トヨタ自動車が2021年3月期 決算説明会を開催。2030年に電動車800万台、うちBEVとFCEVを200万台とする販売台数の見通しを示しました。従来よりも踏み込んだ電動化への目標が示されたといえるでしょう。1日も早く、年間200万台売れるトヨタのEVの姿が見えることを願います。
※冒頭写真は執行役員(CCO)の長田准氏。
2030年にはBEVとFCEVで200万台が目標
2021年5月12日、トヨタ自動車が2021年3月期 決算説明会を開催しました。世界全体が新型コロナに翻弄された一年でしたが、発表された決算では、販売台数が908.7万台、営業利益は2兆1977億円。2020年5月に発表した、販売台数800万台、営業利益5000億円という見通しを大きく上回る実績となりました。
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EVsmartブログが注目したのは、決算説明会の第1部、質疑応答のなかで、長田准執行役員(CCO)が示した電動化戦略です。日刊工業新聞記者からの質問に答える際に示されたのが、2030年の「電動車販売比率・台数見通し」です。
グローバルで、電動車販売台数の見通しは800万台。うちBEV(バッテリー電気自動車)とFCEV(水素燃料電池自動車)を200万台とするというものです。
従来トヨタでは2019年に開催した「電気自動車の普及を目指して」説明会などで、2025年までに550万台の電動車販売を目標としていたものの、中心はHEV(ハイブリッド車)で、BEVとしての目標は明示していませんでした。今回、2030年に800万台の電動車にはHEVやPHEVも含み、あくまでもHEVが中心であるという見方は変わらないものの、BEVとFCEVで200万台、FCEVが大きな台数を占めるとは考えにくいので、事実上、年間200万台のBEVを販売するという見通しを示したことは、日本と世界のモビリティ変革に向けた朗報といえるでしょう。
【関連動画】
●2021年3月期 決算説明会 Ⅰ部(決算説明および質疑)
●2021年3月期 決算説明会 Ⅱ部(当社の取組みおよび質疑)
年間200万台売れるのは、どんなEV?
では、おおむね9年後の2030年、年間200万台売れるトヨタの電気自動車とは、どんなEVなんでしょうか。今回は決算発表の場でことさらに電動化戦略を説明する場ではなかったこともあり、目標台数の見通しは示されても、どんなEVを発売するかについては言及されませんでした。
今、電気自動車販売で世界トップのテスラで、2020年の年間販売台数は約50万台でした。テスラがモデルSをローンチしたのは2012年のこと。今から2030年までと同じ約9年間で築き上げてきた販売台数です。
トヨタではレクサスブランドを含めて現在世界で4車種のBEVを発売しているとしていますが、日本でも買えるのはレクサス UX300eだけで、あとは中国国内限定の2車種と、欧州でグループPSAからのOEMを受けて市販しているプロエースという商用車。正直、9年後に200万台に伸びるポテンシャルは感じません。
もちろん、2030年に向けてどしどし新車種を投入するでしょう。先日の上海モーターショーで電気自動車シリーズ『bZ』を発表し、2025年までにbZシリーズ7車種を含む15車種のEVを市場に投入するとしていますし、EVコンセプトカー『LF-Z Electrified』もすでに発表しています。
とはいえ、すでに発売されているレクサスUX300eはざっくり600万円。スバルと共同開発で2022年にも発売とされる『bZ』シリーズ第一弾はまだスペックなどが不明ではありますが、『LF-Z Electrified』も含めて、どう見ても「500万円以上なんだろうな」という佇まいです。
はたして、500万円以上の高級車でも、トヨタがEVを発売さえすれば世界中でどしどし売れていくのでしょうか。
トヨタでは常々、世界に先駆けて発売したハイブリッド車を例に挙げながら「普及してこそ環境技術」であるという考え方を示しています。その通りだと思います。だからこそ、電気自動車も普及しなければ意味がない。年間200万台売れる電気自動車の開発は、トヨタに課せられた責務でもあるのです。
ヒントは「斬新で安価な電気自動車」
高価な新型EVを何車種も揃えたところで、テスラを超えることは難しいのではないかと思います。どうすれば、去年のテスラの4倍も売れるEVを開発することができるのか。ひとりの電気自動車ユーザーとして、ちょっと考えてみたいと思います。
ヒントはあります。まず、フォルクスワーゲンがすでに発売している『ID.』シリーズです。専用プラットフォームを開発、バッテリー生産に大きな投資をしつつ、価格を抑えたモデルも投入しています。
今、既存メーカーから投入される新型EVは、たとえばインパネなどドライバーとのインターフェースが従来のエンジン車からの違和感がないことを重視しすぎているように感じます。その点、たとえばID.シリーズ第一弾として投入された『ID.3』は「インテリジェントライトコンセプト」と呼ぶLEDバーを使ったコミュニケーションシステムを採用するなど、かなり頑張っている印象(まだ実車を確認してないですが)です。
もうひとつのヒントが、中国でテスラモデル3を脅かすほど大ヒットしている『宏光 MINI EV』です。
『宏光MINI EV(HongGuang Mini EV)』は、中国の上汽通用五菱汽車(SAIC-GM-Wuling Automobile=SGMW)が、2020年7月下旬に発売した小型電気自動車で、バッテリー容量は9.3kWhと13.9kWhの2タイプ。ベースグレードは電池容量9.3kWhで価格は2万8800元(約45万円)、冷暖房完備の中級グレードで3万2800元(約51万円)、電池容量13.9kWhの上級グレードでも3万8800元(約60万円)という安さです。コストを抑えるためもあり、急速充電機能はありません。
自動車で得られる利便や価値とコストのバランスが、ことに中国ではこの宏光 MINI EV で十分に受け入れられたということでしょう。もちろん、絶対的な安さが大ヒットした最大の理由であることは間違いありません。
ヒントを整理してみると、年間200万台売れるEVのポイントは「斬新で安価な電気自動車」ということになりそうです。たとえば、日本国内で2020年度に20万台以上を販売してホンダ『N-BOX』の年間販売台数4連覇を阻止した『ヤリス』にも似た、30kWh程度のバッテリーを搭載したコンパクトEVを開発し、エンジン車とさほど変わらない200万円前後(以下を希望)で発売されたら、おそらく世界中で大ヒットするでしょう。
バッテリーの原価が高いから無理、という声が聞こえてきそうですが、だからこそ、テスラやフォルクスワーゲンはバッテリーのコストダウンに取り組んでいて、宏光 MINI EV は原価を抑えたリン酸鉄のバッテリーを採用しています。200万円のコンパクトEVを実現することが、EVに出遅れたトヨタにとって起死回生の一手となるはず、もっと言うと「トヨタじゃなきゃできないこと」だと思うのです。
便利なのでACC(前車追従オートクルーズ)は欲しいですけど、自動駐車機能とか余計な快適装備は端折ってもらって結構です。インパネとかもEVならではのシンプルさを演出しつつ無駄を省いて、今までのコンパクトカーにはない気持ちよさを感じられるパッケージングになっていたら、たぶん私は買っちゃいます。
2025年までに15車種という発表通りだとすると、遅くとも来年あたり以降、トヨタからは新型EVがどんどん登場してくるはず。はたして、どんなEVを提案してくれるのか。期待したいと思います。
ちなみに、トヨタではプラグインハイブリッド車を「PHV」と表記していましたが、今後は、ハイブリッド車=HEV、プラグインハイブリッド車=PHEV、電気自動車=BEV(バッテリーEV)、燃料電池自動車=FCEVとすることも発表されました。豊田章男社長が出席しなかったのは「最近しばしば会見を行っている自工会会長としての発言との混同を避けるため」(長田氏)とのことです。
(文/寄本 好則)




