますが、実際には車両側のシステム電圧と充電器の定格電圧の関係や、充電時のロスなどもあって、実際に充電できる電力は充電器出力の80〜90%程度となると考えておきましょう。

つまり、充電器出力別の30分間での充電電力量の目安は、以下のようになります。

充電器出力定格の目安30分間の充電量目安

(出力×30分×80%)

20kW400V×50A8kWh
25kW500V×50A10kWh
30kW400V×75A12kWh
40kW400V×100A16kWh
44kW400V×110A17.6kWh
50kW400V×125A20kWh
90kW450V×200A36kWh
150kW450V×350A60kWh

表の数値はあくまでも目安であり、充電器機種によって定格の電圧や最大電流値は異なります。とくに150kW出力器では対応車種でも30分でおおむね40〜45kWh程度の充電量となることを確認しています。

【TIPS】自分のEVの充電性能を理解しておく

また、EVによっては急速充電の受入可能な出力に制限があり、高出力器を使ってもEV側の性能を超える出力で充電することはできません。

たとえば、私の30kWhリーフ(AZE0)は最大50kWだし、日産サクラは最大30kWとなっています。三菱アウトランダーPHEVなど急速充電可能なPHEVも受入可能な最大出力はおおむね40kW以下程度(最新車種の場合。旧型車では20kW程度が多い)に抑えられています。

つまり、充電性能が低いEVでは、90kW以上の高出力器のメリットを引き出すことはできません。充電スタンドに90kW以上の高出力器と50kW以下の充電器が並んでいるような場合、急速充電性能が低いEVではできるだけ高出力器を空けておく配慮をするのがスマートです。

【TIPS】大容量EVは高出力器を上手に活用しよう

60kWh以上の大容量バッテリーを搭載しているようなEVでは、多くが70〜90kWを超える高出力の急速充電に対応しています。充電性能が低いEVで高出力器を使うメリットがないのと逆に、こうした大容量バッテリー搭載のEVでは、出力の低い急速充電器では30分で補給できるのはSOCの10〜20%ほどで、「あまり充電できた気がしない」ということになりがちです。

eMPでは、全国の高速道路SAPAに90kW以上の高出力急速充電器の設置拡大を進めています。とはいえ、まだすべてのSAPAに高出力器が設置されているわけではありません。大容量&高出力急速充電対応の高性能EVでロングドライブする際には、ルート上で90kW以上の出力で充電可能なスポットを上手に利用できるようなプランを立てておくのがいいでしょう。

【TIPS】テスラ車はスーパーチャージャー活用がオススメ

テスラでは、スーパーチャージャー(SC)という独自の超高出力急速充電ネットワークを整備しています。2023年4月現在で、SCステーションは全国68カ所まで拡大。しかも、SCにはおおむね4口以上の複数台設置がデフォルトで、ストール数(充電可能な台数)は328となっています。

日本の場合、高速道路上のSAPAには設置できないですが、高速道路網のちょうど良い距離感で、IC(スマートIC含む)を下りて数キロ以内の便利な場所にSCが設置されており、すでにほぼ日本全国、不安なくロングドライブを楽しめるネットワークが整いつつあります。

テスラでは日本の急速充電規格であるチャデモ用のアダプターを用意していて、高速道路SAPAに設置されているチャデモ規格の急速充電器を利用することもできますが、アダプターの定格が125Aなので、90kW以上の高出力器を使うメリットがありません。

一方で、SCを使えば多くのスポットで最大250kWという超高出力で充電できる上、30分制限という日本のローカルルールに縛られることもなく、次の目的地、もしくは充電スポットまでに必要な充電を行うことができます。

「チャデモでちょこっと注ぎ足し充電できればOK」といったケースもあるでしょうが、テスラ車でスムーズなロングドライブを楽しむには、SCを活用するのがオススメです。

【ルール】eMPネットワークの充電時間は原則1回30分

日本の電気自動車(プラグインハイブリッド車を含む外部充電可能な電動車)用に整備されている公共の急速充電スタンドの多くは、急速充電インフラの拡充(設置)から運用、保守まで提供している株式会社e-Mobility Power(イーモビリティパワー/以下、eMP)のネットワークに接続されています。

公共の急速充電器で、たとえば「充電は原則として1回30分まで」というのはeMPネットワークが定めている(さらに言うと、eMPの前に日本の充電インフラ拡充を担っていた日本充電サービス時代からの)ルールであり、日本国内のほとんどの急速充電器がeMPネットワークに接続されているため、「急速充電は1回30分」という、日本独自のローカルルールが定着しているのです。

とはいえ「30分充電しても十分な電力が補給できていない(もっと充電しておきたい)」というのは珍しいことではありません。充電待ちをしている後続車がいるようなら、充電終了後すぐに交替するのは当然ですが、後続車がいなければ、もう一度充電を開始する、いわゆる「おかわり充電」をするのはルール違反ではありません。

ただし、おかわり充電中はできるだけクルマを離れず、次に充電するEVが来たらすぐに交替できるように配慮するのがスマートです。

【TIPS】SOC80%を超えたら途中停止するのもオススメ

前述のように、多くのEVではSOCが80%を超えると急速充電の受入出力に制限が掛かって遅く(電流値が下がる)なります。目的地、あるいは次の充電スタンドまで走れる電力が補給できている場合には、30分漫然と終了を待っているよりも、途中で充電を停止して出発したほうが時間的な効率のいいケースが少なくありません。

私の場合ですが、マイカーのセグ欠け30kWhリーフのようなバッテリー容量が小さなEVで、100km以内のSAPAの急速充電を繰り返す必要がある場合など、次に充電を予定しているSAPAまで到達できるSOCになったら、10〜15分程度で充電を停止して再スタートすることが「バッテリーの小さいEVでスムーズなロングドライブをするコツ」のひとつになっています。

【私の場合】次の人が来たら状況次第で交替するのもいいですね

自車のSOCだけでなく、充電待ちの状況によっても途中停止することがあります。SAPAでの急速充電中、次の充電予定ポイントまで到達できるSOCになっていて、後続のEVが充電スポットにやってきたなんて場合、「充電しますよね?」と確認して、早めに充電を停止して交替するケースもしばしばです。

だって、自分が充電を待つ側だとすると、SOCが80%超えてるのに待たされるのはちょっとイラッと感じたりしますから。人の振り見て我が振り直せ。笑顔で充電器を譲り合う方が、気持ちいいと思うからです。

ただし、充電インフラの整備状況が「それでいい」とは思っていません。昨年のある講演会で、チャデモ規格策定のキーパーソンであり、現在のeMP会長でもある姉川尚史氏が「充電するEVの台数が増えてきたらみんなで苦労を分かち合う」と発言したことが報じられました。でも、苦労を分かち合っているようでは、日本のEV普及はままならないというのが正直な感想です。

もちろんご自身がEVユーザーである姉川さんはそんなことは先刻ご承知でしょうし、eMPでもことに高速道路SAPAへの高出力器複数台設置を進めているところなので、道半ば、ということだとは思うのですが。一日も早く、充電待ちの不安を解消してくれる、十分な数と出力の高速道路の急速充電インフラネットワークが構築されることを願っています。

と、そんなことを思案していると、急速充電はEVの重要な性能というポリシーを具現して、独自のSC網を着々と拡げているテスラの的確さをひしひしと感じたりもするのです。

【マナー】ケーブルは道にはみ出さないように

最後にふたつ、人としてのマナーに関するポイントです。ひとつ目、「充電が終わったらケーブルはきちんと片付けましょう」ということです。

EVの急速充電口は、車種によって位置が違います。充電スポットの駐車区画の配置もさまざま。急速充電器にはどんな車種がきても充電できるよう、かなり長めのケーブルが取り付けられています。地面に当たっているので泥や埃で汚れていることも多く「手が汚れるし面倒だなぁ」ってことなのでしょうが、ケーブルが駐車区画にはみ出したまま放置されている、なんてことが少なくないのが現状です。

私の場合、充電ケーブルを片付けた後、汚れた手を拭くためのウェットティッシュをドアポケットに用意しています。軍手などを常備しておくのもいいでしょう。

急速充電器のケーブルは太くて重いので、とくに女性のドライバーにとっては大変で面倒な作業だとは思いますが、みんなが気持ちよく利用できるよう、また、余計な故障などの原因とならないように、ケーブルはきちんと片付けておくよう心掛けましょう。

ちなみに、最近eMPが増やしているニチコンのマルチプラグ器など、ケーブルが吊り下げ式になっていて地面に当たることなく、扱いやすくなっている充電器機種も登場しています。賢明な進化だと思います。

【マナー】充電ガンは丁寧に扱いましょう

急速充電器が故障する原因のひとつが、充電ガンの破損です。充電ガンはそれなりに大きくて、ケーブルの荷重もあって重いものではありますが、うっかり落として接続部が割れてしまった! なんてことがないように、丁寧に扱うように注意しましょう。

ちなみに、充電を開始しようとして充電器にエラーメッセージが出ることもしばしばあります。充電器とEV車種によっては相性が悪くて充電不可といったケースがあるのは事実。eMPでも「一部の車種と急速充電器の組合せにより発生する不具合について」といった情報発信を行っているので、適宜情報収集を行うことも必要です。

また、急速充電を開始する時は、車両側のシステムをオフにしておくのが大原則。システムがオンのまま充電を開始しようとしてエラーメッセージが出ることがあります。充電器にエラーメッセージが出ると慌ててしまいがちですが、まず、自車のシステムをオフにしているか、充電ガンがきちんと接続できているかなどを、落ち着いて確認するようにしてください。

以上、「電気自動車で急速充電を上手に利用するコツ」のまとめ記事でした。ともあれ、EV普及も充電インフラ拡充も日本ではまだまだ発展途上。いち早くEV(プラグイン車)オーナーとなったみなさんの理解と行動で、よりよい日本のEV社会を実現していきましょう。

取材・文/寄本 好則