日本ではトヨタ初の量産電気自動車〜レクサス『UX300e』で軽井沢日帰り試乗レポート

日本ではトヨタ初の量産電気自動車となったレクサス『UX300e』で、モータージャーナリストの諸星陽一氏が軽井沢へ日帰り長距離試乗。標高1000m級の軽井沢まで150km以上をどのくらいの余力を残して走れるのかなど、実際の使い勝手をレポートします。

日本ではトヨタ初の量産電気自動車〜レクサス『UX300e』で軽井沢日帰り試乗レポート

全高を抑えたフォルムはEVモデルでも健在

レクサスブランドとして初、そしてなによりもトヨタ自動車として日本で初めて一般向けに量産&市販される電気自動車(EV)がレクサス『UX300e』である。レクサスUXはレクサスSUVラインアップのボトムモデルにあたる。UXそのものは2018年に日本での発売が開始された。

旧碓井峠の名所『めがね橋』にて。

プラットフォームはTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)と呼ばれるもので、C-HRと兄弟車となる。当初のラインアップは2リットルピュアエンジンのUX200、2リットルエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドのUX250hの2つのパワートレイン(以降、UX200とUX250hを標準のUXとする)を用意。EVのUX300eは2020年10月に追加された。

標準のUXと同じTNGAのプラットフォームをフロントからリヤまでしっかりとしたブレースを追加しつつ、床面にバッテリーを配置、そこに井桁の鋼鉄製アンダーフレームを被せてボディと連結している。つまりバッテリーはボディから吊されているような形となる。

バッテリー搭載により、最低地上高はエンジンモデルの160mmより20mm減少し、140mmとなっている。UX300eのボディサイズは全長4495mm×全幅1840mm×全高1540mmでピュアエンジン&ハイブリッドモデルと変わりない。バッテリー搭載により最低地上高は減っているものの全高は1540mmを維持し、多くの立体駐車場への駐車が可能。標準のUXが登場した際、都市型クロスオーバーSUVらしいスタイルを実現しつつ駐車の利便性も得ることに成功した。全高の低さはUXシリーズにとって大切なものであり、EVを出すに至って全高を高くすることはできなかったのだろう。このパッケージングはよくできていると評価できる。

バッテリーはリチウムイオンで、容量は51Ah、総電力量は54.4kWh。モーターは4KMという型式で、最高出力は150kWh(203馬力)、最大トルクは300Nm(30.5kgm)で、フロントセクションに配置、前輪を駆動するいわゆるFF方式となる。変速機は持たないが、1段の減速機構が与えられている。車重は1800kgで、ピュアエンジンモデルよりも約300kg重くなっている。

試乗車のグレードはバージョンC。上級のバージョンLに比べると225/50R18サイズのタイヤが215/60R17サイズに、アダプティブハイビームシステムがオートマチックハイビームに、三眼フルLEDヘッドランプが一般的なLEDヘッドランプに、なるなどの装備差があるものの、タイヤの違い以外は大きく走りに影響する面はない。

充電口はボディ後部、急速充電が左、普通充電は右に配置されている。

標高差約1000m〜軽井沢までの距離は約150km

電池残量はエンジン車のようなアナログ型のメーター表示となる。

試乗前日に広報車をピックアップし、世田谷区内の編集部にて一晩普通充電(といっても借り出し時に満充電だったので、夜間の充電はわずかなもの)したうえでスタート。練馬インターから関越自動車道に乗り、上信越道の碓氷軽井沢インターを経由して急速充電器のある軽井沢町役場を目指す。

環状七号線、練馬区内の一方通行路、新目白通りという都内一般道のサンプルとしてはちょうどいい組み合わせのルートで関越自動車道を目指す。UX300eは混雑した環状七号線や練馬の一般道など、ボディの見切りのよさが求められる状況でも、じつに運転がしやすい。筆者は標準のUXで三浦半島や房総半島を舞台に試乗しているが、その際も取り回しのよさは実感できている。

ナビゲーションをはじめとした多くの機能は、フロアのセレクトレバー左側にあるタッチパッドで行うことになるが、日本仕様は右ハンドル車となるため、左手での操作。利き腕が右の私には非常に使いづらい。右ハンドル車は別の方式を採用するべきだと思う。

高速道路に入り、アクセル操作のみで加減速を繰り返してみる。アクセル操作に対するピックアップはよく、EVらしいものである。トヨタ自動車としては初のEVだが、すでにハイブリッドはもちろん、水素をエネルギーとしつつも駆動力はモーターのみとなるMIRAIを送り出しているのだから、電動車についての知見はしっかりとある。EVに求められる性能は十分に理解していると言っていいだろう。

走行モードをノーマルからスポーツに切り替えるとアクセルペダルを踏んだ際のピックアップがよくなり、アクセルを踏んだ際の加速感がアップする。しかし、標高35mの世田谷から標高700m超の碓氷軽井沢インター、標高1000m超の和美峠を経て、標高940mの軽井沢町役場まで、150kmオーバーを走ることが前提となっている。ここはおとなしくエコモードで目的地を目指すのが正攻法だろう。

高速道路を走行中、レーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシスト(LTA)をチェックした。しばらく大型トラックの後ろについて80km/hで巡航していたが、登り勾配になってトラックの速度が低下、トラックが登坂車線に移動する。前方が開けるとそこから再加速となる。

しかし、登坂車線が現れるほどの登り勾配、しかもエコモードで走っていたUX300eはそう簡単に速度を復帰しなかった。1800kgの車体に300Nmのトルクのモーターで、上信越道の登り勾配、ことにエコモードの場合は俊敏な加速は控えるようだ。同じような状況で、フラットな場面ではずっとしっかりした再加速をみせた。勾配が強い道路でなければ問題はないといえる。

LTAの制御も正確なので、高速道路の巡航はイージーだ。走行レーンを外れそうになった際のアラートがステアリングの振動のため、レーンを外れたことはドライバーのみにインフォメーションされる。じつはUXはアラームと振動を選ぶことが可能だが、レーンキープが外れたことを同乗者に知らせる必要はないので、ステアリング振動が適切であるのは言うまでもないだろう。

高速巡航やワインディングで快適さを実感

高速巡航時の静粛性は非常に高い。UX300eは床一面にバッテリーを敷き詰めているため、床面から入るノイズがかなり遮断されている。またバッテリーを搭載するためにボディを強化している。さまざまな要素が積み重なり、UX300eは静かで快適な空間を得ることに成功している。

しかし、まだエンジン音のようなノイズがないと、クルマらしくない、運転がしづらいという主張もあり、人工的に作り出した走行音やエンジンノイズを車内に流すアクティブサウンドコントロールという機能を備えているが、EVをEVらしく乗るには不要な機能と言える。

上信越道を碓氷軽井沢インターで降り、ワインディングに入る。ここはスポーツモードで走る意味がある。モードを変更してアクセルを踏み込む。トルク発生のピックアップがよくなり、走りやすさがグッと増す。多くのEVに言えることだが、バッテリーを床下に搭載するためクルマの重心が低くコーナリングの安定感はかなり高い。

ステアリングに付けられたパドルスイッチで回生量をアップするが、回生はさほど強くならないため、ワンペダルドライブほどのイージーさはない。Dモードでのパドル操作ではアクセル操作によって増やした回生量がキャンセルされるため、ワインディングではBモードが走りやすい。また、高速道路もDモードでの回生量は少ない印象で、現状でのトヨタの思想なのだろう。回生量のコントロールについては、各社で思想が異なる。またユーザーや使い方によっても欲しい回生量は異なる。答えが明確になることはないだろうから、回生量については調整幅が大きく設定されているのが一番だろう。

定員乗車時のラゲッジルーム容量は310リットルで、標準のUXと同一。デザインを重視したモデルだけに容量は少ない。バッテリーは床下配置なのでラゲッジルーム容量に影響を及ぼしていない。

軽井沢で急速充電30分〜帰路はおよそ半分の電池容量で走破

軽井沢町役場で30分の急速充電。ここは無料で利用できる施設であり、平日のお昼時だったが10分ほど待って充電開始。私の後にも充電待ちのリーフが来ていた。

軽井沢に到着。撮影を終え、充電のため軽井沢町役場に向かう。軽井沢役場到着時のオドメーターは169.3kmで、走行可能距離は残り35km、通算平均電費は4.6km/kWhであった。

54.4kWhのバッテリーを搭載し、カタログスペックではWLTCモードの一充電走行距離は367kmとなっている。欧州WLTPでは196マイル(約315km)、EPA換算では約281kmなので、エコモードとはいえ、エアコン入れっぱなしで約170kmを走り、おおよその標高差1000mを登ってきてこの数値ならばまずまずと言ったところだろう。役場の急速充電器で30分充電し、走行可能距離は230.7kmに復活。充電前に約1/4まで減っていた駆動用電池残量計は3/4弱まで戻った。

メーター上の電池残量表示はアナログ型の残量計と、走行可能距離の表示のみで、SOCの「%」は示されない。

帰路は約1000m分の標高を下っていくことになるので、UX300eでの東京-軽井沢の往復は、一度の急速充電で安心して行えることがわかった。じつはこの充電後に、せっかく標高を下るのだからと碓氷峠(旧中山道)を通りながら、回生充電を試みたのだが、約20kmを走って5km分しか回生できなかった。

20km走って5km増えているのだから実際には25km分の回生ができているわけだが、私だけでなく同行した寄本編集長も感覚的にもう少し回生できてもいいという印象であった。碓氷峠は勾配が緩く、コーナーもタイトなので回生には不向きのようで、勾配もきつめでコーナーも高速コーナーとなる碓氷バイパスならばもう少し回生できたかもしれない。

富岡製糸場近くのモツ煮の名店『永井食堂(売店)』に立ち寄るも、無念の定休日。

碓氷峠を下ったあとは国道18号線で上信越道富岡インターまで行き、その後上信越道、関越自動車道経由練馬インターに。中野区まで戻ってオドメーターの表示は325.1km。電池残量は1/4強の位置、走行可能距離は90kmを示していた。往路は満充電から35km程度の余力しか残らなかったが、標高差約1000mを下る帰路ではおおよそ半分の電池容量で約156kmを走りきったことになる。通算平均電費は5.6km/kWhであった。

(取材・文/諸星 陽一)

この記事のコメント(新着順)7件

  1. 基本は走行しながら操作するものではないって設計思想もからんでそうです。
    ただ別車種で使っている限りでは、PCのタッチパッドのように厳密にボタンの位置まで操作する必要のある物ではなく、選択したいボタンの方向を指示してやるとカーソルが吸い寄せられる設定になってるので慣れと理解で対応出来る部分も。

  2. ザっと見た限りでは、レクサスUX300eとベンツEQAは価格的に競合しそうですね。
    簡単には判断できませんが、一充電走行距離とCHAdeMO充電 90kWタイプ対応はベンツEQAのプラス面になりそうですね。
    ベンツEQAがV2H非対応なのは残念ですが。
    レクサスUX300eとベンツEQAのザっとしたスペックはコメント欄をご覧ください。

    UX300e “version L”
    バッテリー総電力量 54.4kWh
    一充電走行距離WLTCモード 367km
    CHAdeMO充電 50kW(125A)まで。
    最高出力 150kW(203馬力)
    全長4495mm×全幅1840mm×全高1540mm
    価格 6,350,000円

    ベンツEQA
    バッテリー容量 66.5kWh
    バッテリー航続距離WLTCモード 422km
    CHAdeMO充電 90kWタイプ対応
    最高出力 140kW(190PS)
    全長:4,465mm 全幅:1,835mm 全高:1,625mm
    価格 6,400,000~

    1. eNV-200の最終型が500万円超えていましたからそんなに高いとも思えませんが
      V2H出来るかどうかにこだわってみたり、トラブル対応のレスポンスを考えると
      どうしても国産にこだわりたくなります。

      勿論個人的には買えません。

    2. 軽貨物さま、コメントありがとうございます。

      一点「念のため情報」です。
      UX300eは、100V1500Wのアクセサリーコンセントは標準装備ですが、V2H非対応です。

  3. レクサスということで高価な事が難点ですが、高価な事はレクサスオーナーとしては所有欲が満たされて逆に良いのかもしれません。
    バッテリー容量の割には後続距離がちょっと不足気味の印象があります。
    車体は高価ですが、充電プランが安いので、リーフよりもUX300eの方がBEVであることの喜びは大きいように思います。

  4. 兎に角、C-ポットの搭乗記を見せられるよりは良いかな(笑)

    RAVE-4EV以来の電気自動車かな?
    トヨタコムスではね?(汗)

    出すのが良いのです!
    出して、売れるか?売れないか?
    それから考える?

    だから、水素燃料自動車のミライは?とても、不安ですね!(汗)

  5.  レクサス車には縁がありませんが、途中写真の説明で書かれている「左手での操作。利き腕が右の私には非常に使いづらい」はとても重要なポイントだと思います。今後タッチパネルがさらに多くなると思いますが、機能的意匠的な優越性は認めるものの、右ハンドル車にとっては時に危険ですらあります。右側にトラックパッドのような機能をつけるなり、何か工夫できないものでしょうか。

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この記事の著者


					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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