トヨタがレクサスブランドで初めての量産電気自動車として発売した『UX300e』に、カーライフエッセイストの吉田由美さんがたっぷり試乗。インプレッションをレポートします。
トヨタはハイブリッドだけじゃない!
レクサスを含むトヨタは、ハイブリッドという誰もが知っている秘密兵器をせっせと磨いてきましたが、もちろんそれだけではありません! 水素燃料電池車(FCV)のほうが先に発売されましたが、いよいよ電気自動車の導入です。
しかも、トヨタより先にレクサスブランドから。世界的に人気の高いコンパクトクロスオーバー『UX』がベースの『UX300e』です。エンジンだけのモデルとハイブリッドに続いて、ピュアEVが登場しました。
電気自動車に対する考えはメーカーによって異なりますが、トヨタ(レクサス)をはじめとする既存自動車メーカーのほとんどは、「これまで培ってきたものの延長に電気自動車がある」と考えているようで、「EVは特別なクルマではなく、ひとつのグレード」として位置付けているように感じられるケースが多いですね。まさにUX300eはそんな感じです。
これは「ガソリン車から乗り換えたときに、違和感が無いように」ということらしいのですが。確認はしていませんが、おそらくUX300 eにもそんなメッセージが込められているような気がします。
ガソリンエンジンの『UX200』やハイブリッドの『UX250h』と見比べても、エクステリア、インテリアともに見た目は言われてないとこれが電気自動車だと分からないぐらい。
小さなバッジが電気自動車の証
外観ではバッジで違いをアピール。ボディサイドに「ELECTRIC」とリアに「UX300e」の文字。小さな「e」が電気自動車の証です。
試乗車は「version L」(バージョン L)なので、バージョンLの専用色ミディアムグレーメタリック塗装で切削光輝というこだわりの18インチアルミホイール。
床下は専用カバーとのことですが、以前、EVsmartブログに諸星さんが寄稿しているレポートを見ると、バッテリー収納スペースを確保するための工夫のようです。
車内でもシフトレバーがシフトバイワイヤ式になったり、EVらしい走行距離表示、バッテリー残量計、回生ブレーキが表示されるインジケーターといったものが加わっていますが、あくまでもさりげない。いえ、さりげなさすぎ!(笑)
個人的には、バッテリー残量計のガソリンスタンドマークにコンセントの遊びゴコロ、嫌いではありませんが。
ほかにも「さりげなく」違っているのは後席。後席の床下に搭載されたバッテリーにより、フロアが高くなり、後席のヒップポイントも高くなっていて、若干頭上空間が狭くなっているような気がします。
しかしラゲッジスペースは、303ℓでガソリンモデルと同じ容量を確保。しかも「300e」には、AC100 V 1500Wのコンセントが付いていて、普通に電化製品が使えます。もちろん、いざという時の非常用電源としても使用可能。
たしかに、エンジンモデルとの違和感はありません
そして肝心の心臓部。モーターは最高出力203ps(150kW)、最大トルク300Nm、駆動用のバッテリー容量は54.4kWhのリチウムバッテリーを搭載。ハイブリッドモデルには電気式の全輪駆動モデルもありますが、EVモデルは4KM型のモーターで前輪を駆動します。航続可能距離は367㎞(WLTCモード ※EPA換算推計=約281km)。
そして、GA-Cプラットフォームを採用して剛性を高め、ショックアブソーバーなどのチューニングを変えてEV化に対応しています。
走行中の車内は至って静か。これは遮音性の高いガラスが使われていたり、「アクティブサウンドコントロール」によって「車内の音」が心地よく、しかも嫌なノイズが調整されている効果が出ているようです。
アクセルやブレーキのフィーリングも自然で穏やか。ガソリンエンジンやハイブリッドのモデルと比べても大きな違和感は感じません。しかしなにより、EVならではの発進や加速が力強くスムースで、アクセルとブレーキを踏みかえたときにも全くぎくしゃくしないのが高ポイントです。
ドライブモードは「ノーマルモード」と「スポーツモード」があり、加速に物足りなさを感じた場合はスポーツモードにすると、加速のフィールがイメージ通り力強さをアップ。その時の音も加速度合いに合わせて変化します。このあたりは、エンジンモデルとはひと味違った演出とも言えますね。
安定感のあるしっかりした走りや高速走行時の突き上げ感などのおさまりの速さ、そして静粛性は、タイヤによる効果あるのかも。
UX300eは、EVでもさらなる走りの楽しさを提供しづけることを目指す「Lexus Electrified」という思想のもとで開発され、タイヤはミシュラン「プライマシー3」が新車に装着されています。「プライマシー3」は、高速安定性の高さと、静かで上質な走りの両方を実現させる「アクティブコンフォート」というコンセプトで開発され、3つの技術「スリー・スタビリティ・テクノロジー技術」が採用されています。
まず、ひとつ目はワイドな接地感にして安定感のある走りを実現する「スタビリティコンタクト・テクノロジー」。ふたつ目は「スタビリティブロックテクノロジー」で、スポーツタイヤに使われているデザインの採用で制動時の接地面を最適化します。そして3つ目はブロックの倒れこみを抑制し、路面状態にかかわらず安定した接地面を確保する「インターロッキングサイプ」を採用。
これらによって接地面形状とサイプのデザイン、ビード部の構造を最適化させることで、この乗り心地を作り出しています。タイヤサイズは前後ともに225/50R18。
なるほど。確かにほかのUXに比べると、EVなので静かで滑らかなのは当然ですが、さらに上質感でありつつ、足元が締まった感じがするのは「プライマシー3」とのマッチング効果もあるのかもしれません。
ちなみに電気自動車ならではの回生ブレーキ。こちらは4段階ありますが、私はほかのモデルでもそうですが、なかなかこのポテンシャルを引き出し切れません。一応、一般道で全部の段階を一段づつ試してみて、その差をチェック。そして下り坂でも試してみます。
でも個人的には4段階あっても、長い下り坂以外ではほとんど調整機能を使いません。これは、性格が大雑把なせいなのでしょうか?(笑)
今回は4泊5日で試乗して、走行距離は250㎞でした。
乗り始めたときの航続可能距離は360㎞。充電は30分の急速充電を続けて2回と、翌日に30分の急速充電1回の合計3回。
続けて2回充電したときは、最初の30分で17.8kWh、続けての30分で17.7kWh。航続距離は31㎞から294㎞まで増えました。
翌日は30分の急速充電で、航続可能距離は188㎞から287㎞に。JFEの充電器で終了時の充電電力量は確認できませんでした。
公共のスポットで急速充電しながら感じたのが「外観はもっと電気自動車をアピールてくれていいのにな」ということでした。というのも、見た目でEVだと判らないと、ほかに充電待ちの車がいたときに、なんとなく居心地が悪い……。おそらくこの車をEVだと気づいてくれる人はかなりのクルマ好きの人で、多くの人はプラグインハイブリッド(PHEV)だと思いそう。
幸い、私が充電した時は後に誰も待っていなかったので、そういう場面には遭遇しませんでしたが。
ちなみにお値段は635万円。同グレードのハイブリッドモデルに対して127万円ほど高いのですが、最大80万円の補助金を活用すれば差額は47万円。トヨタのEVを満喫したい人や、むしろ「あまりEVらしくない車に乗りたい」という人にとってはこのサポートを活かせば現実的な選択肢……、かもしれません。
(取材・文/吉田 由美)





